音楽ナタリー Power Push - 東京女子流
5人の少女がアーティストになるまで
「音楽をちゃんと作る」というのは暗黙の了解
──東京女子流というグループが始動するにあたり、サウンドの要として松井さんに声がかかったのはどのような経緯なのでしょうか。
松井寛 当時の担当A&Rだった藤原くんというスタッフから「今度こういうグループを始めるんです」という話が来て。「作家はいろんな人にお願いするんですけど、アレンジャーは松井さんに固定でお願いしたいです」という話で。
──音楽の方向性について具体的な話はあったんですか?
松井 そのときは特に具体的な話もなくて。アレンジャーの立場では、どういうことをやりたいかというよりも、曲がどんなタイプなのかによって範囲がおのずと決まってくるので。ただ「音楽をちゃんと作る」というのは暗黙の了解としてあって。「メンバーが幼いから、それにあわせて幼いアレンジに」みたいな話はまったくなかったです。たぶん、そういう方向性だったら俺のところに話を持ってこないと思うし(笑)。
──最初にメンバーと顔合わせしたときは、右も左もわからない女の子が5人という状況ですよね。
松井 そうそう。単にワーワーうるさいだけだった。
tofubeats あはははは(笑)。小中学生ですもんね。
松井 だから、なるべく歌録りの現場には行かなかったんですよ。
──あまり固定概念を持たないように?
松井 いや、単に子供の相手をするのが面倒くさかったから(笑)。
──でも実際にできあがってくるものは初期の段階から、ワーキャーした感じの一切ない音楽でしたよね。それがすごく衝撃的だったんですよね。
松井 ああ、それは僕がたまたま不勉強なだけだったと思うんですよ。アイドルソングに“MIX”というカルチャーがあるのも、女子流の仕事をやりはじめてから知ったぐらいだし。世の中がそんなことになってるなんて全然知らなかったですから。
100BPMのアイドルソングが少ない時代に「キラリ☆」の衝撃
──ちなみにtofubeatsさんは、どのタイミングで女子流の存在を知ったんですか?
tofubeats 1stシングルの「キラリ☆」(2010年5月発売)が出たときですね。あの頃のアイドルソングは、どんどんテンポが上がっていく傾向があって、それが自分にとってはしんどかったんです。神戸でのんびり暮らしている身には、BPMが140を超えるとちょっとしんどくて(笑)。
松井 それは東京にいてもおんなじだよ(笑)。
tofubeats そんなときに女子流さんが出てきて……最初は年齢が公表されてなかったから、てっきり中高生ぐらいのグループだと思ってたんですよ。でも初めて大阪でイベントをやったときに観に行ったら「これは……たぶん小学生だわ」みたいな(笑)。すごく幼いんだけど、ちゃんと歌えてるし、「この子たちはいったい何者なんだろう?」って思ったんですよ。そこから作品を重ねるうちに、なんとなく流れがわかってきて。だから先日の“アーティスト宣言”は腑に落ちたというか、やっと全部の流れがストンと収まった感じでしたね。
松井 アイドルソングのテンポが速くなったのは、パラパラの影響もあるのかな?
tofubeats パラパラの影響はないと思いますよ。パラパラの速さっていうのは、あの踊りを行うための機能だと思うんですよ。逆に言うと、160BPMより速い曲もない。アイドルソングもMIXを打ちやすいテンポが140台ぐらいだからなんじゃないですかね。
松井 でも140~160ぐらいのテンポって、音楽的にやれることがかなり限られてくるじゃん。デジロックみたいなものとか。なんであそこに行くんだろう?って。
tofubeats そうなんですよ。だから女子流で言うと「キラリ☆」みたいな、100BPMぐらいの曲がアイドルソングには本当に少なくて。昔はもっといっぱいあったはずなんですよ。
松井 うんうん。
tofubeats 僕はそういう曲を求めてたんで、「キラリ☆」を初めて聴いたときは「ついにこういう曲が出てきたんだ!」ってすごく衝撃を受けたんですよ。しかも小学生ぐらいの子が歌ってるって(笑)。
──4thシングル「ヒマワリと星屑」(2010年10月発売。「きっと 忘れない、、、」との両A面)などで聴かれたファンク的な要素が、2ndアルバム「Limited addiction」(2012年3月発売)あたりからより強くなってきて、女子流サウンドの特徴として印象付いたように思います。
松井 たぶんカップリングやボーナストラックで“Royal Mirrorball Mix”を作ってたのが、徐々にプラスに転じてきたんでしょうね。何やっても許される感じというか(笑)。それがどんどん広がっていった感じはしますけど。
tofubeats Royal Mirrorball Mixは僕ら的には本当にありがたい。あれが入ってることによって、救われてる部分が結構大きいんですよ。
東京女子流の成長とダークホース
──メンバーに対しては、ある程度距離を保って接してきた感じですか?
松井 基本的に僕はどのアーティストさんともベッタリしたくないので。どんな現場もなるべく近づきすぎないようにしています。
──その距離感の中でも、メンバーの成長してきた部分は見えてきますか?
松井 途中までメンバーの見分けもつかないぐらいだったんですけど、最近はバッチリわかります(笑)。それはたぶん、それぞれがしっかりと個性を身に付けてきたからでしょうし、このまま行けばいいんじゃないかなっていうふうに育ってますよね。
──とりわけ変化の大きいメンバーは?
松井 意図せず山邊(未夢)がダークホースになりつつある気はしますけど。
tofubeats どういう意味でのダークホースですか?
松井 あいつ、パッと写った写真なんかが普通じゃないことが多いんですよ。山邊は俺と同じでB型なんだけど、たぶん変なスイッチを持ってるんだろうなって。tofuくんは何型?
tofubeats 僕はA型です。
松井 じゃあ一緒にいてイライラするタイプだと思う。自分の中に“破壊の神”を宿している感じが、俺はすごくよくわかるんだよね(笑)。
tofubeats べーやま(山邊)さんは俺の中では「ちゃんとしてる人」っていうか「ちゃんとしようとしてる人」ってイメージがあります。で、中江(友梨)さんはちょっとスケ番感がありますよね。肩で風切って歩いてる感じというか。裏表がなさそうな感じ。小西(彩乃)さんはひたむきなイメージがありますよね。「小西の音楽祭」(ソロ企画)とか観てても思うんですけど。庄司(芽生)さんは、女優さんみたいな独特なオーラを放っているというか。1人だけエキゾチックじゃないですか。新井(ひとみ)さんはすごく不思議な存在感の持ち主ですよね。歌もうまいし、華もあるし、センターなんだけど性格は一番ほんわかしてるのかなっていう。あくまでも全部僕のイメージですけど。
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- Contents Index
- 東京女子流インタビュー
- 松井寛×tofubeats 対談
- バニラビーンズ・レナ コメント
- ニューシングル「Never ever」 / 2015年6月24日発売 / avex trax
- Type-A [CD+DVD] / 1944円 / AVCD-83321/B
- Type-B [CD+フォトブック] / 2160円 / AVCD-83322
- Type-C [CD] / 1080円 / AVCD-83323
- Type-D [CD] / 1296円 / AVCD-83324
CD収録曲(共通仕様)
- Never ever (TJO & YUSUKE from BLU-SWING Remix)
- Never ever (Original mix)
- Never ever (Royal Mirrorball vs MODEWARP Main mix)
Type-A DVD収録内容
- "Never ever" Making Movie
Type-D CD収録曲
- Never ever (Royal Mirrorball vs MODEWARP Dub mix) [SoundCloud]
- Never ever (TJO & YUSUKE from BLU-SWING Remix) -Instrumental-
- Never ever (Original mix) -Instrumental-
- アナログ盤「Never ever REMIX」 / 2015年6月12日発売 / [7inchアナログ盤] 1620円 / avex trax / AVKD-83329
- アナログ盤「Never ever REMIX」
Side-A(45rpm)
- Never ever (TJO & YUSUKE from BLU-SWING Remix)
Side-B(33rpm)
- Never ever (Royal Mirrorball vs MODEWARP Dub mix)
東京女子流(トウキョウジョシリュウ)
小西彩乃、山邊未夢、新井ひとみ、中江友梨、庄司芽生からなるダンス&ボーカルグループ。エイベックスにとって約7年ぶりのガールズグループとして2010年1月1日に結成された。 同年5月にデビューシングル 「キラリ☆」をリリース。2011年5月には1stアルバム「鼓動の秘密」を発表する。2012年12月には初の日本武道館単独公演を成功に収め、1年後の2013年12月には2度目の武道館ライブを開催した。2014年にはロックフェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014」への出演や、台湾、香港、シンガポール、タイ、ベトナム、サンフランシスコなどワールドワイドに活動を展開し、国内外で注目を集めている。2015年3月には山邊未夢が初めて作詞を手がけたニューシングル「Stay with me」、5月にはデビュー5周年を記念した初のベストアルバム「1st BEST ALBUM キラリ☆」を発表。6月には通算19枚目となるニューシングル「Never ever」をリリースした。