ナタリー PowerPush -T.M.Revolution
ファンを決して裏切らない! 6年ぶりアルバム新作が伝える西川貴教の生き様
T.M.Revolutionが、約6年ぶりとなるオリジナルアルバム「CLOUD NINE」をリリース。ナタリーではアルバム発売を受けて西川貴教にインタビューを申し込み、3月上旬、都内のスタジオで話を訊いた。
インタビューは新作と、T.M.Revolutionの活動スタンスの話題を中心に展開。西川は東日本大震災発生直後より復興支援プロジェクト「STAND UP!JAPAN 中央募金会」を立ち上げ、精力的な活動を行っているが、この取材のタイミングではその話題に触れることはできなかった。しかしこのインタビューからは、彼が音楽活動に賭ける情熱のみならず、彼を被災地支援へと突き動かす衝動の正体も見えてくるはずだ。
取材・文/大山卓也
アルバムを作る過程に一切迷いはなかった
──アルバム完成おめでとうございます。どうですか? 今の心境は。
うーん、ぶっちゃけ肩の荷が下りたというよりも、もうすでに次のシングルの制作に入ってたりとか、ツアーの制作も始まってたりとかしてて。「アルバムできたし、パーっと1週間ぐらい海外でも!」みたいな気持ちには、まったくなれてないですね(笑)。
──今回は6年ぶりのアルバムということですが。
6年前にアルバムを制作してたときは、やらなきゃいけないことはT.M.Revolutionだけだったんです。それが今はバンドのことも考えなきゃいけない。でも6年もアルバム出さないで開店休業みたいな状況だったT.M.Revolutionをもう1回ちゃんとやろうって思えたのは、実はそういうほかの活動があったからなんですよね。
──どういうことでしょう?
要は自分の中で、飽和してたんですよ。アウトプットが1個しかないと、実現できなかったアイデアが自分の中にどんどん溜まっていくんです。自分内コンペでは採用されなかったけど良いアイデアとか、もしくはT.M.Revolutionにはカラーとして合わなくて不採用にはなってるけど、いつか消化したいっていうアイデアが実はたくさんあって。そういうものがどんどん自分の中で膨らんで、ストレスになっていた。で、それをバンドで一気に放出できたんです。
──バンドっていうのはabingdon boys schoolのことですよね?
そうです。バンドを始めたおかげでもう一気に身軽になって、今までパンパンに膨れてたものが一挙に流れていった。で、自分の中で錯覚が起きたんですよね。ほら、アルコール飲んでて明け方にラーメン食べたくなることがあるでしょ。あれアルコールで動悸が激しくなって、運動してカロリー使っちゃったみたいな感じになって、脳が錯覚して栄養摂らなきゃと思って腹減ってくるらしいんですよ。
──そうなんですか。じゃあ飲んだあとラーメン食べちゃダメなんですね。
ダメ! それがどんどんカロリーに!(笑)
──あはは(笑)。
それと同じように、自分の中でパンパンに膨れてたものが一気に出ていったら「あ! スペースが空いた!」と思って、そこにまた舞台とかドラマとかの仕事を入れちゃったんですよ。
──それじゃあまた忙しく?
そう、おかげでまた忙しくはなったんだけど、それが自分にとってはすごくいい経験で。舞台とか映画とかドラマとかをやっていろんな世界を見たことで、もう1回自分がフラットになれたんですよね。それによって、今まで気付いてなかったT.M.Revolutionの魅力も見えてきたし、やるべきことも見えてきて。そういう経験が今回のアルバムになってるんです。
──自分の中を一度身軽にしたことによって、T.M.Revolutionでやるべきことがはっきりした?
そうそう、すんごい楽になった。だから今回のアルバムを作っていく過程に一切迷いはなかったし、レコーディングスタジオに入ってる時間も異常に短かった。歌も2テイクでOKみたいな曲がとても多かったですからね。
時代遅れの90年代サウンドをあえてやり続ける
──そうした経緯を経て、今回はどんなアルバムにしようと思われたんですか?
6年のインターバルもあったので、どういうものがいいのかなって考えた結果、まんま変わらないことをやろうと思って。「このアルバム、何年にリリースされたものなの?」って言われるぐらいの(笑)。もちろん今新しく録音したものだし、僕自身の声の変化なんかもすごくあるとは思うんですけど、音世界っていう部分においては、昔ながらの変わらないこんな音をやってる人はもういない。でもそういうものをあえてやろうと思ったんです。最近ね、80年代のディスコサウンドみたいなものが再注目されてたりしますけど、90年代のサウンドを振り返る人なんて誰もいないし、それをやり続けてる人もいないわけで、ならもう僕がやるしかないっていうね(笑)。
──そこは意識的に、あえてやってる部分なんですね。
はい。もうこんなスポンスポンなスネアの音とか個人的には時代遅れだと思うけど、でもT.M.Revolutionってそれも込みなんですよ。例えばさっき言ったみたいに、舞台やドラマとかの現場に行くことが増えて、それまで僕と接点がなかった人たちと会うでしょ。そうすると自分が思ってる以上に、みんなの中のT.M.Revolutionのイメージって「WHITE BREATH」あたりで時が止まってるんですよね。
──風に吹かれて後ろで爆発がドーン! みたいな?
そうそう(笑)。やっぱりそれだけ鮮烈だったってことだと思うんですけど、話してると「ライブはやっぱり風とか吹いてるんですか?」とかよく訊かれるし。
──あはははは(笑)。
それが普通のリアクションなんですよね。で、そこに変に抵抗したり、いや今の俺は違うんだぜ、みたいなことを言うのってなんかバカバカしいし、つまんないなと思って。なんかね、その古くさい感じ、聴く人によっちゃ「うわっ、恥ずかしい!」と思うようなものがいいんですよ。むしろそれがいいんじゃんって思って。
──それはファンの期待に応えたいっていう気持ちなんですか?
それもあるし、例えば6年前にいちリスナー、いちファンだった人たちが社会に出て、僕と何かしたいって言ってくれたりするんです。放送局に行ったらADの子が「年末の男限定ライブは欠かさず行ってます」って言ってくれたり、僕のラジオにせっせとハガキを送ってくれてた子が今や売れっ子の構成作家になってたりとか。そういうのを見ると、やっぱりね、僕がやり続けていかなきゃならないって、その子たちがいつか僕と何かしたくてこの世界に入ったって言ってくれている限りは、そのときに僕がいないっていうのはありえないですね。
──そこで西川さんがまったく違うことをやっているわけにはいかないと。
しかもちゃんと注目してもらえる存在でい続けなきゃならない。彼らがいざ「西川でいこうと思ってます」って企画書を出したときに「誰それ?」って言われるようじゃダメですからね。かつそのときに、みんなが思ってるイメージからかけ離れた存在になってたら、もうその企画はボツなんですよ。せっかくその子が何年もあっためてきたものが。だから僕は15年経ったけどこれをやり続けることに意味を感じてる。アーティストとしてずっとひとつの顔でいられることってすごく貴重な経験だし、だったらこれを楽しまないと損だと思うんですよ。
──T.M.RevolutionではT.M.Revolutionとして求められてるものを極めようということですね。
もうとことんいきたいって思ってます。だから昨日もちょうどTwitterで「ツアーの衣装の打ち合わせやってます」って書いたら「こういう衣装がいいです」って言われて、じゃあそういう想定ではなかったけど、ちょっとそれを取り入れて仕様変更しよう、とかね。
──そのツイート見てました。「絶対領域があったほうがいい」とかなんとか(笑)。
そうそう(笑)。それで本当にその場で、ここちょっとホットパンツにしたほうがいいかもって言って変えたりして。もしそれがバンドだったら僕も譲らないんですけどね。関係ねえよって言いますけどね(笑)。
初回限定盤A、通常盤収録曲
- CLOUD NINE -instrumental-
- Pearl in the shell
- Naked arms
- 水に映る月
- Wasteland Lost
- Thousands Morning Refrain
- SWORD SUMMIT
- Ø9 (nine) Lives
- Fate and Faith
- Reload
- Fortune Maker
- Save The One, Save The All
初回限定盤B収録曲
- CLOUD NINE -instrumental-
- Pearl in the shell
- Naked arms
- resonance
- Imaginary Ark
- 水に映る月
- Wasteland Lost
- Thousands Morning Refrain
- SWORD SUMMIT
- crosswise
- Ø9 (nine) Lives
- Fate and Faith
- Reload
- Fortune Maker
- soul's crossing
- Lakers
- Save The One, Save The All
- vestige-ヴェスティージ-
DVD収録曲(※初回限定盤Aのみ)
<ミュージックビデオ&TV SPOT>
- Naked arms [Music Video]
- Save The One, Save The All [Music Video]
- Naked arms [TV SPOT]
- Save The One, Save The All [TV SPOT]
<ミュージックビデオ メイキング>
- Naked arms
- Save The One, Save The All
<イナズマロックフェス2010>
2010.09.19滋賀県草津市烏丸半島芝生広場
- Naked arms
- 蒼い霹靂
- WHITE BREATH
- Imaginary Ark
- Pearl in the shell
- SWORD SUMMIT
- crosswise
- Zips
- 魔弾~Der Freischütz~
- LOVE SAVER
T.M.Revolution(てぃーえむれぼりゅーしょん)
1970年滋賀県生まれの西川貴教によるソロプロジェクト。1996年5月にシングル「独裁-monopolize-」でメジャーデビュー。キャッチーな楽曲や完成度の高いステージ、圧倒的なライブパフォーマンスで人気を集め「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」「INVOKE」「vestige」などのヒット曲を連発する。近年では、故郷・滋賀県から初代「滋賀県ふるさと観光大使」に任命され、2009年9月に滋賀県初となる大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス 2009」を主催。同フェスは翌年も開催され、2年連続で大成功を収めた。2011年4月には約6年ぶりとなるオリジナルアルバム「CLOUD NINE」を発表し、38会場44公演におよぶ全国ホールツアーも実施。さらに5月13日にはサンリオピューロランドとのコラボイベントも実施するなど、T.M.Revolutionとしてのデビュー15年目プロジェクトを進行させている。