ナタリー PowerPush - 忘れらんねえよ
何よりも大切なものを見つけたから「僕らパンクロックで生きていくんだ」
忘れらんねえよがニューシングル「僕らパンクロックで生きていくんだ」をリリースする。その表題曲は會田茂一プロデュース。かねてからバンドが「メロディと言葉では絶対に負けねえ」と公言している通り、そしてそのタイトル通り、ノイジーなギターロックサウンドをバックに、自らの生き方を美しく、しかも高らかに宣言したパンクナンバーに仕上がっている。同じく會田プロデュースの前作「この高鳴りをなんと呼ぶ」によって、熱望していた「オリコンの世界」への足がかりを築くことに成功。今まさにネクストステップを踏み出さんとするバンドの胸中やいかに。フロントマン、柴田隆浩(Vo, G)に話を聞いた。
取材・文 / 成松哲 インタビュー撮影 / 佐藤類
フロアすべてを持っていけるバンドになるために
──前回のシングル「この高鳴りをなんと呼ぶ」のインタビューのとき「オリコンの世界に行きたい」っておっしゃっていて、実際に「この高鳴りをなんと呼ぶ」はオリコンの世界に行きました。
そうですね。おかげさまで狙っていた枚数よりもちょっと多めに売れてくれて(笑)。
──それによってバンドを取り巻く状況って変わりました?
なんか誤解が解けた感じはありましたね。仕方のないことではあるんですけど、この前も話した通り、忘れらんねえよってかなりバカにされてる感じがあって。でも「この高鳴り~」っていうガチの歌が多くの人に届いたことで「あっ、このバンドって信頼できるヤツらなんだな」って思ってもらえるようになったというか。そういう感触はあります。ただまだまだ「売れた」っていう感覚はない。というのも、この前「FACTORY」っていう音楽番組に出させていただいたんですけど、対バンの中には9mm Parabellum Bulletさんとa flood of circleさんがいて。正直、オレらより全然格上じゃないですか。
──まあ言ってしまえば。
で、彼らのライブを観たんですけど「売れるっていうのはこういうことを言うんだな」って気付いたんですよ。なんて言うか、信頼度が違うんですよね。会場には忘れらんねえよのことを大っ好きでいてくれる人たちもいたんだけど、「FACTORY」を観に来た人たち全部はオレらの音楽を信頼していなかった。でも9mmやfloodはステージに上がった瞬間、会場全体が「9mm信じてる!」「flood頼むぜ!」って感じになるんですよ。
──忘れらんねえよ目当てのお客さんですら?
持ってっちゃうんですよ。だからこの差を詰めていくことを今後の目標に置かないとダメだなっていうことは思いましたね。
ベンジーに会うには1年早えー!
──先輩との競演という話を続けるなら、4月の「ARABAKI ROCK FEST.13」では髪型をマネるくらい好きな浅井健一さんとも……。
ついにっ!
──バックステージでご挨拶したりは?
最初はそのつもりだったんですよ。髪型をマネるだけじゃなくて、同じモデルで同じ年式のエレキギターを使ってるくらい浅井さんのことが大好きだから。そのギターにサインをもらおうと思ってマッキーも持って行ってて。でも「FACTORY」と同じというか、いろいろ思うところがあったんですよね。例えばくるりさんとか、浅井さんももちろんそうなんですけど、そういう人たちって9mmやfloodなんかと一緒。ステージに出てきた瞬間、勝負を付けちゃうんスよね。すでにライブを成功させているというか。で「あっ、これ勝てん」って(笑)。
──敗因は?
キャリアの違いもあるんでしょうし、たぶん浅井さんやくるりの岸田(繁)さんって朝起きてから寝るまで、ヒマがあったらギターを握ってるんだろうな、なんかヒマさえあれば曲作ってるんだろうなって感じていて。あとSiMさんも観たんですけど、もう体力が全然違う(笑)。たぶん彼らはメッチャ筋トレとか走り込みとかしてるんですよね。要はくるりさんも浅井さんもSiMさんもこれ以上ないレベルで音楽に向き合ってるんですよ。オレもそういうふうに生きてきたつもりだったんですけど、まだ甘い。ライブの途中で息切れしたら「オレってエモいじゃん」なんて思ってたんだけど、それホントにエモいか? 息切れしない体を作って、最後までフルボイスで歌えるようにしたほうが絶対お客さんに伝わるんじゃねえか? 信頼されるんじゃねえか?って。お客さんは無意識的にそういうところをジャッジしてるんじゃねえか?って思ったんですよ。
──じゃあサインをもらうどころの騒ぎじゃ……。
全然なかったですね。とてもじゃないけど浅井さんの目の前に立てる状態じゃなかった。1年早えー!って感じでした(笑)。
──おっ、でも100年早くはないんですね。
来年にはもうバッチリの状態で堂々と「よろしくお願いします!」「大好きです!」ってサインをお願いしたいですね。
収録曲
- 僕らパンクロックで生きていくんだ
- おしぼりを巻き寿司のイメージで食った
- 戦って勝ってこい
- [スタジオライブ]北極星~この高鳴りをなんと呼ぶ
忘れらんねえよ(わすれらんねえよ)
柴田隆浩(Vo, G)、梅津拓也(B)、酒田耕慈(Dr)からなるロックバンド。2008年に結成され、都内を中心に精力的なライブ活動を続ける。2011年4月に「CからはじまるABC」が日本テレビ系アニメ「逆境無頼カイジ 破戒録篇」のエンディングテーマに起用され、着うたなどのデジタル配信を経て同年8月にCD化。同年12月には2ndシングル「僕らチェンジザワールド」を発売し、同曲のPVに俳優の萩原聖人が出演したことで話題を集める。翌2012年3月に1stアルバム「忘れらんねえよ」を発表し、2013年1月には會田茂一プロデュースの3rdシングル「この高鳴りをなんと呼ぶ」をリリース。そして6月、同じく會田プロデュースの4thシングル「僕らパンクロックで生きていくんだ」を発表する。