音楽ナタリー PowerPush - バニラビーンズ

独自のアイドル道を行く“バニビ姉さん”の8年目 各界ファンからの応援メッセージ&質問

バニビはどんなジャンルの音楽もできる

──アルバム「バニラビーンズIV」の制作はどのように進めていったんですか?

レナ

レナ スタッフさんともたくさんお話して、みんながどんな思いを持っているのかを確認しながら。レナ的に解釈すると、器用貧乏だからこそできた1枚というか。詰め込みすぎ、欲張りすぎなアルバムになってしまいました。パーティ感を前半に出して、中盤には昭和歌謡のテイストも取り入れて、そして「マスカット・スロープ・ラブ」の北欧テイスト、「コップのフチ子」さんの企画モノ、カバーモノ……ちょっと入れすぎなんじゃないの?みたいな。でも「バニビはどんなジャンルの音楽もできるんだよ」ということが証明できたアルバムになったかなと思います。

──いろんな要素がありながらも、バンドサウンドが統一感を作っているように感じます。前作以降にリリースされたシングルでも次々新しい要素が提示されていましたけど、最新シングル「有頂天ガール」の存在感は2人にとっても大きいようですね。

レナ あのWinkさんのために井上大輔さんが書いていた未発表曲、というバックボーンがまず大きいですよね(参照:バニビ、井上大輔が書いた幻のWink曲を継承)。

リサ ちょうどB'zさんの新曲のタイトルも「有頂天」で、有頂天ブームが来るのかなって(笑)。

──KERAさんのバンド・有頂天も再始動しますしね。

リサ ああ、そうか! みんな有頂天(笑)。

──「有頂天ガール」も含めて、今回のアルバムは歌謡曲の要素と今のバニビのマッチングがうまく表現されているなと思いました。北欧コンセプトは若干薄まっていますけど(笑)、この方向はすごくアリだなと。

リサ

リサ 北欧の要素は入れたんですよ! 一応(笑)。新曲の「フォーゲル オ ヴィンド」は北欧を意識した曲です。

──より広範囲な音楽をやるようになってきた中で、お2人やスタッフの間での明確な判断基準となるものはありますか? ここは譲れない一線、というか。

リサ そのへんは制作チームの意見を信頼してますね。ちゃんとバニビらしく調理してくれるので。そして私たちが歌えばちゃんとバニビの曲になるみたいな。

レナ よく言ってもらうのは「バニビが歌うと下品にならないよね」っていう。パーティ曲でもちゃんと品を保ちつつ歌えるよねって。それは私たちだからこそなのかなって思います。

ちょいワル社長の思いつきで……

──楽曲を提供している作家陣からは具体的に「こう歌ってほしい」というアドバイスや意見はあるんですか?

レナ 基本的にはお任せで歌わせてもらってますね。

リサ よく作詞をしてくれる田形さん(田形美喜子。本作では「フォーゲル オ ヴィンド」「黄昏ハイボール」「コップのフチ子公式ソング きっといい場所」の作詞を担当)が「がんばってね」「応援してるわよ」って母のように声をかけてくれるぐらい(笑)。

──今回特に大きなチャレンジだったのはどの曲ですか?

レナ

レナ それはもう、ちょいワル社長の思いつきのカバーですね(笑)。

リサ ベルセバですね。なんで急にUKロックなんだろうって(笑)。

──Belle & Sebastianのカバー「Funny Little Frog」と。バニビは過去のカバーもLed Zeppelinの「天国への階段」、MGMTの「Kids」などセレクトセンスが絶妙ですよね。でもバンドサウンドとのなじみはいいし、最近リサさんがTwitterなどでも見せているロックリスナーぶりを考えると比較的自然な流れかなと。

リサ 確かになじみもあるし大好きだけど、歌うとなると話は別ですよ(笑)。でもバニビがベルセバを歌うということに不自然さはそんなにないのかなって思いますね。

レナ 2人のハモリがうまく決まってて、バニビらしさは出ていると思います。でも私は英語わかんないんで、歌詞は暗号です(笑)。ライブでやっていくうちにもっとバニビらしくなるんじゃないかな。カバーっていつも、それがカバーだってことを忘れちゃうんですよ。

リサ たまに本家が流れてると「あれ? 私たちの?」って思っちゃう(笑)。

アイドルなのにお酒の歌が歌えるのは今のバニビならでは

──ではオリジナル曲の中で一番大きなチャレンジというとどの曲ですか?

リサ

リサ 「黄昏ハイボール」は今の歳だからこそすんなり歌えた曲なんじゃないかなって。アイドルがお酒の歌って普通ないですよね。しかもノンタイアップなんですよ(笑)。お酒の歌を自然に歌えてるって気付いたとき、「ああ7年もやってきたから歌えるんだなあ」って思いましたね。

──楽曲的には歌謡曲路線に大きく振り切っていて、アルバムの中でも大きなフックになる1曲かなと思ったのですが、確かに今のアイドルソングでお酒を題材にした歌を堂々と歌うのは珍しいですよね。

リサ これがもし1つ前のアルバムだったら浮いてたと思うんですよ。歳を重ねた今だからこそ歌う意味もあるのかなって。

レナ 前半は原点回帰したバニラビーンズっぽさ、「黄昏ハイボール」からシングルの「ワタシ…不幸グセ」、そして「愛のせい」と続く中盤はこれまでと違うバニビを感じてもらえると思います。「愛のせい」では男と女とさらにもう1人、という大人の濃い三角関係を歌っていて。

──そういうエグめの恋を歌うのって、ある意味すごく歌謡曲的ですよね。山口百恵、中森明菜みたいな、ミスマッチなぐらいに大人の恋を歌う歌謡曲の系譜というか。

レナ あー、なるほど。「愛のせい」は曲調も今までになかった感じで好きですね。

アイドルの幸せ

──楽曲を作るのは作家陣ですが、お2人自身の考えていることや変化が曲の内容に反映されることもありますか? 「黄昏ハイボール」のはまさに2人が歳を重ねたからこその変化が実を結んだ曲だと思いますけど。

リサ 「Happy Day!!」もまさにそうですね。お友達の結婚をお祝いするウエディングソングで、今の年齢だからこそ気持ちもわかってリアルに感じられる1曲になっています。はっきり伝えたい相手がいる、対象を思い浮かべて歌える歌というか。

──アイドル活動、芸能活動って、やっぱり一般的な幸せを切り捨てざるを得ないお仕事ですよね。歌っていてちょっと考えてしまったりはしないですか? OLなど一般的な職業じゃないと難しい、平凡な幸せについてとか。

レナ でも自分の歌でおめでとうって伝えられるなんてこの職業ならではのことで、普通はできないことですから。バスに乗ってていつも思うんですよ。「今、自分の曲を聴いてる人ってこのバスの中にいるのだろうか」って。レコーディングした自分の曲が聴けるなんて幸せなことだよなー、と思いながらバスの中で黄昏れてます(笑)。

リサ 幸せ……どうなんだろう。あんまり考えたことないというか、人のこと気にしないんですよね(笑)。ザ・OLみたいな生活は絶対できないですよ、私。OLの友達とか見てたらすごいなって思いますもん。

レナ 想像できない、うん。私は比べる対象があまりいないから……友達がもっといたら違うと思うんですけど(笑)。

──アルバム全体を通して聴くと、着実に積み上げてきた“バニビらしさ”に新しい挑戦がほどよく込められた作品だなと感じられて、長年バニビの活動を追っている人は感慨深く感じるんじゃないかなあと思います。

バニラビーンズ

レナ そうですね。歩幅は小さいけど1歩ずつ。今いるスタッフさんで1人、デビュー前から「恋のセオリー」(2009年4月にリリースされた配信シングル)ぐらいまで一緒で、それからしばらく離れていた方がいるんですよ。2年前ぐらいにまた戻ってきてくれたんですけど、「よくしゃべるようになったねえ」って言われます(笑)。「最初は目を見て話すことすらできなかったもんね」って。今でこそMCとかやってるけど、昔からしゃべれたわけじゃないんですよ。バニビもそんな簡単に8年続けてこられたわけじゃないんだぞっていうのは思いますね。

Contents Index
バニラビーンズインタビュー
各界からのバニビ応援コメント+Q&A
ニューアルバム「バニラビーンズIV」 / 2015年2月3日発売 / T-Palette Records
初回限定盤 [CD+DVD] / 4320円 / TPRC-0125
通常盤 [CD] / 2700円 / TPRC-0124
CD収録曲
  1. ブービーボーイ・ニアピンガール
  2. まだよボーイフレンド
  3. マスカット・スロープ・ラブ
  4. フォーゲル オ ヴィンド
  5. 黄昏ハイボール
  6. ワタシ…不幸グセ
  7. 愛のせい
  8. プリーズミーダーリン
  9. Happy Day!!
  10. コップのフチ子公式ソング きっといい場所
  11. 有頂天ガール
  12. Funny Little Frog

[初回限定盤ボーナストラック]

  1. 有頂天ガール(おさいふケータイ Ver)
初回限定盤DVD収録内容

バニラビーンズワンマンライブ@恵比寿リキッドルーム ライブ映像

バニラビーンズ

バニラビーンズ

庶民派でアイドル研究が趣味のレナ(キノコ頭担当)と、日本で正月を過ごしたことがないセレブのリサ(外はね頭担当)からなる実験型次世代アイドルユニット。北欧の風に乗ってやってきたという設定で2007年に「U ▽ Me」(※▽は白抜きハート表記)でデビューし、翌2008年に初期メンバー脱退後第2期メンバーとしてリサが加入。現在のメンバー構成となる。スウェディッシュポップを意識したサウンドとレトロなビジュアルで渋谷系ファンなどから高評価を得る一方で「ガラス張りトラック生活」などの風変わりな活動でも注目を集めた。2011年にはタワーレコードのアイドル専門レーベル「T-Palette Records」にレンタル移籍。アイドルが多数出演するイベントではMCを担当するなど、トーク面でも高く評価されている。2015年2月には通算4枚目のオリジナルアルバム「バニラビーンズIV」をリリース。