「Walk with FAN supported by FAM」第2回|ネクライトーキーにとってのファンとは?

株式会社Nagisaが運営するファンクラブ開設 / 運営プラットフォーム・FAM協力のもと、さまざまなアーティストに話を聞き、ファンとの関係性やファンの存在が創作活動にどのように生かされているのかを聞く連載企画「Walk with FAN supported by FAM」。第2回は今年1月でメジャーデビュー5周年を迎えた5人組バンド・ネクライトーキーから、もっさ(Vo, G)と朝日(G)をゲストに迎えてお届けする。

2人が考えるバンドとファンの距離感、その存在がライブパフォーマンスにどのような影響を与えているかという話題を軸に、3月に発表されたメジャーデビュー5周年記念EP「モブなりのカンフー」の制作エピソード、5月にスタートするツアー「ゴーゴートーキーズ!2025 北上」への意気込みも語ってもらった。

取材・文 / 真貝聡撮影 / 曽我美芽

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ネクライトーキー インタビュー

思い出の地・下北沢ERA

──メジャーデビュー5周年おめでとうございます。この取材の2日後に5周年記念ワンマンライブ(「祝!メジャーデビュー5周年記念公演」)が開催されますが、会場となる下北沢ERAは、ネクライトーキーにとって昔からゆかりのある場所なんですよね。

もっさ(Vo, G) 私は関西出身なんですけど、上京して最初に親しみを感じたのがERAでした。友達のライブを観にも行くし、今回のように自分たちの企画で使わせてもらうこともあって。「めっちゃかわいいうた」のミュージックビデオもERAで撮影したし、いろんな場面でお世話になってます。

朝日(G) 2017年に東京で初めての自主企画ライブ(「オーキートーキー!vol.1 東京編」)をしたのもERAだったよね。

もっさ そっか! Dr.DOWNERとジョゼに出てもらったね。

──その自主企画を東京カランコロンのいちろーさんがフロアで観ていたんですよね。

朝日 そうそう、いらっしゃってました。

──お呼びしたんですか?

朝日 いえ、普通に遊びに来てくれたんです。ネクライトーキーを始める前から、僕はいちろーさんと交流があって。新しいバンドを始めたことをSNSで知って「じゃあ観に行こう」と思ってくれたみたいで。

──ライブの感想は何かおっしゃっていました?

朝日 いちろーさんはへんてこなポップスが好きなので、僕らの音楽性にシンパシーを感じてくださったのか、すごく面白がってくれましたね。知り合いの中で最初に俺らをピックアップしてくれた人かもしれないです。

下北沢ERAで開催されたワンマンライブ「祝!メジャーデビュー5周年記念公演」の様子。(撮影:かい)

下北沢ERAで開催されたワンマンライブ「祝!メジャーデビュー5周年記念公演」の様子。(撮影:かい)

──そんな思い出の場所でやる5周年ワンマン、楽しみですね。

朝日 せっかく周年なので普段のノリとは違うライブにしようかな、と。ネクライトーキーの歴史を振り返れるように、リリースした順に思い出深い曲をピックアップして、最後に最新曲をやる流れを考えています。普段はやらないことなので、どんな感じになるのか楽しみですね。まあ……ERAはそこまで多く人数が入るわけではないし、スベったとしてもきっと許してもらえるかなって。

もっさ あははは!

朝日 ガンスベりしたとしても大丈夫だろうと(笑)。

左から藤田(B)、もっさ(Vo, G)、カズマ・タケイ(Dr)(撮影:かい)

左から藤田(B)、もっさ(Vo, G)、カズマ・タケイ(Dr)(撮影:かい)

左からカズマ・タケイ(Dr)、朝日(G)、中村郁香(Key)(撮影:かい)

左からカズマ・タケイ(Dr)、朝日(G)、中村郁香(Key)(撮影:かい)

自分たちの音楽が届いた瞬間

──そんなメジャーデビュー5周年を迎えたネクライトーキーに、今回はバンドにとって“ファン”とはどのような存在か、そしてファンという存在が楽曲にどんな影響をもたらしているのかお聞きしたいと思います。まずは、初めてファンの存在を認識したときのことを教えてください。

もっさ 大阪のclub vijonでやった初ワンマン(「ゴーゴートーキーズ!」大阪公演)ですね。対バンイベントだといろんなお客さんがいるけど、初ワンマンの日は「ここに集まった人は、みんな私たちを観に来てくれたんだ」と特別な感情になって。当時の私からすると、本当にすごくたくさんの方が観に来ていたので、そのときにファンの存在を認識しました。あと一番印象深かったのは入場した瞬間。友達も観に来てくれたし、はじめましての方もたくさんいて。私の顔を知らないお客さんがたくさんいたのが、すごく新鮮でした。

朝日 みんなうれしそうでビックリしたよね。普通に生活していたら、顔を出しただけであんなに喜ばれることなんてないから。

もっさ そう!「私たちでそんなに喜んでくれるの?」みたいな気持ちだった。

朝日 俺が初めてファンを認識したのはAmazonでネクライトーキーのレビューを見たときですね。直接感想を伝えるときって、基本的に悪いことは言わないじゃないですか。でもAmazonのレビューって、アーティストとリスナーに距離があるからこそ「ここはあんまりだったけど、ここはよかった」と忖度せずに書ける。それを読んだとき、自分の知らない人にまで作品が届いてるのはいいなと思って。文章が全然湿っぽくないんですよね。めっちゃドライな感じで「1枚目のほうがよかったかな。でも、今回ここはよかった」と書いてあるレビューを読むと、いろんな人に届いているんだなと実感が持てました。それに、その人もCDを買ってくれてるから、ファンではあるじゃないですか。ライブハウスのお客さんだけを見ていると視界がコンパクトになりがちだけど、顔が見えない人にまでCDが届いていると実感できたのはうれしかったです。

左から朝日(G)、もっさ(Vo, G)。

左から朝日(G)、もっさ(Vo, G)。

「この曲は俺だ」がうれしかった

──では、普段の活動の中でファンとのつながりを感じる瞬間は?

もっさ 最近はファンの方が送ってくれる手紙を読んでいると、なんだかその人の人生が自分の中に流れ込んでくる感覚になって。同時にその人も私たちの音楽を通して、自分の人生の中にネクライトーキーが組み込まれているんだ、ということを実感しますね。

──メールだけじゃなくて、直筆のお手紙も届くんですか?

もっさ けっこういただきます。自分もいちファンとして好きなバンドに手紙を書くことがあるんですけど、手紙をもらう側になったときに思ったんですよね、自分の見えないところでネクライトーキーの音楽を楽しんでくれていて、バンドと一緒に歳を重ねていった人がいるのかもしれないって。それが手紙だとストレートに伝わってきて、そのときにめっちゃ「うわああ」ってなります(笑)。

──肉筆だと人によって文字の丸みとか筆圧も違うから、より伝わってくるものがありそうですね。

もっさ そうなんですよ。なんか“管”が見える。

朝日 自分とつながっている感じがするんだ。

もっさ そう! 流れ込んでくる感じがします。

──手紙にはどんなことが書かれているんですか?

もっさ みんなけっこう悩んでますね。それほど具体的なことは書いてないですけど、「こういうことに悩んでいたんだけど、曲を聴いたりライブを観たりしたら、楽しい気持ちになれます」と書いてくれていて。悩んでいることって、みんな違うじゃないですか。でも、それを自分も体験したような気持ちになるんです。

もっさ(Vo, G)

もっさ(Vo, G)

──それが先ほど言った“管が見える”ということなんですね。

もっさ 私たちは決して誰かを助けようと思って音楽をやっているわけじゃないけど、自分たちが楽しくやっている活動が、そういうふうにお客さんにちょっとでも元気を届けられているんだ、と思って。それはやっぱりうれしいです。

朝日 俺ももっさに近いと思います。手紙を含め、SNSでも曲の感想をもらえるとうれしいし、「この曲がよかった」という声もすごくうれしい。特に「俺はこの曲をこう感じた」みたいなその人なりの解釈を読むと、ちゃんと伝わったなと思うんですね。その解釈が100%俺の意図したことじゃなくても全然いい。俺の作った曲を、その人なりに咀嚼して飲み込んでもらえた感じがして。それはうれしい瞬間ですね。

──第三者のフィルターを通すことで、曲の意味や意図が変わっていくのは面白いですよね。

朝日 うん、面白いです。いつだったか「この曲は俺だ」と言ってる人がいて、「そうだ、お前の曲だよ!」と思いましたもん(笑)。あれはうれしかったな。

フラットに曲を書くために、ファンの存在は考えない

──ちなみに、曲作りの中でリスナーの存在は作品にどの程度反映されていると思ますか?

朝日 ……あんまりないです。

もっさ はははは。

朝日 別に聴いてもらわなくていい、とかそういう話じゃなくて。“曲作りは自分1人で小部屋でやるべきもの”という自分ルールがあって、そこに誰かを入れることはないです。それが一番いいかなと思っていて。俺個人の意見ですけど、聴く人のことを想像しながら曲を書くと「こうやって聴いてほしい」という思惑が生まれちゃう気がする。自分が第三者のほうを見なければ、どんな聴かれ方をしても気にならない。というか「好きに聴いてくれていい。俺も好き勝手に作るから」となれるんですね。だからこそ、すごくフラットに曲を書けてるのかなって。

朝日(G)

朝日(G)

──最初からその姿勢を一貫して続けているのか、それともリスナーに向けた曲を作ってみて、それが朝日さんに合わないと気付いたのか、どちらでしょう?

朝日 やってみてですね。「こういうふうに届いたらいいな」という意識で曲を作るのは、俺には向いてないと途中で気付きました。ただ、アレンジに関しては違うんですよ。例えばめちゃくちゃ変な音を出して、その音が大きすぎたら耳が痛くなるから、ほかの楽器が鳴っているほうが聴いている人も気持ちよくなれるだろう、みたいな。アレンジに関しては、自分も1人のリスナーとして聴いてもらう人のことを想定します。

──「やってみて気付いた」とのことですが、作品で言うとどのタイミングですか?

朝日 メジャー2ndアルバム「FREAK」の頃には、今のような作り方でいこうと考えが固まりました。以前からそれに近い感じでやってはいたけど、「やっぱり自分はこっちだったんだな」とハッキリしましたね。

もっさ 朝日さんの話を聞いて、自分もまったく同じだと思いました。歌詞やメロには、リスナーのことってあんまり反映されていないんですよ。本当に自分が思ったことをただ淡々と曲にしてる。でもできあがった曲がライブでどんなアレンジにしたら盛り上がるかとか、ここでギターが鳴ったら拳が上がりそうとか、アレンジやライブの見せ方に関しては、リスナーのことをすごく意識してますね。