歌謡曲もラップも突き詰めたい
──「Happy Ender」はagehaspringsのKOHDさんが編曲を担当していますが、オファーの理由は?
U KOHDくんとは「わたし」だったり何度かご一緒しているんですが、彼だったら思いっ切りギターでぶちかまして、ロックな曲にしてくれるんじゃないかなと考えてお願いしました。これまでの自分たちを壊したいという気持ちもあったので、THE BEAT GARDENのことをよく知ってくれていて、その気持ちを汲んでくれるのはKOHDくんしかいないと思ったのもありましたね。
──これまでのTHE BEAT GARDENのイメージをアップデートするような、スピード感のあるエッジの効いたサウンドになっていますよね。
U そうですね。怜のラップパートではBPMを変えていて、そこは今のトレンドを意識しましたね。
──渡部さんのラップはリスナーとして新鮮でした。
怜 今まで歌モノを歌ってた自分とは大きく違う引き出しを開けられたと思ってます。レコーディングとミックスを終えて自分のテイクを聴いたときにうれしくなりました。
U もともと僕は怜のラップに惚れ込んで一緒に組みたいと思ったんですけど、ここ6、7年、歌謡曲に目覚めてから全然ラップをやってくれなくなっちゃったんですよね。歌謡曲を歌う怜のよさもたくさんあるんですけど。
怜 それぞれよさがあるからね。
U kowta2とKAIが自分の好きなことを思いっ切りやってるのを見て、もともといた3人も感化されて。怜は僕がずっとお願いしてもやってくれなかったラップを自然にやってくれたんです。
怜 今はまたラップにハマってて。やっぱり楽しいですね。
U 逆に歌謡曲を忘れないでほしいというフェーズにきてます(笑)。
怜 僕はもともとカニエ・ウェストのライブを観てアーティストになりたいと思ったし、ダンスもやってたし、ヒップホップカルチャーが自分に一番根付いているものではあるんですよね。
U 怜は右と思ったら右にしか進まないタイプなんです(笑)。
怜 (笑)。自分にしか表現できないことを極めることが、結果BEATにとっていい形で還元されると思っているので、これからラップも突き詰めていきたいと思っています。
昌斗 生き生きとラップをしている怜を見て「俺もラップしようかな」って思った。
U なんでやねん(笑)。そうなったらヒップホップクルーに肩書きを変えないと。
昌斗 (笑)。音楽が好きで始めた頃の気持ちを思い出させてくれました。2人が入ったことで、自分たちをどんどん取り戻していってる感覚がありますね。僕たち自身もBEATにいろいろな可能性を感じるので、これからがめっちゃ楽しみです。
──kowta2さんは正式メンバーになってグループへの向き合い方に変化はありましたか?
kowta2 僕としては変わってないとは思ってます。メンバーに会う回数が増えてきて、より仲よくやれてるなって。
U さっきの「Happy Ender」のスクラッチの話もそうですけど、kowta2に何かをお願いしたときに返ってくる物量が圧倒的に増えてるんですよ。彼にとってサポートメンバーという肩書きは重たい鎖だったのかなと感じてて。今、BEATのグッズは全部kowta2が作ってくれているんです。前はサポートだから出しゃばらないように遠慮してたのかな。
kowta2 確かに控えめにしてたかも。今は「もうどうなっても知らないっすよ!」って感じです。
U kowta2のファンクラブのソロコンテンツは「kowta2のデンジャラスゾーン」って名前ですから(笑)。
挫折して、苦しんで、もがきながら生きている
──「Happy Ender」の歌詞はこの5人での新体制を意識して書いたんですか?
U そうですね。KAIとkowta2と話をする中で「すごい才能を持った2人だけど、叶えられなかったことや思うようにいかなかったことが僕らと同じようにあるんだな。そういう2人だからきっとメンバーに誘ったんだな」と思ったんです。変わり映えのない日々の中で可能性を持て余して苦しくなっているというか。そういうことを歌詞に反映させてはいますが、曲を聴いてくれる人の日々に寄り添える曲にもなったらいいなと思っています。
昌斗 「Stay here Happy Ender」という歌詞はその通りだなと思いました。みんないろいろなことで挫折して、苦しんで、もがきながら生きているけど、幸せは自分の中にあるって信じているからこそやっていけてるはずって。そういうことが書かれたこの曲が誰かの応援歌になればすごくうれしいなです。
怜 ラップパートには「ありふれた現状を打破したい、変わらなきゃいけない」という思いを込めていて。理想と現実のギャップにもがいてるようなところが、今の自分の気持ちとリンクしてるんですよね。
KAI 「未来や光に迷って 自分に嘘ついた日々たちも」というフレーズは、未来に対して漠然としたイメージしかなくて、選択肢はいろいろあるんだけど定まっていなかった昔の自分の状態にすごく当てはまります。「今も笑えてるのは君が 僕のHappy Ender」っていう歌詞もあって、今THE BEAT GARDENに加入させてもらって一緒に笑いながら歌ってる僕のことを書いたんですか?って思いました。
U そうだよ。
──今KAIさんが挙げた歌詞で、1番は「時々笑えたのは君が」だったのが2番では「今も笑えてるのは君が」に変わっていて、強い希望を感じる展開になっていますよね。
U そうですね。KAIに「どんな未来を描いてるの?」とか「どんなアーティストになりたいの?」って聞いたときに、はっきりした答えが返ってこなかったことがあって。僕も昔はそうだった。KAIの声を想像して書いたサビの頭の「I stay here now」っていう歌詞は、KAIのための言葉だと思います。この曲の歌詞を書いたのはKAIと出会って3カ月ぐらい経った頃で、すでにかなり話もしていたし、THE BEAT GARDENのことを本気でいいと思ってくれていると感じていました。kowta2もDJとしていろいろなグループに関わってきたけど、絶対に「THE BEAT GARDENが一番いい」と言ってほしいし、2人とも今そう思ってくれてるんだろうなと感じたうえで書いた歌詞ですね。
KAIの中で譲れない情景や思い出がある
──カップリング曲の「She」はKAIさんが作詞作曲を手がけていますが、もともとTHE BEAT GARDENの曲として書いたんですか?
KAI はい。メンバーで曲出しのコンペをやるときに書いた曲です。これまで作ってきた曲と違って、歌うのが1人じゃないところが新鮮でしたね。できあがったメロを聴いて、浮かんだ感情が切なさだったんです。なので、失恋の切なさを乗せたらもっと美しい曲になるんじゃないかと思って、そういうワードを当てはめて作っていきました。
──こういう切ない恋愛を歌ったR&Bは、これまでのTHE BEAT GARDENにはなかったですよね。
U こういう感じの曲は初めてですね。KAIはデモを僕に最初に聴かせてくれて、そのときにいいメロディで「やっぱこいつすごいやん」と思いました。どんな歌詞を乗せるのかはあまりわかってなかったんですが、事前に相談してくれたので、「ここは俺だったらこう書くかな」といろいろ意見しました。でも、KAIなりの意図があるときは僕の提案は却下されるんですよね。KAIの中で譲れない情景や思い出があるんだろうなと思いました。僕はそういう人を待っていたので、そのこだわりがすごくうれしかったですね。
KAI 音楽の楽しみ方って、音を詩的に楽しむと同時に、音そのものとして聴くところもあると僕は思っていて。過去に自分1人が歌うために作っていた曲もそういったことを意識して作っていたんですが、THE BEAT GARDENに入らせてもらった意味を示すためにも、僕なりにきれいで心地がいいサウンドと歌詞にこだわりながら作りました。
昌斗 ロックも好きですが、こういうR&Bもみんな聴いてきたので違和感はなかったですね。KAIは自分の音楽性をしっかり持っているので、その世界観をTHE BEAT GARDENとしてどう構築するかというのが曲を作っていくポイントだなと。それが具現化できた1曲になったと思っています。
怜 「She」はライブで歌うのはもちろん楽しいですが、電車に乗ってるときとか、日常で聴く音楽としてもすごくいいなと思いました。1番のヴァースのメロディが特にいいし、みんなの歌が洗練されていて、これまでのBEATとは違う引き出しが生まれましたね。
もともと5人でいたみたい
──2月末からフリーライブツアーが始まりましたが、どんな手応えを感じていますか?
KAI 最高です。歌うことも楽しいですし、みんなでいろいろな場所を周るのも楽しいです。横を見ると一緒に歌っている人がいて、後ろにDJがいるという状況が自分には新しすぎて。もともと新しいことが大好きなのですごくワクワクしますね。
U 5人でライブをやるのがすごく楽しいですね。kowta2もサポート時代とは放っているものが絶対に違うし。お客さんから「もともと5人でいたみたい」と言ってもらってて。言葉にしなくても5人の空気感のよさって伝わるんだなと思ってます。
kowta2 前よりもっと楽しくライブができてますね。ライブ中のアイコンタクトが増えてきて。
U 確かに増えたね。kowta2がめっちゃ楽しそうなんです。ライブを観に来たうちの親も「kowta2さんを見てると笑顔になれる」と言ってて(笑)。DJで後ろにいるけど目がいっちゃうところがあるんだよね。
怜 ジャンル問わず、アーティストが楽しんでいる姿を見せることで、お客さんにもワクワクしてもらえると思っているので、5人になってからよりそういう空気感のあるライブができているなと思います。そういう空気感がもっとお客さんに伝播していったらいいですよね。
昌斗 ついてきてくれるというより、2人ともBEATを引っ張ってくれるところがすごいなと思います。この5人で好きなことをやり切って潰れてもいいと思える気持ちが日々増していて。今はファンの人の気持ちより自分たちの楽しさを優先してしまっているのですが、これからファンの皆さんにもこの5人で音楽を作ることが“正解”だと思ってもらいたいです。
プロフィール
THE BEAT GARDEN(ビートガーデン)
U(Vo)、藤掛昌斗(Vo)、渡部怜(Vo)、kowta2(DJ)、KAI(Vo)からなるグループ。2016年7月にユニバーサルシグマよりシングル「Never End」でメジャーデビュー。結成10周年を迎えた2022年8月に発表したドラマ「六本木クラス」の挿入歌「Start Over」が大ヒット。2025年2月、サポートDJのkowta2と現役大学生のKAIが加入して新体制となり、3月に10thシングル「Happy Ender」をリリースした。
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