ナタリー PowerPush - The Mirraz 

言いたいことはひとつだけ「言いたいことはなくなった」

女の子のことを歌うのがロックンロールの醍醐味

──2枚のシングルを筆頭に、今作でラブソングにテーマを絞ったのはどういう理由があるんですか?

インタビュー風景

畠山 去年の夏くらいから明るい音楽をやりたいと思っていて。世の中のムードが暗いから、音楽くらい明るくしたいなと思ったんですよね。「TOP OF THE FUCK'N WORLD」は現実と向き合って生きていくみたいなアルバムになったから、次は世の中を明るくするようなアルバムを作りたいなって。そこから、明るいロックンロールとは何かって考えたときに「女の子のことを歌うのがロックンロールの醍醐味じゃないか?」って思ったんですよね。そう思ってからは、迷いはなくて。あの、シーロー・グリーンの「FUCK YOU」って曲があるじゃないですか。

──最高ですよね、あの曲。

畠山 うん。俺は英語ができないから最初は何を歌っているのか全然わからなくて、サビの「FUCK YOU」のところしか耳に入っていなかったんですけど、日本語訳を読んで「失恋して、あの子くたばれ」みたいなことが書いてあるとわかって、エンタテインメントとしてすごく面白いと思ったんですよ。歌の中に主人公がいて、シーロー・グリーンがその主人公の失恋を代弁してるだけ、みたいな。客観的なエンタテインメントだなと思ったんですよね。

──ストーリーテラーというか。

畠山 そう、その感じがすごくいいなって。そういう曲を書きたいと思った。

ラブソング集じゃない

──ただ、資料のコメントにも「気付いたら孤独を描いていた」とあるように、どの曲にも孤独感が滲んでいますよね。

インタビュー風景

畠山 明るい音楽を作りたいんだけど、ただ明るいだけだと説得力がないなと思ったときにいつの間にかそういう部分が入ってきたんですよね。で、知らず知らずのうちにそっちがメインになってきてるみたいなところはありましたね。

──まあ、でも、本質的にそうなるソングライターだと思うんですよね。根本が……。

畠山 暗いですからね(笑)。

──うん(笑)。でもそこが、どうしたってThe MirrazはThe Mirrazなんだって思える要因でもあって。

畠山 そうっすね。だから、表面的な部分だけ捉えるとラブソング集みたいに聴こえるかもしれないけど、そういうことじゃないというか。

──核にあるものはこれまで描いてきたことと変わってないと思う。あと、ラブソングって突き詰めるほど多面的な響き方もするじゃないですか。そこも今作の肝になっているのかなと。

畠山 うん。例えば「i want u」は、表面だけ捉えると「あなたが欲しい」ってことになるんだけど、俺の中ではあなたの「u」ではなく、その人が欲しいものという意味で「want」をメインのテーマに置いています。

老夫婦=「言いたいことはなくなった」

──「言いたいことはなくなった」ってタイトルを付けているけど、ホントは言いたいことはこれまでどおりたくさんあるんですよね? でも、結局ホントに言いたいことは1つしかなくて、それを一言で言うなら、「愛」ってことかなと思うんですけど。

畠山 うん、そうっすね。「言いたいことはなくなった」って曲は老夫婦を思い浮かべて書いたんですけど、老夫婦ってもはや愛し合っているのかもわからないじゃないですか。

──ただ2人がそこに在る、みたいなね。

畠山 そうそう。「この人たちはなんで一緒にいるんだろう?」って思うんだけど、そこに愛があるんだなって感じた瞬間があって。

インタビュー風景

──どういうときに?

畠山 ふと日常の中で。俺はだいたい電車の中でピンと来たことを曲にするから、電車の中で老夫婦を見たんじゃないですかね。相手に自分のエゴをぶつけてガミガミ言う必要もないし「こいつはこういう人間だから」って完全に受け入れた上で一緒にいる感じに、愛を感じたんだと思う。

──セックスする必要もなくなった男女の姿というか。

畠山 そう、若い頃ってセックスしないと愛がないって思うじゃないですか。でも、老夫婦はそういうところも超越しているんだろうなって思って。で、「その違いってなんだろう?」という疑問の答えを「言いたいことはなくなった」という曲で書けたなと思うんです。アルバムタイトルは、最初「ROCK STEADY」にするつもりだったんですよ。ロックンロールアルバムだから、ロックっていう言葉が入ってるほうがわかりやすいと思って。例えば「ROCK WORLD」とかね。あと、「ロックマン5」とか(笑)。

中島 いきなり「5」(笑)。

一同 (笑)。

──あ、でも悪くないですね、「ロックマン5」(笑)。

畠山 間違いない(笑)。

中島 でも、訴えられるなあ(笑)。

佐藤 カプコンに(笑)。

畠山 話を戻すと、このアルバムができて、「言いたいことはなくなった」を家で聴いていたときに「ああ、この曲がアルバムのテーマだったんだな」っていう感覚がすごくあって。それで急遽アルバムタイトルをこっちに変えたんです。

ニューアルバム「言いたいことはなくなった」/ 2012年1月25日発売 / KINOI RECORDS

  • 「言いたいことはなくなった」ジャケット画像
  • [CD+DVD+グッズ] / 5555円(税込) / KINOI RECORDS / KINOI-2004 / Amazon.co.jpへ
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収録曲
  1. Rock Steady
  2. ラストナンバー(Album ver)
  3. だからボクのそばにいて
  4. i want u
  5. 朝、目が覚めたら
  6. この世でDANCE!
  7. 観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは(Album ver)
  8. oh!baby!
  9. 最後に笑うのは誰?
  10. 言いたいことはなくなった
The Mirraz(みいらず)

畠山承平(Vo, G)、佐藤真彦(G)、中島ケイゾー(B)、関口塁(Dr)からなるロックバンド。2006年9月に畠山が中心となって結成。2008年12月に1stアルバム「OUI! OUI! OUI!」、2009年10月に2ndアルバム「NECESSARYEVIL」とリリースを重ね、洋邦ロックファンから注目を集める。2011年、自主レーベル「KINOI RECORDS」の立ち上げと同時に、中島と佐藤が正式加入し現在の4人編成に。同年6月に初のシングル「観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは」、9月に2ndシングル「ラストナンバー」をリリースし、2012年1月にアルバム「言いたいことはなくなった」を発表する。