ナタリー PowerPush - T.M.Revolution
新曲「FLAGS」掲げ再加速 震災復興プロジェクトへの意欲を語る
約6年ぶりのオリジナルアルバム「CLOUD NINE」を完成させたばかりのT.M.Revolutionが、間髪入れずにニューシングル「FLAGS」をリリース。ナタリーでは、ハイペースな活動を続ける西川貴教に約2カ月ぶりのインタビューを実施した。
西川が東日本大震災発生直後より震災復興プロジェクトを起ち上げ、具体的な支援活動を行っていることはご存じのとおり。今回のインタビューは新曲の話題のみにとどまらず、彼の幅広い活動を支える情熱の根源が垣間見える内容となった。
取材・文/大山卓也
葛藤の中で起ち上げた「STAND UP! JAPAN」
──西川さんが中心となって「STAND UP! JAPAN中央共同募金会」をスタートさせてから、約3カ月が経ちました。まずはプロジェクトの発足から現在までを振り返っての、西川さんの思いを聞かせてください。
そうですね。正直、ここまでたくさんの方に支持していただいたり、賛同をいただけるものになるとは、まったく思ってなかったですよね、最初は。
──そうなんですか。
本当に私的な、自分1人の思いから始めたものなので。これをやること自体がすごく身勝手に思われたりもして。
──身勝手?
やっぱり……こういう活動って正解がないじゃないですか。だから正直、やるべきなのかどうかは、すごく悩んだところです。辛辣な批判や意見、ときには中傷みたいなものもあって。僕はそういうものに普段から散々さらされてるし、僕個人だけだったらいいんですけど、周りのスタッフや賛同してくれてる人たちにまでそれが及んでしまうっていうことへの危惧は少なからずありました。
──でもそうした葛藤を経て、プロジェクトを起ち上げたわけですね。
やっぱり周りの仲間や後輩たちから「今すぐ行動を起こしたい」「だけど何から始めたらいいのかわからない」という声がたくさん届いてきて。実際、自分たちが動いたところで本当に被災地の皆さんに伝わるものになるかどうかはすごく不安だったんですけど、でもまずは僕がその受け皿を作ろうと。
募金専用口座の開設にこだわった理由
──3月11日の西川さんのTwitterを改めて読み返してみたんですけど、地震が起こった直後から、西川さんは「電話の利用を控えめに」とか「電車が運休してるから皆さん気を付けて」といった、具体的なメッセージを送っていましたね。
阪神大震災のとき、うちの父親が県職員で防災対策の課に所属していたっていうこともあって、父が実際にどういう仕事をしていたのか、県や地域がどういう動きをしていたのかっていうのは、当時から細かく聞いていたんです。だから僕の阪神大震災での経験っていうのを踏まえて、できる限りのことをしたいと思いました。
──その後はすぐにチャリティオークションや、募金専用口座の開設に向けて動いていきました。
個人で募金をしたり、独自に基金を立ち上げたっていう方もいらっしゃって、もちろんそれはそれで素晴らしいことだと思うんですけど、これは一過性のものじゃないし、本当に腹を据えてやらなきゃいけない。それこそ10年とか20年っていうスパンで考えていかなきゃいけないことだと僕は思ったので、そうすると募金にしたって、どさっと集めてハイって渡して終わり、という感じではないのじゃないかなと。
──そのための専用口座?
はい。小さいお子さんや年配の方、または月々の決まった収入の中から募金している方たちの善意から、手数料が引かれてしまうのをまずはなんとかしたいなって。長く続けるにあたって、これはクリアしなきゃならない大きなハードルだろうと思ったので。
──確かに普通預金の口座で募金を集めた場合、手数料がかかったり、その後の透明性が担保されなかったりという問題があります。でも専用口座を作ろうという発想は、アーティストの立場からはなかなか生まれてこない気がするんですが。
そこはもしかしたらアーティストというよりも、経営者としてお金の流れの怖さを感じているから、っていうこともあるのかもしれないです。普通預金の口座を使って基金を作った方もたくさんいらっしゃったし、そっちのほうが早いのは確かなんです。だから専用口座に固執しなくても、って言う声も当然あったんですけど。でも僕は……。
──もっと長期的に考えていたということですよね。
そうですね。まず基盤となる部分をしっかりと構築して、募金の透明性を確保することが、今後の安心や信頼につながる。せっかくの気持ちを余計な不安や心配に使ってほしくないと思ったので。
T.M.Revolution(てぃーえむれぼりゅーしょん)
1970年滋賀県生まれの西川貴教によるソロプロジェクト。1996年5月にシングル「独裁-monopolize-」でメジャーデビュー。キャッチーな楽曲や完成度の高いステージ、圧倒的なライブパフォーマンスで人気を集め「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」「INVOKE」「vestige」などのヒット曲を連発する。故郷・滋賀県から初代「滋賀県ふるさと観光大使」に任命され、2009年からは滋賀県初となる大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」も主催(今年は9月17、18日に開催)。2011年4月には約6年ぶりとなるオリジナルアルバム「CLOUD NINE」を発表し、38会場44公演におよぶ全国ホールツアーも実施する(のちに追加公演あり)。さらに同年5月にはサンリオピューロランドとのコラボイベントを開催するなど、15周年記念プロジェクトを進行中。10月からはロックミュージカル「ROCK OF AGES」で主演を務めることも決定している。