音楽ナタリー Power Push - 東京女子流

5人の少女がアーティストになるまで

東京女子流の2014年~現在

東京ひとり暮らし

──2014年4月に新井さん、中江さん、小西さんが上京して、いよいよメンバーそろっての東京生活がスタートしました。

新井 上京した頃はいろんな面で戸惑いましたね。学校も楽しいと言えば楽しかったんですけど、まあまあ……あの。

──最初は馴染めなかった?

新井ひとみ

新井 そうなんです。今はそんなことないんですけどね。お母さんが心配して1カ月に1回ぐらい遊びにきてくれるんですけど、そういうときはすごく甘えます。

中江 お母さんが来ると安心感あるよね。私も上京してから実家がすごく恋しくなりました。

新井 家に帰ってきたときの「シーン」が耐えられないんですよね。

中江 ガチャってドアを開けると真っ暗みたいな。

新井 上京した頃は全然寝付けなくて。よく友梨ちゃんの部屋に行って一緒に寝させてもらってました。

中江 私がひとみの部屋に行ったこともあったよね。で、ひとみが録画してたグルメリポートみたいな番組を一緒に観たり。

新井 グルメ番組が大好きなんですよ。大食いの人たちが出てくる番組で、その人たちの食べっぷりを見てストレス発散してました(笑)。

東京女子流と映画

──この年は3月に「5つ数えれば君の夢」(参照:映画「5つ数えれば君の夢」特集)、5月に「学校の怪談 呪いの言霊」という2本の出演映画が公開されました。

中江 撮影自体は前の年に行ったんですけど、どちらの映画もすごく短期間で撮影したので毎日大変でした。

新井 そうそう。映画を撮影してた頃、私、サラダ作りにハマってたんですよ。それでマネジャーさんに「晩ごはん作っておいて」って言われたから、みんなの分のごはんを用意して部屋で待ってたことが印象に残ってます。

中江 ん、サラダの話は?

新井 サラダも作ったよ。たしか生ハム入れたんだっけ。……もしかしたらサーモンだったかもしれない。

中江友梨

中江 サラダの話はほどほどにね(笑)。でも、ひとみが作ってくれたごはんは美味しかったな。みんなヘトヘトになって帰ってきたら「あ、ごはんが用意されてる!」って。

庄司 「家庭の匂いだ!」といかいって。

中江 ……そういえば映画の話でしたよね?

山邊 話をさえぎっちゃった。すいません。

──大丈夫です(笑)。実際、映画に出演してみていかがでしたか? かたやホラー、かたや青春群像劇と、まったく内容の異なる作品でしたが。

中江 それぞれ全然内容が違くて難しかったです。特に「5つ数えれば君の夢」では普通の女子高生を演じたんですけど、逆に普通の人を演じるのが難しくて。

新井 映画のお仕事をやらせていただいたおかげで、気持ちの込め方だったり、歌を歌っていく上でも、いろんなことを勉強できたと思います。

──8月には映画「学校の怪談 呪いの言霊」のエンディング曲が収められたシングル「十字架 ~映画『学校の怪談 -呪いの言霊-』Ver.~」と同時発売のミニアルバム「怖い曲集 +『学校の怪談 -呪いの言霊』」(2014年5月発売)、そして4thアルバム「Killing Me Softly」(2014年6月発売)の購入者特典企画として、都内のお寺を借りて「お寺でホラーライブ」を行いました。またこれも変わったイベントで(笑)。

山邊 かなりシュールなイベントでしたね。ライブをやる前にチーンって鐘の音がして。

中江 で、お坊さんが出てきて一礼して。

庄司 畳の上で裸足で歌ったんだよね。

新井 お客さんも「どうしたらいいんだろう?」みたいな感じで戸惑いながらライブを観てて。

中江 しかも開演前に佐竹さんが、ずっと怖い話をかけてたんですよ。あれ、本当にやめてほしかった。マジで怖いから。

山邊 あのイベントは一体何だったんだろうって、いまだに思いますよ(笑)。

──7月からは4カ月連続企画として「TGS Discography / HARDBOILED NIGHT」が開催されました。1部は過去に発表したアルバムの完全再現ライブ、2部はメンバー出演のショートフィルムとステージ上のパフォーマンスを同時進行させるという内容で。MCを排してハードボイルドな世界観を展開させる「HARDBOILED NIGHT」は皆さんにとって大きな挑戦だったと思うのですが、いかがでしたか?

中江 映像と連動したライブということで、最初は自分たちでもどういうものになるか想像がつかなかったんですよ。しかも1人ずつ配役があって。私は用心棒を演じたから完全に男役だったんですけど(笑)。

新井 私も男の子の探偵役だったんですけど、セリフ回しが普段の喋り方と全然違うので苦労しました。

中江 アクションシーンもあったりして。プロレスラーの方が相手とはいえ、人のお腹を蹴るのはかなり勇気が要りましたね(笑)。

庄司芽生

庄司 ファンの方も最初は違和感を感じていたと思うんです。「女子流がなんかカッコいいこと言ってるよ、ふふ」みたいな感じで。だから会場でちょっと笑いが起きたりもしてましたね。

──カッコよすぎて笑うというか。

庄司 でも回を重ねるごとに作品の雰囲気に入り込んでくれる方が増えていって。芽生はそれがすごくうれしかったです。

山邊 でも最後、私たちが死んだときは笑いが起こってたよね。「え、死ぬんだ!」って(笑)。

中江 でもファンの方も毎回、誰が生き残るか想像しながら楽しんでくれたんじゃないかな。

“アーティスト宣言”を経て

──2014年12月の東京・渋谷公会堂公演(参照:東京女子流“カワイイ満載”見納めライブでひと足早いXmasパーティ / 東京女子流、2014年の総決算ライブで“NEXT STAGE”へ)を経て、2015年の年明け早々に東京女子流は“アーティスト宣言”をしました。その後、歌やダンスに対する意識はどのように変わりましたか?

新井 今まで以上にレッスンにも強い気持ちで臨むようになりました。私たち自身の気持ちもそうなんですけど、何よりもここ最近は楽曲やダンスそのものが変わったなと思います。今回リリースした「Never ever」というシングルもそうなんですけど、ミュージックビデオも完全にダンスを見せるような作りになってるし。自分たちでも気に入っていて、本当にいろんな人に観てもらいたいなと思います。

──「HARDBOILED NIGHT」の時期に7inchシングルとして立て続けにリリースされた楽曲はどれもカッコよくて、今思えばあの一連の楽曲が「アーティスト宣言」への布石になっていたんじゃないかなとも思うんですよ。

山邊 そうですね。例えば「HARDBOILED NIGHT」の第4夜(参照:生き残るのは誰だ?女子流マンスリー終盤戦へ)で披露した「Say long goodbye」は、女子流が次の階段に上るためのきっかけになったような曲だと思うんです。あの曲で初めてハモリに挑戦して、個人的にも歌に対する意識が大きく変わりました。

庄司 「Say long goodbye」の存在は大きいですね。1人ひとりのソロパートもあるし、ハモることの気持ちよさに目覚めたところもあります。

新井 声がキレイにそろったときは本当に気持ちいいよね。

庄司 キター! みたいな(笑)。 実際、ファンの方からもボーカルに対する反響をたくさんいただいたし。これからも新しい挑戦をどんどんしていきたいと思いますね。

──新しい挑戦といえば、前作「Stay with me」(2015年3月発売)で山邊さんは初めての作詞に挑戦しています。

山邊未夢

山邊 女子流を代表して私が最初に作詞に挑戦させてもらったんですけど、いざ書こうと思っても、いったいどこから書いていいのかわからなくて。悩んだんですけど、何も言葉が出てこなかったからその日は書くのをやめて。次の日に「このままだと何も進まない」と思って、とりあえずテーマを決めて、それにまつわる実体験をバーッと書き出していったんです。そこから「要る / 要らない」を仕分けしていったら、徐々にストーリーが見えてきたんです。大変だったけど、新しい自分に気付くことができて楽しかったです。

新井 「Stay with me」の歌詞には、未夢ちゃんが高校3年間で感じたこととかが書かれていて。私も2年後にはこんな気持ちになるのかなってジーンとしました。

──いつも一緒に活動してる山邊さんが書いたということも心に響くポイントだったんでしょうね。

山邊 友達にびっくりされました。「これ本当に未夢が書いたの?」「こんなこと未夢が書くわけないでしょ」って。

──ゴーストライター疑惑が(笑)。

新井 友達とはしゃいでるいつもの未夢ちゃんと、歌詞のギャップがありすぎて。たぶんみんなびっくりしたんだと思う。

──一方、中江さんは、ラッパーのサイプレス上野さんとのヒップホップユニット「サ上と中江」の活動をスタートしました。

小西 友梨が自分でリリックも書いててすごいなと思います。うちら、サ上と中江の曲、大好きなんですよ。

新井 聴いてて楽しくなれる感じだよね。

小西 プリクラにも「SO.RE.NA」とか書いちゃいますもん(笑)。JKでも共感できる歌詞だし。

庄司 中江らしいよね。

それぞれの目標、東京女子流の未来

──といった感じでデビューからの5年間を駆け足で振り返ってきましたが、皆さんどんなことを感じましたか。

小西彩乃

小西 5年間とか本当にあっという間ですね。

中江 出会った頃は、みんなで走り回ってよくコケてたのに。

山邊 若かったよね(笑)。できれば3年くらい前に戻りたい。昔の映像を観直していると「あのとき、もっとああすればよかった」と思うこともあるし。

中江 人生、後悔ばかりですよ(笑)。でも、いろんなことを乗り越えていかないといけないから。

──では最後に今後の展望についてお話を伺えればと思います。皆さん、具体的に今後こんなことをやってみたいという希望はありますか? 東京女子流としてでもいいですし、個人としての目標を挙げていただいてもけっこうです。

新井 今後はフリーライブを積極的にやっていきたいです。まだまだ行けてない地方がたくさんあるので、いろんなところを回ってライブをやりたいです。個人的には中国語の勉強をがんばりたくて。今、SHOWROOMの「你好!東京女子流」という番組で中国語の勉強をしてるんですけど、中国語がしゃべれたら、中国圏でライブをやるときに現地のファンの皆さんともっと距離を縮められると思うし。

山邊 私はまた作詞もやってみたいし……あとデザインをするのが好きなので、グッズとかのデザインにもっと関わっていけるといいなと思います。先日もみんなの意見をもとに5周年ライブ(参照:「10周年を目指して突き進んでいきたい」東京女子流、デビュー5周年ライブ)のTシャツをデザインさせてもらったんですけど、そういう仕事を増やしていきたいです。あとはひとみも言ってたんですけど、私もフリーライブをもっといっぱいやりたい。若い子だとお小遣いが足りなくて、なかなかライブのチケットを買えなかったりするじゃないですか。そういう子たちにも女子流のライブを観てもらいたいので。

小西 私はAKIBAカルチャーズ劇場で定期的に「小西の音楽祭」というイベントをやってるんですけど、ゆくゆくは地元の大阪でも開催したいなと思ってるんです。家族にも生で観てもらいたいし。個人的な目標としては何か楽器をマスターしたいです。「東京女子流スレスレTV!」の企画でチャレンジしたドラムもまたちゃんと練習したいですし。女子流の活動としては全国47都道府県でライブをしたいです。

庄司 芽生は、やりたいことが2つあって。1つ目の目標は、もう一度日本武道館のステージに立つことです。過去2回は、スタッフさんが考えてくれたことを一生懸命練習して自分たちのものにするみたいな感じだったので、次に武道館公演をやれるとしたら自分たち発信で演出を考えてみたいなと思います。もう1つの夢は、野外の広い場所で単独ライブをやること。女子流で真夏に野外の大きな会場でライブをやってみたいし、そういう場所でライブができるくらいビッグになりたいです。

中江 私も芽生と同じで、武道館のステージにもう一度立ちたいんです。さらに成長した女子流の姿を武道館のステージでいつか見せられたらいいなって。個人的には、今までやったことのなかったことに今後も積極的に挑戦していきたいと思っています。単にいろんなことに取り組むだけじゃなくて、何かに挑戦するんであれば、ちゃんとしたレベルまで達成できるようにがんばりたいです。

東京女子流

新井 でも、現実的な目標として、日本武道館公演は絶対にもう一度実現させたいですね。

中江 武道館公演は5人の中で共通する目標だもんね。

新井 うん。夢の中でもやってみたい!

Contents Index
東京女子流インタビュー
松井寛×tofubeats 対談
バニラビーンズ・レナ コメント
ニューシングル「Never ever」 / 2015年6月24日発売 / avex trax
Type-A [CD+DVD] / 1944円 / AVCD-83321/B
Type-B [CD+フォトブック] / 2160円 / AVCD-83322
Type-C [CD] / 1080円 / AVCD-83323
Type-D [CD] / 1296円 / AVCD-83324
CD収録曲(共通仕様)
  1. Never ever (TJO & YUSUKE from BLU-SWING Remix)
  2. Never ever (Original mix)
  3. Never ever (Royal Mirrorball vs MODEWARP Main mix)
Type-A DVD収録内容
  • "Never ever" Making Movie
Type-D CD収録曲
  1. Never ever (Royal Mirrorball vs MODEWARP Dub mix) [SoundCloud]
  2. Never ever (TJO & YUSUKE from BLU-SWING Remix) -Instrumental-
  3. Never ever (Original mix) -Instrumental-
アナログ盤「Never ever REMIX」 / 2015年6月12日発売 / [7inchアナログ盤] 1620円 / avex trax / AVKD-83329
アナログ盤「Never ever REMIX」
Side-A(45rpm)
  • Never ever (TJO & YUSUKE from BLU-SWING Remix)
Side-B(33rpm)
  • Never ever (Royal Mirrorball vs MODEWARP Dub mix)
東京女子流(トウキョウジョシリュウ)

東京女子流

小西彩乃、山邊未夢、新井ひとみ、中江友梨、庄司芽生からなるダンス&ボーカルグループ。エイベックスにとって約7年ぶりのガールズグループとして2010年1月1日に結成された。 同年5月にデビューシングル 「キラリ☆」をリリース。2011年5月には1stアルバム「鼓動の秘密」を発表する。2012年12月には初の日本武道館単独公演を成功に収め、1年後の2013年12月には2度目の武道館ライブを開催した。2014年にはロックフェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014」への出演や、台湾、香港、シンガポール、タイ、ベトナム、サンフランシスコなどワールドワイドに活動を展開し、国内外で注目を集めている。2015年3月には山邊未夢が初めて作詞を手がけたニューシングル「Stay with me」、5月にはデビュー5周年を記念した初のベストアルバム「1st BEST ALBUM キラリ☆」を発表。6月には通算19枚目となるニューシングル「Never ever」をリリースした。