ヤバイTシャツ屋さん|渾身のタンクトップを、君に

ジャスコには娯楽が全部詰まってる

──「Give me the Tank-top」から勢いそのままにクラシエ「いち髪」のCMソング「泡 Our Music」に続き、3曲目には「J.U.S.C.O.」という曲が収録されています。その名の通り、今はなきスーパーマーケットチェーン・ジャスコについて歌った曲ですが、3人はジャスコによく行っていたんですか?

こやま むしろ行かないんですか?

──私は行ったことがないですね。

しばた 都会の人はジャスコに行かなくても娯楽があるねん。

こやま 僕らにとってのディズニーランドはジャスコでしたからね。娯楽が全部詰まってるんですよ。

しばた ジャスコに行けばやりたいことが全部できたもんな。アイスも食べられるし、服屋さん、靴屋さん、雑貨屋さんもあって……ホンマに何から何まであった。

こやま この曲はジャスコがなくなったことを受け入れられへん気持ちを歌った曲で。僕は名前がイオンに変わっても「ジャスコ行こや」って言いたいんです。

しばた わかるわー。

──今まで出してきた曲でいうと「Universal Serial Bus」的な、かなり王道のパンクロックチューンだけど、よく歌詞を聴くとわけがわからないことを歌っているというパターンの曲ですよね。

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もりもと そうですね。きっと「USB」みたいにライブで盛り上がる曲になると思うんで、早くライブでやりたいです。

──「珪藻土マットが僕に教えてくれたこと」は「肩 have a good day」的な、最初はいい曲っぽいのにしょうもないことを歌っているシリーズで。4枚もアルバムを出すとアルバムに必要不可欠な要素というか、曲の系統がいろいろ見えてきましたね。

こやま シリーズ化している感じはありますね。そのジャンルの中での変化というか進化を楽しんでほしいです。

──ジャンルが広がるごとに、こやまさんの聴く音楽の幅も広がっているんだなと感じます。

こやま 最近は奥田民生さんとスティーヴィー・ワンダーばっかり聴いてます。

──意外ですね。もりもとさんは「珪藻土マットが僕に教えてくれたこと」についてどう思いますか?

もりもと 腹立つ歌詞に腹立つ感じのリフを組み合わせてるなって(笑)。このアルバムはぶっ飛ばしていくタイプの曲が多いので、アルバムで唯一ゆっくりめな曲かなと。ドラマー的にはタイミングを遅らせてまったり叩いてみました。

こやま 「珪藻土マット」ってゆっくりな曲か? 一般的には速い曲やない?

しばた うん。これをゆっくりと捉えてええんかと聞かれると迷う(笑)。

こやま またライブのどこで演奏したらいいかわからん曲を増やしてしまったな……。

──セットリストでの置き場が困るというのは、レゲエ風の「君はクプアス」とかができたときにも言ってましたよね(笑)。でも冒頭3曲でカッコいい側面を見せて、4曲目で一旦オチをつけるのはヤバTらしいアルバムの流れだなと思います。

こやま そういうやり口でやらせてもらってます。

原付との思い出

──「原付 〜法定速度の範囲で〜」はジャンルとしてはメロコアだと思うんですけど、この感じは意外とヤバTの曲になかったですよね。

こやま この曲、僕はアルバムの中で一番好きかもしれないです。

──この曲から「sweet memories」に続いていく、こやまさんの青春時代を歌った曲が続くゾーンが私はすごく好きで。

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こやま うんうん。このへんはすごくさわやかにできたなと思います。「原付」はキーがめちゃくちゃ高いんです。自粛期間でライブがなかったから喉の調子がすごくよくて、どこまでも声出るんちゃうかという状態やったんですよ。歌えちゃって歌えちゃって仕方なかったから高いキーにしたんですけど、のちのちスタジオで合わせたら全然声が出えへんくて。

しばた びっくり!

こやま ライブでどうしようかなと思ってます……。

──ということは、自粛期間がなければ生まれなかった曲ですね。

こやま そうですね。ここまでさわやかな音源にはならなかったと思います。ライブのときは半音下げて歌うかもですけど(笑)。

しばた 「原付」のあとに録った「Give me the Tank-top」は半音下げのチューニングで録ったよな。

もりもと 「原付」を録ったあとだったからこのときはキーが高すぎるって気付けたんですよね(笑)。

こやま そう。そのままやると「原付」とキーが同じになっちゃうから変化を付けたかったのもありますけどね。半音下げるだけで音の響きがけっこう変わるんで。

もりもと ドラムの面で言うと「原付」のシェイクを入れた8ビートの感じは初めてだったなと。僕ら3人は学生時代に原付に乗っていたので、原付との思い出がめちゃくちゃあるんです。僕らからすると「ウェイウェイ大学生」で歌ってた軽自動車か原付が、大学時代の移動手段で。

しばた 原付は芸大の近くにあるバイク屋さんで安く売ってたのもあって、みんな乗ってたよな。

こやま 「車で高速飛ばして」みたいな歌詞はよくあるけど、僕らの場合はそれが原付なんですよ。法定速度を守って一般道を飛ばすという。原付しばらく乗ってないけど、乗りたいなあ。CM来おへんかな。

──よければ原付との思い出を聞かせてください。

こやま 学生時代にしばたと僕ともう1人で芸大がある大阪の富田林から奈良NEVER LANDまで原付を走らせて、岡崎体育くんのワンマンを観に行ったことがあります。

しばた あの日は台風で電車が動かへんかったんよな。体育さんにも「開催はするけど無理しないでね」って言われてたんです。

こやま 「それでも行くんや!」って僕らは大雨の中、原付で奈良へ向かったんですよ。そしたらガンガンこけて。

しばた うちがこやまさんの後ろを走ってたんですけど、目の前から人が消えるんですよ。ツルンって。なんかもう原付が回転してる感じやった(笑)。

こやま なのに無傷。

しばた あれはびっくりやったな。全然平気な顔して「行こか」って言ってて(笑)。とは言え皆さんは絶対ダメですよ。大雨の中の原付は。

もりもと これは注意喚起ですね。気を付けてください。あとこやまさんが乗ってた原付めちゃくちゃうるさかったですよね。

こやま あれ中古やったから改造されてたんちゃうかなって。

しばた こやまさんが原付に乗ってきたらすぐにわかる。「あ、こやまさんの音や……」って。

もりもと こんなに僕らには原付との思い出があります。

DVDが返ってこなかったおかげで経済が動いてます

──「sweet memories」は2019年発売のシングル「スペインのひみつ」のカップリングですが、ヤバTのアルバムにカップリング曲が入るのは珍しいですね。

こやま 作ったときはこんなもんカップリングの曲やと思ってたんですよ。でもだんだんなじんできて、人気もあるみたいやし、いい曲やなと思って入れました。

──こやまさんの青春シリーズはまだ続きます。「はやく返してDVD」も学生時代に友達に貸した「時計じかけのオレンジ」のDVDが返ってこないという話です。

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こやま この曲はもともと違う歌詞だったんですよ。でもなんかちょっとハマらんなと思いながら自分の家の棚を観てたら「あ、DVD返ってきてないな」と気付いて歌詞を書き換えました。途中の叫びみたいなのは最後に足してて。

もりもと 雄叫びも最初のパターンから変わりましたよね。

こやま もともとはもっとぼやいてる感じだったんです。それもやっぱり喉の調子がよかったので気持ちよく叫べたという。曲調的にはヤバT曲の中でもゴリ中のゴリって感じの激しさなので、歌詞でバランスを取ったというか。

しばた ゴリゴリの曲に立場が弱い人の話を乗せるというボケ。シンプルに借りパクされてる人の話やもんな(笑)。ドロップCのチューニングで弾く曲なんで、ライブでやるにはベースを1本増やさなあかんなと思って買ったんです。そのベース用にワイヤレスシールドと送信機も買い増して、この1曲が増えたことによりうちの周りの経済が動いてます。

もりもと しばたのベースが増えたことでドロップCの曲も増やせますね。「はやく返してDVD」はドラムの手数が多くて大変だったんですよ。ドラムの重さって軽さなんですよ。重い曲は軽い音を入れていかないと成立しなくて……。

こやま へえ。

しばた へえ。

もりもと 速い曲もそうなんですけど、低い音の太鼓を減らして高い音を増やしました。それですごくヌケがよくなって。ただそれが自分のライブセットと全然違うセッティングなので、この曲をやるために新しくタムをオーダーメイドしちゃおうかなって。お金がどんどんなくなるけど、バンドマンはね、こうしてやっていくものなので。で、話は8曲目の「NO MONEY DANCE」に続きます。

しばた うまいことやったな(笑)。

──「NO MONEY DANCE」はとにかくお金がないっていう歌ですけど、「ハッピーウェディング前ソング」的なポップさを持った曲ですね。

こやま 最後のほうにできた歌なんですけど、とにかく明るく今の現状を歌って、空元気でもいいからみんなに元気になってほしいなと思って書きました。この曲は2曲目とか3曲目に入っててもよかったんですけど、後半の豪華さを演出したいなと思って8曲目に入れました。今回はね、曲をストックしてるとは言え出し惜しみはしてないんですよ。ちゃんとキラキラした曲を後半にも入れられるぐらい豪華なものになったと思います。

──掛け声の種類が多いので、ファンの皆さんはそれを覚えるのが大変ですね(笑)。

しばた お客さんが全部覚えると思うとかわいいなあ。でもきっとライブでやったら楽しいと思う。初見殺しやけど(笑)。

こやま そういうのはだいたいワーワー言っておけばなんとかなるんで、初見の人も好きに楽しんでください(笑)。