RIZEのフロントマンであるJESSE(Vo, G)のソロプロジェクトとして始動し、現在の名義となってから10年が経ったThe BONEZ。彼らがその節目を飾る47都道府県ツアー「47 AREAS」をスタートさせたのが今年5月のこと。「47 AREAS」は2024年1月まで続く予定だが、その間にThe BONEZは初のホールツアーも開催する。
結成以来ライブハウスを主戦場としてきた彼らは、なぜこのタイミングでホールという形態の異なる会場でライブをする決断をしたのか? また、活動10周年という節目を迎えた今の心境は? メンバー全員に話を聞いた。また特集の最後には、ホールツアーにゲスト出演するハルカミライの橋本学、SUPER BEAVERの渋谷龍太、THE ORAL CIGARETTESの山中拓也のメッセージを掲載する。
取材・文 / 阿刀“DA”大志撮影 / 苅田恒紀
ZAXは新たな勲章を手に入れた
──最初に1つお伝えしておきたいことがあって。ZAXさん、「SATANIC CARNIVAL」(6月に開催されたPIZZA OF DEATH主催のライブイベント「SATANIC CARNIVAL 2023」)でのHi-STANDARDのドラム、めちゃめちゃカッコよかったです。
ZAX(Dr) 全力でやりました。
──あのステージに立つという決断をしただけで「すごい人だ」と感じたし、観ていてかなりグッときました。
ZAX よかった。みんなそう言ってくれる。
T$UYO$HI(B) 俺らはもちろん、ZAXがすごいヤツだっていうのはわかってるから、俺ら以外のヤツらに対して「ほら、ZAXはすごいだろ?」って思ってた。
──3人はどんな気持ちで見守っていたんですか?
KOKI(G) スケジュールの関係で本番を観られたのは俺だけだったんですけど、素晴らしかったですね。The BONEZのツアー中はずっと一緒にいたんで、オフの日にスタジオに入って個人練習してる様子も見てたし。
JESSE(Vo, G) すっげえパツパツのスケジュールだったよね! 今回、ZAXは新たな勲章を手に入れたと思う。相当がんばってたよな。
KOKI 俺、ハイスタのドキュメンタリー映画のDVDを持ってたんで、それをZAXに貸してあげたんですけど、それを観てHi-STANDARDを再確認して、そこから練習してっていう過程を見ていたので余計にすごいなと思いました。
──あのステージに立って、何か得るものはありましたか。
ZAX いや、別にないっすよ。ハイスタにはPTP(Pay money To my Pain)が大変だったときにいっぱい助けてもらったので、俺ができることなら返していきたいっていう気持ちはあったけど。
T$UYO$HI かんちゃん(ZAX)自身は、「俺はやるべきことをやっただけ」って感じだろうけど、それを見たパンクシーンにいる若いバンドマンには影響を与えていたと思う。
全然過酷じゃない47都道府県ツアー
──そういった大きな出来事も挟みつつ、皆さんは現在9カ月かけて47都道府県を回るという過酷なツアーの真っ最中です。前半戦を終えてみてどんな感想をお持ちですか?
JESSE まず、過酷ではまったくないですね。
ZAX 全然過酷じゃないよね。
JESSE 「もう終わっちゃう……!」みたいな。ツアーが始まって8本目ぐらいでもう寂しくなってた。ZAXなんて11本目ぐらいで「もう半分切っちゃったよ!」って言ってたし。
ZAX 「ツアーの半分の半分が終わるぞ!」みたいな(笑)。
T$UYO$HI でも、ペース的にはちょうどいいかもしれない。間延びすることもなく、連チャンすぎてダレることもない、一番いいペース。
──KOKIさんはどうですか?
KOKI 単純に僕はこの4人でいることが楽しいので、全然過酷じゃないです。みんな一緒に同じハイエースに乗って移動することでメンバーの人となりがよくわかって、そのおかげで演奏も絶対によくなってると思うから、早く後半戦に行きたいです。
ライブハウスの日本統一をしてる最中
──コロナ禍による規制が緩和された状態でのツアーって今回が初めてですよね。
JESSE 5類になってからは初めて。しかも、別に今も規制は緩和されてないですからね。ライブハウスによってルールがあるし、地域によっても違いはあって。県によって対応が異なるというか。「まだ何も緩和されてない」と言われている状態でもこの子たちは勇気を持ってライブハウスにビビりながら来てるんだな、と感じる街もあって。
ZAX 一番規制が厳しかったときの感覚がまだちょっと残ってる地方はあるよな。
JESSE そう、それはライブハウスも含めてね。場所によっては会場の人から「The BONEZさんは規制を緩和させた状態でツアーを回られてると思うんですけど、うちではまだそういうライブは一度もやったことがなくて」と言われたりもして。
ZAX コロナ禍以降、初めてこんなに人を入れたっていうライブハウスもあった。
JESSE そういう状況のライブハウスも多いから、俺らから「規制を緩和した状態でのライブをうちらで試してみませんか」という話をちゃんとしていて。それで「ダメです」と言われたことは今のところないけど、お客さんを100%入れられなかった会場はありますね。
ZAX ソールドアウトと謳っててもキャパ的にはもうちょっと余裕がある。
JESSE だから今、俺たちがライブハウスの新しいルールを作るというか、ライブハウスの日本統一をしてる最中です(笑)。もともとライブハウスってモッシュダイブは禁止だけど、何年もかけて作り上げてきた暗黙の了解というものがあって。チケット番号がよくても、ガタイのいい子たちは人がたくさん乗っかってくるような位置まで下がってきてみんなを支えたりするし、女の子たちの守り方もみんなわかってるし、体のどこを柵に当てたら痛いか痛くないかっていうことも理解してるんですよ。
──たくさんのバンドやお客さんによって、長年にわたって築き上げられてきたカルチャーですよね。
JESSE 今はそういったルール作りをまたイチから始めていて。なぜかというと、ライブハウスに初めて来る、新しいファンの子たちが今そこにいるから。あと、かつてライブハウスで率先して楽しんでいた子の中にビビってるのが意外と多いと思う。そういった子たちはあの場所がどれだけ密なのかわかってるし、じいちゃんばあちゃんと一緒に住んでる子は自分がコロナになるとすごくシビアな問題につながることもよくわかってるから。それ以外のことで言うと、演者の真似をして、お客さんの上に立とうとする子たちが最近増えてる。
──あの荒業を真似するお客さんがいるんですね。
JESSE あれって並の力では無理だし、なおかつ下にいるヤツらとの連携がうまく取れてないと立てないのね。だからすぐに潰れてるのをよく見る。みんな、人の上に立つにはちゃんとしたスキルとルールがあることがわからないんだよね。俺らは別にそういうことをやってほしくないわけではないんだけど、「It’s hard. It’s not easy」。怪我もしちゃうし、させちゃう。だから、こういうインタビューを読んで、状況を理解してくれる人がいたらうれしいな。
──これまでのセオリーが通じないんですね。
JESSE でもそれは、モッシュやダイブのカルチャーを理解できない人たちに理解してもらえるように、俺がライブ中にがんばればいいだけの話。ライブをしてる場所とか、そのときに目を合わせた人によって言い方は多少変えるけど、MCで話す内容として統一してるのは、ダイバーのことを毛嫌いするなっていうことと、逆にダイバーもモッシュダイブが理解できない人のことを毛嫌いするなということ。ダイバーが多くて迷惑してそうな顔を多く認識したときは、そいつらにちゃんとフォーカスして言うし、人の上に乗っかってるヤツに対しても、「足をジタバタさせてサーフボードに乗ってるサーファー見たことある?」って。「そんなことしたら絶対にコケるから、流れに乗ってバランスを取るようにしないと。足をジタバタさせると人の顔を蹴ることになるから、人の上に乗っかるまではジタバタしてもいいけど、乗っかった瞬間からサーフしろ」って細かく説明することもある。そんな日もあれば、そこまで説明しなくて大丈夫な日もある。ただ、1曲演奏するのと同じぐらいの時間をかけて、そういうことを毎回ちゃんと人に伝えようと自分の中で決めてる。でも、そういうMCはライブの頭からは言えないのよ。まずは演奏で“正しいほう”に持っていくようにして、最後にちゃんとしたMCをすることでみんなのまとまり具合が美しくなるし、その美しさにたまに涙が出ることもある。
──サーフしていたお客さんが無理やり引きずり下ろされてTシャツを破かれた、みたいなポストを最近よく見ます。
JESSE そうなんだ。うちらはまったくだよ。でも、かつてRIZEで「Why I'm Me」がヒットしたのをきっかけに、ライブで一見さんがいきなり増えて。そのときにそれまで来ていたお客さんと新しいお客さんがまったく噛み合わなかったのは覚えてる。人はパンパンに入ってるんだけどそれをひとつにできなくて、ライブしてても楽しくなかった。「俺ら、これだけ人を集められてんのにまとめられないんだ」って。でも今、The BONEZの現場ではこの船長が許さないですよ(笑)。
ZAX 1人も置いていかんっていうスタイルだからね。
JESSE もし準備ができてない客がいたらその場で止める。曲を始めない。例えば、靴が片方脱げてどっかいっちゃったってヤツがいたら危ないから、それが見つかるまで俺は待つ。たまに「両方なくなった!」ってヤツがいて、その場合は待てないから始めちゃうけど(笑)。
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BONERの中に嫌なヤツはいない