ナタリー PowerPush - 上坂すみれ
すみぺと同志をつなぐ“ハッシュタグ” その名も「革命的ブロードウェイ主義者同盟」
この人、何言ってんだ?
──確かに「アニサマ」を観ていて「上坂さん、変わらないなあ」と思いました。上坂さんのステージを初めて観る人も多いだろう2万7000人を前に「さいたまさいたまー!」って叫んでから花道を闊歩してて(笑)。
あとであの映像を観て自分でも「この人、何言ってんだ?」って思いました(笑)。さいたまスーパーアリーナだし間違ってはいないんだけど、なんで言っちゃったんですかね?
──張本人にわからないなら我々にはわかりません!
なんかもっと「みんな行くよー!」みたいなことを言いたかったはずなんですけど、緊張のあまり「さいたまさいたま」っていうアスキーアートがとても好きだった昔の私がつい顔を出したのか……。
──なるほど(笑)。「J-FEST」というか、ロシアはいかがでした? 著書にあった「J-FESTに出たい」「ロシアのロリータとお茶会をしたい」という2つの夢が両方叶いましたけど。
いやあ「なんで帰って来ちゃったんだろう?」って(笑)。
──いっそ亡命すればよかった、と(笑)。
そのくらい母国感がありました。お茶会には頭の先から足のつま先まで完璧なロリータファッションのロシアの女の子が集まってくれたんですけど、日本のロリータさんと似ているのかなと思いました。皆さんちょっと引っ込み思案というか、自己紹介するのも恥ずかしいみたいな感じなんです。でも一緒にチェキを撮ったりするのはすごく楽しそうだし、日本語を勉強しているからって、私に日本語で話しかけてくれる子もいましたし。シャイなんだけど実はフレンドリーっていう感じが私たちに似てるのかなあ、って。で「J-FEST」はすごく牧歌的。すごい大きな“文化祭感”がありました(笑)。
──大使館主催ながらも、けっこうゆるふわなイベントだった?
そうですね。平気で40分くらい時間が押したりしてましたし(笑)。でもそのロシア的な大らかな感じが、“文化祭”っていう非常に日本的なものに似ている感じがしましたし、イベント自体はちゃんと成立しているんですよ。コスプレコンテストやロシア人によるJ-POPカラオケコンテストもすごく盛り上がっていて、日本への愛を感じましたし。私が歌を披露したときも、サイリウムを振る文化がないから歌っている最中は黙々と見ている感じだったんですけど、終わったら「ブラボー!」って万雷の拍手で迎えてくれて。拙いロシア語でMCをしたことにもすごく感動してくれて、もうウルウル泣きながら喜んでました。
すごく楽しめるし、私らしいアルバム
──でも上坂さんには帰国しなければならない理由があった。そのひとつが今回のアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」なわけです。
そうなんですよね(笑)。
──2013年の活動を振り返るに、上坂さんはいい意味で我々の予想の斜め上を走り続けていた。だけどこのアルバムは直球勝負。去年1年間、我々の見てきた“上坂すみれ像”を集大成している印象を受けました。
確かに変に奇をてらった感じではなくて、通して聴いてすごく楽しめるし、私らしいアルバムになった気がします。
──これこそが「私らしい感じ」なのかもしれないんですけど、とはいえ1曲1曲は相当にストレンジで。1曲目の「予感」は途中ベースがワブルしまくるリズムトラックの上で、プロレスラーの入場テーマ曲のようなメロディを奏でるリードシンセと、上坂さんのアジ演説が絡み合うダブステップ風の楽曲で、2曲目のタイトル曲は……。
すごくカッチョよくて男らしい感じで(笑)。
──ええ(笑)。J-POP的なコード感のトランスサウンドがEDMやボディミュージックみたいな、すごく硬質なビートの上に乗っている。で「サイケデリック純情」はビンテージシンセ風の音色で鳴らす中華風のリードが印象的な1曲です。
エレクトリックなダンスミュージックなんですけど「イケイケでノリノリー!」というのではなく、このちょっと中国っぽくて、ちょっと8ビットで2Dなゲームミュージックっぽい雰囲気がにじみ出ているあたりが私らしいなって思ってます。
セイントフォーマニアにはきっとたまらんぞ
──スパニッシュギターとストリングスがセンチメンタルな「真・革命伝説」はアニメ「世界名作劇場」の主題歌的というか……。
画面の下に歌詞がひらがなで出てくるセル画アニメのオープニング映像が頭に浮かんでくる感じですよね(笑)。
──まさに(笑)。そして「哀愁Fakeハネムーン」は森雪之丞さん作詞。その森さんの詞もそうだし、MONACAの岡部啓一さんのメロディもアレンジも……。
セイントフォー! レコーディングのとき「セイントフォーの未CD化曲をカバーしてるのかな」って気分でした(笑)。
──森さん自身「不思議Tokyoシンデレラ」などセイントフォーに詞を提供している方だし、Aメロでシンセベースをルート音で刻んで、エレクトリックタムをかき回すフィルを随所に入れる岡部さんのアレンジも本当にテクノ歌謡っぽい。
テケテンテケテンテッテッテンって(笑)。あと流れ星っぽい「♪キラキラ」ってSEも「うわあ、あるあるっ!」っていう感じがすごくしました。実は岡部さん自身、すごいセイントフォーマニアらしくて。
──マニアからも「上坂すみれに曲を書くならやっぱりセイントフォー路線だろう」と思われましたか(笑)。
本当にありがたいことにそうみたいです(笑)。あとおっしゃる通り、雪之丞さんのメロドラマっぽい歌詞もやっぱり「あるあるっ!」って感じがして。
──「空へ昇る エレベーターの中」「彷徨い飽きた 摩天楼の海」とけっこう具体的な景色を描いてはいるんだけど、あくまで架空の街の話。実はこんなアーバンな街、世界のどこにも存在していない感じがすごく“らしい”ですよね。
でも平成生まれの私が聴いてもちゃんと都会的な匂いがするのが本当にすごいですよね。私自身そうなんですけど「セイントフォーマニアや当時のシティポップ好きにはきっとたまらんぞ」っていう1曲になったと思ってます。
- 1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」/ 2014年1月8日発売 / STARCHILD
- 初回限定盤A [CD+DVD] 3600円 / KICS-91983
- 初回限定盤B [CD] 3600円 / KICS-91984
- 通常盤 [CD] 3000円 / KICS-1983
CD収録曲
- 予感
- 革命的ブロードウェイ主義者同盟
- サイケデリック純情
- テトリアシトリ
- Theme of Dr.AKASO
- 我旗の元へと集いたまえ
- SUMIRE #propaganda
- 我らと我らの道を
- 悪夢
- げんし、女子は、たいようだった。
- 哀愁Fakeハネムーン
- 真・革命伝説
- FLYERS
- 七つの海よりキミの海(アルバムを通して聴いてくれた同志に…)
初回限定盤A DVD収録内容
- 「革命的ブロードウェイ主義者同盟」Music Video
初回限定盤A特典
- 28Pミニ写真集
初回限定盤B特典
- 革ブロ組織増強記章
ライブ情報
上坂すみれ「革ブロ総決起集会」
2014年2月11日(火・祝)東京都 中野サンプラザホール
OPEN 17:00 / START 18:00
料金:前売 6000円
一般発売:2014年1月11日(土)
上坂すみれ(うえさかすみれ)
ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優。小学生時代よりジュニアモデルとして活動。2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューし、同年「中二病でも恋がしたい!」や「ガールズ&パンツァー」など注目作に立て続けに出演する。その一方でラジオ、イベント、アニメ誌、カルチャー誌などを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。7月に桃井はるこ作詞作曲による2ndシングル「げんし、女子は、たいようだった。」をリリースした。また「Animelo Summer Live2013」に初出場を果たす一方で、11月には櫻井孝昌・デジタルハリウッド大学大学院特任教授との共著「世界でいちばんユニークなニッポンだからできること~僕らの文化外交宣言~」(パルコ出版)を上梓し、在モスクワ日本大使館主催の文化交流イベント「J-FEST」にもゲスト参加する。そして2014年1月、1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を発表した。