音楽ナタリー Power Push - 植田真梨恵

切なくも温かい「夢のパレード」

この曲が生まれたこと自体に意味がある

──この曲の歌詞には、意味を考えるより先に思わず口ずさんでしまう言葉が並んでいるなと思いました。それっていろんな人から愛される曲になるためにすごく大事な要素なんじゃないかなって。

ありがとうございます。この曲にはなんのメッセージもないから歌いやすいのかもしれないですね。「意味はないよ なにもないよ」って言ってるし、「あたらしい事 あしたの事」のところとか、“どうした”っていう述語の部分を何も書いていないので。そういうふうに意味というか、目的みたいなものがこの曲にはなくて。だからこの曲は聴いた人によってすごくキラキラしたものになるかもしれないし、優しいものになるかもしれないし、悲しいと感じる人もいるかもしれない。言ってみればこの曲が生まれたこと自体に意味があって、私もそれを残したってこと自体が重要なことで。私の中ではそういう曲なんですよね。

──「ふれたら消えてしまう」もそうでしたが、植田さん、最近の歌詞の書き方が変わってきてますよね。自分の感情を歌うというより、ただ情景や出来事を描写している。その実感ってご自身でもありますか?

植田真梨恵

歌詞の書き方が変わったっていうより、私の考え方自体が変わったんだと思います。ネガティブとかポジティブっていうのがどっちでもいいっていう状態になっていて。もちろん物事の好き嫌いだったり、何かに触れたときの自分の感情だったりはあるんですけど、ひと言では言えないようなことが世の中にはいっぱいあるので。

──それが歌詞の書き方にも影響していると。

だと思います。この間「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016」でTHE YELLOW MONKEYのライブを観たんですけど、「LOVE LOVE SHOW」でボロ泣きしたんですよ。5月に復活ライブにいったときは「球根」を聴いてその美しさに泣いたんですけど、今回はちょうど心が揺れて悲しかったりした日に「LOVE LOVE SHOW」の優しさに心を打たれて。なので、悲しいことがあるからこそより音楽がより響くと思うと、悲しいことも悪くないなと思いますね。

──なるほど。「夢のパレード」の切ないメロディは、秋のもの悲しい雰囲気と合ってるなと感じたのですが、そういう季節感を意識した部分はありますか?

かなりありますね。夏が終わりにサッと冷たい風が吹いて、それが心地よくて「あ、秋かも」って思うことありません? 私、その瞬間がすごく好きなんですよね。

──わかります。

ふふふ(笑)。すごく切ながりな私が書いた曲なんですけど、だからこそ温かみのあるサウンドも意識しましたね。GibsonのB-25っていう古いアコギでデモを作ったんですけど、最初はここまで16ビートではなくて、もっとゆったりした感じで。

──そのアコギで作ったものをアレンジャーの徳永暁人さんに渡して?

そうですね。ふっと夢の中に入っていって、そこからふわっと広がるイメージでできたらなと思ってお願いしました。打ち込みで作っていただいたアレンジを楽器で録り直したんですけど、低音がしっかり出ていて包み込むような感じだったり、アナログっぽい感じだったりを意識して。なるべく角がないように、シャープというよりは丸くなるようになればいいなと思いながら。

犬とお化けと私

──今回アーティスト写真やジャケット写真で、初めて夜のシチュエーションでの撮影をしていますよね。秋の夜長じゃないですけど、そういうところからも季節感を感じました。

植田真梨恵「夢のパレード」初回限定盤ジャケット

私、夜の公園がすごく好きなんですよね。夜の公園で温かい光が後ろのほうにいっぱいある感じ。ちなみにジャケット写真で私が来ているパジャマの柄、遠くからだとわかりにくいですけど国旗なんですよ。

──あ、国旗ですね! へえ。

チェックに見えるけど国旗なんです。きっと、私はどこかの国の王様だと思うんですよ。

──夢の中の世界では。

はい。今回子供の頃に見た夢っていうのがテーマとしてあったので、そういうちょっと子供っぽい感じが出るといいなと思って。あと、悪夢みたいな嫌なことがキラキラとしたものに変わっていったらいいなという思いもあって、ちょっとだけ怖い感じも出るように。

──アーティスト写真では植田さんの後ろの木の幹に青っぽいペイント加工が施されていて、背後から忍び寄ってくる印象も受けました。

植田真梨恵の最新アーティスト写真。

ちょっとホラーですよね、霧がかっているし。先ほども言いましたが、「夢のパレード」の歌詞は単語単語で伝えていて「だから何?」っていう述語の部分がないから、余計に目で見て伝わってほしい部分がたくさんあったんですよ。だから今までよりさらに写真にはこだわりました。CDのブックレットにも、絵本のようにたくさんのものが出てくるし、MVもなるべくいろんな要素を詰めていて。

──MVはどんな感じなんですか?

私が古びた大きなスーツケースを持ってパジャマ姿で夜の道路を歩いているんですけど、そこにお化けが2人付いてきます。

──ほう。

言葉で説明すると「?」って感じなんですけど(笑)。あとは犬が出てきますね。大きな犬と旅をするようなMVになっていて、“気付かずにそばにある”っていうことがMVの中ではテーマになっています。

──まさしく歌詞の最後のライン「これはいつも / そこにいつも / そばにあること」ですね。

はい、その象徴としてお化けを。犬とお化けと私のMVです(笑)。

曲を書き始めて12曲目

──カップリングの「サイハロー -autumn ver.-」はライブで繰り返し披露していたということですが、けっこう昔からある曲なんですか?

デモとしては12曲目ですね。

──それってメジャーデビューしてから?

いやいや、インディーズです。私が曲を書き始めて12曲目。なので2007年とかですね。

──相当古いですね。じゃあもう作ったときの心境とか覚えてないですか?

植田真梨恵

これは覚えてますね。この時期私は夜行バスに乗って何も考えずに東京に行って散策するのにハマっていたんですよ。それで知らないお店に入ったり、友達に突然「東京に来てるんだけど会える?」って連絡したり。基本的に1人で過ごしていて、思ったことをメモに残して曲にするっていうことを始めた時期だったんですよね。この曲は、何か新しいドラマが生まれるといいなっていう思いで書きました。

──ライブで披露するときは弾き語りですか? それともバンドアレンジ?

弾き語りか、もしくはピアニストの西村(広文)さんとの「Lazward Piano」で。

──なるほど。今回のCDではピアノとバイオリンでのアレンジになっていて、バイオリンの音色が温かみを与えていますね。

この曲は秋口のライブでは必ずといっていいほど歌っていて、ファンの方も好きって言ってくださるんですね。タイミング的に秋口に聴いてほしい曲だったので、みんなの中のイメージは残しつつ、バイオリンで新しい部分を出したくて。素朴だけどより秋らしいふくよかさが出るかなと思って加えました。

ニューシングル「夢のパレード」 / 2016年10月12日発売 / GIZA Studio
初回限定盤 [CD+DVD] / 2000円 / GZCA-4148
通常盤 [CD] / 1296円 / GZCA-4149
CD収録曲
  1. 夢のパレード
  2. サイハロー -autumn ver.-
  3. 210号線
  4. 夢のパレード -off vo.-
  5. 210号線 -off vo.-
初回限定盤DVD収録内容
  • 「夢のパレード」LIVE MOVIE 7.23 赤坂BLITZ / 植田真梨恵SPECIAL LIVE “PALPABLE! BUBBLE! LIVE! -SUMMER 2016-”
  • 植田真梨恵のまわりくるめロケ -UTAUTAU vol.2おまけ集-
植田真梨恵「夢のパレード」リリースイベント
  • 2016年10月11日(火)大阪府 TSUTAYA EBISUBASHI 6Fイベントスペース
  • 2016年10月12日(水)福岡県 キャナルシティ博多 スターコート
  • 2016年10月13日(木)東京都 ダイバーシティ東京プラザ フェスティバル広場
  • 2016年10月14日(金)愛知県 タワーレコード名古屋パルコ店 西館1F特設ステージ
  • 2016年10月15日(土)兵庫県 阪急西宮ガーデンズ スカイガーデン 木の葉のステージ
  • 2016年10月15日(土)大阪府 あべのHoop 1Fオープンエアプラザ
  • 2016年10月16日(日)埼玉県 イオンレイクタウンmori 1F 木の広場
  • 2016年10月16日(日)東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
  • 2016年10月22日(土)宮城県 銀座山野楽器仙台店 1F特設ステージ
  • 2016年10月23日(日)北海道 タワーレコード札幌ピヴォ店
  • 2016年10月31日(月)広島県 広島駅南口地下広場
  • 2016年11月1日(火)岡山県 イオンモール岡山 未来スクエア
  • 2016年11月3日(木・祝)香川県 タワーレコード高松丸亀町店 グリーン広場1階けやき広場
  • 2016年11月5日(土)愛媛県 エミフルMASAKI
  • 2016年11月21日(月)熊本県 蔦屋書店 熊本三年坂 三年坂モリコーネテラス
  • 2016年11月26日(土)新潟県 イオンモール新潟南
  • 2016年11月27日(日)石川県 TSUTAYA金沢店
植田真梨恵2017年バンドライブツアー
  • 2017年1月13日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • 2017年1月15日(日)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2017年1月22日(日)北海道 COLONY
  • 2017年1月29日(日)香川県 高松MONSTER
  • 2017年2月4日(土)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2017年2月5日(日)広島県 CAVE-BE
  • 2017年2月11日(土・祝)熊本県 熊本B.9 V2
  • 2017年2月12日(日)福岡県 イムズホール
  • 2017年2月18日(土)大阪府 ユニバース
植田真梨恵(ウエダマリエ)

1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」発売後、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROでワンマンライブを成功させ、同年8月にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューを果たす。2015年2月にメジャー1stアルバム「はなしはそれからだ」を発表し、東名阪と地元・福岡を回るツアーを実施した。2016年10月にメジャー6枚目となるシングル「夢のパレード」をリリース。