STUTS×Technicsコラボライブ開催記念特集|さまざまなシーン / ユーザーに対応した高性能イヤフォンの魅力を探る

Hi-Fiオーディオブランド・Technicsが主催するオンラインライブ「Technics presents “Connect” Online Live」。音楽ナタリーでは同イベントの開催を記念した特集を展開しており、これまでオーイシマサヨシ、KANA-BOONといった面々が登場してきた。

今回は第3弾アーティストとしてイベントのエンディングを飾ったSTUTSへのインタビューを実施。最新アルバム「Orbit」の制作秘話、STUTSがプロデュースを手がけ、ドラマ「エルピス—希望、あるいは災い—」の主題歌を担当したことでも話題を集めている音楽集団・Mirage Collectiveについてのエピソードを聞きつつ、Technicsの完全ワイヤレスイヤフォン「EAH-AZ60」を試してもらい、その機能性や魅力を語ってもらった。

取材・文 / 三宅正一撮影 / 草場雄介

Technics「EAH-AZ60」

Technics「EAH-AZ60」

Technics「EAH-AZ60」

TechnicsがHi-Fiオーディオ機器の開発で長年培われた音響技術の粋を注いだ完全ワイヤレスイヤフォン。音楽が持つ表現や豊かな空間を再現する高音質を実現させた。ハイレゾ音質の伝送が可能なLDACに対応することで、ワイヤレスでありながらハイレゾ音質が楽しめる。

STUTSのサイン入り「Orbit」を合計3名にプレゼント

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Technics特設ページ

制作手法の変化

──まずは10月にリリースされた3rdアルバム「Orbit」について聞かせてください。音楽的にも確実に新たなフェーズへと前進した作品だと思いますが、リリース後のツアーを体験してどんな手応えがありますか?

「Orbit」の制作はバンドセットでライブを行うときのメンバーにも参加してもらったんです。アルバムの制作とリリースを経て、そのメンバーと一緒にツアーを回るのはまた新しい刺激がありました。「Orbit」は自分としても「Eutopia」(2018年発表の2ndアルバム)からの4年間で経験したことを注ぎ込むことができた実感があります。それは生楽器との向き合い方も然りで。

──STUTSさんは2年ほど前から生楽器のレッスンを受けているんですよね?

はい。「Orbit」でも自分で弾いた鍵盤やギター、ベースの音が入っていて。これまで曲のデモを作るときはサンプリングをメインに組み立てていたけど、今は鍵盤やギターを弾いて作り始めることが多くなりました。今もサンプリングから制作が始まることもありますけど、例えばSpliceで見つけたフリー音源を使ってフレーズを作って、そこに鍵盤で違うコードを当てたりするようになりましたね。

──それをスタジオに持って行って、バンドメンバーに生弾きしてもらった音をさらにエディットしてトラックを形成していく?

はい、そういうやり方ですね。曲によってはメンバーに全然違うフレーズを弾いてもらったりして。さらに鍵盤はTAIHEI(Suchmos)くんと高橋佑成くんに参加してもらっているんですが、「この曲はTAIHEIくんに弾いてもらいたいな」「この曲は佑成くんだな」とデモの段階から自分の中でイメージを持てるようになりました。

STUTS

最新アルバム「Orbit」で描きたかったこと

──客演のラッパー陣も壮観なほど多彩な面々が集っていますが、そうすることは最初から意識していたんですか?

そうですね。2年前にリリースしたミニアルバム「Contrast」も自分の制作の体感としてはフルアルバムに近いものがあったのですが、あの作品は内容的にも自分の個に寄ったものだったんです。ただ、自分はやっぱりプロデューサーとしての側面が一番大きいとも思っているので、「3枚目のフルアルバムはプロデューサーとしていろんなゲストの方を呼んで一緒に作りたい」という思いがずっとありました。その一方で「Orbit」も別の部分で自分の個が出ているとも思う。例えば、今までの作品では半分程度の曲を自分でミックスしていたのですが、今回は全曲自分でミックスをやったりしていて。

──「Orbit」はサウンド的にもかなり振れ幅が広いし、客演のラッパーやシンガーのフロウや声色も多種多様だから、ご自身でミックスまで手がけるのはかなり大変だったと思います。

そうですね(笑)。確かに大変ではありましたけど、自分の音楽と向き合うという意味でもすごく刺激的だったし楽しかったです。これは「Orbit」というアルバムタイトルにもつながってくる話ですが、制作中に「結局、自分は自分でしかいられないな」ということをよく考えていたんです。客演のラッパーの方たちにも「そういうテーマのアルバムにしたいと思います」ということはフワッとお伝えしてリリックを書いていただいて。自分自身のことを考えると、これまでの人生の中で光が当たる場面がある一方ですごく闇に入ってしまうことも同じくらいあって。グルグルと同じところ回りながら、「結局、自分は何も変わってないな」と思ったんですね。それが1つの軌道のようだなと思って「Orbit」というタイトルを付けたんです。

──確かに2022年以降は特に激動の真っ只中に身を置いているという感覚を誰もが持っていると思いますが、このアルバムにおけるSTUTSさんの音楽表現からはそこにいかに引っ張られず、揺さぶられずにいられるか、という意思を感じました。あるいは自分がどんなリズムと音色と旋律、客演に招くラッパーやシンガーの言葉とフロウと歌唱に対して琴線が触れ、それがいかに刺激的で美しいかを提示するという気概に満ちているなと。

ありがとうございます。

「Driftin'」はコントロールできない自分が作った曲

──ラストの「Driftin'」でメロウな要素もあるけれど、それ以上に驚くほどポップな様相で自身のラップと歌唱を解放しているのが印象的でした。

実は「Driftin'」はこのアルバムのために作った曲ではなかったんですよ。それこそコロナ禍に家で悶々としているときに「ギターの歪んだ音を使って曲を作れないかな?」と思ってテキトーに遊びながら作ったビートがもとになっているんです。そのビートに対して鼻歌みたいな感じでラップやメロディを当ててみて、そこから自分で作った譜割りやメロディに対して別のラッパーさんに言葉をハメてもらい、自分が歌うということをいつかやってみたかった。それでKMCさんにお願いしたんです。結果的にリリックも半分は自分の言葉で書いたけど、少し時間をおいて聴いてみたら自分がラップして歌ってることも含めて恥ずかしくなってしまって(笑)。それで、1年半くらい封印していたんです。

STUTS

──そうだったんですね。

なので、時系列には自分で歌うことを決断した「One feat. tofubeats」よりも前にできていた曲なんです。「One」のレコーディングをしたとき、担当A&Rの平川(博康)さんに「こういう曲もあるんですけど」と「Driftin'」を聴いてもらったら、「これいいじゃん」と言っていただいて。「本当ですか?」という感じで自信がなかったけど(笑)、せっかくそう言っていただいたのでアルバムの最後に収録しようと。

──STUTSさんの中では17曲目の「Orbit Outro」で一旦アルバムを閉じて、「Driftin'」はボーナストラック的な位置付けでもあるということですよね。

まさにそう思ってます。17曲目までやり切ったし、ボーナストラック的な感じで収録するならいいかなって。あとは、ここで「Driftin'」を収録することがこのアルバムのテーマ的にも意味があると思ったんです。というのも「Driftin'」はコントロールできない自分が作った曲みたいな感触があって。それくらい、うまくやろうとか一切考えずに作った曲でした。作ったときに楽しかったのは事実だし、曲ができた瞬間も楽しく聴けたのも事実なので、この曲を収録することで「自分は自分でしかいられない」というテーマにも意味合いが増すかなと思ったんですね。

──この4年間で培ったさまざまな経験やトピックが、「Driftin'」をアルバムに入れようという能動的な決断を促したところもあったのではないかと思います。

それはあると思いますね。

Mirage Collectiveはどのように生まれたのか?

──少し話は逸れますが、先日、タイラー・ザ・クリエイターがSTUTSさんの「Breeze」をShazam経由でチェックしたという話がSNS上で話題になってましたね。

たまたま「Breeze」にタイラーの好きなコード進行があったらしく、Shazamで見つけてくれたというだけの話なんですけど、SNS上ではタイラーが僕の曲を熱心に聴いてるみたいな広がり方をしていて(笑)。でも、見つけてくれたこと自体はすごくうれしいです。僕自身タイラーの大ファンですし、シンパシーと言うとおこがましいですけど、ヒップホップに根ざしながらいろんなジャンルから影響を受けて、自由に音楽を表現しているところに勝手に通じるものを感じているので。

──そして直近の参加プロジェクトであるMirage Collectiveについても聞かせてください。関西テレビ製作で渡辺あやさん脚本の連続ドラマ「エルピス─希望、あるいは災い─」の主題歌「Mirage」をSTUTSさんがプロデューサーとして主導するMirage Collectiveが手がけ、ボーカリストとしてYONCE(Suchmos)さんとドラマの主演である長澤まさみさんをフィーチャーしています。さらに、演奏陣にはbutajiさんや長岡亮介さん(ペトロールズ)、ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)さんをはじめ総勢12名ものミュージシャンたちが参加していることも大きなトピックになっています。

はい。本当にありがたいです。

STUTS

──このプロジェクトの在り方に、昨年放送された同じく関西テレビ製作で佐野亜裕美さんがプロデューサーを務めた坂元裕二さん脚本の連続ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」を重ねてる人も多いと思います。あの作品ではSTUTSさんがプロデュース、主演の松たか子さんがメインボーカルを担当し、豪華ゲストが多数参加したSTUTS & 松たか子 with 3exes名義の「Presence」が使用されました。今回のMirage Collectiveはどのように立ち上がったプロジェクトなんですか?

まず、ドラマのプロデューサーである佐野さんから、先ほどの話にも出た平川さんに「こういうドラマでこういう主題歌をやりたいので協力してくれませんか?」という連絡があったんです。そこから平川さんが僕に「プロデュースをお願いします」と依頼してくれて。

──「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌はカルチャーの連動という観点においても多面的かつ豊かな成功を収めましたが、それから1年強というスパンでこのプロジェクトのプロデュースを担うことへのプレッシャーはなかったですか?

正直、プレッシャーはありました。特に今回の主題歌はヒップホップカルチャーとしての側面があるわけではないので、「自分でいいのかな?」という不安はありましたね。ドラマの内容も素晴らしいですし、せっかく自分がプロデュースさせてもらえるなら完全に1人で作るよりは「Presence」と同じように共同ソングライターとしてbutajiさんに入っていただいたほうがいいと思って。A&Rさんとも「シンガーや演奏するミュージシャンもいろんな人に参加してもらって作ったほうがいいよね」という話をしました。ボーカルについても平川さんがYONCEくんを推薦してくれたんです。YONCEくんは僕が言うまでもなく素晴らしいシンガーなので、「こういった機会でご一緒できるなら」とお声がけさせてもらって。最初はトラックバージョンでそのあとにバンド演奏になること、そしてこのプロジェクトのためのミュージシャン集団を作りたいという構想も平川さんから聞いていたので、この機会でご一緒できたらいいなと思ったミュージシャンさんにお声がけしてMirage Collectiveができました。