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映画「恋に至る病」公開記念! 木村承子監督×アーバンギャルド対談

監督の頭の中であらかじめ音楽が鳴ってたのかな

──劇伴は谷地村さんが制作したんですよね。やってみてどうでした?

谷地村 僕は普段ミーハーな映画ばかり観てるので、こういうタイプの映画はあんまり観ないんですよ。でも「恋に至る病」はSF的な要素が含まれてるんですよね。

松永 「すこし・ふしぎ」のほうのSFね。

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谷地村 そのSFが日常にうまく溶け込んで当たり前のように描かれてて、本当に「すこし・ふしぎ」っていう感じなんですよ。最初に観たときはまだ音楽が入ってない状態だったんですけど、それだけでも随分引きこまれたなと。僕は「これに曲を付けるなら、普通にBGMを乗せたらつまんなくなるだろうな」って感じたんです。だから監督からどういう注文が来るかなって結構ドキドキしてたんですよね。そしたら「ピコピコした8bitの音で」って注文されて、「あ、この人ちょっとすごいかも」って思いました(笑)。

木村 アーバンさんが音楽を引き受けてくださることになったら、全部ピコピコで統一させようって決めてたんです。

──8bitとは言ってもチップチューンというわけではなく、本当にゲームの効果音みたいな音ですよね。男性器をさわると「ピコーン」って音がするとか(笑)。

谷地村 「こんなにしちゃっていいんだ」ってくらい好きにさせてくれたから、音を付けててものすごく楽しかったです。

木村 音楽は前半にはいっぱい入れて、後半は減るようにしたんですけど、これは最初の頃のツブラ(我妻三輪子演じる主人公)がモンスター状態なのをゲームのキャラクターに見立ててるんです。

谷地村 映像を観ながらリズムに合わせて演奏したんですけど、難しさは感じませんでしたね。きっと映像が作られた段階で、監督の頭の中であらかじめ音楽が鳴ってたのかなって。ベランダを移動するシーンなんて、まんま「スーパーマリオ」みたいな音楽がハマったし。

木村 ああ、ベランダの移動シーンは最初から編集さんと「ここは音楽を付けるところだね」みたいな話してました。音楽を注文する前、どんな音楽が欲しいのか自分の中で決めるために、参考として自分でいろんな既存の音楽を付けてみたんですけど、それより全然すごい音を作っていただけたのでやっぱりすごいなと思いました。

仲がいい女友達とはキスできないとダメですよ

──容子さんはこの映画を観てどう感じました?

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浜崎 えー、監督の前で言うの?

──そのための対談なので(笑)。

浜崎 私が映画を観るときって、自分が面白いなって思ったポイントが人に伝わらないことが多いんです。映画館でみんなが静まり返ってるときに笑っちゃって「えっ?」ってなったり。でも「恋に至る病」は、監督の考えてることが手に取るように伝わってきて、やっぱりこの人と感性が似てるかもって感じられたのね。それがまずひとつ(笑)。

木村 おお、じゃあふたつ目は?

浜崎 先生のことを熱烈に好きな主人公が、毎日毎日妄想をノートに書いて、最終的には性器を交換しちゃいたいって思うまでいって、それが実現したのは正直うらやましかった。私は人のことを好きになったらツブラと同じタイプになるから、もしこの映画を私が中学校とか小学校とかの頃に観てたら、これは本当に起こることなんじゃないかって錯覚しそう。

木村 それうれしい。

浜崎 「普通の恋」でも軟禁して緊縛するじゃない? 私そういうの結構好きっていうか、好きな人を閉じこめて誰にも見せないようにしたいっていう気持ちがすごくよくわかるの。これって性癖なのかな?(笑)

木村 でも願望だよね?

浜崎 人に対しての好意の寄せ方が極端なので、そういう部分ですごく主人公に共感できたし感情移入できた。だから私の中では超ハッピーエンドだったんです。夏休みずっと同じ場所に隔離されて、誰も居ない場所で一緒に過ごせて。汚いものを見るような目で見られるのは最初はつらいと思うけど、それもだんだん快感になっていくの(笑)。

木村 私も隔離されたいって気持ちわかる。邪魔されない2人きりの場所に。

浜崎 そういうのってすごくうらやましい世界だよね。あとさ、エンちゃん(佐津川愛美演じるクラスメイト)がツブラに寄せる思いっていうのが、すごく女子特有だなって思ったのね。

木村 あー。

浜崎 すごく仲がいい友達に彼氏とか好きな人ができると、その相手に対して「取られたくない」って嫉妬しちゃう感じ、すごく女子校っぽい。実際に私は女子校出身なんですけど、親友と買い物に行って「あのお店に行ってみたいんだよね」って言ったときに「こないだ行ったけど楽しかったよ」って返されると、「え……? 誰と行ったの?」「仲がいいと思ってるの私だけ?」って。

木村 思う思う! 嫉妬で死にそうだよ!

──映画ではその気持ちが膨らんだ末、キスするところまでいっちゃいましたね。

浜崎 でもキスくらいしますよね? 仲がいい女友達とはキスできないとダメですよ。

木村 私もこの間、飲みに行ったときに初めて会った女の人にチューしました。

浜崎 ……初めて会った人? 誰?

谷地村 もう嫉妬してる(笑)。

木村 友達の友達! ごめんごめん! もうしないね(笑)。

木村承子監督作品 映画「恋に至る病」/ 2012年10月13日公開

  • 映画「恋に至る病」
「恋に至る病」ストーリー

高校の生物教師・マドカ(斉藤陽一郎)は極端に他人との接触を避けて生きている。授業中でも生徒の顔をまともに見られず、私語や居眠りさえ注意できない。そんな彼を教室の机からただ1人うっとりと見つめるのはツブラ(我妻三輪子)。"腐らない体"を手に入れるため、防腐剤入りの食物しか口にしない彼女は、死んだあとで誰からも忘れられてしまうことを恐れている。

マドカのことが大好きなツブラは彼の癖とその意味を観察してはノートにイラストで描きとめ、あまつさえマドカと性器を交換することまで妄想していた。「誰もいらない先生と、誰かが欲しいあたしが混じったら、きっと丁度いい」——。 ところがある日、マドカはツブラから強引に肉体関係を迫られ、その拍子にツブラにはマドカの男性器が、マドカにはツブラの女性器が付いてしまう。

パニックに陥ったマドカはツブラを連れて今は誰も住んでいない実家にとりあえず避難。そこへ密かにツブラを慕うクラスメイトのエン(佐津川愛美)と、彼女を追ってきたマル(染谷将太)も駆け付け、奇妙な共同生活が始まる。ツブラとマドカは元のカラダに戻れるのか、そして4人の恋の行方は……。

アーバンギャルド ニューアルバム「ガイガーカウンターカルチャー」/ 2012年10月24日発売 / UNIVERSAL J

アーバンギャルド ニューシングル「さよならサブカルチャー」/ 2012年9月19日発売 / 1260円 / UNIVERSAL J / UPCH-5769

アーバンギャルド

プロフィール画像

「トラウマテクノポップ」をコンセプトに掲げる5人組バンド。詩や演劇などの活動をしていた松永天馬(Vo)を中心に、ジャズや現代音楽を学んできた谷地村啓(Key)、メタルへの造詣が深い瀬々信(G)を迎えて結成され、2007年にシャンソン歌手だった浜崎容子(Vo)、2011年に鍵山喬一(Dr)が加入した。2009年3月に初の全国流通アルバム「少女は二度死ぬ」を発表し、2011年7月にはユニバーサルJからシングル「スカート革命」でメジャーデビュー。楽曲制作のみならずアートワークやビデオクリップ制作のほとんどを松永が自ら手がけ、ガーリーかつ病的な世界観を徹底的に貫いている。2012年には東京・SHIBUYA-AXでワンマンライブを敢行。「生まれてみたい」「病めるアイドル」「さよならサブカルチャー」という3枚のシングルを発表し、10月にはアルバム「ガイガーカウンターカルチャー」をリリースする。

木村承子(きむらしょうこ)

1986年生まれの映画監督。処女・童貞喪失を幻想的に描いた「普通の恋」を武蔵野美術大学在学中に制作し「PFFアワード2009」審査員特別賞を受賞。これにより獲得したスカラシップ(製作援助制度)で完成させた長編デビュー作「恋に至る病」は「第62回ベルリン国際映画祭」フォーラム部門に正式出品を果たし、「第36回香港国際映画祭」では審査員特別賞に輝いた。