音楽ナタリー Power Push - 東京女子流

5人の少女がアーティストになるまで

東京女子流の2012~13年

2カ月の活動休止期間

──年明けすぐに、日本のポップカルチャーを紹介するフランスのケーブルテレビ番組「Japan in Motion」でミニコーナーを担当することになりました。あのあたりから海外のリスナーが徐々に増えていった印象がありますが実際どうでしたか?

庄司 そうですね。あの番組で私たちを知ってくださったフランスの女性ファンの方が今でもTwitterに頻繁にメッセージをくださったり。確かにYouTubeのコメントとか、海外のファンの方からの反応が増えた気がします。

──4月には大阪府警の「平成24年 春の全国安全運動」ポスターのモデルに抜擢されました(参照:交通ルールを守ろう!東京女子流が春の全国交通安全運動PR)。関西組の小西さんと中江さんにとってはある意味、地元に錦を飾った形というか。

小西 あのポスター、地元の電車の車内に貼りまくってあったんですよ。

中江 友達に「これ、中江?」とか言われて超うれしかったです。近所の警察署にポスターがいっぱい貼ってあって、それを見てうちのお婆ちゃんも喜んでくれました。

──全国安全運動のセレモニーにも参加したんですよね。

山邊未夢

山邊 撮影OKだったので、ファンの皆さんが写真を撮って送ってくださったんですけど、どの写真を見ても制服がブカブカで(笑)。

中江 肩がこんな余っちゃって。完全に“着られてる”感じでしたね(笑)。

──その後、2度目の全国ツアーを行ってから、グループは2カ月の活動休止期間に突入します。パフォーマンス全般のスキルアップが目的ということでしたが、具体的にはどんなことをしていたんですか?

中江 ずっと走ってました。毎日朝と夜、5~6キロぐらい走って。

山邊 初日は、「1、2、3、4、ALSOK!」とか、ふざけながら走ってたんですけど(笑)、2回目から「ちょっと長くない?」みたいになってきて。

中江 ランニング以外にも腹筋とかボイトレもみっちりやって。本当に過酷な2カ月だったんです。でも夜の街を走るのは気持ちよかった。

新井 当時は月島のマンションで共同生活してたんですけど、月島からスタートして豊洲のほうをぐるーっと回って。勝鬨橋を渡ってね。

中江 いいコースだったよね。今でも、あのあたりを通ると思い出すもん。

新井 月島に住んでた頃は、みんなでいろんなところに出かけたよね。おにぎり作って近所の公園までピクニックに出かけたり。

中江 そういえば月島のマンションにもお化けが出たんですよ。マネジャーさんがご飯を買い出しに出かけたりして、うちらだけでお留守番してると、コツコツコツコツ……って音が聞こえるんですよ。

山邊 大人がいなくなった途端に聞こえるんだよね。

中江 それで「誰や! あっち行け!」とか言って、枕とかいろいろ投げまくるっていう。だんだん慣れていきましたけど。

庄司 「今日、すごい長くない?」みたいな。

中江 かなりメンタルが鍛えられました(笑)。

──2カ月のトレーニング期間を経て、パフォーマンスにはどのような変化がありましたか?

中江 ライブの途中でスタミナが切れるようなことがなくなりました。

山邊 腹筋とか体幹を鍛えることで、それまでとは比べ物にならないくらい声も出るようになったし。

庄司 今振り返ると、あの2カ月は女子流にとってすごく意味のある時間だったなと思います。

初めての海外公演&武道館

──10月にはシンガポールで初めての海外ライブを行っています。以降、女子流は香港、台湾、タイなど、アジアを中心に海外での活動も積極的に行っていくことになるわけですが。

新井ひとみ

新井 海外のお客さんの盛り上がり方が日本のファンの皆さんと全然違うのが新鮮でした。皆さん、お腹の底から声を出して盛り上がる感じっていうか。

中江 メンバーのボードを作ってきてくれた人もいたよね。

新井 海外だと友梨ちゃんのファンに熱狂的な人が多かった気がする。「ユウリィチャーン!」ってずっと叫んでる人がいたり。

一同 ユウリィチャーン!

中江 海外は情熱的なファンの方が多いんですよ(笑)。そういえば1本の薔薇をプレゼントされたこともありました。

──11月には大阪・通天閣で行われた「ポッキー&プリッツの日」のコラボイベントに出演しています。これはどういう内容のイベントだったんですか?

小西 「ポッキーPR隊」に任命されて、1日限定で「大阪女子流」として活動したんです。道行く人にポッキーを配ったり。

山邊 あとイベントで「ポッキーのテーマ」を披露しました。

一同 ポポポ・ポッキー!

新井 帰りにお菓子の詰め合わせをもらったんだよね。

中江 あれ、ヤバかったよね。うちらにとっては夢が詰まった箱だった。

──そして12月には初の日本武道館公演が実現しました。この日のライブで、デビュー以来非公表だったメンバーの年齢が公開されたんですよね。皆さんは年齢を伏せて活動することについてはどのように思っていたんですか?

山邊 「何で公表しないんだろう?」って単純に疑問に思ったんですけど、理由を聞いてなるほどなと思いました。デビュー当時はまだメンバーが小6とか中学1~2年生だったから「必要以上に幼く見られないように、あえて年齢を伏せる」って説明されて。

中江 ファンの方々にはなんとなくバレてたと思うんですけど(笑)。

山邊 でも、年齢を公表したことで、いろいろ話しやすくなりました。それこそブログに学校のこととか書けなかったし。

庄司 握手会でファンの方に「今、何年生でしょ?」とか聞かれても「いやいや、違いますよ」とか答えたり(笑)。

──初の武道館公演はいかがでしたか?

新井 みんなガチガチでした。いつもは堂々としてる友梨ちゃんが、開演前に「……私はできる。絶対にできる!」ってずっと呟いてたり。

山邊 「Liar」の曲中に赤い衣装を一瞬で裏返してピンクの衣装にチェンジする演出があったんですけど、リハでは1回も成功しなかったんですよ。でも本番では見事に成功して。

新井 奇跡的だったよね!

山邊 うん。あれが成功したことでプレッシャーから解放されて、そこからはリラックスしてライブを楽しむことができました。

体を張ったチャレンジ企画

──2013年は年明け早々、BSフジで初の冠番組「東京女子流スレスレTV!」がスタートしました。この番組は、メンバーが毎月体を張った企画に挑戦していくという内容になっていて、第1のミッションでは、新井さんがマジック、庄司さんが警察犬の訓練、山邊さんがジャグリング、中江さんがお笑い、小西さんがドラムにチャレンジしました。

中江 それまでは5人そろって歌とダンスを中心に活動してきたので、ああいう形で、それぞれ初めてのことにチャレンジするのはすごく勉強になりましたね。

小西 女子流の活動の合間に、それぞれ課題を練習して。私もライブでタイに行ったとき、ホテルの部屋にドラムの機材を持ち込んで練習したり。1カ月って期日が決まってたから全員必死で取り組んで。

──皆さんそれぞれ大変そうだなと思ったんですけど、庄司さんの警察犬の訓練は特にハードそうでした。

庄司芽生

庄司 あれ、なんで私が担当することになったんだっけ?

山邊 最初の打ち合わせで番組のスタッフさんから「みんなペット飼ってる?」って聞かれて、唯一「飼ってません」って答えたのが芽生だったんだよ。たぶん、それで担当することになったんだと思う(笑)。

庄司 企画を聞かされたときは超びっくりして。実際、警察犬に会ったら、めっちゃ恐そうだし。だって立ち上がったら芽生より大きいんだよ?

──最終的には仲良くなれたんですか?

庄司 そう……ですね(笑)。最後はなんとか慣れてくれて。でも、ひさびさに会ったら私のこと忘れちゃったみたいで、「マックス!」って名前を呼んでもプイって向こうに行っちゃいましたけど。いい経験にはなりました(笑)。

山邊 第2ミッションの路上ライブも過酷だったよね。

小西 毎回いろんな場所で路上ライブをやるっていう企画だったんですけど、何から何まで全部自分たちで準備しないといけないんですよ。

山邊 自分たちでチラシを配ってお客さんを集めないといけないんです。まず道行く人に声をかけるのが恥ずかしくて。

中江 受け取ってもらえないんじゃないかっていう怖さもあったから、(小声で)「あの……」みたいな感じでおそるおそる声をかけて。最初のライブは結局7人ぐらいしか集まらなかったよね。

新井 機材もイチからセッティングして。「このコードどこに挿すんだっけ?」とか。

中江 あの企画で相当度胸が付いた気がする。

恐竜、野球盤、ジャンケン、2度目の武道館

──4月には福井県勝山市の「恐竜大使」に任命されました。正直、東京女子流と恐竜って、イメージ的に結びつかないんですけど、どういう経緯で大使を務めることになったんですか?

新井 それはですね、東京女子流というグループ名に「キョウ」と「リュウ」という言葉が入ってるということで。

山邊 恐竜大使に選ばれてうれしかったよね。名刺も作ってもらったし。

小西彩乃

小西 私と友梨は関西在住だったから、たびたび福井に行って、恐竜大使として化石を発掘する現場のロケにお邪魔させてもらいました。

中江 福井で放送してた「恐竜先生」っていうドラマの撮影現場に行ってレポーターをやらせてもらったこともあったよね。

──ちなみに恐竜大使就任時にグループを代表して山邊さんが「福井県のよさ、勝山市のよさ、恐竜のよさをたくさんの方々に伝えていきたい」とおっしゃってましたが、山邊さんの考える「恐竜のよさ」とは具体的にどういうことですか?

山邊 恐竜って絶滅しちゃって今はもう存在しないわけじゃないですか。その化石を発見して、恐竜がいた時代をみんなで想像して楽しみましょうっていう。それが私が考える「恐竜のよさ」です。

──最近も福井で恐竜の化石が発見されたニュースを新井さんがInstagramに上げていましたよね。

新井 はい。ニュースを観て「これは!」と思って。

小西 意識高い!

山邊 せっかく大使に任命してもらってるんで、これからも恐竜のよさをどんどんアピールしていこうと思います。

──あと、東京女子流は作品のリリースごとに毎回ユニークなファンイベントを行っていますよね。今日はそのあたりについてもお話をお聞きできればと思っていて。まずは、12枚目のシングル「運命 / ワンダフル スマイル(新井ひとみと松島湾子)」のリリースイベントとして行われた「女子流と野球盤対決!」ですが。

中江 出た!(笑)

──メンバーが投げた球をお客さんが打って、球が入った穴に記載されている特典がプレゼントされるという内容で。

中江 完全なる佐竹さんの趣味ですよね。でもファンの方はイベントに向けて真剣に練習してきてくださって。

新井 実際に野球盤を買って特訓してきてくれた方もいたり。

山邊 私「剛速球山邊」って呼ばれましたから。バンバン空振り取って。

中江 最後はメンバー全員指が真っ赤になったよね。あと、イベントだと「全国ジャンケン大会」も楽しかった。

──ファンとメンバーがUstreamを通じてジャンケンをして、最後まで勝ち抜いた人が住んでいる都道府県に女子流が出向いてライブを行うという。

山邊 あれは盛り上がりましたね! 最後は東京代表と高知代表の人で決勝戦をやったんですけど、高知でライブをやったことがなかったから心の中で高知代表の人を応援して。

中江 未夢、最後完全に「高知、勝って!」って言っちゃってたから(笑)。

山邊 あはは。興奮して思わず言っちゃいました(笑)。

──そして2013年の締めくくりとして、12月には2回目の武道館単独公演が行われました。

山邊 2回目の武道館で印象に残ってるのは、女性のファンがたくさん来てくださったことですね。

中江友梨

中江 1回目の武道館のときは、私たちがステージに出ていったら男性の「ウオー!」っていう声が多かったんですけど、このときは女性の「キャー!」っていう声がすごく目立って。それで一気にテンションが上がりました。

──確かにこれぐらいの時期から会場に足を運ぶ女性ファンが目に見えて増えた印象があります。最近だと、アンジュルムの福田花音さんだったり、女子流ファンを公言するアイドルも増えていますし。

新井 学校でも「女子流さんのファンです」って言ってもらえることがけっこうあって。同世代の、しかも同じ芸能界でがんばってる人たちにそういうふうに言ってもらえるのはやっぱりうれしいですよね。励みになりますし、もっとがんばらなきゃって思います。

Contents Index
東京女子流インタビュー
松井寛×tofubeats 対談
バニラビーンズ・レナ コメント
ニューシングル「Never ever」 / 2015年6月24日発売 / avex trax
Type-A [CD+DVD] / 1944円 / AVCD-83321/B
Type-B [CD+フォトブック] / 2160円 / AVCD-83322
Type-C [CD] / 1080円 / AVCD-83323
Type-D [CD] / 1296円 / AVCD-83324
CD収録曲(共通仕様)
  1. Never ever (TJO & YUSUKE from BLU-SWING Remix)
  2. Never ever (Original mix)
  3. Never ever (Royal Mirrorball vs MODEWARP Main mix)
Type-A DVD収録内容
  • "Never ever" Making Movie
Type-D CD収録曲
  1. Never ever (Royal Mirrorball vs MODEWARP Dub mix) [SoundCloud]
  2. Never ever (TJO & YUSUKE from BLU-SWING Remix) -Instrumental-
  3. Never ever (Original mix) -Instrumental-
アナログ盤「Never ever REMIX」 / 2015年6月12日発売 / [7inchアナログ盤] 1620円 / avex trax / AVKD-83329
アナログ盤「Never ever REMIX」
Side-A(45rpm)
  • Never ever (TJO & YUSUKE from BLU-SWING Remix)
Side-B(33rpm)
  • Never ever (Royal Mirrorball vs MODEWARP Dub mix)
東京女子流(トウキョウジョシリュウ)

東京女子流

小西彩乃、山邊未夢、新井ひとみ、中江友梨、庄司芽生からなるダンス&ボーカルグループ。エイベックスにとって約7年ぶりのガールズグループとして2010年1月1日に結成された。 同年5月にデビューシングル 「キラリ☆」をリリース。2011年5月には1stアルバム「鼓動の秘密」を発表する。2012年12月には初の日本武道館単独公演を成功に収め、1年後の2013年12月には2度目の武道館ライブを開催した。2014年にはロックフェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014」への出演や、台湾、香港、シンガポール、タイ、ベトナム、サンフランシスコなどワールドワイドに活動を展開し、国内外で注目を集めている。2015年3月には山邊未夢が初めて作詞を手がけたニューシングル「Stay with me」、5月にはデビュー5周年を記念した初のベストアルバム「1st BEST ALBUM キラリ☆」を発表。6月には通算19枚目となるニューシングル「Never ever」をリリースした。