XIIX|濃密な2020年を経て生まれた「聴き手にとっての音楽」

アルバムの1曲目がこういうアレンジなのはすごくXIIXらしい

──アルバムに先がけて、去年の10月20日に「Halloween Knight」のMVが公開されました。アルバムの1曲目に収録されていますが、やはりこの曲を最初に届けたかったのでしょうか?

斎藤 えーと、そのときはもう曲が出そろってた?

須藤 うん、全部できてた。

斎藤 そうか。今回のアルバムの曲順は、曲ができた順番に並べてるんですよ。一昨年の10月から始まって、大体1カ月に1曲のペースで作って。それを並べることでこの1年を記録するようなアルバムになるのかなと。それは最初から決めていたわけではなくて、途中で気付いたんですけどね。「カレンダーみたいに並べたら面白くない?」って。季節感みたいなものはもともとテーマの1つだったし、「こんな1年はこの先、もうないだろうな」という感じもあって。ミュージシャンとして、この1年で感じたことを形にするべきだろうなと。「Halloween Knight」はインパクトも強かったし、スタッフも「最初はこれがいいんじゃないか」という意見が多くて。10月20日に公開するというのも、XIIX的には縁起がいいですし(笑)。

須藤 もともとは1stアルバムに入ってる「Stay Mellow」をブラッシュアップした曲をイメージして作り始めたんですよ。

斎藤 最初はそうだったね。

須藤 「Stay Mellow」は偶然の産物的に生まれた曲なんだけど、それをもう一度咀嚼したうえで作ってみようと。

斎藤 あと、アルバムを作り始めた最初の頃に強烈に思っていたことを、少なからず曲に落とし込んだ感じもあって。前作で音楽性を提示して、XIIXのあり方を形にできたと思ってるんだけど、自分が期待してた分だけ「届かないことがたくさんあるんだな」と思ってしまったんです。さっき言ったように「理解されるまでにはアルバム3枚分くらいはかかる」とわかっていたはずなのに「こんなもんか」というのもちょっとあったり。「White White」は名盤だと思ってるし、そこは胸を張っているので、余計にそう思ったんでしょうね。

──もっと反応があってもいいはずだ、と。

斎藤宏介(Vo, G)

斎藤 「今に見てろよ」というか(笑)。そういう気持ちすらも曲にして楽しんでもらえるものにできたら、すごくカッコいいアルバムができる予感がする。そこから始まったんですよね、「USELESS」は。

──斎藤さんの思いは、須藤さんも共有していたんですか?

須藤 いや、そんなに(笑)。

斎藤 ハハハハ(笑)。

須藤 そこまで考えるタイプではないんですよ。深いところは宏介が考えてくれてるだろうなと思いつつ、僕は直感的に、やりたいようにやらせてもらっているというか。なので2人で考え込むことはないんです。

──そのバランス感もいいんでしょうね。「Halloween Knight」は、音楽的なアイデアもすごく面白いです。須藤さんの個性的なベースラインと斎藤さんのボイスパーカッションから始まって。

須藤 「White White」を改めて聴いたときに、「ベース、弾き足りないな」と思って。今回はもっと弾きたかったし、1曲目のイントロからそうしようと。

斎藤 いいね(笑)。

須藤 それだけじゃつまらないというか、もっと面白くする手はないかなと思って、ボイパを入れてもらって。アルバムの1曲目がこういうアレンジなのはすごくXIIXらしいし、普通のロックバンドはやらないと思うんですよ。

音楽を知らない人でも気持ちが明るくなるような曲を

──2曲目の「No More」は歌のメロディがすごく魅力的で、XIIXのポップな面が出ている曲だと思います。

須藤 アルバム全体のテーマにもつながるんですけど、音楽をあまり知らない人、それほど聴いてこなかった人が「いいな」と思って、気持ちが明るくなるような曲にしたかったんです。通勤、通学の時間が楽しくなるような曲を思い描いてトラックを作ったら、宏介が素敵な歌詞とメロディを乗せてくれて。

須藤優(B)

斎藤 「聴き手にとっての音楽」を意識することは、僕がまだ経験したことがない「タイアップに向けて曲を作る」みたいなことなのかなと思って。ある番組に向けて、勝手にタイアップするつもりでメロディと歌詞を作ったんです。その番組は流行に敏感な友達がいつも話題にしていたし、「これは無視できないな」って(笑)。そこに向けて曲を書くことで、ポップスにつながると思ったし、実際、すごくいい曲になったと思います。その番組、終わっちゃったんですけどね(笑)。

須藤 (笑)。この曲だけだよね、タイアップを想定して作ったのは。

斎藤 そうだね。それも須藤くんのオケからもらったアイデアなんですよ。洋楽ポップスみたいな印象があったから、そういう作り方が合うと思って。

──「フラッシュバック」はレイドバックしたリズムとフロウが気持ちいい楽曲で、「White White」の延長線上にある曲なのかなと。

須藤 これは「in the Rough」で作った「talk to me」と対になるような曲というイメージで制作した記憶がありますね。リズムの“ため”の面白さというか。ファンクまではいかないけど、こういうアレンジも若いときはできなかったし、35歳の新人だからやれることなのかなと。

斎藤 歌詞に「もったいないおばけ」が出てくるんですけど、レコーディングエンジニアのアシスタントの若い子がこの言葉を知らなかったんですよ。ちょっとジェネレーションギャップを感じましたね(笑)。

──(笑)。言葉遊びだったり、響きを重視した歌詞なんですか?

斎藤 自分が思ってたことも込めてますね。去年は身動きの取れなさを感じていたし、それがにじんでいるのかなと。この曲もすごく気に入ってます。音数が多いわけではないんだけど、印象は華やかで。

──続く「ブルー」は、沈み込むようなトラック、憂いのあるメロディが軸になっていますね。

須藤 花が咲いて散るまでを早回しで映した映像をYouTubeで観て「こういうイメージの曲を作りたいな」と思ったのが始まりですね。温度感の低いトラックにしたくて。

斎藤 とにかくトラックがカッコよかったんですよね。自分としては1stアルバムの「Light & Shadow」の系譜にある曲だなと感じていて。無機質なんだけど、温かい曲を作れたらいいなと思って“1人と花”の世界を描こうと。