THE BEAT GARDENの楽曲「初めて恋をするように」が11月16日に配信リリースされた。
「初めて恋をするように」は、テレビ東京系のドラマ「自転車屋さんの高橋くん」のオープニングテーマ。THE BEAT GARDENがドラマの撮影風景などから着想を得て書き下ろした1曲だ。また「自転車屋さんの高橋くん」で主演を務める鈴木伸之がドラマのエンディングテーマ「フタリノリ」を担当しており、鈴木はこの曲で歌手デビューを果たした。
音楽ナタリーではTHE BEAT GARDENと鈴木にインタビュー。「初めて恋をするように」「フタリノリ」の制作エピソードや、お互いの印象などを語ってもらった。
取材・文 / 天野史彬撮影 / 大川晋児
“高橋くん”の心の中を曲に
──皆さんが対面されるのは、今日が初めてなんですよね。
U そうなんですよ。
REI 僕らはずっとテレビを通して鈴木さんを観ている側だったので。今日は朝から楽しみにしていました。
鈴木伸之 僕も皆さんのことをテレビで拝見していましたし、音楽を聴いたり、ミュージックビデオも拝見させてもらっていました。1対3なので、ちょっと緊張してます(笑)。
U いやいや(笑)。僕らからすると本当に、「本物の鈴木さんだ……」という感じです。やっぱり、背が大きいですよね。
鈴木 185cmくらいあります。
U やっぱり生で会うとシンプルにカッコいい(笑)。
MASATO ドラマ(鈴木伸之主演ドラマ「自転車屋さんの高橋くん」)ももちろん観ているので、鈴木さんを見ると「遼平だ!」という感じがしますね(笑)。あと、僕はずっとLDHさんが大好きなんですよ。音楽を始めたきっかけもLDHさん所属のアーティストで。
鈴木 そうなんですね!
MASATO 芸能界という激戦区の中でご活躍されているのはすごいなと思っていたんですけど、こうして実際にお会いすると、オーラがあってそれも納得します。
鈴木 僕が最初に聴いたTHE BEAT GARDENの曲は、「六本木クラス」の挿入歌だった「Start Over」で。インパクトのあるフレーズもあるし、3人のチームワークも垣間見えるし……テレビの音楽番組でも披露していたじゃないですか? それを見て「すごく楽しそうだな」と思っていて。自分たちらしく活動されている印象がありました。今回、オープニングテーマを歌ってくださったドラマの「自転車屋さんの高橋くん」は原作も素晴らしくて、大好きな作品なんです。加えてあんなに素敵な曲をいただけて、感謝しかないです。
U もう、本当にうれしいです。ありがとうございます。
──鈴木さんはこのドラマの役柄にはどのように向き合われていますか?
鈴木 まず原作を読ませていただいて。役作りは、まず前髪を染めるところからでした(笑)。
U・REI・MASATO (笑)。
鈴木 4回くらいブリーチしました(笑)。「自転車屋さんの高橋くん」は優しい題材のドラマなんです。大人な恋愛もありつつ、くっつくようでくっつかない、歯痒い感じもありつつ。そこが素敵なところだと思っているので、丁寧に表現できればと思って臨みました。言葉というより、行間に詰まっているものが大切な作品だと思ったし、その空気感のようなものを大切にしながら撮影しました。
U 今の行間のお話を聞いてハッとしたんですけど、鈴木さんが演じられている遼平って、ストレートな人で、言いたいことをパッと言えてしまったり、やりたいこともすぐにやれてしまう人ではあるんですよね。でも、実はその遼平にも言えないこと……心の中にある、かわいい部分なんかもきっとあって。ストレートな人だからこそ、そういう部分があるんだろうなと僕は思ったんです。そこを曲にできないかと思って「初めて恋をするように」を書いたんですよね。今回、鈴木さんと内田理央さんの撮影風景の写真をいただいて、それを見ながら歌詞を書いたんです。
鈴木 そうだったんですか。
U 今のお話を聞いて、鈴木さんが遼平に向き合っていたのが伝わってきたから「初めて恋をするように」が書けたんだなと思いました。
MASATO 鈴木さんはこれまでにいろんなヤンキーを演じられているじゃないですか。でも、全部それぞれ違う。その細かなニュアンスはどこから出てくるんだろうと僕は気になっていて。
鈴木 どうなんだろう……。でも確かに、「今日から俺は!!」に、「東京リベンジャーズ」に……ヤンキーしかやってきていないんじゃないか?っていう(笑)。
U・REI・MASATO (笑)。
鈴木 なんでなんですかね?(笑) 体がデカいので、ハマるのかもしれない。
MASATO ……実体験があるわけではないですよね?
鈴木 そりゃあもう、僕は優等生でした(笑)。
歌うときの下顎の使い方がきれいな鈴木伸之
──鈴木さんはTHE BEAT GARDENの「初めて恋をするように」を聴かれて、いかがでしたか?
鈴木 「自転車屋さんの高橋くん」の世界にピッタリだと思いました。サビにインパクトがあり、強いメッセージ性もあるけど、同時にさわやかでもあって「こういう曲にいつか挑戦してみたいな」と自分も思うくらい、すごく好きな曲です。本当にリスペクトです。
U ありがとうございます、めちゃくちゃ光栄です。サビにインパクトがあると言ってくださいましたけど、この曲はサビで2個半キーが上がるんです。そこに気付いていただけたのは、すごくうれしいです。
鈴木 曲も歌詞も、ご自分たちで書かれているんですよね?
U そうなんです。
鈴木 すごいです、本当に。
U 僕らも鈴木さんの「フタリノリ」を聴いて「すごい!」と盛り上がっていたんですよ。本当に歌が上手ですよね。僕らはもともと歌をうまく歌えていた3人ではなかったんです。ボイトレに何度も行って、たくさん練習してきて、ちょっと苦労してきたんですよね。そういう人間の目から見てなんですけど、鈴木さんは鼻腔共鳴と言って、鼻から声がよく抜けている歌い方なんです。僕らが2年前くらいから憧れていた歌い方を、鈴木さんはデビュー曲で体現されていて。
REI そう、「鈴木さんも、すごくボイトレに通われたのかな?」と思ったんです。
鈴木 いや、それが、ボイトレにはまったく行っていないんです(笑)。
U・REI・MASATO ええ!?
U センスですか……すごい。あと、歌うときって下顎の使い方が大事で、使い方が悪いと裏返ってしまったり、高いところに行こうとするとわざとらしくなってしまったりするんです。でも、鈴木さんは下顎の使い方がきれいなんですよね。そこも僕ら3人で、「すごいね」と言っていて。
鈴木 そんなに言っていただけたら、僕、余計にボイトレ行かないですよ(笑)。
U・REI・MASATO (笑)。
鈴木 今回、ボーカルは初挑戦だったんです。Tani Yuukiさんが曲を書いてくださったんですけど、デモをいただくのも初めてだったので、新鮮で。まだ歌詞が付いていなくて、「ラララ」と仮歌が入っている部分があって、「音楽ってこうやって生まれるんだ」と思いました。デモを聴いて、たった1曲を作るにも細かいニュアンスにこだわったり、4分間の中で思いを伝えるために試行錯誤されたりしているんだろうなと感じて。そこに毎回本気で向き合っているアーティストの方々は改めてすごいなと感じました。「音楽を作るのって、こんなに難しいんだな」って。だからこそ、「フタリノリ」が完成したあとに「初めて恋をするように」を聴いて、感動したんです。キーも高いし、1曲の中にさまざまな表現がちりばめられているし、ドラマに合わせながら、自分たちの色も壊していないし。曲の中に人柄が出ているというか……「あったかい人たちなんだろうな」、「音楽が好きな人たちなんだな」と思ったんです。めちゃくちゃすごいです、本当に。
REI 僕のボイトレの先生が言っていたんですけど、俳優の方がボイトレに来ると、演技するときの声色と歌うときの声色が違うから、歌うときに声帯のポジショニングがわからなくなるそうなんです。僕らアーティスト業をやっている身からすると、キーは常に歌の位置で生活したいものなんですけど、俳優の方で歌も歌われる方は、そこを両立しなければいけないので、きっと難しいんだろうなと思っていて。
鈴木 え、アーティストの方は、歌うときのキーで生活するんですか?
U 僕らはそのほうがいいと言われていて。もちろん、普段は低いキーで生活することで、歌うときに高いキーがよく出る人もいます。でも、僕らはあまり下のキーで普段しゃべってしまうと、高いところに行くために“ガソリン”が多く必要になってしまうんです。なので、鈴木さんの歌声を聴いたとき、そのナチュラルさが印象的だったんです。違和感がまったくなかった。
鈴木 そうなんだ……。お芝居は逆に、低い声を使うんですよね。声が上ずっていると物語が軽く見えてしまうから。でも、音楽はそこまで低いところは使わないですよね。……なんだか俺、勉強しに来ているみたいですね(笑)。
U きっと、「フタリノリ」は鈴木さんの普段のキーに合っているんですよね。Taniさんが曲を作るときに意識されていたんだと思うんですけど。
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音楽はめちゃくちゃ細かい作業の積み重ね