音楽ナタリー Power Push - ウォルピスカーター

いまだ“建設中” 高音出したい系男子の飽くなき挑戦

ニコニコ動画を中心に活動する男性ボーカリスト・ウォルピスカーターが、1stアルバム「ウォルピス社の提供でお送りします。」をリリースした。ウォルピスカーターは“高音出したい系男子”という一風変わった異名を持つ歌い手。2012年にニコニコ動画に“歌ってみた”動画を初投稿して以来、自身のハイトーンボイスを武器に多くのリスナーを魅了している。

アルバムには “歌ってみた”動画が200万回以上の再生数を記録している「アスノヨゾラ哨戒班」の新録音源のほか、鬱P、Last Note.、doriko、OrangestarといったボカロPによる書き下ろし曲が収録されている。音楽ナタリーではウォルピスカーターへのインタビューを実施し、アルバム制作時のエピソードなどを聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦 インタビュー撮影 / 中島未来

 
mixiチェック

ボイトレと自分の感覚が噛み合わなかった

──ウォルピスさんが初めて“歌ってみた”動画を投稿したのは2012年でした。それまではどういう形で音楽に携わっていたんですか?

高校のとき軽音楽部に入ってバンドを組んでいたんです。文化祭とかで演奏してたんですけど、学校内だけの活動だと物足りなくて。それで挑戦してみたのがニコニコ動画の“歌ってみた”でした。

ウォルピスカーター

──バンドではどんな曲を?

ゴリゴリのロックでしたね。メタルとか、ハードコアとか、激しい曲をやってました。高校を卒業してバンド活動からは離れてしまうんですけど、そのあと音楽の専門学校に進学したんですよ。ただ、それがメチャクチャ合わなくて。

──合わなかったというのは?

ボイストレーニングで教わる内容と、自分の感覚が噛み合わなかったんです。当時僕はすでに動画を投稿していたから、自分なりの歌い方や声の出し方が固まっちゃってたんですね。それに僕が通っていた学校は先生を変えたりすることができなくて。歌い方については独学で研究してきました。

「俺、ウォルピスカーターにするわ。語感いいし」

──「ウォルピスカーター」という一風変わった名義は、どういう経緯で生まれたんですか?

大したひねりがあるわけではないんです(笑)。僕がニコニコ動画に動画を投稿する少し前に、仲のよかった友達と「もし歌い手をやるとしたらどんな名前にしようか」という話をしていて。ちょうど学校の自販機でジュースを買っていたときに、「俺、ウォルピスカーターにするわ。語感いいし」って(笑)。

──友達との雑談から生まれた名義を4年近く使い続けているんですね。

結果的にはこの名前でよかったと思ってますけど、問題点もあって……。

──それはどんな問題ですか?

こういう取材のとき「ウォルピスカーターです」って自己紹介するのが恥ずかしくて(笑)。

──あははは(笑)。ウォルピスさんの投稿した動画には「高音出したい系男子」というタグが付いています。高音に対するこだわりはいつ頃生まれたんですか?

もともと僕は一般的な男性のキーで歌っていたんです。でもニコニコ動画で人気があるボカロ曲って、基本的にキーが高くて。歌えないのが悔しくて、Twitterとかで「高音出したい!」って言い続けることにしたんですね。そこから定着したんだと思います。

投稿動画よりオクターブが上がっています

──ニコニコ動画を主な活動の場としているウォルピスさんにとって、アルバムとして音源をリリースするというのはどういう感覚なんでしょうか?

ウォルピスカーター

もちろん音楽に携わる身としては1つのゴールだと思うんですけど、僕はアルバムを出すことを目的に活動してきたわけじゃないんですよね。ただ高音を出すことが目的だったわけで(笑)。だからあくまで通過点というか、数あるミッションのうちの1つを達成したっていう感じです。

──アルバム収録曲には“歌ってみた”で一度歌唱した楽曲も含まれていますが、ボーカルはすべて新録なんですよね。

ニコニコ動画では、僕の「高音への挑戦」という成長過程を観に来てくれる人もいると思うんですけど、今回のアルバムでは「今のウォルピスカーターはこれだ!」という、僕の現在の成長記録を見せたかったんです。歌い直した曲は、動画と聴き比べてもらっても面白いと思います。

──ウォルピスさんの投稿動画はすでに90曲を超えていますが、アルバムに収録する楽曲はどのような基準で選んだのですか?

基本的にはいつも自分が動画を投稿するときと同じ感覚でした。自分が歌いたいと思った曲を選んだのが半分と、応援してくださっている方々のために選んだ楽曲が半分。例えば「マダラカルト」と「ダンスダンスデカダンス」の2曲は、投稿動画よりオクターブが上がっています。これは昔から応援してくれているファンに「あなたのおかげでここまで成長しましたよ」という姿を感じてもらえるようにしたかったからですね。

──「ダンスダンスデカダンス」の間奏部分では、ウォルピスさんのつぶやきが入っています。これは2014年に投稿した動画にも入っていたものを再現する形ですよね。

投稿動画の名残を感じさせたかったんですよね。最近はあまりやらなくなりましたが、昔はよく録音時のアドリブをそのまま残していて。そういう部分をあえて残して、昔っぽさも感じさせるようにした曲が「ダンスダンスデカダンス」ですね。

──アルバムの1曲目「CANDiES」は鬱Pさんからの書き下ろし曲ですが、スクリームが印象的だったのと、2曲目「マダラカルト」でも、間奏部分でスクリームを入れてますよね。冒頭のこの2曲は、ウォルピスさんの好みを強く押し出した流れなのかなと思いました。

おっしゃる通りです(笑)。もともとバンドをやってたのも、そういう激しい曲を歌いたい気持ちが強かったからなので。

──でも“歌ってみた”動画投稿の傾向としては、そういう激しい曲ばかりではありませんよね?

激しい曲を歌っても全然ウケないんですよ(笑)。需要と供給はある程度考えなきゃいけないけど、「4曲に1曲くらいは、僕の本当に好きな曲を歌わせてくれ」みたいな気持ちはありますね。

1stアルバム「ウォルピス社の提供でお送りします。」 / 2016年1月27日発売 / 2376円 / Subcul-rise Record / SCGA-00043
「ウォルピス社の提供でお送りします。」
Amazon限定盤 ボイトレCD&アクリルストラップ付 [CD2枚組]
通常盤 [CD]
収録曲
  1. CANDiES
    [作詞・作曲:鬱P]
  2. マダラカルト
    [作詞・作曲:トーマ]
  3. ダンスダンスデカダンス
    [作詞・作曲:カラスヤサボウ]
  4. 例えば、今此処に置かれた花に
    [作詞・作曲:164]
  5. 7th
    [作詞・作曲:Last Note.]
  6. ミルククラウン・オン・ソーネチカ
    [作詞・作曲:ユジー]
  7. ワンルーム・オール・ザット・ジャズ
    [作詞・作曲:DATEKEN]
  8. last will
    [作詞・作曲:doriko ]
  9. 精神崩壊シンドローム
    [作詞・作曲:こがねむし]
  10. 夜明けと蛍
    [作詞・作曲:n-buna]
  11. 時ノ雨、最終戦争
    [作詞・作曲:Orangestar]
  12. アスノヨゾラ哨戒班
    [作詞・作曲:Orangestar]
ウォルピスカーター
ウォルピスカーター

ニコニコ動画を中心に活動する男性ボーカリスト。“高音出したい系男子”の異名を持つ。2012年の初投稿以来、ニコニコ動画に“歌ってみた”動画を多数公開している。2015年4月に投稿した「アスノヨゾラ哨戒班」(Orangestar)の歌唱動画が220万再生を記録し、その知名度を一気に広めた。2016年1月、1stアルバム「ウォルピス社の提供でお送りします。」をリリースした。