ヤバイTシャツ屋さん|渾身のタンクトップを、君に

バンドが出す東京にまつわる曲の対極を目指して

──9曲目の「げんきもりもり!モーリーファンタジー」は……?

こやま もりもとのキャラソンです。

しばた みんなで「もりもと!」って言いたいなあ。

もりもと 先に楽器の録音があって、そのあとに歌入れだったんですけど……結成して7年経ちますが、初めて「本当に歌詞はこれでいいんですか?」ってこやまさんに聞きました(笑)。イヤとかじゃなくて「これは仮歌ではなく本当の歌詞ですか? 大丈夫ですか?」という確認で。サビのド頭で「モリモリモリモリモリモリモリモリモリモリモリモリ モーリーファンタジー」ってどう考えてもおかしいじゃないですか。かと思えばちょっといい感じのメロディだし。今ではお気に入りの曲で、こやまさん、ありがとうございますという気持ちです。

こやま オモロい曲になったよな。

もりもと 実は僕の語りの裏で2人がソロを弾いてるんですよ。2回目以降はぜひそちらにも注目してもらいたいですね。

こやま もともとセリフがなかったところに乗っけたからな。ヤバTってこういう間奏にセリフ入れがちやなって思って追加したんです。

しばた あんなにソロをがんばったのに(笑)。まあでもヤバTは間奏も有意義に使うバンドやからな。

こやま この曲は子供向けに作ったシリーズで、こういう曲はいつもあえてバックの演奏を激しく作るんです。ここで子供たちにロックを感じてもらって目覚めてもらいたいという期待を込めています。

──アルバムといえば毎回欠かせないのが、しばたさんが作った曲ですよね。今回はEDMテイストな「日本の首都、そこは東京」ですが。

しばたありぼぼ(B, Vo)

しばた このときはギターにハマってて、サビだけギターでコードを考えて、あとは打ち込みでループのリズムを入れて、ベースを入れて作っていきました。最初はCAPSULEさんみたいな音だったんですけど、さすがにこれはやりすぎたなと思って全部音色を変えて、今の形に落ち着きました。

──なぜ今東京にまつわる曲を?

しばた 4枚もアルバムを出せばやっぱり東京の曲を歌うのが地方出身バンドの定めだと思うので。前のアルバムのときにも東京の曲をそろそろ書きたいなと思っていたんですけど、まだ早いなという気持ちもあったので今回に持ち越しました。ホンマはレゲエとかで作りたかったんですけど、レゲエの東京はそんなに珍しくないなと思って。バンドが出す東京にまつわる曲のイメージから一番離れたところにあるのは全部打ち込みの東京かなと思って、こうなりました。

こやま でも意外となじんでますよね。この曲がここにあってよかったなと思います。

初めてさらけ出したストレートな思い

──そして終盤はシングル曲の「はたちのうた」「癒着☆NIGHT」が並び、最後に「寿命で死ぬまで」で終わります。

こやま 「はたちのうた」から「寿命で死ぬまで」の3曲は全部泣き曲なので最後にまとめました。アルバム全体としては1曲目に今伝えたいメッセージを込めて、2曲目から10曲目でふざけて、11曲目から終わりまでで泣かせるという構成になっています。最初は「癒着☆NIGHT」で締めようと思っていたんですけど、「寿命で死ぬまで」ができてここに入った感じですね。

──「寿命で死ぬまで」はどんなところから生まれた曲なんですか?

こやま うちのおばあちゃんが去年行方不明になって、そのまま亡くなってしまったんです。その直前に一緒にテレビに出てたりして、お客さんもおばあちゃんのことを知ってたし、すごくショックだったんですよね。最初はこの気持ちを曲にしていいのかわからなかったんですけど、曲にせえへんとあかんなと思ったんです。それで自分の思いをストレートに書いたんですけど、今までのヤバTはここまで直接的な表現はしてこなかったし、もしかしたら言葉としては薄っぺらく取られてしまうかもしれないとか、いろいろ考えたんですよ。でもこうやって歌うことでうまく形になったかなって。僕にしかわからへん表現もあると思うんですけど、ホンマにこれは僕が思ってることです。

──この曲をレコーディングすることになって、しばたさんともりもとさんはどう思いましたか?

しばた この曲はこやまさんの個人的な歌だから正直自分が歌うところはないんかなと思ってたんです。歌うことになったからには、こやまさんの歌と同じテンション感で歌わないと失礼やと思って全力で歌いました。うちは今までどんだけ高いパートを歌っても、普段のしゃべり声に影響があることはなかったんですけど、この歌を録って初めて喉をつぶしたんですよね。高いところだけやなくて、最後の低いところも自分の喉に気を使わずに歌いました。

もりもりもと(Dr, Cho)

もりもと この曲は思うことがいろいろありすぎて平常心では聴けないというか。26歳にもなると新しい出会いもありますけど、別れも多くなってきて。だからこそ自分の経験とも重なりますし、こやまさんとおばあちゃんの別れも近くで見ていたので、曲にしてくれてありがとうございますという気持ちです。歌詞と2人の歌にすべてが詰まってると思います。

こやま この曲は4枚目のアルバムやから入れられた曲やと思います。今まで積み上げてきたものがあるからここにあっても違和感がなく届けることができるというか。いきなりこの曲を聴いた人は「どうした?」と思うかも知れないですけど、なんか伝わるものがあるんじゃないかなと。自信を持って送り出したい曲です。

予想を遥かに超えた4万3000枚という予約枚数

──今回はCDの予約者にサイン入りジャケットを特典として届けるとのことで、皆さんが4万3000枚のアザージャケットにサインを書きました。

こやまたくや(G, Vo)

こやま 今回は「ハッピーウェディング前ソング」とか「かわE」みたいな大バズり曲が入ってないんで、本来やったら前より売れないと思うんです。でもそこで僕らのここ最近の時間の大半を注いだこともあって、一番売れるアルバムにできたことに安心しました。聴いた人を満足させられる自信はあるんですけど、手に取ってもらうまでのきっかけが作れてなかったなと思っていたので。サイン書きは大変でしたけど、やってよかったなと思ってますね。

──予約者全員にサインジャケプレゼントという企画は誰が発案したんですか?

こやま ユニバーサルの人が「今ってオンラインサイン会とかやってる人いますよ」って提案してくれて。

しばた 確かに今の状況じゃ各地をプロモーションで回ることもできひんし、やってみるかという話になったんですよ。

──結果4万3000枚のジャケットにサインを書くことになりましたけど、この枚数は予想していましたか?

こやま なんも予想してなかったんですよ。

しばた 何枚来るかもわからへんけど書けるやろって。特典のポスター1000枚にサインを書いたことがあって、そのときはメッセージまで1枚ずつに入れてたんで、今回もいけると思ったんです。

もりもと まず無料配信のライブを7万人の方が視聴していたのが僕らとしては驚きだったんですよね(参照:ヤバイTシャツ屋さんが新アルバムを熱烈アピール!渾身の生配信ライブを7万人が視聴)。

しばた ユニバーサルの人は、無料配信ライブを観る人は多くて1万人ぐらいだと思ってたんですよ。そこからアルバムを買う人が半分もいるわけないし、まあ2000枚くらいかなという概算を出したんですけど、結果的に7万人がライブを観て、その半分以上がCDを予約してくれたんです。

こやま それってすごいことやんな。でも今回は画面を通してでも直接自分の言葉を届けることができたのが大きかったなと思ってます。そこでやっぱり伝わったんちゃうかなって。

しばた あの配信ライブでファンになりましたという方もけっこうおって、やってよかったなと思いました。

──「無料だから許して!低画質!低音質!5曲だけライブ!!!」と銘打った配信ライブで、1台のカメラを固定しての撮影でしたけど、熱量が伝わるいいライブだったと私も思いました。

こやま 僕も終わってから映像を観返して「なんか意外といいかも?」と思いましたね(笑)。というのもヤバTはミュージックビデオでもこの画角が多いのでなじみがあるんですよ。

──サインをたくさん書いてよかったことはありますか?

もりもと お酒を飲む量が減って寝付きがよくなりましたね。

こやま それはいいことやな(笑)。とにかく早くこのアルバムが届いてほしい。きっと買う側も“アルバム曲”があると思ってるはずなんですけど、僕らからしたら捨て曲的なものはないので。全曲本気出して作ってるから、ちゃんとまるごと聴いてほしい。そんでみんなツアーに遊びに来てほしいですね。

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