ナタリー PowerPush - 上坂すみれ

すみぺと同志をつなぐ“ハッシュタグ” その名も「革命的ブロードウェイ主義者同盟」

ザ・ニンジャのテーマソング、カッコいいですよね!

──今回のアルバム収録曲も一連のシングルと同じく、制作時に詞の世界観やサウンドデザインについての打ち合わせはしていない?。

雪之丞さんとはお会いしました。「歌詞はアーティストと話をしてから書くようにしている」っておっしゃっていたので、私もお話をさせていただいて。実は雪之丞さんは私の大学の先輩で、あと私「キン肉マン」が大好きなんですけど……。

──あっ、そうか。森さんってアニメ版の主題歌「キン肉マンGo Fight!」の作詞家でもあるのか。

しかも「キン肉マン超人大全集」っていう超人のテーマソング集の作詞もほとんど手がけていらっしゃるんですよ!

──前回のインタビュー(参照:上坂すみれ「げんし、女子は、たいようだった。」インタビュー)で、ご自身のインターネットラジオ番組でキン肉マンキャラソン祭りをやるくらい好きだって言ってましたもんね。

はい。だから実はあの日の番組は森雪之丞祭りだったんです(笑)。なので、お会いしたときも「ザ・ニンジャの曲(コロムビアゆりかご会・こおろぎ'73「ジャパニーズ・マジック」)、カッコいいですよね」ってお話で盛り上がりました(笑)。

──それ、打ち合わせじゃないですよね(笑)。

……あっ、打ち合わせしてない! だからやっぱりこれまでのシングルと作り方は一緒だったんだと思います(笑)。iPodのプレイリストをクリエイターの皆さんに見ていただいた感じというか。本当にコアな私のプレイリストをそのまんま世の中に出すとマニアックになりすぎるので、私の好きな音楽の傾向を知っていただいた上で、詞や曲を作ってもらっていて。広く人口に膾炙しているクリエイターさんは本当に雄弁でいらっしゃるというか、そうやって制作をお願いすると、私の好きな音楽や思っていることをほどよく、でもカッコよくアウトプットしてくださるんだなあ、と思いました。

なんでマストなんだよー!

──上坂さんは「平成生まれ昭和育ち」を自認していて、今回のアルバム収録曲にも80年代テイストがふんだんに散りばめられています。でもサウンドは単なる80年代の焼き直しではない。“最新型の昭和”というか、ちゃんと2014年のサウンドになっています。

さっきの「かわいい」の話と似ているんですけど、やっぱり私は「平成生まれ」の22歳なので「平成フィルター」「22歳フィルター」みたいなものがあるのかもしれないですね。私のために曲を作っていただいて、私が歌うということは、自然とそのフィルターを通ることになるから、往年のゲームミュージックテイスト、セイントフォーテイストであっても、当時のものとはおのずと違うものになるというか。80年代にリアルタイムでセイントフォーを聴いていた人は当然それを最新ポップとして聴いていたと思うんですけど、私はある種の古典……とまでは言わないですけど、ある程度歴史のある曲として触れることになるので。明治の人が漱石を読むのと今の人が読むのとでは感じ方が違うのと同じように、セイントフォーをどれだけ意識したとしても、平成生まれの私が歌うと80年代っぽくはならないんだと思います。

──マニアには、その古典的作品、旧作をマニア的教養を身につけるための「お勉強」として見聞きすることもあるかと思うんですけど……。

昭和歌謡やセイントフォー的な80年代アイドルポップは私にとって研究対象ではありますけど「お勉強」ではないですね。

──今も漱石をエンタテインメント作品として読むファンがいるように、セイントフォーが純粋に好きだから聴いている、と。

はい。研究は半ば趣味なので、楽しく聴けるものは聴くけど、合わないものはやっぱり聴かないですから。逆に「これだけは聴いておくべき!」みたいなものはあんまり参考にしてないかもしれないです。

──「マストバイ!」的なノリは苦手ですか?

「なんでマストなんだよー!」ってなっちゃいます(笑)。

ここではないどこかに連れて行ってくれる音楽

──実際上坂さんは以前(参照:上坂すみれ「七つの海よりキミの海」インタビュー)、小学生の頃から「マストバイ」扱いされがちなイマドキのヒット曲にはあまりノレなかったって言っていましたよね。

そうですね。

──ただ小さい頃にヒット曲にハマれなかったなら音楽を聴かない生き方を選択するのもひとつの手のような気もします。それでもハマれる音を探した理由って?

うーん……。音楽を聴き始めた頃は「逃げ道って大事だなあ」って思ってたんだと思います。学校にそんなに楽しみがあるわけでもないというか、クラスには中心的なポジションの人たちがいて、それ以外の私たちはその人たちのグループに吸収されるか排除されるかのどっちかを選ばなければならない感じになっていて。がんばればそのグループの話題についていけたのかもしれないけど、それはそれですぐに息切れするだろうし、そもそもそんなに従順でもなかったので(笑)。

──レコード屋の「マストバイ!」のポップにすら「なんでっ!?」ってなるのに、クラスメイトの「マストの話」なんか聞いてやるわけないですよね(笑)。

あはははは(笑)。で、そういう寄る辺ない我々の中には、私もそうなんですけど、マンガが好きで絵を描くことも好きな人が多かったんです。今思うと物語の世界にハマったのもある種の逃避だった気もするんですけど、そのマンガやイラストにハマっていくうちに、さらに趣味の世界を拡張したくなって。

──そして「ある種の逃避」のための音楽を探すようになった?

あまり明確に意識していたわけではないんですけど「視覚的な世界を起点に趣味を拡張するなら、次は音の世界なんだろうな」って思っていたんだと思います。でも私が読んでいたマンガや描いていたイラストに当時の最新J-POPが似合うかっていうとそうでもないし。でも私は本当に音楽が聴きたいし、っていう気分だった気がします。というのにはもうひとつ理由があるんですけど、思春期の頃って家族の声がすごくやかましく聞こえたりもしましたよね?

──ブン殴りたくなるくらい、やかましかったです(笑)。

そういうものから耳をふさぎたいって気持ちもあって(笑)。でも手で耳をふさいだところで頭の中ではノイズが鳴るというか……。無音になったらなったで、いろいろ思い出してしまうこともあるし(笑)。だから別の世界の誰かの言葉や音を聴きたかったっていう面もありました。

──その「別の世界の誰か」が以前も言っていた戸川純さんやザ・スターリン、筋肉少女帯、そして昭和歌謡であり、軍歌、アニメ・ゲームミュージックあたりだった?

そうですね。今はもう生活の一部と化してますけど、当時はそれが「ここではないどこかに連れて行ってくれる音楽」だったんだと思います。

1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」/ 2014年1月8日発売 / STARCHILD
初回限定盤A [CD+DVD] 3600円 / KICS-91983
初回限定盤B [CD] 3600円 / KICS-91984
通常盤 [CD] 3000円 / KICS-1983
CD収録曲
  1. 予感
  2. 革命的ブロードウェイ主義者同盟
  3. サイケデリック純情
  4. テトリアシトリ
  5. Theme of Dr.AKASO
  6. 我旗の元へと集いたまえ
  7. SUMIRE #propaganda
  8. 我らと我らの道を
  9. 悪夢
  10. げんし、女子は、たいようだった。
  11. 哀愁Fakeハネムーン
  12. 真・革命伝説
  13. FLYERS
  14. 七つの海よりキミの海(アルバムを通して聴いてくれた同志に…)
初回限定盤A DVD収録内容
  • 「革命的ブロードウェイ主義者同盟」Music Video
初回限定盤A特典
  • 28Pミニ写真集
初回限定盤B特典
  • 革ブロ組織増強記章
ライブ情報
上坂すみれ「革ブロ総決起集会」

2014年2月11日(火・祝)東京都 中野サンプラザホール
OPEN 17:00 / START 18:00
料金:前売 6000円
一般発売:2014年1月11日(土)

上坂すみれ(うえさかすみれ)

上坂すみれ

ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優。小学生時代よりジュニアモデルとして活動。2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューし、同年「中二病でも恋がしたい!」や「ガールズ&パンツァー」など注目作に立て続けに出演する。その一方でラジオ、イベント、アニメ誌、カルチャー誌などを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。7月に桃井はるこ作詞作曲による2ndシングル「げんし、女子は、たいようだった。」をリリースした。また「Animelo Summer Live2013」に初出場を果たす一方で、11月には櫻井孝昌・デジタルハリウッド大学大学院特任教授との共著「世界でいちばんユニークなニッポンだからできること~僕らの文化外交宣言~」(パルコ出版)を上梓し、在モスクワ日本大使館主催の文化交流イベント「J-FEST」にもゲスト参加する。そして2014年1月、1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を発表した。