音楽ナタリー Power Push - ウォルピスカーター

いまだ“建設中” 高音出したい系男子の飽くなき挑戦

絶対ライブでは歌えないような曲

──書き下ろし曲のクレジットには鬱P、Last Note.、doriko、Orangestarとそうそうたるクリエイターの名前が並んでいます。この人選はウォルピスさんが?

恐れ多くも選ばせていただきました。きっと僕の名前も知らないと思いますし、引き受けていただいたときはもう、驚きと感激ですよ!

ウォルピスカーター

──なるほど。これまでカバーに挑戦し続けてきたわけですから、誰かに書き下ろしをお願いするということが初めてだったんですね。

そうなんです。本当に好きな方たちに書いていただいて光栄でした。

──これまでウォルピスさんがカバーしてきた楽曲は「高音への挑戦」という意味合いが強かったと思いますが、書き下ろし曲の場合はご自身の音域をお伝えしているわけですよね?

そうですね。でも、音域を伝えているからといって決して歌うのが楽だったわけではないんですよ。Last Note.さんに至っては「絶対ライブでは歌えないような曲を作ってやったぜ」というお言葉までいただきましたから(笑)。提供していただいた曲を歌いこなすのに必死でした。

「先に100万再生されたのは悔しい」

──“高音出したい系男子”として、アルバム収録曲の中で特に注目してほしい高音のポイントはありますか?

とりあえず全部高いんですけど、一番高音を出しているのが「ダンスダンスデカダンス」ですね。この曲だけ飛び抜けて高い。投稿動画では歌というより音を出していた感じで。今回はちゃんと歌として高音を響かせているので、ぜひ聴いてほしいです。

──アルバムの最後にはウォルピスさんの投稿動画の中で最も再生回数の多い「アスノヨゾラ哨戒班」の新録音源も収められています。

この間見たら200万再生を超えていてビックリしました(笑)。新録するに当たってプレッシャーが一番大きかったのが「アスノヨゾラ哨戒班」ですね。200万再生もしてるということは、この動画を何回も観ているリスナーさんもいらっしゃると思うんです。リスナーさんからしたら、「アスノヨゾラ哨戒班」の“歌ってみた”動画って、すでに完成してる作品なんですよ。それを録り直すにはどうしたらいいかなと、けっこう悩みまして。

──結果、ボーカルのアレンジはあまり変更していませんね。

大きく変えちゃうと評価が分かれてしまうと思ったので、聴きこんでいる人ならわかるような変化に留めています。それと、ミックスのニュアンスを投稿動画からは少し変えて、また違った空気感を伝えるような音に仕上げています。とはいえ録りながらすごく悩んだ曲なので、アルバムの中で一番時間をかけました。

──「アスノヨゾラ哨戒班」の制作者であるOrangestarさんには、今回のアルバムで曲の提供依頼をしていますね。

僕が投稿した「アスノヨゾラ哨戒班」って本家のボカロ曲より先に100万再生を達成しちゃってて、Orangestarさんに対しては僕自身複雑な心境だったんです。でもお会いしたときにOrangestarさんが僕に「正直先に100万再生されたのは悔しいけど、それはウォルピスさんの歌がよかったからだと思うから。俺も負けてられないよ」と言ってくださって。すごくいい人だなと思ったし、「悔しい」って面と向かって言っていただいて僕もスッキリしたんです。

──「アスノヨゾラ哨戒班」の動画でウォルピスさんを知ったリスナーも多いと思いますが、ヒット動画を生み出した前後で何か変わりましたか?

それが一切変わってないんです。唐突にこの動画だけものすごく再生数が伸びていったので。投稿した直後はそんなに注目されてはいなかったんですけど、少し時間が経ったらズイズイと再生数が伸びていって、逆に不安になったのを覚えています。

──不安になったんですね。

落ち着かなくなっちゃうんですよね。アルバムが完成してもやっぱり不安なんです。今回は僕1人で作ったものではないですし、名前が名前だから怒られたらどうしようとか(笑)。もちろん達成感とかも感じていますけど、何かすごいことが起こると不安の気持ちのほうが勝ってしまう性分なんです。

今はまだ建設中

──アルバムのアートワークが変わってますよね。1stアルバムで建設中のビルのイラストを持ってくるというのは斬新だと思いました。

あ、このビルが「ウォルピス社」なんです。ウォルピス社っていうのは、ニコニコ動画でのコミュニティの名前なんですが、もともと「ウォルピスカーター」っていう名義を決めたときに話をしていた友人が「何かトレードマークみたいなものがあったほうがネットではウケるよ」とアドバイスをくれまして。だったらウォルピス社っていう会社が曲を届けていることにしたら面白いかなと思ったんです。

「ウォルピス社の提供でお送りします。」ジャケット

──そのウォルピス社のビルが、今は建設中であると。

僕もまだまだ成長中ですから! イラストをお願いしたM.Bさんに「建設途中のビルを描いてほしい」と依頼したんです。2枚目、3枚目と続いたら、どんどんビルが大きくなっていると思いますし、いつか完成したビルのイラストをアルバムジャケットにしたいですね。

──ちなみに「ウォルピス社」を生むきっかけとなった友人とは今でも交流しているんですか?

しばらく連絡を取ってなくて。「あのとき話してたことが、アルバムになったよ!」っていう報告をしたいですね。

──これだけ個性的なアーティスト名とアルバムタイトルですから、きっとどこかで見つけて驚いていると思いますよ。

彼との何気ない会話の内容がどんどん形になっていますから、「お前のおかげで大変なことになっちゃったよ」って(笑)。

1stアルバム「ウォルピス社の提供でお送りします。」 / 2016年1月27日発売 / 2376円 / Subcul-rise Record / SCGA-00043
「ウォルピス社の提供でお送りします。」
Amazon限定盤 ボイトレCD&アクリルストラップ付 [CD2枚組]
通常盤 [CD]
収録曲
  1. CANDiES
    [作詞・作曲:鬱P]
  2. マダラカルト
    [作詞・作曲:トーマ]
  3. ダンスダンスデカダンス
    [作詞・作曲:カラスヤサボウ]
  4. 例えば、今此処に置かれた花に
    [作詞・作曲:164]
  5. 7th
    [作詞・作曲:Last Note.]
  6. ミルククラウン・オン・ソーネチカ
    [作詞・作曲:ユジー]
  7. ワンルーム・オール・ザット・ジャズ
    [作詞・作曲:DATEKEN]
  8. last will
    [作詞・作曲:doriko ]
  9. 精神崩壊シンドローム
    [作詞・作曲:こがねむし]
  10. 夜明けと蛍
    [作詞・作曲:n-buna]
  11. 時ノ雨、最終戦争
    [作詞・作曲:Orangestar]
  12. アスノヨゾラ哨戒班
    [作詞・作曲:Orangestar]
ウォルピスカーター
ウォルピスカーター

ニコニコ動画を中心に活動する男性ボーカリスト。“高音出したい系男子”の異名を持つ。2012年の初投稿以来、ニコニコ動画に“歌ってみた”動画を多数公開している。2015年4月に投稿した「アスノヨゾラ哨戒班」(Orangestar)の歌唱動画が220万再生を記録し、その知名度を一気に広めた。2016年1月、1stアルバム「ウォルピス社の提供でお送りします。」をリリースした。