音楽ナタリー Power Push - UNLIMITS
原点回帰を経て遂げた進化
UNLIMITSがニューアルバム「U」を7月6日にリリースした。
今作は彼らがPIZZA OF DEATH RECORDS内レーベルのJun Gray Recordsから発表する2枚目のアルバム。2年前に発表した前作「アメジスト」で原点回帰を果たした彼らが、今作でどのような進化を遂げたのか。メンバー全員に話を聞いた。
取材・文 / 小林千絵 撮影 / 上山陽介
2年前にPIZZA OF DEATH RECORDS内のJun Gray Recordsへ
──音楽ナタリーへの登場がひさしぶりなので、少しさかのぼって話を聞かせてください。2014年4月にリリースしたフルアルバム「アメジスト」はPIZZA OF DEATH RECORDS内レーベルのJun Gray Recordsからのリリースでした。PIZZA OF DEATHのレーベルへの移籍というのは、バンドにとってもリスナーにとっても大きなトピックだと思いますが、何か変化はありましたか?
清水葉子(Vo, G) より自由に曲を作れるようになりました。例えばUNLIMITSの歌詞って内向的で希望が見えづらいんですよね。もちろんそれがいいと思って作ってるんですが、前のレーベルのときはディレクターに「最終的に光を見せてほしい」と言われたこともあって。Jun Gray Recordsに移ってからは、そういう注文もなく、のびのびとやってます。
郡島陽子(Dr, Vo) のびのびとって言っちゃうと語弊があるけど(笑)。「最終的に光を見たい人もいる」ということを踏まえつつ、曲を書けるようになったよね。
清水 そうだね。客観的な視点が身に付いたのは前のレーベルのおかげですし。バンドの初期の頃はがんばってあえて難しい言葉を使ったりもしてたし、自分がわかればいいみたいな感じはあったんですけど、レーベルの人と話をしながら、もう少し人に伝わりやすい曲作りができるようになりました。
──サウンド面ではどうですか? 例えばPIZZA OF DEATH RECORDSだからパンク寄りにしようとか、そういう気持ちはありましたか?
清水 それはなかったです。ただ前作の「アメジスト」のときは、レーベルオーナーのJun Grayさんに「初期に立ち返ってほしい」と言われたこともあって、初期衝動……BPMが速くて疾走感があるような曲を書いたところはありますね。
今やりたいことを詰め込んだ「U」
──今作「U」はJun Gray Recordsからの2枚目ですが、どういう気持ちで作りました?
清水 前作の「アメジスト」はJunさんから求められることに応えようって思って曲を書いてたんですけど、今回は自分たちの今やりたいことを詰め込もうと思って作りました。
──今やりたいこととは?
清水 私たちは普段ライブをたくさんやってるんで、ライブで映える曲を作ること。あとは単純に自分の好きなポップな世界っていうのを炸裂させました。
──聴かせていただいて、1990年代後半から2000年代のJ-POP感が強いなというのを感じました。
清水 まさにその時期、自分がすごい音楽を吸収してた頃の要素が、今回の「U」ではすごく出せてると思います。J-POPにすごく影響を受けていて。
──Coccoさんの「あなたへの月」のカバーが収録されているところに顕著に表れていますね。
清水 はい。Coccoは私がバンドを始めた高校生のとき、音楽を吸収しまくってた頃に思いっきり影響を受けた人で。Coccoは原曲が全部素晴らしいのでどの曲をカバーするか迷ったし、カバーをやるのはすごいプレッシャーでした。最終的に、大胆ないいアレンジができたと思います。
──確かにCoccoさんのカバー音源を発表してる人ってあまりいないですね。
清水 そうですよね。そこも狙ってました。「Coccoやっちゃうの?」みたいな。うちらの世代からしたらけっこう大胆なんです。なのであえて挑戦してみました。
──中でも「あなたへの月」を選んだ理由はなんだったんですか?
清水 Coccoの「クムイウタ」というアルバムがあるんですけど、それを高校生のとき友達の家で聴いて、すごくハマって。擦り切れるんじゃないかってぐらい何度も聴いていたんです。自分がもっとも影響受けたアルバムだったので、「クムイウタ」の曲のどれかをカバーしようというのは決めていて。で、UNLIMITSは夜をモチーフにした曲が多いので、タイトルに「月」が入っているこの曲だと、つながってるかなと思って選びました。
──清水さん以外のメンバーもCoccoさんに影響を受けているんですか?
郡島 清水さんがよくカラオケで歌うのを聴いていて……。
──じゃあ今回のレコーディングは「いつも聴いているCoccoだ」みたいな?(笑)
郡島 そうですね。自然でした(笑)。
──Coccoさんをはじめ当時のJ-POPのちょっと憂いのある感じって、UNLIMITSに通じるものがありますよね。
清水 なんか好きなんですよね。そういう胸をぎゅっとつかまれるようなメロディラインや歌詞が。
───先ほど、移籍前は「最終的に光を見せてほしい」と言われていたとおっしゃっていましたけど、つまりUNLIMITSはあえて曲に光や希望を入れない曲を作っているということで。それはどうしてなんでしょうか?
清水 自分が落ち込んだときに「元気を出そう!」っていうポジティブな音楽をあまり聴かないんですよね。落ち込んでいる人の隣に寄り添って、同じ目線で一緒に静かに前を見ている曲を聴きたくなる。そのほうが心強く感じるんです。別に暗い歌詞を書こうと思って書いてるわけではなくて、自然とそういうものが出てくるんです。誰にでも闇の部分ってあると思うし、そういう人間の内面に迫ることで、聴く人に寄り添えるんじゃないかと。落ち込んでるときって、ただ隣に誰かいてくれるだけでよかったりするじゃないですか。それと同じような感覚です。
「これがUNLIMITSです」って言えるアルバムができた
──今作を作り上げて、手応えはどうですか?
郡島 私は最高傑作だと思ってます。余計なものがなくて濁ってない。15年の時を経たからこそ洗練されていて、想像以上にいいものができたと思っています。
大月義隆(G, Cho) いろんな経験をしてきたからこその作品になってると思う。UNLIMITSのオリジナリティみたいなものもよりハッキリ出てきたし、現メンバーになって10年経った今だからできるようになったことを色濃く出せたと思っていて。毎回アルバムが完成するたびにいいものができたと思うんだけど、一番「これがUNLIMITSです」って言えるアルバムだと思います。
石島直和(B, G) 自分のやりたいことをちゃんとコントロールできたなと。自分が思い描いてたものに一番近づけたなと思います。
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収録曲
- ボーダーライン
- ラストダンス
- ロンリーブルー
- tonight tonight tonight
- 最終列車
- シャーベット
- ナイトクルーズ
- あなたへの月
- プリズム&ブルース
- 最後の言葉
- いまのこと
UNLIMITS "with「U」tour 2016"
- 2016年7月30日(土)東京都 Shibuya eggman
<出演者> UNLIMITS / Amelie - 2016年8月3日(水)京都府 KYOTO MUSE
<出演者> UNLIMITS / bacho - 2016年8月4日(木)香川県 DIME
<出演者> UNLIMITS / bacho - 2016年8月7日(日)石川県 vanvanV4
<出演者> UNLIMITS / MEANING - 2016年8月10日(水)群馬県 高崎club FLEEZ
<出演者> UNLIMITS / Northern19 - 2016年8月11日(木・祝)東京都 八王子Match Vox
<出演者> UNLIMITS / rem time rem time / RIDDLE - 2016年8月25日(木)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
<出演者> UNLIMITS / ねごと - 2016年9月2日(金)岡山県 CRAZY MAMA 2nd Room
<出演者> UNLIMITS / BUZZ THE BEARS - 2016年9月3日(土)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
<出演者> UNLIMITS / and more - 2016年9月9日(金)秋田県 秋田LIVE SPOT 2000
<出演者> UNLIMITS / and more - 2016年9月10日(土)青森県 八戸ROXX
<出演者> UNLIMITS / The Winking Owl / rhyrhyrhythm - 2016年9月11日(日)岩手県 the five morioka
<出演者> UNLIMITS / The Winking Owl - 2016年9月19日(月・祝)千葉県 千葉LOOK
<出演者> UNLIMITS / ROTTENGRAFFTY - 2016年9月20日(火)茨城県 mito LIGHT HOUSE
<出演者> UNLIMITS / and more - 2016年10月1日(土)北海道 CASINO DRIVE
<出演者> UNLIMITS / snatch - 2016年10月2日(日)北海道 Crazy Monkey
<出演者> UNLIMITS / snatch - 2016年10月8日(土)福岡県 Queblick ※ワンマンライブ
<出演者> UNLIMITS - 2016年10月10日(月・祝)愛媛県 Double-u studio ※ワンマンライブ
<出演者> UNLIMITS - 2016年10月16日(日)宮城県 仙台MACANA ※ワンマンライブ
<出演者> UNLIMITS - 2016年10月22日(土)愛知県 APOLLO BASE ※ワンマンライブ
<出演者> UNLIMITS - 2016年10月23日(日)大阪府 LIVE HOUSE OSAKA BRONZE ※ワンマンライブ
<出演者> UNLIMITS - 2016年11月5日(土)東京都 TSUTAYA O-WEST ※ワンマンライブ
<出演者> UNLIMITS
UNLIMITS(アンリミッツ)
2002年に結成後、メンバーチェンジを経て2006年8月に現在の清水葉子(Vo, G)、郡島陽子(Dr, Vo)、石島直和(B, Cho)、大月義隆(G, Cho)の4人編成となる。2005年に初の音源となるミニアルバム「七色の記憶」をリリース。清水、郡島の女性ツインボーカルが織りなすハーモニーと日本語の響きを重視した歌詞、力強く情熱的なサウンドで人気を集め、2008年にはSum 41の来日公演オープニングアクトを務めたことでも話題を呼んだ。2010年8月4日リリースのミニアルバム「蒼-アオイ-」でSony Music Recordsに移籍。精力的なライブ活動を続け、2011年2月にメジャー初のフルアルバム「トランキライザー」をリリース。同年9月リリースのシングル「ハルカカナタ」は、テレビアニメ「BLEACH」のエンディングテーマに採用された。2014年4月発売のアルバム「アメジスト」でPIZZA OF DEATH RECORDS内Jun Gray Recordsに移籍。2016年7月、フルアルバム「U」をリリースした。