STUTSの「BACK UP」|フィジカルでオープンマインドな創作活動を支えるもの (2/2)

原動力は作り出す喜び

──この特集シリーズのテーマ「BACK UP」にちなんで、ご登場いただくアーティストの皆さんに共通して伺っていることなんですが、STUTSさんの活動を“バックアップ”する、つまり支えているものはなんですか?

なるほど、バックアップ。なんだろう……?

──「これがあるからSTUTSというアーティストが成り立っている」みたいなもの、何か思いつきますか?

やっぱり、作っているときの楽しさですかね。作っていて、自分が「いいな」と思えるものができた瞬間がとにかく楽しくて、すごく幸せなので。そういうものが創作活動の原動力になっているんじゃないかなと思いますね。

──他人に認めてもらうことや喜んでもらうことよりも、まずは作り出す喜び?

そうですね。もちろん認めてもらえることはとてもうれしいですけど、やっぱり「あ、いいものできた!」というときの快感みたいなものが根源にある感じがします。もともとヒップホップがすごく好きで「ラッパーになりたい」というところから音楽を始めたんですけど、自分でリリックを書いてラップを録音するようになっていって、「ラップをやるにはビートが必要だな」と思ってビートを作り始めているんですね。その頃から、周りの反応というよりは「いいものができた」という喜びだけでやっていたような気がします。

STUTSの楽曲制作の様子。

STUTSの楽曲制作の様子。

──それが今もずっと続いている感じなんですね。

はい、そうだと思いますね。

──近年の活動についても聞かせてください。ちょっと雑な聞き方をしますが(笑)、「最近どう?」と聞かれたらどんなふうに答えますか?

そうですね……去年は自分の3rdアルバム「Orbit」を作ったんですけども、それがここ3、4年ぐらいの間にやってきたものをしっかり詰め込んだ作品にできたんじゃないかと思っていて。それと「Mirage」(ドラマ「エルピスー希望、あるいは災いー」主題歌)という曲も作らせていただいて、自分が今までやったことのないようなものにも挑戦できました。あとは、近年やっているバンドセットでのライブにも、前よりちょっと慣れてきた感覚があって。

──ちなみに、バンドでライブをするようになったのはどういう理由からなんですか?

もともとバンドセットでやりたい思いはあったんです。基本的に自分1人でライブをするときはビートの部分だけを生演奏でやっていたんですけど、「それ以外も全部生演奏だったらもっと楽しいだろうな」とずっと思っていて。

──なるほど。どちらかというと“電子音楽寄りのアーティスト”というイメージの強いSTUTSさんですけど、そのわりにすごく音楽をフィジカルなものと捉えていらっしゃいますよね。先ほどの「MIDIよりオーディオのほうが扱いやすい」というお話もすごく象徴的ですけど。

ああ、そうだと思います。わりとそのフィジカル的な手法というのは、自分の音楽においてけっこう重要なポイントになるのかもしれませんね。

──それは先ほどの「いいものができてうれしい」という喜びとも、かなり密接に結び付いているものなんじゃないでしょうか。

かもしれないですね。作っているときもすごくノリながら作っていますし、フィジカルに音楽を表現することがうまくいったときに「いいものができた」と感じているのかもしれないです。

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たくさんの人に聴いてもらえることはうれしい

──そして、今年6月には初の日本武道館公演も控えていますね。

そうですね。感謝祭じゃないですけど(笑)、「皆さんありがとうございます」という感じでやれたらいいなと。大きな舞台でしかできないこともあると思うんで、いろいろ楽しいことができたらいいなと考えています。

──なんとなくイメージとして、STUTSさんはこういう大規模な会場を目指してきたタイプではなさそうにも思うんですけども。

もちろん、別に大きな会場でやることを目標にしてきたわけではないんですけど、「いろんな人に聴いてもらえたらいいな」という思いはずっとあるんで、たくさんの人に聴いてもらえること自体はとてもうれしいです。こんなふうになるなんて想像もしていなかったですから。

──逆に、「大きすぎる会場ではやりたくない」みたいな思いも特になかった?

そうですね。そもそも武道館クラスの大きなところでワンマンライブをやったことがないので、「やってみてどう感じるか」というのはあるかもしれないです。

──わりと先入観みたいなものを嫌うタイプなんでしょうか。

いろんなものに対して「あまり決めつけたくないな」というのはありますね。というか、むしろ自分自身がけっこう先入観の強いタイプなので、「そんな自分が嫌だ」と思う気持ちが強いのかもしれないです。

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──先入観で何かを決めつけたことで、自己嫌悪に陥ったりした経験があるんですか?

まあ、細かいところでいろいろと(笑)。基本的に先入観にとらわれてよかったことなんてないので、いろんな物事に対してオープンな姿勢でいたいなと思っています。最初から決めつけて「これはこうだ!」とかも絶対に言いたくないですし……でも、どうなんでしょうね。そうやって自分の意見を何も言わないというのも、それはそれで悪のような気もするし。

──いやいや(笑)、逆に決めつけてかかるほうが楽だったりしますから。

ああ、なるほど。

──例えばヒップホップが好きな若い人だったら「ヒップホップなんだから、ワルじゃないとダメだ」みたいに思い込みがちだったりしますけど、STUTSさんはそうしなかった人ですよね。

いや、でも中2の頃とかはやっぱり1回オーバーサイズのいわゆるB-BOYファッションに挑戦したりもしましたよ。一度やってみたうえで「ああ、なんか全然似合わないな」と思ってやめた過去がありました(笑)。

──なるほど、1回やってはみるんですね。

やってはみるかもしれません。

──それこそ先入観で決めつけずに、ちゃんとやってみてから判断するという姿勢が素晴らしいなと思います。

いえいえ、そんな(笑)。

STUTS

STUTS

ライブ情報

STUTS “90 Degrees” LIVE at 日本武道館

2023年6月23日(金)東京都 日本武道館
<出演者>
STUTS with His Band(岩見継吾[B] / 仰木亮彦[G] / TAIHEI[Key] / 高橋佑成[Key] / 吉良創太[Dr] / 武嶋聡[Sax, Flute] / 佐瀬悠輔[Tp])
ゲスト:PUNPEE / JJJ / T-Pablow / 鎮座DOPENESS / KMC / Mirage Collective / Daichi Yamamoto / NENE / Ryugo Ishida / 仙人掌 / 北里彰久 / BIM / tofubeats / and more

プロフィール

STUTS(スタッツ)

1989年生まれのトラックメーカー / MPCプレイヤー。自身の作品制作やライブ活動と並行して、数多くのアーティストのプロデュースやコラボレーション、テレビ・CMへの楽曲提供など活躍の場を広げている。2016年4月にPUNPEE、KID FRESINO、KMCらを迎えた1stアルバム「Pushin'」をリリースし、2018年9月には鎮座DOPENESS、Daichi Yamamotoら多数のアーティストとコラボした2ndアルバム「Eutopia」を発表。2020年9月にはミニアルバム「Contrast」を発表し、バンドセットでの単独公演を成功させた。2021年6月にドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌を収めたアルバム「Presence」をSTUTS & 松たか子 with 3exes名義でリリース。2022年10月にはブルー、tofubeats、Awich、C.O.S.A.、Yo-Sea、ジュリア・ウー、5lack、Daichi Yamamoto、Campanella、ゆるふわギャングなど豪華ゲスト迎えた3rdアルバム「Orbit」を発表した。また、同じく10月よりオンエアされたフジテレビ系ドラマ「エルピスー希望、あるいは災いー」では、自身が音楽プロデュースする音楽集団・Mirage Collectiveとして主題歌を担当。2023年6月には、日本武道館で単独公演「STUTS “90 Degrees” LIVE at 日本武道館」を開催する。