やまもり先生はモノローグの言葉選びがすごい
──ちょっと視点を変えた質問をしますね。田淵さんはやまもり三香作品のどこが好きで、なぜハマったんですか?
やまもり先生の作品はモノローグの言葉選びがすごくて。「なんてことを言うんだろう」「すごく詩的で素敵だな」とか、そういう言葉をよく使っているんです。印象的な言葉がズバッと入って1話が終わるみたいな、そういう言葉表現がめちゃめちゃ好きで。小説家っぽいというか、脚本家っぽいというか、そんな感じがします。「2人の物語にキュンキュンする」みたいな感じだけじゃなくて、裏のモノローグのところ、直接言葉には出さない表現が好きなのかもしれないですね。キュンキュンするような恋模様があって楽しい、みたいなことはどの少女マンガを読むときにも感じるんですけど、それとはまた別の表現の美しさが、僕にすごく合っていたんだと思います。
──これはモノローグじゃなくてセリフですけど、「目が離せないならそれは恋だよ」「それってちゃんと恋ですか?」とか「あんな美しいもの、なんでみんな目に止まらないんだ」とか。「うるわしの宵の月」にもキャッチーなセリフがいくつもありますね。
そういうところが、やまもり先生の今までの作品でもすごく好きなポイントで。読み進めていくうちにどんどんその世界に入っていく感じ、ゴールが見たくなる感じがあるんですね。それと少女マンガって、たいてい10巻ちょっとで終わるんですよ。あくまで僕の趣味趣向ですけど、あんまりダラダラ続くものが好きじゃない。アメリカの連ドラのシーズン5とかつらくて(笑)。「シーズン1が一番面白いから、そこで完結すればいいじゃん」と思っちゃう。でも10巻ぐらいのタイミングでゴールが来るのが少女マンガの好きなところで。やまもり先生の作品も、だいたいいつもそれぐらいで終わるんですよね。
──そもそもやまもり三香作品の存在は、赤い公園の津野米咲さんが教えてくれたと聞いてます。
そうです。僕が少女マンガをめっちゃ買い漁っている時期に、津野ちゃんに「なんかいいのある?」って聞いたら、「それはもう『ひるなかの流星』ですよ」と。買って読み始めたら、6巻ぐらいでもう大変な気持ちになって……思い出してきた。あれは2015年2月22日、堂島孝平さんの20周年のイベントで中野サンプラザに出たときにちょうど6巻を読んでいて、その場で津野ちゃんに連絡して「すごいマンガだ!」って言ったのを覚えてます。そこから過去の作品をさかのぼったり、「ひるなかの流星」が終わって新しく始まった「椿町ロンリープラネット」も買って読んだり。ずっと楽しみに読ませてもらっています。
──そんなやまもり作品へのオマージュとして「8月、昼中の流れ星と飛行機雲」や「弥生町ロンリープラネット」を書いていた頃は、シンプルにファン目線で楽しくというか、気軽にというか。
そうですね。キャリアを重ねて、アルバムにいろんな曲を書くときに、マンガや映画をモチーフにしたものは書きやすいというか、弾として助かる感じは正直あるので。
──あんまり言ってなかったですよね。表立っては。
言ってないですね。ほかにも映画モチーフの曲とかありますけど、一応気付いてほしいとは思いつつ、言わないようにしてはいます。「俺歌ってないし」というのもあるんですよ。歌ってないやつが「この作品について書きました」とか言っても、あんまりプラスにならないと思うので。歌う人が言うなら別だけど、うちの場合は違うから、書いてるやつがでしゃばっても何か違うかな?と。だからいつも説明しすぎないようにしているのかもしれない。
──エンディングテーマ「アザレアの風」についてはどうですか? これは「うるわし」と合わせて、オープニングとエンディングの2曲セットで依頼されたんですよね。
いや、最初はオープニングだけオファーを受けて、候補として2曲提出したらありがたいことにどちらも使ってもらえることになりました。「うるわし」は先生のお題もあり、今までのユニゾンの曲とはだいぶ毛色が違うから、「なんか違うの来たな」と思われたら申し訳ないなという気持ちもあって。なので打ち合わせの中で丸山監督が出してくれた「ユニゾンのこんな曲が好きです」というリファレンスに近い曲、これだったら嫌われることはないだろうなという曲もセットで提出して(笑)。「うるわし」だけでもNGは来ないだろうけど、キャリアを積んで調子こいてるバンドみたいに思われたら嫌だなというのもあって、「僕は作品のお役に立ちたいと思っています」という気持ちを込めてもう1曲書いたら、結果として両方使っていただけることになりました。
──つまり「アザレアの風」のほうが、従来のユニゾンの作風に寄せている。
ユニゾンのポップな楽曲としてそんなに外さないタイプ、ということですね。オープニングに「アザレアの風」を推してくれる声もあったそうですけど、「うるわし」に決まりました。僕的には「うるわし」のほうが新しい感じがあったので、「ユニゾンが少女マンガ原作アニメの主題歌をやる。どんな曲を書くんだ?」というときに、こっちが来たほうがびっくりするだろうなとは思っていて。自分でも、書いているうちに思い入れが出てきたので、こっちがオープニングになって、俺的にはうれしかったですね。
ソロ活動は「20年を超えたら多少チョケてもいいかな」
──そしてもう1つ、田淵さんのソロ活動の話も最後に聞かせてください。12月にソロカバーアルバム「田淵智也」をリリースして、1月と2月はサイン会で全国を回っているところですけど、40歳にして初のソロアルバムを発表するというのは、どんな心境で、どんな意図がありましたか?
2024年のバンドの20周年では僕なりのゴールを見せようと思っていたんですけど、「その翌年にちょうど40歳になるよな」と気付いて。20周年になるまでは、ロックバンドが持っていなきゃいけないアティチュードとして「手の内を見せすぎないこと」を大事にしてきたけど、20年を超えたら多少チョケてもいいかな?という気持ちにだんだんなってきたんですね。ワクワクすることを考えるのは大好きだし、じゃあ40歳になるときに何をしようかと考えて、今まで端っこでベースを弾いていた人が急に歌い出すのは面白いかな?というので、やったということです。なので40歳のときだけです。今後もやりますとかはないです(笑)。
──めちゃくちゃいいアルバムです。ザ・ハイロウズ、the pillows、throwcurveなど田淵さんが影響を受けたバンドの曲を中心に、赤い公園やa flood of circleとか、近しい人たちの曲も入ったカバーアルバムで、個人的には「ようやくルーツを明かしてくれた」という感じがするんですね。インタビューでも、聞かれても答えない人だったじゃないですか。「察してくれ」というタイプだったから、そういう意味でも感慨深いし、腑に落ちる点が多々ありました。
「何々に憧れて」とか「こういうものに影響を受けて」みたいな話は、ファンとの関係をちゃんと作る時期には無駄だと思っていたので。それを言うのは自分の手の内をさらすことになるから、インタビューで聞かれても意図的に答えないようにして、違うアーティストを挙げたりしていました(笑)。10年を超えたあたりから徐々に出すようにはなりましたけど、最初の頃は、それを言うことでバンドの格が下がると思っていたので。
──それをついにさらけ出したアルバム。しかもボーカル、めちゃくちゃうまいです。
いやいや。とんでもないです。
──パスピエ、ヒトリエなどカバー元のバンドのメンバーが参加した曲もあって、極めつけは斎藤さんも参加した「シュガーソングとビターステップ」のセルフカバー。すごくぜいたくです。そしてライブもやりますね(※取材は12月中旬に実施)。12月27日に大阪で、「FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2025」のステージにて、“田淵智也 40th Anniversary special”企画として歌うことになってます(参照:ユニゾン田淵智也「レディクレ」で生誕40周年ライブ、盟友や先輩の祝福に「僕に音楽があってよかった」)。
ライブは、まったくやるつもりはなかったんですよ。「RADIO CRAZY」が企画してくれたから乗っからせてもらっているだけで、ライブはできない、人前で歌は歌えないと今でも思っているし。まかり間違ってやることになって戦々恐々としています(笑)。
──素敵な経験になっているといいですね。一生に一度の経験……ではないけれど。
一生に一度です。ただ、歌うことにそんなに抵抗はなくなってきたので、それでにぎやかしになるんだったらやりますよ、という気持ちはあるし、今後もたまにやったりするかもしれない。もの珍しさで「いいもの聴けた」と思う人がいるんだったら、そこに対して何かやることは全然やぶさかじゃないモードです。
──今日話してつくづく思うのは、田淵さん、すごく“開いて”きましたよね。この20年間で。
20周年を達成するまでは守っていたところもあったので。開きすぎるとそこでブレが出ちゃうから。
──そもそも20年計画でバンドを進めてきた人って、ほかにいないんじゃないですか。そこに至るまでになくなってしまうバンドのほうがはるかに多いので。本当にすごいことだと思います。
20年続けるというのはめちゃくちゃ大変でした。辞める理由なんて、そこかしこにありましたから。それは自分なりに予期していて、続けるためにはどうするか?という工夫を、僕なりにいろいろしてきたつもりです。ファンやメンバー、スタッフとの関係値の築き方もそう。僕の中で一生懸命考えた仮説として、「こうすれば10年超えても行けるかも」というものを必死に試してきて、なんとか20年にたどり着いたので。僕の仮説がうまくいったかどうかわからないですけど、それでも「バンドを20年やるのが自分の人生の目標だ」というつもりでやってきた、大きなストーリーが完結したのが2024年で。2025年は「次にどうすればいいのかな?」って、ふらふらしながら考える1年になったかなと思います。
──そして今年、2026年にはどんなビジョンを描いていますか?
前のアルバム以降、もう3枚ぐらいシングルを出しているので、本当は次の構想とかモードを説明できるくらいになってるはずなんですけどね。2025年は20周年の反動というか、単純にふわふわしてたら終わっていた、という感じの1年だったので。それをもって2026年はどうするか?ということは、まだあんまりバシッと説明できないです(笑)。
──楽しみにしています。アニメも、新曲も、ライブも。
ありがとうございます。
──そしてまた、ときどき歌ってください。
いやいや、本当に勘違いしていると思われちゃうから。調子に乗りすぎないようにしたいと思います。
ライブ情報
UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2025-2026 うるわしの前の晩
- 2025年12月5日(金)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
- 2025年12月7日(日)北海道 旭川市民文化会館
- 2025年12月14日(日)茨城県 水戸市民会館 グロービスホール
- 2025年12月19日(金)兵庫県 アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)
- 2025年12月20日(土)滋賀県 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール
- 2026年1月9日(金)大阪府 フェスティバルホール
- 2026年1月10日(土)大阪府 フェスティバルホール
- 2026年1月12日(月・祝)広島県 広島文化学園HBGホール
- 2026年1月16日(金)埼玉県 大宮ソニックシティ ホール
- 2026年1月23日(金)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2026年1月25日(日)新潟県 新潟テルサ
- 2026年1月31日(土)福岡県 福岡サンパレス
- 2026年2月1日(日)香川県 レクザムホール(香川県県民ホール)
- 2026年2月5日(木)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール
- 2026年2月6日(金)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール
- 2026年2月10日(火)東京都 TOYOTA ARENA TOKYO
- 2026年2月11日(水・祝)東京都 TOYOTA ARENA TOKYO
プロフィール
UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾンスクエアガーデン)
斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)からなる3ピースロックバンド。2004年7月に結成され、都内を中心に活動を開始する。2008年7月にシングル「センチメンタルピリオド」でメジャーデビューを果たした。結成20周年記念日となる2024年7月24日に初のベストアルバム「20th ANNIVERSARY BEST SPECIAL BOX『SUB MACHINE, BEST MACHINE』」をリリースし、同日に東京・日本武道館でアニバーサリーライブ「ROCK BAND is fun」を開催。2026年1月よりTBS系で放送されるテレビアニメ「うるわしの宵の月」にオープニング主題歌「うるわし」とエンディング主題歌「アザレアの風」を提供し、この2曲を収録した両A面シングルを1月21日にリリースした。
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衣装協力
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