PUPEEが語る「マイティ・ソー バトルロイヤル」|今のマーベル映画をリアルタイムで観るやつはヤバい

古参のアメコミファンにとって今は夢みたいな状況

──PUNPEEさんが先日リリースした1stアルバム「MODERN TIMES」の収録曲「Hero」に「Thorの妹もimage違い」という歌詞がありましたが、どういう意味なんですか?

PUNPEE

「アベンジャーズ」のマーベルや「バットマン」のDCみたいに、「スポーン」とかを出してるImage Comicsっていうコミックの会社があったんですよ。そこの作品に登場するキャラクターにアンジェラという天使がいたんですけど、マーベルがそのキャラクターの権利を持つことになって自分たちのところに引き抜いてきちゃったんです(笑)。アンジェラはマーベルに来て、ソーの妹って設定に変わったんですよ。

──コミックのキャラの権利が移るというのは珍しいですね。

そうですね。それにちなんで、少しトンチを効かせてラップしてみました。

──「MODERN TIMES」からはPUNPEEさんのアメコミ愛を強く感じました。作品のテーマは「成長」だし、構成は映画仕立てだし。

自分は今まで人の作品へ客演したりリミックスばかりやってたりして自分名義の作品がなかったから、「早くアルバム出せよ」みたいなプレッシャーはそれとなく感じてて(笑)。でもいざ作ろうと思っても全然アイデアが出てこなかったんですね。最初はとにかくやりたくなかったんだけど、徐々に形が見えてきて。そしたら、“ダメなところから這い上がる映画”みたいな感じに自然となっていったという感じです。

──アルバム制作が停滞した時期に、どんなことが突破口になりましたか?

アルバムのイントロ「2057」で、「50年後におじいちゃんになった俺が過去を振り返る」という設定を思いついてからですね。あとは好きなことをどんどんぶち込んでいきました。

──「MODERN TIMES」にはいろんな要素が入っているのに、それがすごくうまくまとめられていると思いました。整然としすぎず、散らかりすぎず。なのにエモーションは残っていて。そういう部分で「MODERN TIMES」は「マイティ・ソー バトルロイヤル」や近年のマーベル映画に似ていると思います。

PUNPEE「MODERN TIMES」ジャケット。イラストは「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の公式イラストなどを手がけたサム・ギルビーによるもの。

確かに「マイティ・ソー バトルロイヤル」はこれまでバラバラに見えたいろんなステージがつながるような瞬間がいくつかありましたからね。「MODERN TIMES」に関しては、曲が出そろってから全体を見て「この曲は別の役割もあるぞ」って気付いたら歌詞を変える、みたいな作業はけっこうしました。スケールアップするように帳尻を合わせていくと言うか。

──アメコミもヒップホップも日本ではもともと少しマイナーでしたが、徐々に市民権を得られるようになってきました。そんな状況になって、PUNPEEさんは今どんな気分ですか?

国産のヒップホップとアメコミの日本のファンって少し近いと思うんですよ。昔から固定ファンがいる特定のもの以外の、売れるだいたいの数とか。特に自分が好きになった頃はその絶対数が今よりも圧倒的に少なくて、コミックの巻末にある文通コーナーで友達を探したりしてたんです(笑)。それから考えると今の状況は夢みたいですよ。ラップを扱うテレビ番組はいっぱいあるし、アメコミ映画も毎年新作が公開されて、コミックも話題になってるっていう。

「ブラックパンサー」には大人向けの内容を期待

──今回の「マイティ・ソー バトルロイヤル」を皮切りに、2018年3月1日に「ブラックパンサー」が公開され、4月27日には「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」が公開されます。PUNPEEさんはどんな展開を期待していますか?

左は「マイティ・ソー:バラード・オブ・ベータ・レイ・ビル」の第1回が掲載された1997年5月発売の雑誌「マーヴルクロス」14号、右は2011年7月刊行の単行本「マイティ・ソー:アスガルドの伝説」。共に小学館から発売。いずれもPUNPEEが取材に持参した私物だ。

「ブラックパンサー」はマーベルでは初の黒人ヒーローが主人公の映画なんです。監督のライアン・クーグラーも黒人で、音楽にもヴィンス・ステイプルやRun The Jewelsといったヒップホップのアーティストが起用されている。Run The Jewelsは政治的なこともそれなりに触れるグループなので、「ブラックパンサー」にもそういう感じを期待してますね。

──ライアン・クーグラーが監督した「クリード チャンプを継ぐ男」はすごくいい作品でしたよね。

彼の音楽の選曲にも期待ですね! ライアン・クーグラーがマーベルでどういう活動をするかすごく気になります。あと来年はMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の10周年なんですよね?「インフィニティ・ウォー」はお祭りになるのではないでしょうか。しかも監督はルッソ兄弟ですしね。でも絶対にしくじれない作品だから、逆に怖さもありますけど(笑)。

──PUNPEEさんはMCUをどんなふうに楽しめばいいと思っていますか?

MCUをリアルタイムで経験できることってすごいことだと思うんですよ。今回の作品でハマった人は、2週間に1本ずつくらいのペースでもいいから、過去作を観始めたほうがいいと思う。20年後には「2010年代後半のMCUをリアルタイムで観たやつはヤバい!」ってうらやましがられるんじゃないでしょうか。それぐらい大きくて楽しいムーブメントだと思っています!

PUNPEE
「マイティ・ソー バトルロイヤル」
2017年11月3日(金・祝)より全国ロードショー
「マイティ・ソー バトルロイヤル」
ストーリー

「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の戦いから2年。アベンジャーズでもっともアツい雷神ソーの前に、復讐に燃える死の女神ヘラが現れた。究極の武器ムジョルニアをもたやすく破壊するヘラによって、ソーと義弟である宇宙一の裏切り王子ロキは宇宙の辺境・惑星サカールへ飛ばされてしまう。そこでエキセントリックな独裁者グランドマスターに捕らえられ、格闘大会へ出場させられたソー。目の前に現れた対戦相手は、なぜか大会の“絶対王者”として君臨するアベンジャーズの盟友ハルクだった。そんなとき、ヘラがアスガルド崩壊をもくろんでいると知ったソーは、ハルクとロキ、さらにワケあり女戦士のヴァルキリーと即席チーム“リベンジャーズ”を結成し、故郷へ急ぐ。

スタッフ / キャスト

監督:タイカ・ワイティティ

出演:クリス・ヘムズワース、トム・ヒドルストン、ケイト・ブランシェット、イドリス・エルバ、ジェフ・ゴールドブラム、テッサ・トンプソン、カール・アーバン、マーク・ラファロ、アンソニー・ホプキンスほか

PUNPEE「MODERN TIMES」
2017年10月4日発売 / SUMMIT
PUNPEE「MODERN TIMES」

[CD] 2916円
SMMT-99/XQMV-1009

Amazon.co.jp

収録曲
  1. 2057
  2. Lovely Man
  3. Happy Meal
  4. 宇宙に行く
  5. Renaissance
  6. Scenario(Film)
  7. Interval
  8. Pride
  9. P.U.N.P.(Communication)
  10. Stray Bullets
  11. Rain(Freestyle)
  12. 夢のつづき
  13. タイムマシーンにのって
  14. Bitch Planet
  15. Oldies
  16. Hero
PUNPEE(パンピー)
PUNPEE
東京都板橋区在住のラッパー / トラックメーカー / DJ。2006年に「ULTIMATE MC BATTLE 2006」東京大会で優勝し、2007年にGAPPER、弟の5lackとPSGを結成。PSGは2009年10月にデビューアルバム「David」をリリースし、この作品は各所で高い評価を集める。その後ソロ名義で「Mixed Bizness」「MOVIE ON THE SUNDAY」などのミックスCDを発表し話題に。エナジードリンク「レッドブル」のCMソングや、TBS系「水曜日のダウンタウン」のオープニングテーマ&ジングル制作で多くの人々に知られるようになる。2015年12月には加山雄三とのコラボ曲「お嫁においで 2015」をアナログ12inchでリリース。2017年1月には宇多田ヒカルのヒット曲をリミックスした「光(Ray Of Hope MIX)」を全世界で配信し、全米のiTunes Store総合ページで日本人アーティスト最高位となる2位にランクインした。同年10月に初のソロアルバム「MODERN TIMES」を発売。