ナタリー PowerPush - 矢野顕子
テクノもボカロも飲み込んで共同作業で「飛ばしていくよ」
矢野顕子がレーベル移籍後初となるニューアルバム「飛ばしていくよ」をリリースした。
この作品にはsasakure.UK、AZUMA HITOMI、松本淳一(MATOKKU)、砂原良徳、Marc Ribot's Ceramic Dog、BOOM BOOM SATELLITESといった実力派のトラックメーカーが参加。矢野顕子との共同作業により、多彩なサウンドを描き出している。ナタリーでは矢野顕子本人にインタビューを行い、この意欲作の制作過程に迫った。
取材・文 / 大山卓也
音が面白いかどうかがすべて
──「飛ばしていくよ」というタイトル通り、ぶっ飛んだアルバムになりましたね。楽しく聴かせてもらいました。
それはよかったです。
──トラックメーカーのラインナップを見ると、幅広いジャンルから才能にあふれた方を選んでいますよね。パートナー選びの基準はどのように?
それはやっぱり音を聴いて、私が面白いと思うかどうかですね。
──サウンドは面白いけど自分とは合わないという場合もありますか?
ううん、自分がいいと思ったら合うのよ。私はほら、誰とでもできるから(笑)。
──そうですね(笑)。
だから自分がその人とやりたいと思うかどうかがすべてですね。で、やっぱりカッコよかったり、独創的であったり、何かがあるということ。今回一緒にやってる皆さんはそれを持ってらっしゃったということです。
人選ありきで曲を作る
──今回のアルバムでは松本淳一さんが「リラックマのわたし」と「ISETAN-TAN-TAN」のトラックを担当していますね。
彼はMATOKKUというグループを3人でやっていて、もともとエレクトーン界では知らない人はいない、非常に素晴らしい演奏力を持った方なんです。彼が編曲したら絶対に面白いものになると思ってお願いしました。音の選び方も素晴らしいですし、全体を作り上げる力もありますから。
──2曲ともタイアップ曲ですがどういう意図で?
それはたまたまですね。リラックマと伊勢丹というまったく違うプロジェクトがそれぞれあって、たまたま両方とも松本くんに依頼したわけです。アルバム全体の中だとちょっと“かわいい部門”担当みたいになってますけど、もともとなんでもできる方なので。
──「在広東少年」は砂原良徳さんが手がけています。
これは彼が喜んでやってくださるかなと思って(笑)。
──じゃあ曲ありきではなく、砂原さんに合うだろうという観点でこの「在広東少年」が選ばれた?
そう、ほぼ全曲そうですよ。「この人とやる」って決めてから、曲をどうしようかなっていうのを考えました。
──人選を決めてから、その人に合う新曲を書き下ろしたりカバー曲を選んだりということですね。
はい。砂原さんはYMOがお好きですから、たぶん楽しくやっていただけたと思います。
──砂原さんのトラックはいかがでしたか?
YMOだけれども、でもYMOじゃないみたいな? でもわりと王道部門ですよね。
» 曲全体を作る能力
- ニューアルバム「飛ばしていくよ」/ 2014年3月26日発売 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64141
- [CD] 3150円 / VICL-64141
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収録曲(カッコ内はトラックメーカー)
- 電話線(sasakure.UK)
- 飛ばしていくよ(AZUMA HITOMI with Sakana Hosomi)
- YES-YES-YES(AKIKO YANO)
- リラックマのわたし(松本淳一[MATOKKU])
- 在広東少年(砂原良徳)
- ごはんとおかず(sasakure.UK)
- ISETAN-TAN-TAN(松本淳一[MATOKKU])
- 愛の耐久テスト(Marc Ribot's Ceramic Dog)
- Captured Moment(sasakure.UK)
- かたおもい(AZUMA HITOMI with Sakana Hosomi)
- Never Give Up on You(BOOM BOOM SATELLITES)
- 矢野顕子「飛ばしていくよツアー2014」
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- 2014年5月13日(火)
愛知県 名古屋CLUB QUATTRO - 2014年5月14日(水)
大阪府 梅田CLUB QUATTRO - 2014年5月21日(水)
東京都 渋谷CLUB QUATTRO - 2014年5月22日(木)
東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- 2014年5月13日(火)
矢野顕子(やのあきこ)
1955年東京生まれのシンガーソングライター。幼少からピアノを弾き始め高校時代にはジャズクラブで演奏する。1972年頃からセッション奏者として活躍し、1976年にアルバム「JAPANESE GIRL」でソロデビュー。1979年から1980年にかけては初期YMOのライブメンバーも務めた。近年はrei harakamiとのユニット・yanokamiで新たな一面を見せるなど、そのチャーミングで独創的なスタイルは、後に続く世代のアーティストたちにも絶大な影響力を誇っている。2014年3月にニューアルバム「飛ばしていくよ」をリリース。