Mirage Collective×Technics|解釈はプロデューサー次第、リミックスというアプローチの魅力に迫る

昨年10月から12月にかけてカンテレ・フジテレビ系で放送されたドラマ「エルピス—希望、あるいは災い—」の主題歌を担当した音楽集団・Mirage Collective。STUTSが作曲・編曲・プロデュース、YONCE(Suchmos)が作詞・歌唱、butajiが作詞・作曲で参加した主題歌「Mirage」は、ドラマが回を重ねるごとにバージョン違いがオンエアされ、主演の長澤まさみがボーカルとして参加したことでも話題を集めた。

そんなMirage Collectiveの番組「Mirage Remix Meeting - supported by Technics」が1月24日にYouTubeで生配信された。「Mirage Remix Meeting」は「Mirage Op.1」のリミックスを広く募集し、Mirage CollectiveのメンバーであるSTUTS、荒田洸(WONK)に加え、トラックメーカー / プロデューサーのKM、そして司会を務めるライター / DJの高橋圭太 aka shakkeが届いた音源についてトークを繰り広げる番組。STUTS、荒田、KMが選んだリミックス作品の制作者に、番組をスポンサードするTechnicsのワイヤレスイヤフォン「EAH-AZ60」がプレゼントされた。また当日のスタジオには、Technicsの再生機器からなる高級オーディオシステムが設置され、Technicsの“グランドクラス”シリーズのターンテーブル「SL-1200G」やスピーカー、アンプなど計100万円を超える音響機器も番組の見どころとなった。

本特集ではこの番組の模様をレポートする。特集の後半には、収録後の出演メンバーに話を聞いたミニインタビューも掲載。「Mirage Remix Meeting」の感想や、「EAH-AZ60」の魅力について語ってもらった。

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取材・文 / 下原研二撮影 / 森好弘

Technics「EAH-AZ60」

Technics「EAH-AZ60」

TechnicsがHi-Fiオーディオ機器の開発で長年培われた音響技術の粋を注いだ完全ワイヤレスイヤフォン。音楽が持つ表現や豊かな空間を再現する高音質を実現させた。ハイレゾ音質の伝送が可能なLDACに対応することで、ワイヤレスでありながらハイレゾ音質が楽しめる。


「Mirage Remix Meeting」使用オーディオセット

「Mirage Remix Meeting - supported by Technics」レポート

リミックスの定義とは?

オリジナル曲の素材を再構築したり編集したりすることで、その楽曲が持つ新たな魅力を引き出す手法=リミックス。制作者のバックボーンや得意とするアプローチによってその仕上がりは十人十色で、ときに聴く者を高揚させたり、リラックスさせたり、なんとも表現することのできない音の世界に連れて行ってくれたりもする。そんなリミックスという手法について「Mirage Remix Meeting」の出演者はどう考えているのだろうか。司会を務めるshakkeから「リミックスの定義とは?」という質問が飛ぶと、STUTSは「原曲を完全に壊してオリジナルにするというパターンもあれば、リアレンジに近い形のリミックスもあるので幅が広いですよね」と、制作者によって定義が変わってくると回答。KMが「定義と言うと難しいですけど、自分の場合はボーカルの入っている曲だったら180°変えちゃうかもしれない。ハッピーな曲だったら少しダークに仕上げてみたり、同じ歌詞でも違う世界観を作ることが多いですね」と話すと、荒田洸(WONK)は関心した様子で「そういう視点もあるんだなと気付かされました。僕は今までリリックから読み取った通りに作る傾向にあった。KMさんの場合、裏の世界を見させるというか、カッコいいアプローチですよね」と語った。

目立つことも大事

「Mirage Remix Meeting」では、さまざまなプロデューサーから届いた数多くのリミックスを出演メンバーがすべてチェックし、それぞれが気になった音源を番組内で改めて試聴していく。まず今回のリミックス企画の課題曲である「Mirage Op.1」を聴きながら、STUTSは「聞こえている以上にいろんな細かい音が入っているので、そういった要素を使って遊んでもらえたらいいですね。あとBメロで部分的に転調するところがあるので、そこをどう扱うかも気になります」とコメント。またKMが「自分が『Mirage Op.1』をリミックスするなら?」という質問に「『Mirage』はいわゆる生音がよさになっていると思うので、僕がリミックスするならトラップの音だったりを使ってまったく印象を変えちゃうかもしれない。それでできあがるリミックスはよくないかもしれないけど、少なくとも目立つから、そういうところに意識を向けるのも大事かなと思います」と答えると、shakkeは「今回みたいに何十組も応募のあるコンテストになると、“目立つ”ということもファクターとして大事ですよね」と頷いた。

クオリティの高さだけじゃない、リミックスの面白さ

事前の選考会でSTUTS、荒田、KM、shakkeの厳正な審査を勝ち抜いたのは、poivre、Rytl、Joint Beauty、slowstoop、Co Klout$、Cacao、水溶性豆苗、imkohe、タミノス、ruco、KC(ミナミノツドイ)、Noli Stark、ryutaro murata、Whoopiの14組。「Mirage Remix Meeting」では、出演メンバーがその1曲1曲に真剣に耳を傾けながら、推薦理由や改めて音源を試聴した感想を語り合っていく。音源の試聴中には、4人が制作者それぞれの多彩なアプローチに驚き、「この人はクラブで酒も飲まずにストイックに踊ってそう」とその生活を想像しながらリミックスを楽しむ姿も見られた。またSTUTSはリミックスを聴く際の基準について、「わかりやすく『おっ!』と思うのはクオリティですよね。あとは原曲のどの部分を使っているのか、どういう趣旨のリミックスなのかはチェックします。最初に気になるのはそこなんですけど、最終的には全体の印象がいいかどうか。案外クオリティが高くなくても面白い作品はあるから、そういうのも含めてリミックスの面白さだと思います」と説明していた。

約1時間ですべてのリミックス音源の試聴が終了。制作者に「EAH-AZ60」が与えられるリミックス作品が発表された。STUTSは発表直前まで「3曲で悩んでるんです」と頭を抱えながらもCacaoの作品を選出。荒田は事前の選考会ではチョイスしていなかったNoli Starkの作品を選び「改めて聴いてみて衝撃を受けました。WONKで一緒にやってみたい。世界を作るのが本当にうまいなと思いました」と語った。KMはCo Klout$の作品を選出し、「Co Klout$さんのようにスクリュー系のスタイルの人たちがもっとシーンに出てきてくれたら」と期待を込めて説明しつつも、「ちょっと話してもいいですか? 水溶性豆苗さんやrucoさんのエレクトロニカ、IDM系列のリミックスもめっちゃ好きなんですよ。だから正直選べない(笑)」と本音を漏らす。そして番組を振り返り、STUTSが「本当に素晴らしい作品ばかりで、皆さんに『Mirage』で遊んでいただけて光栄でした」とコメントすると、KMは「今回参加してくれたほかの人の音源もチェックしたほうがいいと思います。新しいアイデアを自分の中から出すためにも、いろんな人のスタイルを聴いてリスペクトを送るのはすごく大事」と企画の参加者にメッセージを送った。

STUTS×荒田洸×KM×shakke インタビュー

刺激をもらった選考会

──「Mirage Remix Meeting」の配信、おつかれさまでした。まずは番組を終えての感想を聞かせてください。

STUTS 番組の中でshakkeさんもおっしゃっていましたけど、いろんな人の音源を聴けたのがすごく楽しかったし、刺激にもなりました。1つの楽曲に対して、いろんな解釈のリミックスがあって面白かったです。

KM 届いた音源のジャンルの幅が広くて驚きました。昔はリミックスコンテストをやると偏ったジャンルしか集まらなかったんですよ。Mirage Collectiveというプロジェクトの間口の広さもあると思うんですけど、いろんな音源が聴けて刺激になりました。

荒田洸(WONK) 僕も刺激をもらったのは当然なんですけど、やっぱり音源を聴くだけで丁寧に作っている人なのかどうかってわかるものだなと改めて実感しました。

shakke 今日の14曲だけではなく、選考の時点でたくさんの音源を聴かせてもらったんですけど、俯瞰して今のシーンやモードみたいなものが見えたというか。DTMをやっている人であったり、ビートに興味がある人であったりの趣向みたいなものが客観的に見て取れたことは自分的には収穫でした。

左からshakke、STUTS、荒田洸(WONK)、KM。

左からshakke、STUTS、荒田洸(WONK)、KM。

──番組ではSTUTSさん、荒田さん、KMさんがそれぞれ気になった音源に賞を与えていましたが、shakkeさんの中ではどの方の作品が一番気になりました?

shakke 僕はタノミスさんです。楽曲全体のまとめ方、音の1つひとつの素材の使い方に品があるというか。僕の個人的な趣向ではあるんですが、ストレートにきれいなリミックスに仕上がっていた。奇をてらったことはしていないんだけど、そのうえでリスナーに「いいな」と思わせるのは技術があってこそだなと思います。