ナタリー PowerPush - 上坂すみれ
すみぺと同志をつなぐ“ハッシュタグ” その名も「革命的ブロードウェイ主義者同盟」
絶対ジャッキー・チェンが出てくるんだと思ってました
──「革命的ブロードウェイ主義者同盟」ってその音楽的原体験がしっかり刻まれたアルバムになりましたね。タイトル曲では「導かれるがままに ただ泳ぎ出せ」「必ず革命引き起こせ」と、「FLYERS」では「君も来ないか? 次の未来を探すんだ」「しがらみなんて断ち切って」と高らかに歌っている。
でも私自身はそんなに力強く歌うタイプではないので、すごく壮大な曲の上に、わりと女の子が歌ってる感の強い声が乗っている感じがしていて。なんというか、ラ・ムーみたいだなって(笑)。
──ブラックアーバンなトラックに菊池桃子さんのアイドルボイスが乗っていたラ・ムーの楽曲に近いかもって?
はい。ラ・ムーはそのいい意味での違和感がステキなんですけど、私自身はレコーディングのとき「私の声で歌うのってちょっと違ったりはしないかな?」って不安もあって……。
──むしろ上坂さんの声のおかげで楽曲に説得力が生まれている気がします。かわいらしいロリータルックで「趣味の世界に生きてもいいじゃない!」ってタフにアジテートする、このアルバムと上坂さん自身のキャラクター通りの音になったな、って。
確かに完成した今は、ある意味アニソンやキャラソン的というか、私の世界や私のキャラクターみたいなものを1つの物語のようにお見せすることができたかなって思ってます。例えばアルバム用の新曲としては最後の曲になる「FLYERS」には映画のエンドロールのときに流れている音楽みたいなイメージがありますし。
──「上坂すみれ物語 エピソード1」はこれにてオシマイ。これから「FLYERS」=「飛翔する人」になってエピソード2へと羽ばたくよ、と。
まさにまさに。で、この曲が流れているあいだ、スクリーンにはNGシーンがメッチャ映ってる感じです(笑)。
──あれっ!? 「上坂すみれ物語」って香港映画だったんですか? てっきり「単館系の小品なんだけど実は傑作」みたいな映画なんだと思ってました。
ウソっ!? 絶対ジャッキー・チェンが出てくるんだと思ってました(笑)。
号令じゃなくて「ハッシュタグ」
──「上坂すみれ物語」のヒロインである上坂さんは物語序盤のタイトル曲で「必ず革命引き起こせ」とアジっていて、終盤では「FLYERS」になっている。革命成功の暁には同志諸君とともにどこに羽ばたいていくんですか?
ムリにみんなを引っ張っていこうとは思ってないです。「アジテーターになりたい」とは言っているものの、「マストバイ」が苦手なのと同じように、私自身も誰かに「これ、本当にいいから!」とか「これやって!」って言うのがすごく苦手なので。みんなが好きなものと私の好きなものが自然と合致するのが一番いいことだと思っていますし、皆さんがいいと思っているものももっと知りたいです。
──確かに決起集会を観ていると上坂さんと同志諸君の関係ってすごくフラットですよね。
同志との心の隔たりはまったくないです。このあいだの決起集会(参照:上坂すみれ、雨の原宿で渾身のキャラにモザイクかけられる)でステージを降りてお菓子を配ったのもすごく楽しかったですし、ずっと「オフ会を開きたい」って言ってますし。
──しかもすごく自由な関係に見えるんですよ。「FLYERS」をBGMに上坂さんが「飛べ!」って命令したら、みんな四方八方、蜘蛛の子を散らすように好きなところに飛んでいきそうで(笑)。
そうかもしれない(笑)。だからこのアルバムは同志諸君に対する号令じゃなくて「ハッシュタグ」なんだと思います。
──なるほど! 「革命的ブロードウェイ主義者同盟」をキーワードに同志諸君をあくまでもユルくではあるものの、確実につないでくれる1枚だと。
はい!
──前回のインタビューで言っていた「テトリアシトリ」評、「少女人形がテトリスをする」「伊藤つかさ featuring 初音ミク」といい、キャッチコピーを付けるのがホントにうまいですよね。ともすればアナクロに見えかねないご自身の趣味の世界を最新のキーワードを使って再解釈するセンスがあるというか。
うふふふふ(笑)。また話が戻ってしまうんですけど、やっぱり平成の世に生きる普通の子なので使うボキャブラリーはやっぱりイマドキのものになるんだと思います。
──今回のインタビューを串刺しにする「ハッシュタグ」の1つになりそうですね。「平成生まれの女の子」。
(おそるおそる)……いやでも、ホントに普通の子なんですよ?
──あはははは(笑)。
あんまり信じてもらえないんですけど、普通の子なんです(笑)。ともすれば、なんか急に暴れ出す人みたいに思われることもあるんですけど……。
──確かに遠藤ミチロウさんや戸川さんのファンを公言しているから、すごくアナーキーな人に見えることもあるかもしれない(笑)。
お2人とも、もちろんものすごくリスペクトしてますけど、憧れているのはその精神性というか。決起集会で急に脱ぎ出したりとか、臓物を投げたりはしないつもりですから。あくまで普通の子、平成のおとなしい子なので(笑)。
上坂すみれ「革命的ブロードウェイ主義者同盟」、マストバイ!
──でも上坂さんが戸川さんやザ・スターリンに救われたように、このアルバムに勇気づけられる若い子ってかなりいると思いますよ。
そういう人がいてくださるとうれしいですよね。アルバム全体を通して「革ブロとは何か」っていうのがわかる仕上がりになっていますし。ジャケットもカッチョいいし、バッジも付くし、パッケージも非常にイケてるし(笑)。大衆的なものにいまひとつついていけていない同志予備軍の皆さんにも、このイケてるジャケットを見て「面白そうな世界観だな」って手に取っていただきたいなと思ってます。
──それこそジャケットに「スターリン」って書いてあったからザ・スターリンのアルバムを手にしてハマった上坂さんのように。
まさにそういう感じですね。
──あとジャケ買いしたのってThe Leningrad Cowboysでしたっけ?
はい。「よし、この人たちはレニングラードなんだな」って(笑)。
──フィンランドのバンドですよ?
そう! あとから知って。でもリーゼントはカッチョいいし、音楽ももちろんカッチョいいし、素晴らしい出会いをさせていただきました(笑)。
──そして今回上坂さんもそういう出会いのための準備は済ませた、と。正直な話、自信作ですよね?
「マストバイ」が苦手っていう性格的なものもあって「自信作です!」と強く言えなかったりはするんですけど、でもやっぱり「いいな」って思ってます。「カッチョいいアルバムだな」って(笑)。
──だからこのアルバムは「マストバイ!」ってポップとともにレコード屋の店頭に並ぶことになると思います(笑)。
あはははは(笑)。でもホントに「マストバイ」をうまく言い換えてくれる言葉ってないんですかね?
- 1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」/ 2014年1月8日発売 / STARCHILD
- 初回限定盤A [CD+DVD] 3600円 / KICS-91983
- 初回限定盤B [CD] 3600円 / KICS-91984
- 通常盤 [CD] 3000円 / KICS-1983
CD収録曲
- 予感
- 革命的ブロードウェイ主義者同盟
- サイケデリック純情
- テトリアシトリ
- Theme of Dr.AKASO
- 我旗の元へと集いたまえ
- SUMIRE #propaganda
- 我らと我らの道を
- 悪夢
- げんし、女子は、たいようだった。
- 哀愁Fakeハネムーン
- 真・革命伝説
- FLYERS
- 七つの海よりキミの海(アルバムを通して聴いてくれた同志に…)
初回限定盤A DVD収録内容
- 「革命的ブロードウェイ主義者同盟」Music Video
初回限定盤A特典
- 28Pミニ写真集
初回限定盤B特典
- 革ブロ組織増強記章
ライブ情報
上坂すみれ「革ブロ総決起集会」
2014年2月11日(火・祝)東京都 中野サンプラザホール
OPEN 17:00 / START 18:00
料金:前売 6000円
一般発売:2014年1月11日(土)
上坂すみれ(うえさかすみれ)
ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優。小学生時代よりジュニアモデルとして活動。2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューし、同年「中二病でも恋がしたい!」や「ガールズ&パンツァー」など注目作に立て続けに出演する。その一方でラジオ、イベント、アニメ誌、カルチャー誌などを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。7月に桃井はるこ作詞作曲による2ndシングル「げんし、女子は、たいようだった。」をリリースした。また「Animelo Summer Live2013」に初出場を果たす一方で、11月には櫻井孝昌・デジタルハリウッド大学大学院特任教授との共著「世界でいちばんユニークなニッポンだからできること~僕らの文化外交宣言~」(パルコ出版)を上梓し、在モスクワ日本大使館主催の文化交流イベント「J-FEST」にもゲスト参加する。そして2014年1月、1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を発表した。