UNISON SQUARE GARDEN|「ユニゾンはいつでもライブやってます」FC限定生配信ライブに2つの全国ツアー、田淵智也が語る怒涛の2021年後半の楽しみ方

2021年上半期だけですでに2度の全国ツアーを敢行したUNISON SQUARE GARDENが、下半期に向けてさらなるライブ三昧の日々に突入する。

まずは7月23日と24日にオフィシャルファンクラブ「UNICITY」会員限定のオンラインライブ「UNICITY LIVE ONLINE」が行われる。そして8月に、2013年のツアー「"CIDER ROAD" TOUR 2013 ~4th album release tour~」を完全再現する「Revival Tour "CIDER ROAD"」を開催。さらに10月6日からは、昨年9月のアルバムリリースから1年以上を経て待望の「UNISON SQARE GARDEN TOUR 2021-2022『Patrick Vegee』」が始まる。「ライブをやっていないとバンドは死ぬ」と公言し、どんな状況でもライブをやり続けてきた彼らがエンタメ受難の時代に提案する、新たなライブの楽しみ方の形とはどんなものなのだろうか。

音楽ナタリーでは、バンドを代表してソングライターの田淵智也(B)にインタビュー。バンドの現状と未来について、今の思いを聞いてみた。

取材・文 / 宮本英夫 ライブ写真撮影 / Viola Kam(V'z Twinkle)

今はとにかく「いつでもライブやってます」と言い続ける

──今年のUNISON SQUARE GARDENは、とんでもない勢いでライブをやり続けていますね。

田淵智也(B)

2019年の結成15周年が終わった時点で「僕たちは普通にライブをやるだけですよ」という活動にしたいなと考えていたので、僕らからするとこれが普通のことで、それに沿った活動ができているとは思います。加えて今はとにかく「いつでもライブやってます」ということを言い続ける期間だと思っていて、その中でチケットを買うこと、当日会場に来ること、行き帰りの間に何を考えているかとか、一から思い出してもらうときだと思うんですよ。それは時間がかかることだと思うので、どちらかというとそっちの目的のほうが強いかな、いろんなツアーをやっているという意味は。1つひとつのツアーに明確な目的があるというよりは、中長期的な視点で「ライブをやってる」ということ自体がまず大事な期間かなと思ってます。まあ、20周年が来る前までにこのモードは終わってほしいなとは思いますけど(笑)。20周年はまた違うことを考えてるから。

──20周年というと、2024年ですか。

もう3年後なんですよ。だからどこかでまた次のモードに切り替えるタイミングが来ると思っていて、それが次のアルバムのときなのか、20周年のときなのかはわかんないですけど、今は今で、このやり方がとても楽しい。何より僕らはライブをやってないとバンドとしての体力が衰えてくるというか。メンバーの関係性的にも、ライブをやることでバンドがつながり続けている状態を維持するというか、そこの感覚を保たせるようにしないと続かないなと思っていて。バンドって不思議なもので、定期的に「お前たちは会うのだぞ」という状況を作らないと続かないと思うんですよ。私生活を共にしているわけじゃないから。それを続けることがバンド的にはとても大事なことだと思っているし、僕らの健康面にもつながってくるんですよね。歌もドラムもベースも、筋力が衰えてきたり、今まで歌えた歌が歌えなくなってきたり、そういう事態がたぶんこの年齢になると容易に訪れやすくなると思うので。

UNISON SQUARE GARDEN

──わかる気はします。

例えば「斎藤(宏介 / Vo, G)くんはこのキーをいつまで維持できるのか」というのは、僕がずっとそわそわしてるテーマですけど(笑)。そこは斎藤くんともすごく話していて、「やっぱり、ずーっとやってるのって大事じゃない?」って説が僕の中にはあるんです。それは自分の体力的な面もそうだし、実際、以前ライブをやり続けたあとに1回止まったら体力が衰えたので、それはよくないなと思っていて。そういう意味でも、「続けている」という状態で自分たちを保たせることは、けっこう大事だなと思っております。

マニアックな曲に投票しやすいファンクラブ限定配信ライブ

──7月23日と24日にはオフィシャルファンクラブ「UNICITY」会員限定のオンラインライブ「UNICITY LIVE ONLINE」があります。23日はアコースティック編成のライブ、24日はバンド編成のライブと、内容を変えて2日間やるというアイデアはそもそも誰から?

左から斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)。

たぶん僕だったと思います。話をさかのぼると、もともとの(2015年の)「ファンクラブを作ろう」という話が出たところから始まるんですけど、スタッフからその話があったときに「会員は必ず1年に1回のツアーでチケットを当選させる」というシステムを提案して、それを叶える形でファンクラブを作ってもらったんですね。年会費を払ったらライブに行きやすくなるというシステムは、僕が学生の頃は好きじゃなかったんですけど、当時のユニゾンのチケット倍率や、僕が大きな会場でやるのは嫌だとか、いろんな状況のもとでチケットが取りにくくなっていて、それをどうやって解決するか?と考えたときに、確実に来られる仕組みを作ることが大事だと思ったので。例えばその土地の会員数に合わせたキャパ数に設定したり、キャパを増やしたり回数を増やしたり、そういうことを含めて、ファンクラブの年会費を払った人は絶対に来られる仕組みを考えたんです。先行販売であぶれる人が出たらその人たちのためにもう1本ライブを切るということをしても、たぶん僕らの音楽の性質や、刺さっている人数とか、今後の伸び率を考えると、そんなに面倒なことにはならないと思ったので、会員は1年に1回のツアーに必ず来れる仕組みは作れるだろうと。人数が把握できるから、適切なキャパシティを切ることができるし、この仕組みならできるのでは?と思ってファンクラブを作ってもらったということがあって。

──なるほど。

そのうえでさらに何をしてあげられるか?というと、ライブをやるぐらいしか僕らにサービスできることはないので。ファンクラブだったら、たとえば握手会とか、YouTubeで楽しい番組を届けるとか、いろいろやれよって話だけど、僕がそういうのに全然向いてないので、会員向けのライブを何回かやってきたんです。ってなると、去年「ライブはできません」という状況になったときに、「年会費払っている人はどうなるの?」となりますよね。去年は「バンドの年間プランをどうしよう?」とか、そっちを考えるのに手いっぱいで、ファンクラブのことを考えるのが遅れてしまって。正直去年に関しては、ライブの部分で会員であるメリットの提示ができなかったんですよ。それが1年続いてしまったので、何かやらなきゃという話になったときに、スタッフがまず会員にアンケートを取ることを提案してくれて。そこで意見をもらって、「ファンクラブ、入っててよかった」と思うことを考えて、出てきたのが今回のプランです。まず配信ライブであるということを決めて、だったら普段観れないアコースティックみたいなものをやろう、おまけでバンドでもやろう、ということになったのかな。細部は忘れちゃいましたけど。ということもあって、「去年1年間無駄金として消えた俺たちの気持ちはどうなる?救済キャンペーン」が実現したわけです。そのうえで楽曲のリクエストを受け付けて、コアコアなセットリストを作るという。

──コアコアってなんですか(笑)。

鈴木貴雄(Dr)

去年やった生配信ライブ(「USG 2020 "LIVE (in the) HOUSE"」)で、一般向けにアンケートを取ってセットリストを決めたじゃないですか。あれをやると必ず起こるのが「俺の好きなマニアックな曲が上位に入らない」ということで、それがわかってるから投票もしづらい、みたいな。蓋を開けてみれば「そりゃ人気のある曲が上に来るよね」というランキングができあがって。じゃあ「マニアックな曲が上位に来たらウケる」という客の気持ちをどう実現するか?と考えたときに、それならファンクラブ会員限定でやると。投票受付の文章の触れ込みも「マニアックな曲に投票したい」と思わせるものにして、投票しやすい空気を作ってあげて。どんなランキングができるだろう?という興味が僕もあったので、「俺たちの本当のランキングを決めよう」みたいな感じで「どうぞ盛り上がってくれ」というものになればいいなと思ってます。

──たとえば「アコースティック編成ライブ」といっても、普通にアコースティックが似合う曲もあれば、「こんな激しいやつをアコースティックにできるか?」という意味のリクエストもあるだろうし。

そうそう、そういうのもありなんじゃないかと。途中経過を見たけど(※取材は投票締め切り前に実施)、面白かったな。いい意味でツッコみ甲斐のあるランキングだったので。