ナタリー PowerPush - T.M.Revolution
新曲「FLAGS」掲げ再加速 震災復興プロジェクトへの意欲を語る
「明日がんばろう」と思ってもらうのがT.M.R.の役割
──西川さんは震災以降、地に足の着いた現実的なアクションを徹底してきましたけど、そうした現実の課題をT.M.Revolutionの音楽に持ち込むことはなかったですよね。西川さんの中に、アーティストとして音楽を使って表現したいという思いはなかったんでしょうか? 例えば政治色の強いメッセージソングを歌うとか。
うーん、正直な気持ちとして、僕はT.M.Revolutionにそれを求めていないんです。で、今回ツアーで各地を回ってみて、改めて感じたこともあって。今回被害があった地域から離れれば離れるほど「自分たちが普通に生活してることに対して後ろめたい気持ちがある」っていう声を聞くんですよね。
──いや、でもそれは……。
そう、そんなふうに思う必要はないんですよ。確かに今もなお苦しんでらっしゃる方がいるわけだし、そのことは絶対に忘れちゃいけない。でもだからって、みんながお通夜みたいなムードになってたって、そんなことでは良くならないし。元気なところはより元気になって、そこで生まれた余裕を、日本ってひとつの大きな塊だから、分け合っていけばいいんだと思うんです。萎縮するのではなくて、そのことをちゃんと心に留め置きながら日々の生活を大事に明るく生きること。それが今すごく大事なことなんだよって伝えたいんです。だから、T.M.Revolutionのライブを観て、席を立って会場を出たときに「明日がんばろう」っていう気持ちになってほしい。それが今のT.M.Revolutionの一番大事な役割なんじゃないかなって。
──本当にそのとおりだと思います。
これが今、タイミング的にa.b.s.(abingdon boys school)だったら、たぶん僕ももっとリアルに、自分の今思ってることやメッセージ性の強いものを叩きつけてたと思う。でも偶然にも今年15周年っていうタイミングで、T.M.R.として自分は動いてるわけで。それが今この大きな物事とリンクしてるっていうことには、きっと何か理由があるんだと思ったんですよね。T.M.R.にはT.M.R.の成すべきことがある。それは今の震災や原発の問題を広くたくさんの方に知ってもらうということではなくて、それ以上に日々の生活を大切に生きて、身近で起きてる物事をしっかりと受け止めていくためのきっかけ作り。それでいいのかなって思うんです。
癒すよりも尻を叩いて元気にさせるほうが得意
──お話を伺っていると、T.M.Revolutionも「STAND UP! JAPAN」も、西川さんが掲げた旗の下にみんなが集まって大きな流れを作っていくという動きですよね。今回のシングル「FLAGS」が、それを象徴してるように思うんですが。
「FLAGS」は「戦国BASARA」の主題歌なんですが、真田幸村も伊達政宗も、この作品に出てくる人物ってみんな私利私欲じゃなく自分の国の民や信じてくれてる人たちに幸せになってもらいたい、そのために自分のフィロソフィ(哲学)が一番だと思うから天下を取りに行ってるんですよね。だからそういう人たちの元気を僕が借りて、今こそその恩返しをするべきなんじゃないかなと。
──じゃあ単にアッパーな曲で盛り上がっていこうというだけじゃなく、西川さんはこの曲に今の自分の気持ちを乗せられるということなんですね。
そうです。だから歌詞の中でも「集え」とか、そういう大きな言葉があって、それはまさに今「STAND UP! JAPAN」でやってることにすごくリンクしていますし。「FLAGS」って要は旗なんですけど、それは自分の信じたものに対するプライドを掲げるっていう行為とイコールだと思ってるんですよね。
──そしてあくまでもポジティブに突き進んで、癒しの方向には行かない。そこがT.M.R.らしさなのかもしれないですね。
癒すよりも、尻を叩いて元気にさせるほうがどうやら得意みたいなんで。癒しはほかの誰かにおまかせします(笑)。そのあとで、気持ちを奮い立たせなきゃいけない瞬間が絶対来ると思うので、僕はその手助けをしたいっていう気持ちが強いですね。
──そのスタンスは15年間ブレてない?
そうですね。今回のツアーをやることでより明確になったかも。ツアーを始める前はやっぱりいろんな葛藤があったけど、ライブが終わったあとのみんなの笑顔を見て、僕自身改めて腹括んなきゃって思えるようになったんです。
──自分のやるべきことはこれだっていうのが。
ライブを通してすごく鮮明になりました。
──その思いはきっと形になって多くの人に届くと思います。
はい、届けたいですね。
T.M.Revolution(てぃーえむれぼりゅーしょん)
1970年滋賀県生まれの西川貴教によるソロプロジェクト。1996年5月にシングル「独裁-monopolize-」でメジャーデビュー。キャッチーな楽曲や完成度の高いステージ、圧倒的なライブパフォーマンスで人気を集め「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」「INVOKE」「vestige」などのヒット曲を連発する。故郷・滋賀県から初代「滋賀県ふるさと観光大使」に任命され、2009年からは滋賀県初となる大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」も主催(今年は9月17、18日に開催)。2011年4月には約6年ぶりとなるオリジナルアルバム「CLOUD NINE」を発表し、38会場44公演におよぶ全国ホールツアーも実施する(のちに追加公演あり)。さらに同年5月にはサンリオピューロランドとのコラボイベントを開催するなど、15周年記念プロジェクトを進行中。10月からはロックミュージカル「ROCK OF AGES」で主演を務めることも決定している。