音楽的な“正解”と、物語としての“正解”
ZAQ 作った時点では、この曲を天麻さんも歌われることになるとは知らなかったんですよ。こんな難しいメロディにしてしまって、ごめんなさい(笑)。
天麻 あははは。
ZAQ サビとか急にめちゃくちゃ高いし、大変でしたよね?
天麻 こんなにテンポのゆったりしたバラード自体を歌ったことがなかったので、もう何回もZAQさんの歌われたものを聴き込んで臨みました。
ZAQ 実際、レコーディングでも最初はかなり私のクセとかもマネてて。「いや、もっと希っぽくていいよ」みたいな(笑)。
天麻 そうでしたね(笑)。ZAQさんの歌を聴きすぎたことで、それを再現しようとしてしまったんです。でも当日、例えば「月をみていた ただ綺麗だと思っていたの」のところとか、「希と庵珠が2人で月を見上げていたシーンを思い浮かべて歌ったら、もっと希らしさが出るようになるよ」と軌道修正をしていただいたりして。本当に貴重な経験をさせていただきました。希として歌う以上は当たり前のことではあるんですけど、憧れのZAQさんの楽曲ということもあって、ちょっとテンパってしまって。
ZAQ 愛を感じます(笑)。事前にすごく歌い込んできてくださったのは伝わったので、私としては感謝だったんですけど。最終的にすごくよかったのが、冒頭のほうでとつとつと思いを吐露しているように歌われているところですね。感情に迷いのある感じがよく出ていて、それがすごく希っぽいなと思って。かすれ気味の声で、途切れ途切れに歌っている感じが。
天麻 ちょっとつぶやいているような感じで歌っていた気がします。
ZAQ そうですよね。1番はそういう寂しさの表現になっていて、2番以降は“きっとまた会えるよねモード”になっていく。歌い方でストーリーができていく感じが、さすがは声優さんだなあと思いましたね。
天麻 最初はZAQさんのコピーをすることしか頭になかったんですけど(笑)、いろいろ教えていただいたおかげで、そういうふうに感情を表現する歌の方向に戻していただけたと思います。
ZAQ 私はもう、気持ちよくピアノで弾き語ることしか考えていないので(笑)。「ここのビブラートはこのタイミングで3回入れたほうがいいな」とか、テクニカルなところを追求しがちなんですけど、“歌声で物語を描き出す”ということにかけてはやっぱりプロとの違いを感じましたね。音楽的な意味での“正解”を追い求めたのが私の歌だとすると、物語としての“正解”を叩き出しているのが天麻さんの歌だと思います。そういう違いを楽しんでいただけたらうれしいですね。
天麻 もうまったく別の曲のようになったと思います。なんて言ったらいいのか……全部が違う(笑)。
ZAQ とても最初は近付けようとしていたとは思えない(笑)。「Turkey!」ファンの皆様方にはぜひ、5話のラストを観ながら希バージョンのトラックを再生してあの場面にはめ直す、というのをやってみていただきたいです。それぐらい、天麻さんの歌い方があのシーンにマッチしているので。
天麻 私、イヤフォンの片耳ずつでZAQさんと自分の歌を同時に流して聴き比べてみたいです。
ZAQ それは……ちょっと恥ずかしい(笑)。でも、いずれどこかでデュエットはしたいですね。「Turkey!」のイベントとかで。
天麻 わあ、それいいですね!
ZAQ 挿入歌アーティストを全員呼んでいただいて、5組がデュエットを披露するみたいな。「Turkey!」フェス。
天麻 フェス! なんて豪華な……!
そんな話なんですか、これ?
ZAQ 私、けっこうこだわっていることがあって。今回は5話目の挿入歌ということだったんで、6話以降のシナリオをまだ読んでいないんですよ。結末を知っちゃったらそのニュアンスを歌詞に入れちゃいそうで、匂わせをしちゃっても嫌だなと思って(笑)。視聴者の皆さんと同じタイミングでこの作品を体験したかったので、いただいた完成映像も一切観ずにオンエアで確認しています。だから今日の対談(※取材は8月中旬に実施)が5話の放送後でよかったと思って(笑)。
天麻 そうだったんですね。じゃあ、あとの展開のことをうっかり話さないようにしないと(笑)。
ZAQ もちろんオープニングやエンディングだったら全体を見て、作品が伝えたいメッセージを拾っていくんですけど。挿入歌の場合はもうそこだけを見るようにする、っていうのはけっこうこだわりですね。
天麻 なるほど……! 今回、5話で希の殻がちょっと破れて素直な気持ちを言えるようになったので、その希がどんなふうに変わっていくのかをぜひ楽しみにしていただけたらと思います。いつもバチバチな利奈との関係も、この回をきっかけにちょっとずつ変化していくので。
ZAQ そうなの!?
天麻 あははは。
ZAQ いや確かに、あの利奈の頑なな心をどう開いていくかがこの物語のカギだと思うんだよなあ。
天麻 そうなんです。そういうところも今後描かれていきますし、やっぱり戦国時代のお話ということもあって、今と昔の“当たり前”の違いみたいなものも語られたりします。今って、普通に生活している中で生きていることを実感できる瞬間があまりないと思うので、自分が今後どういうふうに生きていくべきか、人生というものを見つめ直すきっかけにもなるような……。
ZAQ え! ちょっと待って! そんな哲学的なところにまで踏み込む話なんですか、これ?
天麻 そうなんですよ(笑)。それこそ5話の直後、6話目をご覧になったらびっくりされるかもしれないです。
ZAQ なん……だと……!?
天麻 (笑)。観る前とあとでけっこう価値観が変わるくらいのアニメだと思うので、ぜひ最後まで見届けていただけたらうれしいです。
ZAQ ってことは、バッドエンドではないってことですね(笑)。それがわかってよかったです。今日以降のオンエアがますます楽しみになりました!
ZAQ 公演情報
QAZの日 -孤高に弾き語る- (大阪公演)
2025年9月23日(火・祝)大阪府 ROCKTOWN
<出演者>
ZAQ
「XAIXLIVE」
2025年10月2日(木)東京都 LIQUIDROOM
<出演者>
XAI / ZAQ
ZAQ セルフカバーライブ「ZAQ's Selfjack Day」
2025年11月29日(土)大阪府 Music Club JANUS
<出演者>
ZAQ
プロフィール
ZAQ(ザック)
シンガーソングライター。3歳の頃からピアノを始め、音楽大学のピアノ科に進学。学生時代に触れたアニメソングに衝撃を受け、アニソンシンガーを目指す。2012年、テレビアニメ「未来日記」のキャラクターソングの作詞・作曲・編曲を担当し、クリエイターとしてデビュー。その後もさまざまなアニメ作品や声優アーティストに楽曲を提供しながら、並行してソロアーティストとしても活躍する。2025年8月にはテレビアニメ「Turkey!」第5話の挿入歌「幾星霜」を配信リリースした。
天麻ゆうき(テンマユウキ)
東京都出身、スワロウ所属の声優。これまで「東京ミュウミュウ にゅ~♡」「CITY THE ANIMATION」などのアニメ作品に出演しているほか、「ささやくように恋を唄う」「美術室に置き去りにされた天使」などの舞台・朗読劇にも参加している。2025年放送のテレビアニメ「Turkey!」では三鷹希を演じている。