UNISON SQUARE GARDEN新作シングルは「うるわしの宵の月」ダブル主題歌、田淵智也がサウンドと歌詞で表現した原作愛とは

UNISON SQUARE GARDENの2026年は、結成22年目を迎えるバンドの揺るがぬアイデンティティと、新たな挑戦を両立させた2曲から始まる。1月21日リリースの「うるわし / アザレアの風」は、TBS系の新テレビアニメ「うるわしの宵の月」オープニング主題歌とエンディング主題歌を収録した両A面シングルだ。

アニメの原作である「うるわしの宵の月」をはじめ、「ひるなかの流星」「椿町ロンリープラネット」などの作品で知られるやまもり三香は、田淵智也(B)のフェイバリットマンガ家の1人。2曲通して聴けば、サウンドと歌詞の隅々にまで込められた、作品への深い愛情と理解がしっかりと伝わるはずだ。

音楽ナタリーでは、2月まで続くシングルリリースツアー「うるわしの前の晩」真っ最中の田淵をキャッチ。新曲について、そして12月にリリースした初ソロアルバム「田淵智也」について、20周年を経てさらに前進するバンドの現状について、さまざまな質問に答えてもらった。

取材・文 / 宮本英夫撮影 / 笹原清明(L MANAGEMENT)
ヘアメイク / 中井正人(DEUCE)スタイリスト / 川上麻瑠梨

憧れのやまもり作品、主題歌オファーの第一印象は「これは超ムズいぞ」

──ユニゾンのやまもり三香作品へのオマージュ曲は過去にもあって、「弥生町ロンリープラネット」と「8月、昼中の流れ星と飛行機雲」ですか。田淵さんは表立っては言わないけれど、ファンは皆知っているので、今回のタイアップには感慨深いものがあります。これはどんなふうに始まった話ですか?

これまでのやまもり先生の作品もそうなんですけど、「うるわしの宵の月」はラブストーリーであり、少女マンガであるので。包み隠さずに言うとロックバンドのバイオグラフィを考えたときに「アルバム曲ならいいけれど、シングルとなると入れるのはけっこうムズいぞ」というのは、めっちゃ思っていました。

田淵智也(B)

田淵智也(B)

──それはなぜ?

シングルはバンドの代表曲として、例えばイベントに出たら「僕たちの最新曲を聴いてください」と言ってマストでやる曲だし、ライブツアーでも一番いいところに置くという、それぐらい荷が重い存在でもあるので。でも「うるわしの宵の月」のための曲を書くなら、「やっぱり今回のユニゾンも激しくて最高!」みたいな曲とは絶対違うものになるだろうし、だからと言って「ユニゾンのファンに安心してもらうために超激しい曲にします」だと、原作に対して失礼だから。これは超ムズいぞというので「本当に俺たちで大丈夫ですか!?」ということはアニメサイドに最初に聞きました(笑)。

──最初から「やるやる」という感じではなかったんですね。

お話をいただけたのはめちゃくちゃうれしかったのですが、制作のハードルは高いとも思っていて。正式に決定するまではすごいビビってましたね。ロックバンドで、エレキギターで、作品の世界観とも整合性が取れて、原作のファンも納得するにはどうしたらいいんだろう?と、ずっと考えていました。

──結果的にしっかりバンドサウンドの、ユニゾンならではのシングルに仕上がっていると思います。

制作当時のバンドのモードもあったんですけど、鍵盤を入れていないんですよ。ピアノやストリングスでアレンジできちゃえばもっとイメージを広げやすかった気もしますけど、あえて楽器を足さないという制約を入れながら、ポップスに寄りすぎないという選択をしたので。例えば「春が来てぼくら」(テレビアニメ「3月のライオン」第2シリーズ第2クールオープニングテーマ。2018年リリース)のときは、ピアノとストリングスを足したら普通に主題歌として成立するから、それでよかったんです。あのときも「ロックバンドが書くにはムズい系の作品だな」と思っていたんですけど、思い切りポップスに振り切って、それをたまたまバンドがやっていますという感じにしたら、アニメのファンの人も納得してくれるかな?と。今回はギター以外使わないというお題が俺の中にあったので、シングルとして出すことはけっこうな挑戦というか、怯えがありました(笑)。

──確かに、特に「うるわし」は今までのシングル曲とは違う面が多々ありますね。ボーカルのキーが少し低めに聞こえるとか、AメロBメロが抑えめとか、全体的に落ち着いた聴き心地ではあると思っていて。

抑揚を付けすぎない、というのはありました。この作品に備わってほしい温度感として、ドーンと歌い上げる感じではないよな、と思ってはいたので。抑揚を付けすぎず、かといってなさすぎにもせず、そこはいろんな工夫で成り立たせた実感はあります。

──原作のマンガ自体も、毎日ドラマチックな出来事が起きるわけじゃなくて。2人の関係が近付いたり離れたり、ドキドキしながら、後悔しながら、日常の時間が流れていく世界観ですよね。その温度感とぴったり合っている気がします。

そう言ってもらえるとうれしいです。

歌詞は「こういう世界の中のお話です」と表現する役

──「うるわし」は音楽的にはなんと言えばいいか、「シュビドゥビ」と歌うコーラスとか、4ビートのジャズっぽいグルーヴが特徴ですが、サウンドとしてはどんなことを意識しましたか?

自分でもわかってないですけど、なんだろう? わかんない。俺、いつも説明できないんだよな。

──ミュートしたカッティングとか、繊細なカッコよさがちりばめられていて。

ギターがおしゃれな感じはやりたかった。その絶妙なおしゃれさが、ロックバンドが少女マンガの主題歌をやるときのバランスとして一番よかったんじゃないかなと思っています。ちょっとおしゃれでちょっと大人感があるほうが、結果として作品に寄せすぎずに格好がつくというか。でもちゃんと作品にも合っているように聞こえるのでは?と。

──すごく狭いスイートスポットを狙ってますよね。

だから「思っていたのと違うのが来たな」って、アニメのスタッフが思ってもおかしくない曲ではあったんですけど。でも丸山裕介監督とやまもり先生と打ち合わせしたときに「今回のアニメは絵が勝負なんです」と言っていたのが、俺的には背中を押される感じでした。恋愛ストーリーやキュンキュンするセリフ回しもさることながら「やまもり先生のキャラクターの造形美をアニメで表現するんだ」というのは、俺的にも「わかる!」と思ったので。

──それ、大事なキーワードです。「絵が勝負」。

少女マンガをアニメで表現するときは、演出の方向としてどちらに行くかで風合いが変わるので。絵の美しさにちゃんと凝るんだと聞いたときに、さっき言った「ちょっとおしゃれな楽曲がちょうどいいかも」という方向性と合致しそうだと思ったので、思いきって書けたところはありますね。

斎藤宏介(Vo, G)

斎藤宏介(Vo, G)

──歌詞はどうですか? 田淵さんは原作をすでに読み込んでいるから、そんなに苦労せずに書けましたか。

お題になるもとがあると、自分の語彙じゃないところから使えるから作詞家的には助かる、というのはありますね。

──あえて聞くと、この歌詞は2人の主人公のどちらの視点ですか? 宵ちゃんか、琥珀くんか。

オープニング曲だからそんなにキャラクターの視点からにならないほうがいいなと思ったので、ちょっと俯瞰している感じですかね。エンディングの「アザレアの風」はもっとストレートな感じで、宵ちゃんの視点で書きましたけど、「うるわし」に関しては「このキャラの歌です」みたいな感じにするのではなく、「こういう世界の中のお話です」というものを表現する役として、斎藤(宏介 / Vo, G)くんが歌詞を紡いでいるという感じの温度感にしたつもりです。

──いわゆる神の視点ですよね。

深読みする人は「1番は誰で2番は誰で」とか、どっちからでも読めるのではないかなとも思います。そもそも少女マンガの8割、9割の主人公は女の子なわけで、女の子のキャラ目線で男性ボーカルが歌うというのが、歌詞の言葉選びにおいて苦しくなってくるところは絶対あるよな、というのも悩みの1つではあったので。それを成立させるためには、あんまり女の子女の子しすぎないほうがいいなとは思っていました。見ようによっては「琥珀の視点かも?」と思う人がいてもいいだろうし、そこは俺もあんまり決めすぎずに書いています。行単位で指定されて「これはどっちの視点ですか?」と聞かれても、たぶん答えられないかもしれない。

──確かに。面白いですよね、歌詞を書くのって。

面白かったです。ザ・少女マンガ、ザ・恋愛ストーリーというものに対して歌詞を書くときの、自分なりのお題のクリアの仕方として、新しい扉を開けてよかったというところはありますね。