ウォルピスカーターがニューアルバム「40果実の木」をリリースした。
昨年はアニメタイアップシングル「1%」のリリース、ワンマンライブ「“大”株主総会」や各種イベントへの出演、ラジオパーソナリティーなどの活動に加え、中川翔子の楽曲「ある日どこかで」をプロデュースするなど新たな挑戦もあったウォルピスカーター。新作はこれまでの「ウォルピス社の提供で〇〇。」シリーズとは異なる「40果実の木」というタイトルが冠され、自身で作詞を担当した楽曲が7曲収録されるなど、明らかに新たな方向へとシフトチェンジしている。2019年から2020年にかけて、彼の中でどのような変化が起きているのか。今回のインタビューではボーカリストとしてだけではなく、クリエイターとしてもその才能を開花させているウォルピスカーターというアーティストの現在地について解き明かしていく。
取材・文 / 倉嶌孝彦
同じステージは見せたくない
──2019年はウォルピスさんにとってライブの多い1年になりましたね。
多かったですね。「あけいえ」で今年がスタートして、「ちゃんげろソニック」や、164さんのワンマンライブにも出させていただいて。ワンマンライブもあったし、つい先日はOxTさんともツーマンライブができましたし。
──ワンマンライブ「“大”株主総会」は去年の10月の本公演と今年1月の追加公演、どちらも同じチームスマイル・豊洲PITで行われましたが、それぞれまったく異なる内容だったことに驚きました。
僕、同じことをするのが好きじゃないんですよ。例えばアルバムのリリースイベントで各地を回るとき。だいたい話す内容を事前に決めていて、ステージで10分くらい話すんですけど、3回目くらいから同じことを話すのが嫌になってくるんですよね(笑)。おそらく「同じことやってるな」と思われたくないのかな。「“大”株主総会」は会場も同じだったし、2回来てくれる人がいるかもしれないから、同じステージは見せたくなかったんですよ。だから大幅に内容を変えることにしました。
──追加公演ではゲストを複数人招いたコラボ曲の割合が増えました(参照:「マイナス3だー!」ウォルピスカーター、大株主総会でキー下げる)。
ポリシーとして「ワンマンライブはゲストを告知せずにやりたい」というのを持っていたんですけど、追加公演はゲームで言うエクストラステージというか、後夜祭みたいなものなので、ちょっと思考を柔軟にしてライブを作ってみようと思ったんです。もともと僕のワンマンライブにはゲストが出ることが多かったですけど、今回は事前に告知して、さらにゲストに出てもらう時間も長めに取ってみました。結果から言うと、ものすごく助かりました。
──OxTさんとの対談でライブを競技に例えていましたからね(参照:ウォルピスカーター×OxT(オーイシマサヨシ×Tom-H@ck)「uP!!!SPECIAL BANQUET」特集)。共演者がいるだけで1人当たりの負担が減ると、ライブ中にもおっしゃっていました。
OxTさんとの対バンライブでも感じたんですが(参照:ウォルピスカーター×OxT、ライブとトークでフロアを沸かせたコラボライブ)、やり方次第、考え方次第で自分の歌以外の要素でもお客さんをちゃんと楽しませることができるんですよね。OxTさんは1曲ごとにトークを挟む形でしっかりお客さんを盛り上げていましたし、僕も自分の高音ボーカルだけじゃなくて、いろんな形でライブをやってみていいかもしれない。ここのところのライブではそんなことを考えていました。
まずはGoogleに「プロデュース」
──それと去年の活動の中で驚いたのが、中川翔子さんの「ある日どこかで」という楽曲にウォルピスさんがプロデュースで参加したことでした。プロデューサーとして活動しているわけではないウォルピスさんに、なぜこのような依頼が来たんでしょうか?
それが僕も経緯についてはよくわかっていなくて。ある日突然「中川翔子さんの曲をお願いできませんか?」という連絡が来たんですよ。「もちろんお受けしたいのですが、僕はどういう形で参加するんでしょうか」と聞いたら「プロデュースをお願いします」と。プロデュースなんてやったこともないし、僕自身もプロデューサーさんと携わって音源を作るタイプではないので、どうすればいいのか全然わからなくて(笑)。まずはGoogleに「プロデュース」と打ち込んでプロデューサーの仕事を調べるところから始めました。
──具体的にはどういう形で中川さんをプロデュースしたんですか?
プロデュースに関してインターネットでいくら調べても、どうすれば名プロデューサーになれるかはわからなかったので、もう自分だったらどういう作品にするかをひたすら考えて、イメージを固めてレコーディング現場に向かったんです。そこで翔子さんの歌をディレクションするという、もう今後一生ないであろう貴重な体験をさせていただきました。
──初めてのプロデュース業、どうでしたか?
初めてのことだったので正直「これでよかったのか?」という感覚なんですけど、自分主導で作品作りを動かすのがすごく面白かったんですよね。特に僕はセルフプロデュースみたいな形で歌うことが多いから、自分1人で試行錯誤をするのではなくて誰かと一緒にいろいろ試しながらベストを目指していく経験が珍しくて。自分でやるよりも数倍難しいけど、思ってもみない方向に作品が動くこともあるし、そこがプロデュース業の醍醐味なのかなとも思ったりして。まだぼんやりとしたものですけど、いつかは僕も誰かをプロデュースする仕事ができたらいいなと、思えるようになりました。
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40のフルーツが生る木