音楽ナタリー PowerPush -The BONEZ

JESSEが語る、最高にポップな実験作「Beginning」

NAKAの本気を感じたね

JESSE(Vo, G)

──ZUZUさんの脱退についても教えていただけますか?

うん。ZUZU、ZAX、T$UYO$HIと俺で2ndアルバム「Astronaut」を作って、そのあとでZUZUが脱退することになったんだけど。俺、ZAX、T$UYO$HIはバンドマンとしてのキャリアがあるし、長年やればそれなりに技術も付いてくるわけ。そんな俺たちは、バンド経験のないZUZUと一緒にやることで新しい発見があったりもしたけど、ZUZUは俺たちとの差を重く捉えてしまう部分もあったみたいで。

──でも、もともとThe BONEZはZUZUさんとJESSEさんとのプロジェクトでもあったわけで。

そう。だからZUZUには悪いことをしたなと思ってる。で、ZUZUが抜けたあと新しいギタリストを考えていたとき、3人全員で「せーの」で候補のギタリスト名を言うことにしたんだ。でも俺、卑怯者だから「せーの」に合わせなかった(笑)。そのとき2人が「(元RIZEの)NAKAだ!」って。結局3人の考えが一致していたんだよね(笑)。

──それはズルい(笑)。

だって俺が「NAKAがいい」って言うのもね(笑)。それにNAKAとはもう5年くらい連絡を取っていなかったし。でもとりあえず連絡をして、ひさびさにみんなでメシを食うことにしたんだ。まだそのときはすぐにバンドの話をするつもりもなくて、ちょっと様子をうかがおうと思ってて。そしたらZAXがいきなり「バンドに入らへんか?」って切り出してさ……ZAX、それはまだ早いだろ!って(笑)。でも、NAKAは「いいよ」って即答してくれたんだ。

JESSE(Vo, G)

──NAKAさんの即答って、ある意味JESSEさんにとっては驚きだったのでは?

そうだよ。俺たちも「じゃ、よろしく」とは言ったものの、RIZEを抜けてからの5年くらいのあいつのことをまったく知らなかったし。ちゃんと弾けるかどうかも未知数だった。でも、その会合から1週間後にリハをすることにしたんだ。そのときは課題曲として「BOSSMAN」をやってきてもらったの。NAKAは「俺、練習してたから弾けるよ」って言っていて、合わせみたら本当にバッチリだった。「もう今からでもライブできんじゃん!」って思ったね。NAKAは俺たちの誘いに「いいよ」って軽く答えはしたけど、本当はすごく練習してきてくれたんじゃないかなって……そのときにNAKAの本気を感じたね。

──そこで今のThe BONEZができあがったという。

ライブのメンバーに関してはね。NAKAが加入してから1年数カ月ほど経ったけど、NAKAが参加して初めての作品が今回の「Beginning」なんだ。

ボーカル録りに十数時間

──今のJESSEさんにとって、The BONEZで鳴らす音と、JESSEさんとして思い描く音に違いがあったりしますか?

自分が思い描く音はもちろんある。でも、「Beginning」はそれをやるための実験でもあったんだ。俺は今までミニアルバムって作ったことがなくて、そもそも「なんでミニアルバムなんて作るんだろ?」って思ってた。でも、ミニアルバムって実験的なことができるフォーマットなんだって気が付いたね。

JESSE(Vo, G)

──「Beginning」で実験してみたかったことってなんですか?

1人でメロディを書くってことだね。俺は今までずっとラップとシャウトばっかやってきて、それでいいと思っていたけど、例えば30秒で自分を表現するときに、歌とラップじゃ全然違うって思うことがあって。ラップだったらストーリーに身振りや手振りを合わせてオーディエンスを自分の世界に持っていくことが多いけど、歌なら気持ちの入れ方1つで一瞬で人を魅了することができる。それが今後の自分に必要だなって感じて、今回は自分でメロディを最初から書いてみようと思ったんだ。

──では「Beginning」を作ることはJESSEさんにとって、転機になったということですね。

そういうこと。もちろんラップをすることをやめるつもりはないんだけど、歌を理解したうえでやるラップとそうじゃないラップってまったく違うものなんだ。今までの俺のラップはキーを理解していないところもあった。それともう1つこの作品で挑戦したかったことがあって。それはボーカルの修正を一切しないってことだった。

──今の時代、珍しいことだと思います。

今ってボーカルのピッチフィックス(※あとからピッチを補正すること)するのが当たり前になっていて、本当に歌がうまい人でもやってる。一方で俺が大好きなミニー・リパートンとかロバータ・フラックのアルバムを引っ張り出して聴いてみたら補正されていないんだけど、あれほどの名歌手でも、ボーカルラインがちょっとシャープしたりフラットしたりしててさ。

──はい。

JESSE(Vo, G)

どっちが正しいっていうのはないと思うんだけど、俺がやっているロックって、生っぽくミックスしたり、わざとハウリングを入れたりするような音楽性だから。それなのにボーカルを全部直すってどういうこと?って思ったんだ。それで今回、レコーディングのときにエンジニアの永野(治)さんから「今のテイクでオッケー、あとは直せるから」って言われたんだけど、俺は「今回は自分が初めて作ったメロディだから大事にしたいし、当たらない(※ピッチがズレること)ようになるまで歌いたい」って。それまで俺、ボーカル録りって1曲につき2、3時間で済ませていたけど、今回は1曲に十数時間かけたよ。

──すごい集中力ですね。普通ボーカル録りって数時間でもたなくなるものですけど。

ボーカル録りの間ほとんど座りもしなかったよ(笑)。それくらい集中していないと、歌の感じを忘れちゃうって思ったから。それで必死にがんばればフィックスしなくても歌が録れるんだってことに気付いたよ。あとは、レコーディングってのはそれくらいがんばるべきものなんだっていうことを再認識できた。それがわかったことで、自分として1つ上の次元に行けたと思う。今ちょうどツアーのリハをやっているけど、歌のコントロールができるようになった。

RIZEでもP.T.Pでもない音

──ミニアルバムとは言え、いろんな意味で挑戦作だったんですね。

そうだね。それと今回はThe BONEZで初めてバラ録りにも挑戦した。ZAX、俺、NAKA、T$UYO$HIという順番で録音していったんだ。ZAXと俺はどんどん前に突き進むようノリがあるってところで共通しているってこともわかって、次回は2人一緒に録ったらいいなって思った。そういう意味でも「Beginning」は今後に向けていろんな収穫があったし、この作品を作ったことで、P.T.P.でもRIZEでもないバンドの音を確立できたかなって思ってる。

JESSE(Vo, G)

──確かに「Beginning」では、The BONEZのオリジナリティが出てきたって印象はありますね。

うん。俺がギターを持って歌えばやっぱりグランジになるし、The BONEZでもラップやシャウトをやるっていうのはある。でも一緒に演奏する人が変わるだけで、同じ音楽性でもここまで変わるんだっていうのが面白くて。

──今回のポイントはやはり、JESSEさんが歌うことによって表現されるメロディアスな部分だと思います。

それは確かにあるね。これまでは歌とラップを分けて考えていたけど、これからはそれを混ぜて考えられるようになると思う。例えばIncubusのブランドン(・ボイド / G)も最初の頃はラップなのか歌なのかどっちかわからなかったけど、最近は歌を重視する方向性にシフトしていっているみたいだよね。そういう感じというか。

──確かにIncubusはミクスチャー然とした音楽から、正統派の西海岸ロックに音楽性を変えていきましたね。JESSEさんはそういうバンドの音楽性の変化についてはどう考えますか?

うーん、俺は同じメンバーでやり続けていれば、音楽性がどう変化してもいいと思うな。やっぱり1つのことをやり続けると、できることが限られてはいくと思っていて。だからやったことのないことをやっていくようになることはバンドとしては仕方がないことだと思うよ。もちろん同じことを続けるカッコよさもあるけど。

RIZE、子育てとの両立

──先ほど「Beginning」は今後のための実験だと言っていましたが、最終的にThe BONEZで成し遂げたいことはなんですか?

大きなことは言えないけど、まず日本で旗を揚げてから、そのあとに海外に行くべきだと思っていて。これはずっと昔から思っていたんだけど。The BONEZがそのとっかかりになるんじゃないかなって考えているね。

──では今後もRIZEとThe BONEZという2つのバンドを続けていくわけですね?

うん。俺には子供もいるし、子供の面倒を見られるなら、バンドを2つ掛け持ちするくらいなんてことはないと思う……でも、それはもう本当に大変で。2つのバンドと子育てをやるためには、俺が一番苦手なスケジュールの管理をしなきゃいけない。俺、昔は財布と手帳を持ったことがなかったんだけど(笑)。まあRIZEとThe BONEZをやるってことを自分で選んだわけだから、苦手なこともやらなきゃいけないね。

──ちなみに手帳はいつから持ち始めたんですか?

2012年だけど、ちゃんと使い始めたのは2014年になってからだね(笑)。

JESSE(Vo, G)
The BONEZ(ボーンズ)

RIZEのフロントマンであるJESSE(G, Vo)のソロプロジェクト、BONEZから発展した4人組バンド。JESSEが参加したオーディション企画「Stand Up! Project」をきっかけに出会ったZUZU(G)とともに1stアルバム「Stand Up!」を制作し、2012年11月11日にリリースした。2013年1月11日には東京・下北沢SHELTERでワンマンライブを開催。このワンマンライブではPay money To my PainのT$UYO$HI(B)とZAX(Dr)をサポートメンバーとして招聘して行われた。この公演がきっかけとなり、The BONEZとして4人体制での活動をスタートさせた。2014年1月には2ndアルバム「Astronaut」を発表し国内21カ所+台湾にて全国ツアーを開催。このツアーは新ギタリストのNAKAとともに回る。同年7月にNAKA加入後初の音源「Place of Fire」を発表し、年末に東名阪でワンマンツアー「Astro Tour "ONE MAN SHOW”」を開催した。2015年3月にはミニアルバム「Beginning」を発売する。