スカートとPUNPEEによるコラボ曲「ODDTAXI」が4月7日に配信リリースされた。
カクバリズム所属のシンガーソングライター澤部渡によるソロプロジェクト・スカートと、宇多田ヒカルのリミックスや星野源とのコラボでも知られるSUMMIT所属のラッパー・PUNPEE。そんな2人による異色のコラボ曲は、PUNPEEが劇伴を担当するテレビアニメ「オッドタクシー」のオープニングテーマとして書き下ろされたもので、それぞれの持ち味が見事に調和し、違和感なくミックスされた1曲となっている。
板橋出身という共通点を持つものの、これまで交流のなかった澤部とPUNPEE。音楽ナタリーでは、コラボ前に抱いていた互いの印象や、コラボ曲制作の経緯について2人に話を聞いた。
取材・文 / 三浦良純 撮影 / 前田立
同じ板橋出身として意識し合っていた
──お二人はこのコラボ以前から交流はあったんですか?
PUNPEE 今回までなかったですね。
澤部渡 ですね。もちろんリスナーとしては聴いていましたけど。
222だから実家の猫が嫌そうな顔してる写真置いときますね4 pic.twitter.com/chF5AXUOZK
— 澤部渡 (@skirt_oh_skirt) February 22, 2021
PUNPEE でも2017年か2018年に「フジロック」で1回すれ違ったことがあるんですよね。話しかけられずでしたけど。あと猫のツイートを見たり(笑)。
澤部 あれはバズるとわかって投稿してますからね(笑)。
PUNPEE それと何かの雑誌で板橋を紹介する特集があって。
澤部 ああ、あったかも。
PUNPEE 東京23区それぞれ出身の人を紹介する特集で、板橋区は自分と澤部さんだったんですよ。そのときに澤部さんを板橋の人として認識した記憶があります。
澤部 PSGは出てきたときから板橋感があったじゃないですか。僕は5lackさんと同い年の1987年生まれなんですよね。それで周りの友達と「ついに板橋から出てきたぞ」「熱いね」って話をしてましたよ。
PUNPEE PSGがアルバム「David」を出したのは2009年ですけど、その頃はもう澤部さんもCDを出してましたか?
澤部 いや、僕がCD(1stアルバム「エス・オー・エス」)をリリースしたのは2010年なんで、2009年はギリ出てないですね。
PUNPEE でも、ほぼ同じくらいだ。あんまり言ってないだけで、探ってみると、板橋出身の人ってけっこういるんですよね。
澤部 まあ言わなくてもっていう(笑)。「東京都出身」で止められちゃう。
PUNPEE the band apartさんとか板橋ですよね。あとフレンズのおかもと(えみ)さん。板橋でギャルやってたというのを聞いたことがあります。
澤部 今となってはあんまり想像つかないですよね。
──板橋出身という共通点のあるお二人ですが、お互いをどのようなアーティストとして認識していましたか?
PUNPEE 柔らかい歌声の持ち主であり……いい人ですよね。METEORくんが「澤部さんマジ超いい人」と言っていて。刷り込まれていたんですけど、会ったら本当にその通りで。
澤部 フフフ(笑)。
──METEORさんは「オッドタクシー」に声優として出演しているんですよね。澤部さんはMETEORさんと交流があったんですか?
澤部 METEORさんの青い果実(METEOR、KYN、butajiによるユニット)と対バンしたことがあるんですよ。それで、その直後に新宿のタワレコでたまたま会って軽く挨拶した記憶があります。
PUNPEE 覚えてらっしゃったんですね。澤部さんの曲は歌詞も面白いし、ちょこちょこYouTubeでミュージックビデオを観させてもらっていて。特に「遠い春」の切ない感じが好きでした。
澤部 僕らの文脈から言うと、PUNPEEさんは、やっぱり「サマーシンフォニーver.2 feat. PSG」のイメージがデカいですよね。こんなに若いヒップホップの人たちが曽我部(恵一)さんと一緒にやってるんだあって驚きがありました。その後、「MODERN TIMES」(2017年にリリースされたPUNPEEの1stアルバム)が出て「すげえ!」って。あと「水曜日のダウンタウン」(PUNPEEがオープニング曲を担当)を毎週観てるので、その印象もありますね。
コラボの伏線
──去年の11月、PUNPEEさんが2階建ての大きなバスで板橋から新木場STUDIO COASTまで移動しながらパフォーマンスする様子を収めた配信ライブ「Tongpoo videos vol.2 PUNPEE Presents. "Seasons Greetings'20"」(参照:PUNPEEが仲間たちとロンドンバスで慰安旅行)に澤部さんが出演して驚いたんですが、やはりあれはこのコラボの伏線だったんですか?
澤部 そうです(笑)。
PUNPEE 誰かゲストに出てもらおうと考えていたときに、せっかく一緒に曲を作ってるんだから澤部さんに登場してもらったら面白いんじゃないかってアイデアが出てきて。板橋からタクシーで追いかけてきたという。
澤部 あのラッピングバスを見てね。
PUNPEE 実際、板橋にあのバスが止まってたら浮きますよね(笑)。道行く人にめちゃくちゃ見られたし、板橋を再認識しました。
澤部 あのライブでは、とにかくPUNPEEさんの細かいディティールの作り込みに驚きましたね。あのバスの中もすごかったし、カレー屋も来るし。
PUNPEE カレー屋まーくんを呼んで、カレーの曲(「Curry Song」)もやって。収録が押して1時間くらいお待たせしちゃったんですけど、澤部さんには自分とリンクする曲として「お嫁においで 2015」を一緒にやってもらいました。そういえば、この曲をアコースティックバージョンでやったことないなと思って。スタジオに入って一緒に練習もしましたね。あとは自分が好きな「遠い春」も披露してもらったんですけど、そこで思い出のシーンの映像を流したら、やたらエモーショナルになっちゃって。
澤部 「死ぬのかな」みたいな(笑)。
PUNPEE もしくは死んだあとの人たちみたいな。救急車とかも映っちゃってたし。
人生の選択
──配信ライブから約4カ月後に発表されたコラボ曲のリリースについて、意外性と驚きがありつつも「ついに来たか!」というような受け入れ方をされていて、お互いのファンがすごく喜んでいる印象がありました。
澤部 うれしかったですねえ。
──やっぱりカクバリズムとSUMMITの相性のよさというか、ファン層がかぶる部分もあって違和感がないのかなと。ceroの髙城晶平さんがBIMさんやOMSBさんとコラボしていることもあるし。
PUNPEE ああ、確かに。
──あとカクバリズムではないんですけど、澤部さんと近いところで、どついたるねんの曲にPUNPEEさんがゲスト参加していたこともあって。
PUNPEE ハッハハ(笑)。
澤部 どつとは世に出た時期も近いし、ほとんどただのファンですけど、兄弟みたいなものだと思っていますよ(笑)。
PUNPEE 自分が関わった曲で一番好きな曲はあの曲と澤部さんが言ってて「ええっ!」ってなりましたね。
澤部 いや、一番ではないですよ!(笑)
PUNPEE でも好きと言ってもらえただけでうれしいです。
澤部 何1つとしてPUNPEEさんに益がないコラボでしたよね(笑)。
PUNPEE どつについて自分が一方的に好きな曲は多かったんですけど、オファーされるとは思わなかったし、あの曲でどうやってラップしたらいいんだろうって悩みましたね。でも結果、面白い感じになって。
澤部 最高です。あの曲いまだに聴いちゃうし、MVも観ちゃいますよ。
PUNPEE MVでは自分がアバターになっちゃうっていう。
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澤部さん以外の選択肢はなかった