「Walk with FAN supported by FAM」第2回|ネクライトーキーにとってのファンとは? (2/3)

“ちょっと面倒くさい”をできるだけ実現したい

──ライブはファンの存在をより身近に感じる機会かと思いますが、パフォーマンスをするうえで心がけていることは?

もっさ 最初の頃は演奏することに一生懸命すぎて、ほかのことを考えられなかったんですけど、最近ようやく余裕が出てきました。お客さんのめっちゃ喜んでいる顔を見て、「あの曲をやるって言っただけで、こんなに全身でうれしさを表現してくれるんだ」と感じることが増えました。だから今は、ライブ中にもっと会話をしたい。あと一貫して大事にしてるのは、なるべく自分の気持ちに嘘をつかないこと。思っていないことは言わない。「こう言ったほうがカッコよく見えるかも?」と思っても、自分が思ってないことだったら絶対言わないようにしています。

朝日 俺はかゆいところに手が届くライブがしたいと思っていて。例えば「この曲とこの曲の間に、カッコいいつなぎがあったらいいよね」と思っても、イチから考えるのも大変だから、やらないことが多かったんです。でも自分がリスナーの立場だったら「こんな音があったら超気持ちいいのにな」と思うだろうから、“ちょっと面倒くさい”をできるだけ実現していきたい。これはめちゃくちゃエンタメな視点ですけど、例えば任天堂が新作ゲームを発表しました、と。しかも「明日買えます!」みたいなニュースを見たときに、そのサプライズを実現させるまでに面倒くさい工程もいっぱいあっただろうけど、みんなが喜んでくれるから形にしているんだろうなと思ったんです。自分も「これをやるのは大変だしな」をできるだけ減らしていく活動をしていきたいですね。

朝日(G)

朝日(G)

──ライブを通して「みんな、ここまで一生懸命に曲やMCを汲み取ってくれているんだ」と感じた瞬間はありますか?

朝日 ある日、「紫」という曲について自分の胸中をちゃんと話せた日があって。そのときだけMCのあとに拍手が起きたんですよ(笑)。いつもはちょっとしゃべって「じゃあ、この曲をやります」って普通に演奏を始めるんですけど。

──その日は違ったと。

朝日 「『紫』はこういう曲なんです」と言ったら、パチパチパチと拍手が起きて。初めてしゃべりだけで拍手もらえたんです。ちゃんと話すと反応もしっかり返ってくることを学びましたね(笑)。

もっさ 「ティーンエイジ・ネクラポップ」という曲で「これが最後の曲です」と言ったときに、1人だけめっちゃぴょんぴょん飛び跳ねてる男の子がいて。これでもかとジャンプしてる姿に、私までうれしくなりました。そんなこと想定してなかったから、思わず笑っちゃった。それはかなり印象に残っていますね。

──ライブで演奏していて、特にお客さんとの一体感を感じる曲はなんでしょう?

朝日 ネクライトーキーの曲だと「オシャレ大作戦」がわかりやすいと思うんですけど、俺が一方的に一体感を感じるのは……。

もっさ 一方的にって、それは一体感なのか?(笑)

朝日 (笑)。俺的に一体感を感じるのは「ちょうぐにゃぐにゃ」ですね。あの曲自体が1つの塊のようなエネルギーを発していて、ライブ中のお客さんの反応を見て勝手に一体感を感じてます。

もっさ 私は「許せ!服部」です。途中でお客さんも歌に参加できるパートがあって、みんなで曲を作り上げている感覚になれます。そもそも「服部」はCDの音源通りに演奏したことがない曲で。アレンジによって曲が長くなったり短くなったりするから、お客さんも「今日はこういうアレンジなのか。というか、今俺たちが声を出す番じゃね!?」みたいな。コール&レンスポンスみたいに、曲の中で会話してるときに一体感を感じます。

朝日 言葉で説明をしないしね。

もっさ そう! 「ここで一緒に叫んでくれ」と私たちは言わなくて。本当に不親切だなと思うんですけど、それを察して沸き起こる声を聞くとすごくうれしくなります(笑)。みんなで一緒にライブをしているなって。

ネクライトーキーをファッション感覚で聴いてる人はいない

──ちなみにネクライトーキーのファンって、どういう人が多いですか?

朝日 年齢層も雰囲気もバラバラなんですよね。もともと俺がやっていた活動のファンとか、フェスでめっちゃ盛り上がったのが楽しくて好きになってくれた人とか。ネクライトーキーのじっとりとした暗い部分を好きになってくれた人とか、シンプルにメンバーが好きとか、入り口や好きなところもいろいろな気がして。

もっさ 本当にいろいろだよね。ライブキッズみたいな子もいるし。

朝日 「なんか懐かしい音楽だな」と思いながら聴いてくれてる4、50代の人もいるし。

もっさ あ! まあ、これはチクチク言葉になっちゃうけど、おそらくネクライトーキーをファッション感覚で聴いてる人はいなそう(笑)。

朝日 ははは! ネクライトーキーを聴いていても、別におしゃれではないからね(笑)。ヘッドフォンから音が流れているとカッコいいなと思うバンドはいっぱいいますけど、ネクライトーキーは別にカッコいいとはならない。

もっさ ふふふ、それもチクチク言葉になっちゃうかな?

朝日 俺たちに対してのチクチクでもあるけどね。

もっさ ちょっと、おしゃれさが足りないという……(笑)。

もっさ(Vo, G)

もっさ(Vo, G)

2人にとってのファンの存在

──改めて、お二人にとってファンはどんな存在ですか?

もっさ SNSか何かで「普段はすごく仲よくしてくれているけど、あまり心の内を見せない友達」みたいに書かれているのを見たことがあって(笑)。

朝日 ファンの人がネクライトーキーに対して、そう思っているんだ。

もっさ そう(笑)。私も友達みたいな感覚がある。元気でやってくれていたらうれしいですね。

朝日 俺はファンに対して、審査員ぐらいの気持ちでいます。つまらないことしていたら酷評してくれていいし、切ってくれてもいい。でも、いいものを作ったときはちゃんと伝えてほしい。

もっさ そうだね。悪いことをしたら叱ってほしいし、楽しいヤツだなと思ってくれたら仲よくしてほしい。

朝日 もちろん支えてもらっていますけど、「こんなの支えられねえよ!」と思ったら、すぐに外してもらって大丈夫。

もっさ (ネクライトーキーの中で)ドライなんだよね、この2人は(笑)。

朝日 ファンの人を冷めた目で見てるというより、自分がそれくらいの気持ちでいなきゃと思ってます。

──自分を律しているわけですね。

朝日 そうですね。ファンの方からは優しい評価をもらいやすいけど、そこに甘えるのはよくないと思っているので。

──今回インタビューをするにあたって、昔の楽曲も聴き返したんですね。それで思ったのが、「だけじゃないBABY」に「光はいつでも明日へ向かう心の中にあったんだ」という歌詞があって。この「光」はメンバーだけでなく、ファンに対しても向けられているのかなと。

朝日 その解釈も正解なんですよ。「だけじゃないBABY」は、まだネクライトーキーのバンド名も決まってないし、メンバーもそろってない状況で書いた曲で。当時の俺は光が何なのかまったくわかってなかったし、光があるのかどうかもわからなかった。でも、とにかく光に向かっていかなきゃいけないって気持ちで書いた曲なんです。あの曲を書いたとき、自分も正解が見えていなかったので、いろんな解釈ができる曲ですよね。