音楽ナタリー Power Push - TOWA TEI

盟友・伊藤桂司&五木田智央と考える“音楽とジャケット”

“CUTE”なジャケのアナログ品評会

TOWA TEI まず、僕が持ってきたPipo Y Sus Estrellas「Violines Y Trombones」は、なぜかジャケットの四辺にドラフトテープが貼られていて、その一生懸命なところも含めてキュート(笑)。

伊藤 この状態で売られていたの?

TOWA TEI そうなんですよ。桂司さんはどんなレコードを持ってきました?

伊藤 紹介したいのは、Sunny Ade And His African Beats「The Original Syncro System Movement」。キング・サニー・アデは「Synchro System」(1983年)というアルバムが有名だけど、それよりも前に出た盤です。

五木田 「Synchro System」は僕ももちろん持っているけど、これは知らないなあ。

伊藤 うん、僕も長らく知らなかった。

TOWA TEI 音もキュートじゃないですか! 僕が持ってきた中で超レアなのが、Black Sabbath「Black Sabbath Vol.4」。ジャケットがハンドメイドのシルクスクリーンなんだよね。しかも、片面には溝がない(笑)。このKraftwerk「The Man-Machine」の女性ジャケ盤もレアだね。

伊藤 何これ!?

五木田 これは欲しい!

続・“CUTE”なジャケのアナログ品評会

五木田 次は僕が持ってきたスーザン「Do You Believe In Mazik -魔法を信じるかい?-」を。

TOWA TEI (高橋)幸宏さんがプロデュースしたんだよね。

五木田 ドラムが打ち込みみたいな音だけど、幸宏さんだからカッコいいんです。YMO関連ということで、次は坂本龍一「左うでの夢」(Ryuichi Sakamoto「Left Handed Dream」)を。1曲目の「Brown Shoes」は坂本教授の名曲ですけど、アメリカ盤なのでロビン・スコットのボーカルが入っています。

「~hINT~ INTERSECT BY LEXUS RECORDSリリースパーティ」の様子。

TOWA TEI このアメリカ盤は初めて見たなあ。

五木田 幸宏さんのドラムも日本盤とちょっと違うんです。

伊藤 日本盤より音がイイね!

五木田 ただ、もともとはプログレのオタクだった兄貴のレコードなんですけどね(笑)。桂司さんはほかにどんなアナログを?

伊藤 ボー・カーター「Banana In Your Fruit Basket: Red Hot Blues 1931-1936」はタイトルが超イヤらしいんだけど(笑)、ジャケットはロバート・クラムというアンダーグラウンドコミックスのマンガ家が描いたもの。この盤を出したYAZOOというレーベルは音楽的にはブルースに強いんだけど、クラムが手がけたジャケットの作品をたくさん出していますね。

五木田 カレン・アレクサンダー「Isn't It Always Love」はイヤらしくはないですが、ジャケットも音もすごくキュート。カレン・アレクサンダーって、ジョニ・ミッチェルとかシンガーソングライターのブームがあった70年代に出てきた人なんですけど、実は僕はこのアルバムしか知らなくて。たまたま買ったらすごくよかったんです。

続々・“CUTE”なジャケのアナログ品評会

伊藤 今度は、僕自身が影響されたジャケットを紹介しようかな。キャプテン・センシブル「Happy Talk」は、「南太平洋」という有名なミュージカルで歌われる曲「Happy Talk」を、キャプテン・センシブルが80年代にポップにリメイクした盤。ジャケットもイイけど、ミュージックビデオも面白かったなあ。それから、Kid Creole & The Coconuts「Christmas In B'Dilli Bay」のジャケットは書割感がハンパない(笑)。ハリウッド的なフェイクというか。言ってみればすべてニセモノだけど、これにもかなり影響を受けた。

五木田 手前味噌ですが、最後に自分がジャケットの絵を描いたDeerhoof「Offend Maggie」を。このときは突然、依頼のメールが来たんですけど、実はDeerhoofのことは全然知らなかったんです。そこでジム・オルークに尋ねたら、「とてもいいバンドです。ドラマーがすごくいいです」とのことだったので、やろうかなと。「好きに描いてください」みたいなオーダーだったし、音を聴かないまま描きました(笑)。

TOWA TEI 「CUTE」のジャケットの進め方と似ているかもね(笑)。

──五木田さんは音楽作品のジャケットを多く手がけていた時期もありましたけが、今、ご自身の中でジャケットの仕事はどういう位置付けなんですか?

五木田 今は好きに描かせてくれるならやるという身勝手な感じですけど、音とジャケットがあまりにもかけ離れたらマズいという意識はありますね。極端な話、「CUTE」というタイトルなのに、真っ黒な絵だったら合わないじゃないですか。そういうバランスは考えていますね。

──同じく数多くのジャケットを手がけてきた桂司さんはいかがですか?

伊藤 僕はもともと音楽が好きだったんですけど、さまざまな音楽を体験した歴史はジャケットとともにあるんです。学生時代にレコード屋に行って、さっき紹介したような盤と偶然出会ったりしたので、レコード、CD問わずジャケットには特別な意味がある。だから、盤を見てくれる側とのファーストコンタクトを重要にしたいといつも思っています。ただ、ジャケットで自分の作品をゴリ押しすることには興味がなくて、ミュージシャンとの共同作業や化学反応に関心があるんです。

TOWA TEIオリジナルアルバム「CUTE」
[CD] 2015年7月29日発売 / 3000円 / MACHBEAT.COM / MBCD-1501
収録曲
  1. FLUKE
  2. TOP NOTE
  3. LUV PANDEMIC
  4. NOTV
  5. HEAVEN
  6. SOUND OF MUSIC with UA
  7. TRY AGAIN
  8. CUL DE SAC with Leo Imai
  9. BARU SEPEDA
  10. CHAISE LONGUE

参加アーティスト:細野晴臣、METAFIVE、Atom、NOKKO、UA、水原佑果ほか

TOWA TEI監修7inchアナログレコード「INTERSECT BY LEXUS RECORDS #001」
[アナログ] 2015年7月22日発売 / 1512円 / INTERSECT BY LEXUS RECORDS / IBLR-001
収録曲
  1. A-01. CUL DE SAC / TOWA TEI with Leo Imai
  2. B-01. 甘い生活 / 野宮真貴、高野寛
TOWA TEI(テイ・トウワ)

1990年にDeee-Liteのメンバーとして、アルバム「World Clique」で全米デビュー。その後活動の拠点を日本に置き、1994年にソロアルバム「Future Listening!」をリリースする。2005年からは「FLASH」「BIG FUN」「SUNNY」というアルバム3部作を発表し、その評価をさらに高める。2007年には自身の音楽プロダクション「hug inc.」、2010年には電子セレクトショップ「MACH」を設立。そのほか、DJやトラックメーカー、プロデューサーとして多彩な活動を展開。2014年にはソロデビュー20周年を迎え、ベストリミックス集「94-14 REMIX」、ベストカバー集「94-14 COVERS」、ベストアルバム「94-14」を続いて発表した。2015年現在、東京・青山にあるINTERSECT BY LEXUS TOKYOの店内音楽を監修。7月にはオリジナルアルバム「CUTE」をリリースした。

五木田智央(ゴキタトモオ)

1969年東京都生まれの画家。2000年、リトルモアより作品集「ランジェリー・レスリング」を出版。即興的に描かれた初期作品はカルト的な人気を集め、2000年代中盤より海外のギャラリーを中心に活躍する。個展は2006年にアメリカ・ニューヨークのATM Gallery、2007年にアメリカ・ロサンゼルスのHonorFraser Gallery、2008年に東京のTaka Ishii Galleryなどで開催。現在は美術の世界にとどまらず音楽、出版、ファッションなど各方面に活躍の場を広げている。

伊藤桂司(イトウケイジ)

1958年東京都生まれのアートディレクター。主に広告、雑誌、音楽などの分野でグラフィック、ビジュアルワーク、アートディレクション、映像を中心に活動。これまでに雑誌「Numero TOKYO」「SWITCH」「BRUTUS」「流行通信」「casaBRUTUS」「relax」「Cut」などのカバーアート、音楽関係ではTOWA TEI、スチャダラパー、キリンジ、木村カエラ、PES from RIPSLYME、ohana、クラムボン、Buffalo Daughter、野宮真貴、一青窈、BONNIE PINK、orange pekoeらのCDジャケットやミュージックビデオを手がける。ほかにNHK Eテレの番組のセットデザインやタイトル映像、ブルックリンパーラー博多の店内壁画など活躍は多岐にわたる。京都造形芸術大学教授、UFG(Unidentified Flying Graphics)代表。