UNISON SQUARE GARDEN|「ユニゾンはいつでもライブやってます」FC限定生配信ライブに2つの全国ツアー、田淵智也が語る怒涛の2021年後半の楽しみ方

「Patrick Vegee」ツアーはみんなの予想通りにはいかない

──その次は、8月に「UNISON SQARE GARDEN Revival TOUR "CIDER ROAD"」が始まります。過去のツアーを再現する、今年2本目の「リバイバルツアー」ですね。

田淵智也(B)

前回のリバイバルツアー(「UNISON SQARE GARDEN Revival TOUR "Spring Spring Spring"」)に比べたら、セットリストの哲学はだいぶ整ってはきているので、そんなに違和感はないセットリストだなと思ってはいるんですけど、カロリーがめちゃめちゃ高い。曲が長いし、今の我々の体力でできるのか?と。どうやってたんだろうな、当時。

──それはリバイバルツアーの醍醐味でもあり、不安でもあり。

それこそさっき言った、保たせる作業にはうってつけというか。それと、発見もあるんですよね。「俺たち、こんな気持ちでやってたな」みたいな、それを思い出せるのはすごくいい企画だなと、この間も練習しながら思ってました。

──ファンのみんなの体力も試されます。

「長えな」と思われなきゃいいけど(笑)。

──そしてそのあと10月6日から、いよいよ「UNISON SQARE GARDEN TOUR 2021-2022『Patrick Vegee』」が始まります。改めて「Patrick Vegee」は今の時点で振り返ると、どんな性格のアルバムだと思ってますか。

「MODE MOOD MODE」(2018年1月発売のフルアルバム)がすごくポップな方向に振ったアルバムだったので、その反動で、ぐちゃっとしてるアルバムだなとは思ってます。「すごいもの」とはそんなに思ってないし、短い曲は短く作って、間を埋めるようにボリュームのある曲を作っていったという順序なので、さらっと聴けるものとして成立すればいいなと思って作ったアルバムです。

──ツアーのセットリストはまだ構想中?

斎藤宏介(Vo, G)

微妙に考えてはいます。もともとの予定では、このツアーは同期音源を使わずにやろうと思ってたんですよ。鈴木くんのドラムセットの横にSPDという機材があるんですけど、あれを持って行かない前提でやろうかなと思っていたので、だから「春が来てぼくら」も「シュガーソングとビターステップ」もなし。「春が来てぼくら」はシングルを出してからさんざん演奏してきてたし、「シュガーソングとビターステップ」も別になくていいじゃろと思って、「全部3人でやろう」というツアーにしようと考えていたんですけど、今は全然違う気持ちでいます。それは時代が変わったので、考え方も変わったということですね。「春が来てぼくら」が必要かどうかもセットリスト次第で柔軟に決めようかなと。あんまりみんなの予想通りにはいかないかなと思ってます。

──なるほど。

「Patrick Vegee」は、「この曲のつながりがいいよね」みたいな、いわゆる「曲順マジック」を僕なりにいっぱい仕掛けたアルバムなので、これはめちゃめちゃヒントになっちゃうんですけど「その曲順で来てくれよ」と思う人にとってはそうはいかないというか、「それとライブは別」という気持ちでもともとはいるので。今出せるヒントといえばそんな感じですね。あとは、ようやくたくさんの本数を回れるツアーなので、最初に言った「僕らは普通にライブやってるだけです」というものが、ちゃんとわかるツアーであればいいなと思っていて。今の我々の最新形というか、いい意味で「よそ行き感」のあるものにしたいです。リバイバルツアーは完全に内輪向けで、「ヒット曲がない」「友達を呼びづらい」みたいな地味なライブなので(笑)。そんなツアーが続いたけど、それとはまた違うものになるかな。「我々が今普通にやってるライブなのでぜひ」みたいな、「友達もちょっと呼びやすくなるよ」というか(笑)。安心して眺められるツアー、セットリストになるんじゃないかな?と思います。

今は楽しみ方の選択肢が増えた時代

──ライブにまつわるいろいろな制限について、お客さんはどう思ってるんでしょうね。この1年間でいろんな規制というか、決まりごとにも慣れてきて、新しい楽しみ方を見つけてくれているのか、それともまだ違和感があるのか。

鈴木貴雄(Dr)

うーん、客のことはわかんない。僕のこととして言えば、もともと声なんかよほどベロベロになったときにしか出さないので、ライブを観るときは(笑)。……って、ここで自分の話をしてもただのポジショントークになっちゃうな。そうだなあ……あえて悪い部分を探すなら、声を出しそうになって堪えちゃうとか、マスクで蒸れそうとか、そういう面もあるけど、そこは「だってそういう時代なんだもん、しょうがないじゃん」という目線で見てます。逆にポジティブな面で見ると、「踊れる人が増えたな」とは思ってるんですよ。僕的にはずっとそれが見たかったというか、ライブ中にみんなが一律にそろって同じタイミングで声を出して手拍子してという光景に対しては、ずーっと「いつからこうなっちゃったんだろうな」と思っていたので。それに比べると「隣が1席空いてますよ」というのは超レアな時代で、会場によったり今だけだったりするかもしれないけど、隣の人がいないことで体を動かせる人が増えたんじゃないかと思うと、僕的には「やったー」と思いますよね。僕はそういう一体感には参加せずにライブを見続けてきたし、やる側としてもそういうシーンの空気が好きじゃなかった。僕自身はそのスタンスでいますけど、ほかの人とそろってない動きをする人が指差されるような時代が続いていたので……別に誰がどういう選択をしてもいいんですけど、いろいろな選択肢を選びやすい時代になったかなとは思っていて。「声を出せない分、自分で考えてよ」というときに、「俺は踊ってみようかな」とか、そういう人がちょっとでも増えたなら、いい時代だなと思ってますけどね。

──問われてはいますよね。この1年間、そもそもライブってどういうふうに楽しむものだっけ?ということを、みんな1回考え直す時期だった。

「いつか声が出せる日が来たら思い切り叫びたい」とか、そういう人もいるはいるので、そりゃそうかと思うんですけど、声を出せないうちに新しい楽しみ方を見つけられるいい機会だなと僕的には考えてます。出せるようになったら出せばいいけど、「その日が早く来たらいいな」というのは誰にもコントロールができないから、そこにはそんなに期待していなくて、「今出そろってる持ち札の中で一番楽しめるものを考えよう選手権」的な考え方でやったほうが、この時代を楽しく生きれるのでは?と思ってますね。なので、今の時代、僕はあんまりストレスを感じていないです。やってる側としても見に行く側としても。なんにせよ、僕個人のことを考えると、そしてライブエンタメというものの価値を信じている人たちのことを考えると、今できることをポジティブに最大限やること、見せること、が大事だなと思ってますね。ここ1年ずっと同じこと言ってますけど(笑)。

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