音楽ナタリー PowerPush - 植田真梨恵

苦節8年、ついにつかんだメジャーデビュー

より多くの人に届けるためのメジャーデビュー曲

──今はそこからひとつ抜け出した感じなんでしょうか?

はい。もう本当に曲が書けなくて困っていたときに、メジャーデビューのお話をいただいて。たしか今年1月の渋谷CLUB QUATTRO公演のちょっと前くらいだったかな? そのときちょうど新たに「こんな感じの曲を作ってみようかな」って書き始めていたんですけど、それは完全にメジャーで勝負する曲ではなくて、もっと自分の好きなアート色が強い感じの曲で。

──そのときのベクトルがまったくメジャーに向いていなかったっていうことですよね。

植田真梨恵

まったく違う方向でしたね。で、メジャーでやるってなったときに、私はもうインディーズでやれることは全部やってるし、今までと同じことをしてもダメだと思うし、「じゃあどんな曲を書こう?」と思って書き始めて完成したのがこの「彼に守ってほしい10のこと」だったんです。

──具体的に言うと、インディーズのときと何を変えたんでしょう?

せっかくメジャーでやっていくんだったら、ただ垂れ流してるものではなくて、聴いた人が前向きになれるような曲を作って届けていかないと意味がないなと思って。これまではハッとさせたいとか思っていて、いろいろキメが多かったりやたら転調したりとか奇抜なことをやろうとしていたんですけど、そうじゃなくてまっすぐに私の歌が届くような曲の作り方をしました。

──確かにものすごくストレートでキャッチーですよね。タイトルも映画のタイトルにありそうな感じで(笑)。

そうですね。もしくはまとめサイトとか(笑)。

──そもそもテーマの間口が広いですよね。恋愛の歌ですから。

今まで、女の子がモヤモヤしたときに私の歌を聴いてるって言ってもらっていて。たぶん私自身がモヤモヤした曲が多いからだと思うんですけど、今回はモヤモヤした気持ちを余計モヤモヤさせるのではなく、聴き終わったあとにスッキリしたりちょっとでも前向きになれたりする曲を歌いたいと思って。

──インディーズの頃は違ったんですか?

インディーズの頃は感情をリアルに描写することしか考えてなかったです(笑)。だから、めちゃくちゃ共感してくれる人はいるんですけど……。

──去年リリースした「心と体」とか、感情を吐き出していますよね。

「不安で」ってめっちゃ言ってますもんね(笑)。

植田真梨恵「心と体」PV

──ちなみに、ずっと大阪で活動している植田さんが、渋谷CLUB QUATTROのワンマンを成功させたっていうのは大きな経験になったのかなって思うんですけどいかがですか?

すごく大きかったですね。実際やってみて、お客さんが入ってるところを見たらすごくうれしかったです。あのライブがあったからもっと多くの人に届けたいっていう気持ちも生まれたし、そうするためには今までの曲じゃダメだって強く思った部分はありますね。

10個目の守ってほしいこと

──今回はアレンジのやり方がいつもと違うと伺ったんですが。

今まではできた曲をアレンジャーさんに渡して、自分のイメージを伝えていたんです。でも今回はスタジオに入ってバンドメンバーと“いっせーのーせ”で曲を合わせてみて、そこから各楽器のフレーズやリズムを一緒に考えていきました。とても楽しくて、なんでもっと早くやらなかったんだろうって(笑)。

──でも、メジャーが決まって、より多くの人に届けたいと思うようになったこのタイミングだからそういうアレンジにしてみようと思えた部分もきっとありますよね。今までだったら「もっとキメを入れて」とか「こんなフレーズ弾いて」とか注文していたでしょうし。

確かに! そうかもですね。前の私じゃ無理だったかも(笑)。今回は歌さえ生かされていれば、いい意味でこだわりはなかったので。人に任せられるようになったんだと思います。

──あと、ひとつ気になったんですけど、「彼に守ってほしい10のこと」の歌詞って、守ってほしいことが9個しか書いてないですよね……?

9個しかなかったですか?(笑)

──僕が数えた限りでは。

植田真梨恵

でも、ちゃんと10個あるんですよ。

──えっ? 謎掛けですか?

いやいや、曲を聴きながら数えていったらちゃんと10個あります。

──……あ! 歌詞カードには書いてないんですね!

そう!

──なんで書かなかったんですか?

うーん、お願いしたくないことだったから、かな。もちろん守ってほしいことというか願望ではあるんですけど、強要することではない気がしていて……。結局、最後のその一言が一番言いたいことなんですけどね。

現時点の完成形としての「ダラダラ-demo-」

──カップリングについても伺いたいんですが、「ダラダラ」はアコースティックの弾き語りですね。表題曲とはまったく違う植田さんの魅力が出ていると思います。

ありがとうございます。さっきお話した、メジャーの話があった頃に書き始めていた曲の1つが「ダラダラ」なんです。アコギでの弾き語りのライブをたくさんやる中で、アコギ1本で事足りる普遍的な歌を書こうと思って作りました。

──「慕情」「宵の口」など、日本語独特の言葉を使っているのも印象的でした。

「ダラダラ」に関しては思ってることをほとんど言わなくても、その気持ちが伝わればいいなと思って書いた曲なんです。ずっと情景の描写や比喩だけで1曲歌うような気持ちで。

──そういう表現方法も日本人ぽいですね。

確かにそうですね。だから言葉選びには気をつけました。メロディに対して「これしか正解がない」っていうくらいにハマる言葉を見つけていく作業が楽しかったですね。

──タイトルに「demo」とありますが、今後バンドサウンドなどにアレンジされるということでしょうか?

可能性はありますね。自分の中で「どんな編成でもできて、私が何歳になっても歌えるもの」と思いながら作っている楽曲があるんです。そうやって作った曲をいつか1枚のアルバムにしたいという気持ちがあるんですけど、これはその中の1曲で。今回は「demo」という形でシングルに入れました。

──ひとまず植田真梨恵23歳時点の完成形ということでしょうか?

そうです。いつかきっとそれ用のアルバムに入れるときに違う形をお見せできると思います。

メジャーデビューシングル「彼に守ってほしい10のこと」/ 2014年8月6日発売 / GIZA studio
[CD] 1296円 / GZCA-4140
収録曲
  1. 彼に守ってほしい10のこと
  2. ダラダラ - demo -
  3. アリス
  4. 彼に守ってほしい10のこと - off vo. -
植田真梨恵LIVE TOUR 2014 UTAUTAU vol.1
  • 2014年9月7日(日)大阪府 Shangri-La
    OPEN 17:00 / START 17:30
  • 2014年9月23日(火・祝)東京都 原宿アストロホール
    OPEN 17:00 / START 17:30
チケット一般発売日:8月16日
植田真梨恵(ウエダマリエ)
植田真梨恵

1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」をリリースし、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROにてワンマンライブを実施した。2014年8月6日にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビュー。