自分の人生を24時間切り売りして見せる覚悟

──T.M.Revolutionは、西川さんのセルフプロデュースによるプロジェクトとしてここまでの成功を収めているわけですが、そのプロデュースの方法論は、例えばほかのアーティストにも応用できるものなんでしょうか？

いや、今までも正直プロデュースしてくれませんかってお話をいただいたことって結構あるんですね。でもお断りしている理由は、自分がまだ表に立ってやりたいことがたくさんあるので、完全に裏方に回る覚悟ができるまでは触らないでおこうっていうのがひとつ。あとは、自分がやってきた方法は自分でしか通用しないと思ってるからなんです。

──それはなぜですか？

これをやるには人生を24時間切り売りできる覚悟がないと無理なんですよね。遊びに行きたいとか、休みが欲しいとか、女の子だったら子供が産みたいとか、彼氏が欲しいとか、そういう感覚でいるんだったら、僕が言ってることおそらくなんにも理解できないと思うから無理だと思うよって。それでお断りしてるんです。

──そのご自身の、T.M.Revolutionにおけるプロデュースメソッドが特殊なものだという自覚はあるわけですね。

あります。自分の人生を切り売りして、ヘンな話、写真雑誌に撮られましたとか、そんなことも全部ひっくるめて自分の1回こっきりの人生を全部ショーとして見せられる覚悟があるんだったらいいけど、そうじゃないならただ苦痛なだけだから止めたほうがいいよって。なんかうまく言えないんですけど。

──そういう生き方の中からしか、T.M.Revolutionは生み出せないということでしょうか。

そうですね。だから僕と一緒にいる人は、スタッフも家族も、みんな本当に大変だと思う。申し訳ない気持ちでいっぱいです。だけど我慢してつきあってもらうしかないんですよね。

T.M.Revolutionは裏切らない

──アルバムの話に戻りますが、さっきおっしゃっていたように、非常にT.M.Revolutionらしい作品で、ここまで変わらないで15年間やり続けられるというのは逆にすごいことだと思うんです。

あはは！ でしょ？（笑）

──普通はアーティストとしてやっぱり新しいことをやりたいし、良い意味でファンを裏切りたいとか、そんなことを言う人も多いと思うんですけど、今回のアルバムはもうイントロが鳴った瞬間からとことんT.M.Revolutionなんですよね。

裏切らないですからね（笑）。

──その姿勢に西川さんの強い意志を感じます。

やっぱり亀屋万年堂といえばナボナ、っていうようなもんですよね。新メニューもあるけど、やっぱりナボナ食べたいもん。ふいに「ナボナ食いてー！」って思いますからね。だからそうやって「あの店のこれ」って言われるような代名詞があるんだったら、そこは急に止めちゃダメだと思うんですよ。作り続けていくことにある種、美学があるんじゃないかと思うし。

──でも90年代からずっと変わらずにやり続けることによって、一方で変わり映えのしないことをやってる人だと言われる可能性もあるわけですよね。

うん、絶対そうだと思う。だから逆に言うと、恐れずにそこに行けたのは、さっき言ったみたいに、abingdon boys schoolで自分の音楽をしっかりと形にできたっていうことがすごく大きかったと思いますね。時代性とか関係なく、自分が18、19歳ぐらいの頃からやりたかった音楽をやっと形にできた喜びっていうのがあって。

──じゃあ、今はいいバランスで活動できてるということですか。

うん。まあ大変ではありますけどね。ほかの人がこれをやりたいって言っても、大変だから止めたほうがいいって言います（笑）。

──じゃあそのぶん西川さんにがんばり続けてもらわないと。

そうですね。息子が生まれて2代目T.M.Revolutionを襲名するまでは、初代としてがんばっていくつもりです（笑）。