インディーズで100万再生、あっという間にメジャーへ
──活動を開始した去年の1月に「80年代アクションスター」のMVを公開して以降の反響をどう受け止めていましたか?
アイキッド 正直、最初はもうちょっと伸びると思ってました(笑)。でも逆に予想外だったのは、去年の5月に公開した「きみはマザーファッカー」ですね。あれは自分の想像を超えるくらいバズりました。
──「きみはマザーファッカー」のMVは100万再生を超える反響がありましたね。メジャーデビューシングルは8cm CDという90年代らしい仕様も用意されていましたが、アイキッドさんのこだわりだったんですか?
アイキッド こだわりもあるし、SMEのポンズチームがノリノリでいろいろやってくれるというのもあります。今はもう去年みたいに1人で全部やることはなくて、チームとして進められているので負担は軽くなりました。でもブームは自分で作らなきゃいけないと思っているので、やっぱり核となる部分には“アイキッド印”が必要だと感じています。インディーズ時代と乖離していって、ポンズがポンズじゃなくならないように。だけど8cmのCDでもグッズでもMVの手配でも、メジャーじゃなきゃできないだろうということはあります。
──「半額タイムセール」のMVにたけし軍団が出演するというのも、インディーズではなかなかできないですよね。
アイキッド そうなんですよ。YouTubeもそうですけど、個人で稼げる時代になったとはいえ、インターネット以外の部分で可能性がいっぱいある。だいたい80年代を表号としているのにインターネットで人気っていうのもおかしな話なんですよ(笑)。やっぱりテレビじゃないと。
──80年代の主な媒体と言えばテレビ、ラジオ、雑誌ですもんね。
アイキッド マスに出たくても個人じゃ難しいですよね。インターネットは参入障壁ゼロですけど。
──誰でも気軽にできる反面、その中で突出した存在になるには、オリジナリティ、行動力、インパクト、継続性など挙げたらキリがないですが、いろいろな必要な要素ですよね。ザ・リーサルウェポンズの下積み期間は短かかったと思いますが、結成前からの流れを聞くにアイキッドさんの計算あってこその今だなと感じます。
アイキッド ジョーの教育期間というか、結成の前のほうがきつかったです。彼は彼でわけわかんない感じでついて来ていたと思うのできつかったと思いますが。
“押すだけDJ”と“DJ”は違う
──メジャー第2弾シングル「特攻!成人式」は、やはりアイキッドさんがMVのコンセプトを考えて?
アイキッド 基本はそうです。前までは自分で絵コンテを描いていたんですけど、今回の3部作に関しては撮影・監督・編集の名倉健郎さん、絵コンテを描く木田友和さんの2人とビデオ通話でやりとりしながら、自分が言ったことを書き留めてもらって。なので僕は“言うだけ監督”みたいな感じですけど。
──3部作のラストを飾るシングルが「押すだけDJ」になります。この曲、辛辣な表現が多くて全国のDJが怒らないか心配になったんですが大丈夫ですか?
アイキッド いや、怒られていいんです。もう。
ジョー ははは(笑)。
アイキッド “DJ”には怒られなくて、“押すだけDJ”の人にはムッとされるかもしれませんね。そこは曲の中で説明も入れてますけど、誰かが言わなきゃいけないと思うことを曲にしました。“押すだけDJ”と、ちゃんとしたターンテーブリストは違うんだよと。その違いを言わないと“押すだけDJ”が図に乗りますから。
ジョー この曲は大丈夫かな?と思った(笑)。「何もできないし再生ボタンを押すだけ」っていう歌詞がかわいそうって。でも面白いから大丈夫ね。
──ちなみに「半額タイムセール」「特攻!成人式」の歌詞についてはどう思いましたか?
ジョー 「特攻!成人式」の歌詞はまったくわからなかった。
アイキッド まずタイトルが「特攻」と書いて「ぶっこみ」と読ませるところからなんでそうなのかを質問されたんです。英語だとスーサイドアタックかな?みたいな感じでニュアンスを伝えはしたんですけど……。
ジョー 漢字は難しいよ。「特攻」(とっこう)と書いてるのになぜぶっこみ?って思った。
アイキッド 「夜露死苦」ってなんでそうやって書くのかなんて、日本人でも説明が難しい。だからもう全部ローマ字で覚えて歌うだけにしてくれ!ってお願いしました(笑)。
ジョー 「ばりヤべー」「鬼スゲー」とかまったくわかんない。日本人の友達に聞いてもやっぱりわかんなかったよ。「しゃばぞう」って何?
アイキッド 「シャバ僧」は北九州のあたりで使われる言葉で、ダサい奴のことを言うのよ。日本人でもわからない人が多いから(笑)。だから「SHABAZOU」で覚えてくれたらいいんだよ。
ジョー 意味と一緒に日本語覚えるので、やっぱり難しい!
──「押すだけDJ」のMVにはTRFのDJ KOOさんが出演しています。MV公開時にDJ KOOさんが「『押すだけDJ』は歌詞もMVの内容もDJをディスってるように思われがちだけどw、実はDJの魅力や可能性を思いっきり表現してくれてるんですよ!!(DJ KOO個人的意見w)」とコメントを寄せていました。
ジョー 失礼な歌詞なのに、優しい人だったね。
──この曲をいつかDJがスピンする日が来る可能性もあるわけですよね。
アイキッド 簡単に曲をつなげないようにあえて変拍子を入れてます(笑)。「かけれるもんならかけてみな」とも歌ってますから。かけてもらって全然いいんですけどね。
楽しい雰囲気の楽曲に見え隠れするアイキッドの心情
──ザ・リーサルウェポンズの作品には説明しないとわからないような細かいこだわりはあるんでしょうか?
アイキッド 「マハラジャナイト」という曲のタイトルは、80年代の麻布十番にあったクラブの名前なんです。楽しくフィーバーしていた80年代の生活を描いたんですけど、実はダブルミーニングになっていて、載せられないと思いますが、私の個人的なメッセージが入っています。
──掲載できそうなこだわりや工夫を聞かせていただけると……。
アイキッド 「プータロー」は働かない息子がテーマですが、働かない息子を批判している曲ではないんです。あれは2001年に竹中平蔵が金融担当で内閣に入ってきて派遣労働者基準法が変わったときのことを歌っていて。派遣法改正後、社会進出につまずく人が増えましたよね、派遣社員がバイトせざるを得ないみたいな。正直言うと僕自身がそうだったから。
──ザ・リーサルウェポンズの曲は楽しいだけではなくて、実はそういった世相を反映したメッセージが込められていることもあるということですね。
アイキッド そうです。個人的思念とか思想をサイボーグジョーというフィルターで濾してエンタテインメントにしてるんです(笑)。
ジョー スケープゴートだよ! 楽しいから大丈夫だけど。
「ワールドツアーやりたいよ!」「現状維持で」
──3部作が完結したあとには次のタームに入っていくと思うんですけど、今後の目標は?
ジョー 本当にワールドツアーやりたいよ! ドイツ、イタリア、セルビア行こうよ!
アイキッド 現状維持で(笑)。