音楽ナタリー Power Push - TRI4TH

ジャズとロック “境界線”越えた5作目で示すバンドの形

TRI4THが9月14日にニューアルバム「Defying」をリリースした。

今年7月に結成から10年を迎えたTRI4TH。彼らにとって5枚目のアルバムとなる「Defying」はバンドがPlaywrightに移籍後にリリースした4thアルバム「AWAKENING」、ベストアルバム「MEANING」の流れを汲む作品で、初めてリーダーの伊藤隆郎(Dr)が作曲したナンバー「Sand Castle」など、11の多彩な楽曲が収められた。

アルバムのリリースを記念して音楽ナタリーでは彼らにインタビューを実施した。伊藤は、本作を作り終えたTRI4THを指して「ようやくバンドになった」と語る。彼らの10年の歩みから新作についての思いまでを聞いた。

取材・文 / 土屋恵介 撮影 / 小坂茂雄

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ジャズを知らないジャズバンド

──TRI4THは結成10周年ということで、まずは結成からこれまでを振り返ってもらえますか。

織田祐亮(Tp) もともと僕とドラムの伊藤隆郎が愛知県の音楽大学でクラシックを習っていたのですが、卒業して東京に出てきて、まずロックバンドを組んだんです。そのバンドが解散して、今度は「インストのジャズバンドをやろう」って、2006年に結成したのがTRI4THで。でも、最初はジャズをほとんど知らない状態で始めたんですよ。「昭和歌謡のような音楽性だ」ってよく言われていました。そのときはトランペットの僕、ピアノの喜多形(寛丈)くん、ドラムの(伊藤)隆郎さんと3人でトリオでした。そのあとにサックスの藤田(淳之介)くんがメンバーになって。

藤田淳之介(Sax) 僕もクラシックの大学に行っていたけどジャズに興味があったので、惹かれるものがありましたね。

織田祐亮(Tp)

織田 そのあと、須永辰緒さんが「僕のレーベルでやらないか」って声をかけてくださったんです。須永さんは、ジャズを知らない僕らがジャズをやっているってところに面白さを感じてくださって。今でこそ自分たちのスタイルの基盤になっている北欧のヨーロピアンジャズなどは、須永さんがきっかけで聴くようになったものですね。で、須永さんが「ベース入れない?」って提案してくれて、関谷(友貴)くんに声をかけました。そうして最初にリリースしたのがアナログの「TRI4TH plus EP」。そのときは、関谷くんはまだゲストって形で弾いてもらっていて。その後三谷幸喜さんが脚本で、小西康陽さんが音楽監督を担当したミュージカル「TALK LIKE SINGING」にバンド役で出ることになって。小西さんから突然「(ミュージカルが上演される)ニューヨークに一緒に行きませんか?」って連絡が来たんですよ(笑)。「ぜひやらせてください」って即答でしたね。そのタイミングで、関谷くんが正式メンバーになりました。

関谷友貴(B) 僕はほかのメンバーと違ってクラシックを通っていなくて、バークリー音楽大学でジャズを習っていたんですよ。当初はエレキベースを弾いてたんですが、TRI4THに加入するタイミングでウッドベースを始めました。

──関谷さん以外は、みなさんクラシック出身だったんですね。

織田 はい。でもドラムの隆郎さんは、大学時代はクラシックをやりつつパンクバンドをやってましたね。

伊藤隆郎(Dr) Discharge、G.B.H.といったUKハードコアの流れをくんだバンドをやってましたね(笑)。

──なんと。髪型はモヒカンでしたか?

織田 当時の隆郎さんはピンクのスパイキーでした(笑)。で、TRI4THの話に戻ると、そこからクインテットで活動するようになり、2010年に須永さんのプロデュースでファーストアルバム「TRI4TH」を出しました。そのあと、2011年の5月にピアニストの喜多形くんが作曲家としての活動に専念したいということで脱退して。で、その年に「わらべJAZZ」っていう童謡のカバーアルバムを作ったんですけど、そのときにゲスト参加してくれた3人のピアニストの1人だった竹内くんがバンドにしっくりきて、メンバーに誘いました。

竹内大輔(Piano)

竹内大輔(Piano) 実は、誘いを2回断ってるんですよ(笑)。そのとき僕は自分がリーダーのバンドやほかのユニットのサポートをしていたし。正直、バンドって大変じゃないですか。なので、サポートでの活動が多かったんだけど……でも、そのスタンスで続けていくのは将来的に難しいだろうなと思って、「TRI4THが最後のバンドだ」って気持ちで加入しました。

──そこで現在のメンバーがそろったと。

織田 はい。今の5人で作ったのが2ndアルバム「TRI4TH AHEAD」なんです。1stまでは、前のピアニストの喜多形くんがメインコンポーザーだったので、そこからみんな手探りで曲を作っていきましたね。

──では2ndアルバムのタイミングは、ある意味、新しいバンドを始動するくらいの感覚だったんでしょうか。

織田 はい。気持ち的にはそうでしたね。そこから、2013年の3rdアルバム「Five Color Elements」を初めてセルフプロデュースで作ったんです。2ndまでは須永さんのプロデュースでやらせていただいて、ずっと須永さんにお世話になってる状態だったので「そろそろ自分たちでやってみよう」っていう自然な流れではありました。

関谷 「Five Color Elements」ってタイトルには「5人のそれぞれの色を混ぜて、1つの音を出せたらいいな」という気持ちを込めて。

4枚目からは焼肉弁当

──そして、2015年10月にPlaywrightレーベルに移籍して、4thアルバム「AWAKENING」を発表しました。レーベルの移籍から「AWAKENING」制作までの流れを聞かせてもらえますか。

伊藤隆郎(Dr)

伊藤 Playwrightが「Family」っていうジャズのカバーのコンピレーションを出すという話を聞いたときに、所属じゃないのに「『A Night in Tunisia』っていうイケてる曲があるので入れてくれ」と頼んだんです(笑)。それが布石になって、レーベルに所属して4枚目の「AWAKENING」を作ることになりました。

──そうなんですね。

織田 はい。3枚目のあと4枚目を出すまで2年くらい空いてるんですけど、その間に全国ツアーをやったりして、バンドがすごくまとまってきた。全員がまっすぐバンドに向き合える状態になっていたし、もうずっと曲を作っていて。「AWAKENING」を作るときは、モチーフなどを合わせると曲が50曲以上もありましたから。

──かなりの数を作っていたと。

伊藤 それ以前の曲作りは基本1人から出た曲を、作者の意図を反映してブラッシュアップしていく感じだったんです。でも、2年の間には個々の活動もあって、それをTRI4THに持って帰ってくるって感じがあって。それが「AWAKENING」には反映されていると思います。曲の作り方も以前と変わって、メンバーがフレーズやメロディをバンバン出して、いいものを膨らませていく、1曲を全員で作っていくようになっていきました。

竹内 それが、僕らに合っているやり方だったんだよね。

藤田淳之介(Sax)

藤田 前から比べると音がかなり激しい感じになりましたし、初期のテーマだった「踊れるジャズ」に近付きました。強く意識していたわけではなかったんですけど、結果的に。

──曲作りに対してオープンな姿勢になったということですか。

伊藤 それはありますね。いい意味でジャズってものに対する考え方がみんなの中で変わったと思います。Playwrightに所属しているアーティストはカテゴリーを壊していくアーティストが多いし、レーベルからもらったパワーもあります。

織田 例えるなら、1stから3rdは幕の内弁当みたいなアルバムだったけど、4枚目からは焼肉弁当みたいな(笑)。それは、バンドのカラーを打ち出せたって意味ですね。パンチのある、人の心にガツンとそのまま届くようなものを作りたいと思ったんです。そうしたら、ライブもとにかく攻めるって方向性に変わっていきました。

伊藤 3枚目までは、着席で聴くようなジャズクラブに呼ばれることが多かったんですが、4枚目からはスタンディングのライブが増えていきましたね。なので、見ても楽しいライブというのも必然的に意識するようになりました。

関谷 3rdまでは隆郎さんはジャズドラムだったのに、4枚目からいきなりドカドカ叩くようになって自分のウッドベースが聴こえなくなりましたもん(笑)。実は僕もジャズをやる前はヴィジュアル系が好きで、ロックが音楽の入り口だったんですよ。なので、ウッドベースでロックドラマーに負けないセッティングっていうのをイチから詰め直して、今では「ベースうるさい」って言われるくらいまでになりました(笑)。

──エモーショナルさが、TRI4THのサウンドの基盤になったと。

織田 ロック的なものを持ったジャズというのが、確実に「AWAKENING」以降はあります。その反面、活動初期から脈々と培ってきたTRI4THらしさも出せるという、すごくいい形になってきた実感はありますね。

──今年の4月には、これまでの楽曲を現在の編成で録音したベストアルバム「MEANING」を発表しています。

伊藤 バンドのスタイルも大きく変わって、1枚目から3枚目に収録されている楽曲を再録音して出すことになって、「今の僕たちがライブで表現するなら?」ってイメージでアレンジをやり直しました。その作業自体もすごく意味あるものでしたね。

竹内 改めて自分たちの曲を見直して今の自分たちの状況に近付けると、前の曲もこういう見せ方もできるんだなって発見もありましたし、今までやってきたことが自信になりました。あと、新しく曲を作る上でもそれが反映されるだろうなとも思いました。

伊藤 バンドの10年をつなげられた感じもするしね。「AWAKENING」「MEANING」、そして新しい「Defying」と、いい形で流れができたと思います。

ニューアルバム「Defying」
2016年9月14日発売 / 2500円 / Playwright / PWT-26
Amazon.co.jp
収録曲
  1. Sand Castle
  2. Flash
  3. FULL DRIVE
  4. Walk Together
  5. Green Field
  6. Alicante
  7. Sol Levante
  8. Runner's High
  9. Relight Days
  10. Cloud
  11. SNAKE
TRI4TH“Defying”Release Tour
  • 2016年9月24日(土)兵庫県HANAZONO
  • 2016年9月25日(日)三重県 Advantage
  • 2016年9月30日(金)神奈川県 MOTION BLUE YOKOHAMA
  • 2016年10月7日(金)福岡県 graf
  • 2016年10月8日(土)広島県 SUMATRA TIGER
  • 2016年10月28日(金)大阪府 CONPASS
  • 2016年10月29日(土)愛知県 池下CLUB UPSET
  • 2016年11月20日(日)千葉県 柏 Cafe Line
  • 2016年11月26日(土)長野県 gramHOUSE
  • 2016年11月27日(日)宮城県 space Zero
踊る!インストクリスマス supported by MEETIA
  • 2016年12月12日(月)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
TRI4TH “Defying” Tour Final
  • 2017年1月9日(月・祝)東京都 UNIT
TRI4TH(トライフォース)
TRI4TH

5人組ジャズバンド。2006年7月に結成、当初は伊藤隆郎(Dr)、織田祐亮(Tp)、喜多形寛丈(Piano)によるベースレスのトリオとして活動し、2008年2月に藤田淳之介(Sax)が加入。2009年3月にアナログシングル「TRI4TH plus EP」でデビューする。また同年10月に関谷友貴(B)が加入。11月には脚本・三谷幸喜、主演・香取慎吾(SMAP)、音楽監督・小西康陽のミュージカル 「TALK LIKE SINGING」ニューヨーク公演にバンド役として出演した。2010年8月に1stアルバム「TRI4TH」を発表。翌月より初の全国ツアーを開催する。2011年には喜多形が作曲家活動に専念するため、バンドを脱退。翌2012年に竹内大輔(Piano)をバンドに迎える。2013年には3rdアルバム「Five Color Elements」をリリース。2015年にPlaywrightレーベルに移籍する。この年の10月に4th アルバム「AWAKENING」を発売し、2016年 4月にはベストアルバム「MEANING」を発表。同年9月、5thアルバム「Defying」をリリースする。