XIIX|濃密な2020年を経て生まれた「聴き手にとっての音楽」

XIIXが2ndアルバム「USELESS」をリリースした。

1stアルバム「White White」以来1年ぶりとなる本作には、先行配信された「Halloween Knight」「おもちゃの街」など12曲を収録。前作以上にポップに開かれた作品に仕上がっている。

音楽ナタリーでは、メンバーの斎藤宏介(Vo, G)、須藤優(B)にインタビュー。「“聴き手にとっての音楽”を初めて意識して制作した」という本作についてじっくり語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 須田卓馬

「聴き手にとっての音楽ってなんだろう?」

──XIIXは2020年1月に1stアルバム「White White」を発表し、東京、大阪で初のワンマンライブを開催しました。6月に予定されていた東名阪レコ発ツアーは中止になりましたが、楽曲制作はずっと続けていたんですか?

斎藤宏介(Vo, G) はい。このアルバムに向けてというか、1stアルバムを作ったあとも楽曲制作はずっと継続していたので。

──「White White」発売時に「制作はデータのやり取りが中心」とお話しされていましたが(参照:XIIX「White White」インタビュー)、ということは今回のアルバムの制作に際してはコロナの影響はあまり受けなかった?

須藤優(B) うん、そこはまったく変わらず。僕らの作り方は最初からテレワーク的なので。レコーディングができない時期はありましたけどね。

XIIX

斎藤 そう、去年の4月、5月はスタジオに入れなかったので。

須藤 その分曲は増えました。

斎藤 うん。あと、結成当初から「アルバム3枚分は順序立てて作ろう」と思っていたんですよ。よくも悪くも知名度や実績を残してきた2人が始めたことだから、最初はどうしてもそういう目で見られると思うんです。例えば僕だったら「UNISON SQUARE GARDENのフロントマンがやってる」というフィルターを通して見られるのはわかっていて。XIIXというアーティストとして純粋に見てもらうまでにはアルバム3枚くらいかかるだろうし、そこまでちゃんと積み重ねないといけないなと。

──なるほど。今回のアルバム「USELESS」は、ポップスとしてのクオリティが上がっている印象がありましたが、どんなビジョンがあったんですか?

斎藤 「開けていこう」というのはありましたね。

須藤 そうだね。1stアルバムは何もない状態から作り始めて。完成した直後から、「次はもっとポップでキャッチーなアルバムを作りたい」と思ってたんです。

斎藤 僕が思い描いたものに付いて来てもらったんじゃなくて、須藤くんも同じように思ってくれていて。ちゃんとバンドをやれてるという実感がありましたね。

須藤 うん。

斎藤 前作で自分たちの音楽性を示せたと思ったので、今回はより開いて、「聴き手にとっての音楽ってなんだろう?」ということを考えて、自分の許せる範囲でそこにタッチしてみたいなと思ったんです。音楽を作っている身として、どうしても捨てられないプライドみたいなものもあるし、自分たちが生み出したものに対して変な理解をしてほしくないという気持ちもあるんですよ。でも、今回は「音楽は聴き手のもの。あとは自由に楽しんでください」というところまで作り込んで、あとは渡すだけという状態まで持っていきたいと思って。

須藤 自ずとそうなってましたね。話し合ったわけではなくて、作ってるうちに「こういうことだよな」とわかってきたというか。

斎藤 音楽のキャッチボールを日々やってますからね。その中で「今、XIIXはどこに向かってるのか?」とめちゃくちゃ考えて。制作を通して言葉以上に伝え合ってるところがありますね。

──昨年6月からは斎藤さん、須藤さんの2人だけで音源を制作してYouTubeで発表するプロジェクト「in the Rough」がスタートしました。これも聴き手に対するアプローチの1つ?

斎藤 それに関しては実は逆で。これは100%ポジティブな意味で言うんですけど、今回のアルバムは“売れる”ために作ってたんです。それは「僕らがこれだけカッコいいと思ってるんだから、そりゃあ売れるでしょ」ということの証明でしかないんですけどね。「in the Rough」はそうじゃなくて、売り物じゃないものを作ろうと思って始めたんですよ。「これ誰が喜ぶのかな? でも俺は好き」みたいな音楽をエゴイスティックに形にしようと。

須藤 ミュージシャン受けはいいですね(笑)。今、宏介が言ったように「USELESS」とは逆で、聴き手に歩み寄らないで作ったし、2人だけでどれだけできるか試してみたくて。YouTubeでいろんな音楽を聴きながら「こんな感じでやってみない?」ということもあったし、音楽を始めたときのような純粋な感じもありました。鮮度も大事だったんですよ。「今週作って、来週公開する」くらいのスピード感だったので。

斎藤 去年は目的や締め切りがなかった1年で。ライブで披露するためとか、アルバムやシングルをリリースするというゴールがなかったので、「YouTubeで新曲を公開する」というのが強烈なモチベーションになってたんです。目標を自分たちで無理やり作ったところもありますね。