ナタリー PowerPush - 忘れらんねえよ
ヤケクソ! 下ネタ! 与沢翼! 3つの武器が生み出す“時代の音”
「Mステ」という単語から見える風景
──そしてアルバム用の新曲としてはラストナンバーの「バンドやろうぜ」なんですけど、この曲だけはヤケクソ感はほぼ皆無。「バンドっていいよ」ってストレートに歌っています。
でもやっぱり今回のための曲なんですよ。これはアルバム全体の話でもあるんですけど、今回は固有名詞をガシガシ使っていこうっていうことを意識していて。この曲についてもどうやって固有名詞を使えば効果的にメッセージが伝わるかな?ってことは考えてましたし。
──「あいつのバンドがMステに出てるから 今夜もテレビをつけられないでいる」ってフレーズを聴けば、たぶんみんな同じような情景を思い浮かべられますもんね。
ですよね。「Mステ」って単語に対してみんなが持ってるイメージっていうものがあるから、細かい説明をしなくてもすごく鮮明に風景を思い浮かべてもらえるんですよ。「ばかばっか」の「Tカード」もそうだし、「タイトルコールを見ていた」の「富士そば」もそういう単語だと思ってるんですけど。
──確かに。柴田さんってもともと固有名詞使いがうまいですよね。1stアルバムの「北極星」には「グリーンラベルで乾杯して」っていうフレーズがありましたし。「グリーンラベル」のひと言があればどういう飲み会なのか、十分伝わる。
うん。今回改めて意識的に盛り込んでみて「あっオレ、固有名詞使うの得意だな」っていう気はしました。
「ダセエ写真」と「魔法の1行」
──それらの楽曲をまとめた「あの娘のメルアド予想する」のパッケージについても聞かせてください。まずはジャケットなんですけど、おかげさまでナタリーのジャケット公開のニュース(参照:忘れらんねえよ“最大級の格好良さ”表現した新作ジャケ)ってビックリするくらいアクセスを集めたんですよ。
あざっス!
──で「僕らパンクロックで生きていくんだ」のジャケットも話題になったし(参照:忘れらんねえよ新作ジャケは福島のJKによる“あのポーズ”)、実はアートワークって忘れらんねえよの大きな魅力の1つなんじゃないかな?って思ってるんです。
「僕ら~」の頃はそんなに明確に意識していたわけじゃない。Twitterで送ってきてくれた、あの女子高生の写真に感動したからジャケットに使った、みたいな感じだったんですけど、2ndアルバムの頃からかな? ビジュアルに対しても意識的なバンドにならなきゃいけないっていう感じになったのは。いい曲を書くのは当然なんだけど、ちゃんと面白いバンドだって認知してもらうためには、ビジュアルでも注目を集めなきゃいけないって。今回なら歌詞でもビジュアルでも笑かさなきゃいけないって考えた結果、こうなってしまったという(笑)。でもジャケットの話題が拡散したことにはホント、ホッとしていて。「ヤケクソはやっぱりちゃんと刺さるんだな」「やっぱオレら、こういうバカみたいなの、ダセエのが似合うんだな」ってことが証明されたから。
──この写真に添えられてるアルバムタイトルが「あの娘のメルアド予想する」っていうのもいいですよね(笑)。
ねっ(笑)。「NOTTV」の「#エンダン」って番組に出たとき(参照:忘れらんねえよ「#エンダン」で生作曲&スタジオ生ライブ)、視聴者の人からもらったワードなんですけど、その頃からスゲーいいなーって思ってて。最初は「ばかばっか」のAメロにこのフレーズを入れてたんだけど、さっき言った通り「ばかばっか」の歌詞は紆余曲折あったので、最終的には採用せず。でもなんか使いたい言葉だったからアルバムタイトルにしてみました。内容となんにも関係ないんだけど、面白れえからいいや!って。まさにヤケクソ根性で(笑)。
──ホントにヒドいフレーズですもんね。やってることはストーカーじみてて気持ちが悪いんだけど、実はなんの意味もない。「○○ちゃんのメルアドってこんな感じかな?」って予想してメールしたところで、そんなもの届くわけないんだから(笑)。
だからマジックワードなんですよ。魔法の1行(笑)。「ARABAKI」のとき、THE COLLECTORSの加藤(ひさし)さんがオレらのライブを観てくださっていて、そのあと「池袋交差点24時」っていうポッドキャストの番組でオレらのことを話してくれたらしいんですよ。「『ARABAKI』で観た忘れらんねえよっていうバンドがなんかアルバムリリースするっつってたんだけど、そのタイトルがヒドくてさ」って。もう「やったー!」って感じですよね。
与沢翼に影響を受けるロックミュージシャン
──ヤケクソ理論に間違いはなかった(笑)。
うん(笑)。ちょっと話は変わっちゃうかもしれないんですけど、オレ最近、ダメだと思いながらも与沢翼に深く惹き付けられていて(笑)。
──あっ、その気持ちわかります。あのアドバルーンの上げ方のうまさって、言葉を選ばず言うなら、ちょっと異常ですよね。
ホントにヤバいっスよね! あの人の名言に「バズマーケティングの本質は100の常識より1の非常識」「非常識的行動のほうが強いんだ」っていうのがあるんですけど、初めて聞いたとき本気でそうだ!って思って。札束を前に写真を撮ったり、彼女のセクシーな写真をブログにアップしたり、あの人のやってることって「バカじゃん」って言われかねないし、実際に言ってるヤツらもいっぱいいるんだけど「100の常識より1の非常識」って観点で考えれば、あの行動って全部納得できるじゃないですか。なんなら今や破産すらネタにしてるけど、それにだってちゃんと裏付けがあったんだって。
──実際、その非常識のおかげでブログやFacebookページにはアクセスが集まってるし、メディアでも話題になったわけですしね。あの人の言葉を信用するなら税務調査が入るまではビジネスだって好調だったんでしょうし。
そうなんですよ。結局ちゃんと大きなリターンにつながっている。しかも「なんだコイツ?」と思ってブログにアクセスしてみたら、あの人、すごく面白いことを書いてるじゃないですか。
──テキスト、すごくうまいですよね。
そう! だから今回最も影響を受けた人は与沢翼(笑)。
──ネオヒルズ族に影響を受けたミュージシャン(笑)。
でもね、ホントに与沢さんばりにとにかく世の中を騒がすつもりではいるんですよ。ジャケットもそうだし、童貞偽装告白PV(参照:忘れらんねえよ柴田、“童貞偽装”を謝罪!6月お詫び行脚に)ももちろんそうだし、ミニアルバムなのにライブトラックを5曲足して、全部で10トラックにしてるのもそうですし。曲単価をとにかく下げる(笑)。そうすることで「バカじゃねえの、アイツら」ってオレらのほうに振り向いてくれる人が増えて、その人たちがCDを手にしてくれさえすればこっちのもんですから。
──面白いものを作った自信はあるわけですもんね。
うん。「やっぱりヤケクソは間違ってなかった」ってちゃんと胸を張れるものは作れてますから。たぶん今回のミニアルバムって大当たりするか大外れするかのどっちかだと思うんですよ(笑)。「やっぱコイツらバカだ!」ってみんな喜んでくれるか、「やっぱコイツらバカだ……」ってみんなそっぽを向いちゃうか。そのくらい振り切ったものを作った自信はありますね。
収録曲
- ばかばっか
- タイトルコールを見ていた
- 体内ラブ~大腸と小腸の恋~(feat. 玉屋2060%、MAX from Wienners)
- 運動ができない君へ
- バンドやろうぜ
- 僕らチェンジザワールド
- 僕らパンクロックで生きていくんだ
- THANK YOU SEXメドレー(この街には君がいない~北極星~CからはじまるABC)
- バンドワゴン
- パンクロッカーなんだよ
忘れらんねえよ主催 ツレ伝ツアー
- ツレ伝ツアー~あの娘のメルアド予想する編~
- 2014年6月20日(金)福岡県 DRUM SON
<出演者>
忘れらんねえよ / Wienners - 2014年7月3日(木)新潟県 CLUB RIVERST
<出演者>
忘れらんねえよ / The SALOVERS - 2014年7月4日(金)石川県 vanvan V4
<出演者>
忘れらんねえよ /The SALOVERS - 2014年7月10日(木)大阪府 Music Club JANUS
<出演者>
忘れらんねえよ / asobiusu - 2014年7月13日(日)愛知県 APOLLO BASE
<出演者>
忘れらんねえよ / それでも世界が続くなら - BLUE ENCOUNT TOUR2014 DESTINATION IS "PLACE" × 忘れらんねえよ ツレ伝ツアー~あの娘のメルアド予想する編~
- 2014年6月22日(日)宮城県 HooK SENDAI
<出演者>
忘れらんねえよ / BLUE ENCOUNT - 対バン全然決まらんからもうヤケクソでワンマンにしたる「ヤケ伝」
- 2014年7月25日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
忘れらんねえよ(ワスレランネエヨ)
柴田隆浩(Vo, G)、梅津拓也(B)、酒田耕慈(Dr)からなるロックバンド。2008年結成。パンクロック由来のラウドなギターサウンドと、日々の暮らしの中にある喜怒哀楽をリリカルながらも熱量とテンション高く歌い上げる柴田の歌詞を武器に都内を中心に精力的なライブ活動を続ける。2011年8月、表題曲が日本テレビ系アニメ「逆境無頼カイジ 破戒録篇」のエンディングテーマに採用されたシングル「CからはじまるABC」でメジャーデビュー。翌2012年3月に1stアルバム「忘れらんねえよ」を発表し、2013年1月には會田茂一プロデュースの3rdシングル「この高鳴りをなんと呼ぶ」を、6月には同じく會田プロデュースのシングル「僕らパンクロックで生きていくんだ」をリリースする。また同年春から夏にかけて「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」「ARABAKI ROCK FEST.13」「ボロフェスタ2013」など、音楽フェスティバルに精力的に出演。若手最注目バンドの一角を担うように。そして2013年10月には2ndアルバム「空を見上げても空しかねえよ」を、翌2014年6月にはメジャーデビュー後初となるミニアルバム「あの娘のメルアド予想する」をリリース。