音楽ナタリー Power Push - METAFIVE

完成度の高い過渡期アルバム

高橋幸宏、小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井という豪華メンバーによって結成されたスペシャルなバンド、METAFIVE。今年1月に1stアルバム「META」をリリースしたのちさまざまなフェスに参加し、8月にはライブ映像作品「METALIVE」を発表するなど精力的に活動してきた彼らが、早くも新作「METAHALF」を完成させた。今回は5曲入りのミニアルバムだが、どの曲も勢いに満ちていてハイクオリティ。メンバー全員がバンド活動を通じて刺激を受けていることが伝わってくる。11月からは初めてのワンマンツアーも控えている中、高橋、砂原、ゴンドウの3人に新作について話を聞いた。

取材・文 / 村尾泰郎

「君に、胸キュン。」とスティーヴ・ジャンセン

──「METAHALF」の話を伺う前に、今年の「WORLD HAPPINESS」の話を少し。METAFIVEのステージで、幸宏さんが「君に、胸キュン。」を歌うというサプライズがありましたが、歌うことを勧めたのは砂原さんらしいですね。YMOファンとしては「よくぞ勧めてくれた!」と感謝したいところなんですが、どうしてあの曲を?

砂原良徳 夢の島で「WORLD HAPPINESS」をやるのが最後だったんで、これまでを総括できるようなものをやったらいい、やらなきゃいけないかもなって思ったんです。「胸キュン」って特別思い入れのある曲というわけではなかったんですけど。ただ、あの曲はYMOもやってなかったし、「YMOだとやりづらくっても、メタだったらなんとなくサラッとできるかな?」ってことで提案させてもらいました。

高橋幸宏 あれはテレビで口パクでしかやってないんで。あ、フルバンドで生でやったっけ?

砂原 やりましたね。TBSで1回、テンポが速いやつ。

──でも、1回しかやってないんですね。そんな「胸キュン」を今やることに抵抗はありませんでした?

高橋 ありました(笑)。「ええーっ?」とか言ったんだけど、そしたらスタッフのみんなが「ほかのフェスでもやりましょう!」とか言い出したから「それはやめよう」って。

砂原 それは僕も止めました(笑)。

2016年1月21日に東京・EX THEATER ROPPONGIで開催されたワンマンライブ「METALIVE 2016」の様子。(撮影:山内聡美)

高橋 なので、「それはワーハピだけにしよう」ってことになったんです。その後、スティーヴ(・ジャンセン)が日本に来てたんで、ワーハピの3日ぐらい前にごはんを食べたとき、「なんでワーハピに来ないわけ?」って聞いたら、「呼ばれてないもん」って(笑)。「いや、正直言うと次の日に京都でコンサートがあって前乗りしなきゃいけないから無理なんだ」って言うから、「いいから来てよ」って頼んだら、「じゃあ、京都には当日行く」って。

砂原 幸宏さんが「たぶん、スティーヴがワーハピに出ます」みたいなことをFacebookに書いたので、それを見て「えっ!?」と思って、急いで「STAY CLOSE」っていう幸宏さんとスティーヴ・ジャンセンの曲を打ち込み始めたんです(笑)。打ち込み始めてしばらくしたら、スタッフから「『胸キュン』でスティーヴがドラムを叩きます」っていうメールが来て、「あ、じゃあ、これやんなくていいんだ」ってやめたという。

──「STAY CLOSE」も生で聴いてみたかったですが、実際に「胸キュン」をステージでやってみていかがでした?

高橋 あとで映像を観たら、最初のほうでちょっとスティーヴが緊張していたみたいだけど、演奏はまったく問題ありませんでした。

ゴンドウトモヒコ そうですね。

砂原 スティーヴ・ジャンセンが来てくれるってもっと早く知ってたら、ほかの曲を用意したのにって思いましたね。ちょっともったいない気がして。

高橋 「CUE」とかのほうがよかったかもね。

完成度は高いけど過渡期のMETAFIVE

──でも、かなり貴重なステージになりましたよね。そのステージで「METAHALF」から「Chemical」も演奏されましたが、あの時点でほかの曲もできあがっていたんですか?

高橋 完全にできてましたね。

砂原 曲順も決まってミックスも終わってました。

──そもそも、今回ミニアルバムを出そうと思ったのはどうしてなんですか?

高橋 Blu-rayの「METALIVE」にボーナストラックで新曲を2曲くらい入れようってことになりまして。「じゃあ、手が空いてる人で作ろうか」ってことで、まず僕とゴンちゃん(ゴンドウ)で作り始めたたら2曲できちゃって。小山田くんもCorneliusのアメリカツアーに行く前に1曲作って、これで3曲。その後、TEIくんも作って4曲になったので、これはもうミニアルバムだねってことで、最後にまりん(砂原)が1曲書きました。

──あれよあれよという間に5曲?

2016年1月21日に東京・EX THEATER ROPPONGIで開催されたワンマンライブ「METALIVE 2016」の様子。(撮影:山内聡美)

ゴンドウ わりとそういう感じでしたね。

砂原 たぶん、「META」を作ったときの余力が残っていたんだと思います。

高橋 もし、次の作品をリリースすることがあったら、きっと違うコンセプトを考えて作るだろうね。

砂原 そうなると時間がかかると思いますね。今回は「META」っていう前提があったから作りやすかったっていうのもある。

──じゃあ「METAHALF」は、ある意味「META」の続編?

高橋 そういうことでしょうね。完成度は高いけど過渡期のMETAFIVE。次があるかどうかわかんないのに、過渡期っていうのもあれだけど(笑)。

──あってほしいです(笑)。今回も「META」と同じように、曲のアイデアをデータでメンバー全員に回して作り込んでいくという手法をとったんですか?

高橋 そうですね。ただ歌詞とメロディはLEOくんの比率が高くなってますけど。

──それは自然に?

高橋 彼は歌詞を書いて仮歌を歌ってくれるから、すごく前進するんですよ。で、スタジオの中で微妙なメロディとか譜割とか歌詞の微調整もやってくれる。ボーカルパートも「ここは幸宏さんが歌ってください」って指示してくれますから。

──テキパキと仕切ってくれる。

高橋 助かってます。

METAFIVE "WINTER LIVE 2016"
  • 2016年11月30日(水)
    広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2016年12月1日(木)
    大阪府 なんばHatch
  • 2016年12月3日(土)
    東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2016年12月5日(月)
    北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2016年12月6日(火)
    北海道 札幌PENNY LANE24
METAFIVE(メタファイブ)

高橋幸宏、TOWA TEI、小山田圭吾、砂原良徳、ゴンドウトモヒコ、LEO今井という個々に活躍する6人のアーティストからなるバンド。2014年1月に行われたコンサート「GO LIVE VOL.1 高橋幸宏 with 小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井」をきっかけに集結し、その後も「高橋幸宏 & METAFIVE(小山田圭吾 × 砂原良徳 × TOWA TEI × ゴンドウトモヒコ × LEO今井)」としていくつかの音楽フェスなどに出演し高評を集める。2014年9月には小山田が音楽を手がける劇場版アニメ「攻殻機動隊ARISE」シリーズ第4弾「攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone」の主題歌としてオリジナル楽曲「Split Spirit」を発表。2015年にはバンド名をMETAFIVEと改め、高橋が主催する音楽フェス「WORLD HAPPINESS 2015」をはじめとする複数のイベントに出演した。2016年1月に初のオリジナルアルバム「META」をリリースし、この作品がロングセラーに。同年11月にはミニアルバム「METAHALF」を発表した。