音楽ナタリー Power Push - TRI4TH
ジャズとロック “境界線”越えた5作目で示すバンドの形
もはやロックもジャズも関係ないだろう
──では、新作「Defying」の話題に入りましょう。短いスパンでのリリースは、バンドの勢いを感じさせます。新作の全体のテーマは、どんなものがありましたか。
織田 タイトルでわかる通り、「AWAKENING」「MEANING」「Defying」と3部作にしたかったんです。まず、「AWAKENING」で打ち出した“ロック的なジャズ”というテーマをブラッシュアップしていこう、とにかくより攻めていこうというのがあって。
伊藤 あとはもう「踊ろうぜ」って感じですね(笑)。
──どの曲が柱になったんですか?
織田 リードトラックの「Sand Castle」です。ロックスピリット全開で、もはやジャズもロックも関係ないだろうって曲ですね。この曲は隆郎さん作曲なんですけど、これまではリーダーの隆郎さんの書いた曲って、なかったんですよ。「AWAKENING」以降で一番わかりやすいバンドの変化はドラムのプレイがより直球になったところだと思うので、今回は絶対に隆郎さん発案の曲をやりたいと思っていました。
──「Sand Castle」は、スリリングなほどにビートの速い楽曲です。
伊藤 あの曲に関しては、サックスソロも叫びみたいな音が録れたし、全体的に激しい側面が出せました。アルバム自体、基本的にほかの曲も攻めた感じになっています。ただ、より激しくアグレッシブになることで、逆に今まで大事にしてきた音色のきれいな曲や、バラードが際立ったところもありますね。激しさと美しさのコントラストがはっきり出せた。そこは、今まで明確に意識してやってなかったんです。それを今回意識的にできたのは、バンドにとって大きな成長だと思います。
関谷 「Sand Castle」はウッドベースをひずませてて、ウッドベースのフィードバックノイズで始まるんです。そんなことやってるジャズバンドってほかにないんじゃないかな(笑)。
──ウッドベースでもフィードバックってできるんですか?
関谷 できるんですよ。
伊藤 あれは面白かったね。リハでたまたまウッドベースがハウリングして。「それカッコいいから入れよう!」って(笑)。そういう、ほかの人がやってないことをやろうっていう意識もありましたね。
バンドの10年間を振り返るイメージで
──では、曲をピックアップしながら話を進めていきましょう。3曲目の「FULL DRIVE」はスカチューンですね。
関谷 それは僕の提供の曲なんですが、もともとメロがキャッチーな8ビートの曲を作りたかったんです。隆郎さんは一時期スカバンドをやっていたってこともあって「スカにしたらいいんじゃない?」って提案をもらって、やってみたらしっくりきました。すでにライブでも演奏していますが、かなり踊れる曲になってます。
竹内 これはやっていて楽しいよね。
藤田 僕が楽器をやっている理由はスカが好きだからなんじゃないか?って思うくらい楽しいです(笑)。
──あはは(笑)。そして、続く「Walk Together」は、四つ打ちのグルーヴ感があるナンバーです。
伊藤 完全にダンスミュージックですね。もともと僕らが提示してた「踊れるジャズ」を再確認して表現していこうという中でできた曲です。これまで四つ打ちのダンスビートって、意外とやってこなかったことに気付いたんですよ。ハウス的なビートを生音で、しかも踊れるジャズとして紹介したいというのはありました。
──6曲目の「Alicante」は、TRI4THが得意とする欧州ジャズ的な雰囲気の曲です。
織田 これは僕が書きました。やっぱりヨーロピアンジャズは僕らの最初の核になったものなので、そのラインも引き継いでやりたいなって気持ちがありましたね。その上で、今の自分たちの醸し出す香りが込められたと思います。
──9曲目の「Relight Days」は、ソプラノサックスを前面に出したバラード曲です。
織田 僕らは、ソプラノサックスを使ったバラードを2枚目からやってきてるんです。藤田くんのソプラノサックスの音色が大好きだし、お客さんにも聴いてほしくて。ただ、これまではソプラノソロだったり、デュオでやってきたんけれど、今回は5人でバラードをやりたいと思って書き下ろした曲なんです。メロディは、バンドの10年間を振り返るイメージで僕が書きました。
──そしてラストの「SNAKE」は、ファンキーでうねりのあるドラマチックな曲ですね。
織田 結局、最後はガツンガツンで終わるっていう(笑)。
ようやく胸張ってバンドになったと言える
──アルバムを作り終えての今の感想はいかがですか。
藤田 自分たちのサウンドを「AWAKENING」でようやく認識できたことで、逆にルールがなくなってきました。前は、ちょっとでも「誰かっぽい」と思うと避けていたけど、なんでもやれることは、俺らのサウンドでやっちゃおうぜって感覚になれたんです。
──人と似たものを避けていくと作りたいものが狭まることがありますが、そうしたリミッターを解除したと。
竹内 そうです。結果、曲調の幅がだいぶ広がりました。でもどこか統一性があるのが面白いし、そこはこのアルバムで変化したところかなって思います。
織田 そうだね。たぶん、こういうことできるバンドってほかにそうそういないと思うんです。めちゃくちゃアッパーな曲があれば、きれいなバラード、ジャズワルツもある。激しさはあるけど、きれいな音色で色彩感を出すっていうのは、アルバムを作る前から意識していました。そこは今までで一番表現できたんじゃないかな。そこにも着目して聴いてもらえるとうれしいですね。
──ある意味、10年間を総括しつつ、さらに進化した音楽を形にできたということですね。
織田 そうですね。ジャズフォーマットがありきで、ロックやクラシックのきれいな音色感、色彩感も混ぜられたなって。5人それぞれが持っている音楽性が出てるし、溶け合わさってる。
伊藤 「Defying」を作って、ようやくバンドになったなと思いました。ジャズって音楽の性質上、いろんな人とセッションして作り上げていくのが面白かったりするんですけど、固定のメンバーでやるのって、逆に特別感がある。同じメンバーで同じ曲を何年も繰り返すって、個人的にはジャズでは珍しいことだと思うんですよ。そういう中で、ジャズバンドって看板を掲げて10年やってきて、ようやく胸張ってバンドになったと言えますね。
──それは、まだまだこの先も新しいものを作っていけるって意味にも受け取れますね。
伊藤 それは確実に思ってます。僕らの音楽をジャズを好きな方にはもちろん聴いてほしいけど、それだけじゃなく、ロックが好きなリスナーが聴いても楽しんでもらえるものをみんなで考えながら進んできたところがあるんです。年齢と共に頑固になるんじゃなく、僕らは柔らかく考えることができた。それは、バンドとしてとてもいい形だと思います。
──ジャンルの境界線をまたぐような音楽をクリエイトしていくと。
伊藤 そうですね。僕ら、ジャズフェスには出られるようになったけど、まだロックフェスには出たことのないんです。TRI4THは10年経ってもまだ達成できてない夢がたくさんあって、それを1つひとつ叶えたい。新しい楽曲を作ることで、例えば野外ライブをしたいとか、明確な夢みたいなものが浮かんでくる。それは、自分たちが進んで行く上で、楽曲を作る上で大きな原動力になるんです。それが5人でちゃんと共有できてるし、ポジティブに考えられてる。バンドとして、今が一番いい状態だなっていうのは強く実感してますね。
収録曲
- Sand Castle
- Flash
- FULL DRIVE
- Walk Together
- Green Field
- Alicante
- Sol Levante
- Runner's High
- Relight Days
- Cloud
- SNAKE
TRI4TH“Defying”Release Tour
- 2016年9月24日(土)兵庫県HANAZONO
- 2016年9月25日(日)三重県 Advantage
- 2016年9月30日(金)神奈川県 MOTION BLUE YOKOHAMA
- 2016年10月7日(金)福岡県 graf
- 2016年10月8日(土)広島県 SUMATRA TIGER
- 2016年10月28日(金)大阪府 CONPASS
- 2016年10月29日(土)愛知県 池下CLUB UPSET
- 2016年11月20日(日)千葉県 柏 Cafe Line
- 2016年11月26日(土)長野県 gramHOUSE
- 2016年11月27日(日)宮城県 space Zero
踊る!インストクリスマス supported by MEETIA
- 2016年12月12日(月)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
TRI4TH “Defying” Tour Final
- 2017年1月9日(月・祝)東京都 UNIT
TRI4TH(トライフォース)
5人組ジャズバンド。2006年7月に結成、当初は伊藤隆郎(Dr)、織田祐亮(Tp)、喜多形寛丈(Piano)によるベースレスのトリオとして活動し、2008年2月に藤田淳之介(Sax)が加入。2009年3月にアナログシングル「TRI4TH plus EP」でデビューする。また同年10月に関谷友貴(B)が加入。11月には脚本・三谷幸喜、主演・香取慎吾(SMAP)、音楽監督・小西康陽のミュージカル 「TALK LIKE SINGING」ニューヨーク公演にバンド役として出演した。2010年8月に1stアルバム「TRI4TH」を発表。翌月より初の全国ツアーを開催する。2011年には喜多形が作曲家活動に専念するため、バンドを脱退。翌2012年に竹内大輔(Piano)をバンドに迎える。2013年には3rdアルバム「Five Color Elements」をリリース。2015年にPlaywrightレーベルに移籍する。この年の10月に4th アルバム「AWAKENING」を発売し、2016年 4月にはベストアルバム「MEANING」を発表。同年9月、5thアルバム「Defying」をリリースする。