THE BEAT GARDENの10thシングル「Happy Ender」がリリースされた。
今年2月、THE BEAT GARDENはDJのkowta2、ボーカルのKAIが加入して5人体制に生まれ変わった。そんな彼らの新体制初シングル「Happy Ender」には、U(Vo)がメンバーを思いながら作詞作曲した表題曲、KAIがTHE BEAT GARDENに加入した意味を示すために制作した「She」の2曲が収録されている。
音楽ナタリーでは新生THE BEAT GARDENに新メンバー加入の経緯や、「Happy Ender」の制作秘話についてインタビュー。kowta2とKAIがすっかりグループに打ち解け、和気あいあいとトークする5人の様子を楽しんでほしい。
取材・文 / 小松香里撮影 / 入江達也
親同士が知り合いのkowta2、「大事な話がある」と言われたKAI
──THE BEAT GARDENはkowta2さん、KAIさんが加わって5人体制になりました。お二人が加入することになった経緯を教えてください。
U(Vo) kowta2と怜はもともと親同士が知り合いで、中高生の頃から僕たちのライブに来てくれてたんです。前のDJのSATORUが卒業したときに(参照:THE BEAT GARDEN「余光」インタビュー|Beemerの思いを受け止め、4人で放つ最後の光)、「サポートDJになってほしい」と声をかけたら「いつかメンバーになれるんだったらやりたいです」と言ってくれて、そういう日が来ることを目指して一緒に歩んできました。そこから3年半くらい経って、いよいよkowta2がメンバーになることが決まったタイミングで、僕がKAIが由薫さんの「星月夜」をカバーしている動画をTikTokで観ちゃったんです。それまではボーカル3人体制で先に進んで行く気持ちだったんですが、KAIの歌が忘れられなくてInstagramのDMで連絡しました。KAIは「present」という曲で僕らのことを知ってくれいてたし、めちゃめちゃいいやつで。DMの2ラリー目ぐらいで「大事な話がある」と送りました。
KAI(Vo) すごい怖かったです。
U はい(笑)。そこから1カ月後くらいに会う約束をして。最初は2人で会ったんですけど、人間性も含めてすぐに「入ってもらいたい」と思って、会話の2ラリー目で「実はTHE BEAT GARDENに入ってほしいと思ってる」と伝えました。KAIはそのとき大学生で就活を始めるタイミングだったんですが、「THE BEAT GARDENと一緒にやれるんだったら前向きに考えたいです」と言ってくれたんです。2人で会ったのがたまたまみんながいるスタジオの近くだったので、ほかのメンバーも呼んで5人でピザを食べながらめっちゃくだらない話を2時間ぐらいしました。その時点で“はじめまして”じゃない空気で。僕を含む4人とも「加入してもらいたいね」という思いが一致して、あとはKAIの返事を待つことになりました。
──KAIさんはメンバーと会ってみてどうだったんですか?
KAI テレビで観てた人たちだなという印象でしたね。買って行ったプリンを喜んでくれたのでよかったです(笑)。
藤掛昌斗(Vo) (笑)。KAIの歌声がいいことはU伝いに聞いていて、僕も聴いたときに説得力のある声だなと感じました。THE BEAT GARDENのメンバーは結成したときから友達みたいな関係なので、一緒にいて楽しくなかったら嫌だなと思っていたんですが、ファーストインプレッションで「こいつはオモロいな」と確信しましたね。
渡部怜(Vo) 「星月夜」のカバーを聴いたとき、和声がめっちゃきれいだなと思いました。内面もしっかりしてるので一緒にやりたいなと。
kowta2(DJ) 僕もめっちゃしっかりしてるなと感じました。僕とは年齢差がありますが、頼もしい同期が入ることになって心強かったです。
U 本来だったら晴れてメンバーになるタイミングでkowta2だけお祝いされるところを、2人加入になったことを僕は気にしてて。でもkowta2は今みたいなことを言ってくれるので改めていいヤツだなと思いました。最近はKAIの服のアイロンがけをやってくれてます(笑)。
kowta2 僕は裏方みたいなことをやるのが好きなので(笑)。あとKAIとはよく一緒に買い物も行ってますね。
U 2人が仲よくなってくれてよかったです。
kowta2 一時期は2日に1回ぐらい電話してました。毎回僕からかけてましたけど(笑)。KAIからしたらウザかったんじゃないかな。
KAI いや、楽しかった。
U KAIが若干上から目線なんだよね(笑)。
KAIと起こす化学反応
──KAIさんが加入を決めた一番の理由は?
KAI フィーリングですね。もともと1人で曲を作っていて、それをSNSで公開していたんですが、音楽活動をしたいという気持ちはずっとあったし、一緒にいて居心地がいい人たちと音楽ができたらいいなと思っていたんです。
U KAIが作った曲も素晴らしくて。出会ったときは19歳でしたが、ロックな部分とロジカルな部分がバランスよく共存していてすごく洗練されている曲だったので「本当に自分で作ってるのかな?」と思うくらいでした。
──KAIさんが一番影響を受けたアーティストというと?
KAI 一番を決めるとそこが到達点になって、自分の可能性が狭まる気がするので、一番を決めるのは苦手なんです。ただ、Linkin ParkやONE OK ROCKはすごく好きです。パワフルな声をロックサウンドに乗せて強いメッセージを届けているところに魅力を感じていて、僕もそういうアーティストになりたいです。
──Uさんは、KAIさんとほかのメンバーの声の相性についてはどう考えてましたか?
U 絶対合うだろうなという謎の確信があったんですよね。加入後すぐスタジオで僕らの既発曲を歌ってもらったんですが、想像を超える瞬間がたくさんあって。これからいろんな化学反応が起こっていくんだろうなとワクワクしました。
昌斗 これまでのTHE BEAT GARDENにはない声色なので楽しみと不安と両方あったんですが、KAIはTHE BEAT GARDENの意志をちゃんと継承しつつ、より分厚いものにしてくれたので、Uが言った化学反応というワードに納得しますね。
怜 ミックスのときの歌の波形を見ても、ピッチは正確ですし、修正する必要がなくて。あと生で聴くと音源以上の力強さを持っている歌声なんじゃないかなと感じています。
kowta2、テンション上がってスクラッチ
──ニューシングルの表題曲「Happy Ender」はUさん作詞作曲ですが、この曲を新体制1発目の曲にしたのはどうしてだったんでしょう?
U いつもグループ内コンペをやっていて、それぞれが5曲ぐらい作ったうえでどの曲にするか決めているんです。今回もそのやり方で決めました。ほかにもいい曲はいくつもあったんですが、みんなで候補曲をシェアしている段階から「これだね」という気配があって。ほかの曲はTHE BEAT GARDENの足跡を感じる曲が多かったんですが、「Happy Ender」はKAIとkowta2がいないと成り立たない曲なんですよね。サビが転調しているところのキーはKAIしか出せないし、スクラッチが最も合うのもこの曲で。それで決まりました。
──歌い出しからオートチューンがかかってて、THE BEAT GARDENとしては新しいアプローチですよね。
U これまでTHE BEAT GARDENは“EDR”=“エレクトリックダンスロック”というジャンルをやってきたんですが、それをさらに突き詰めていこうと思ってるんですよね。KAIの声はオートチューンなしでも素晴らしいんですが、ちょっと異次元感を出すために試しにオートチューンをかけてみたらすごく相性がよかったので採用しました。
怜 5人体制になったので、大きく変わらないと意味がないなと全員が思っていて。この曲で5人それぞれの個性や新しいTHE BEAT GARDENの魅力を示すことができました。
昌斗 THE BEAT GARDENの個性が爆発してますよね。これまでとはまた違ったTHE BEAT GARDENならではの強みを知ってもらえると思うと、すごくワクワクしましたね。長く続いてきた体制が変わるのはある種のギャンブルじゃないですか。でも、新しく入った2人がグループにいい刺激をもたらしてくれて、おかげで僕も新人に戻ったような気持ちで新たなスタートを切れました。
kowta2 僕は曲を聴いてテンションが上がって、頼まれてないんですけど、すぐにスクラッチを録音してメンバーに送りました。
U 音源を送って数分後にスクラッチを入れたデータを返してきたので、「そういう前のめりなところがいい!」と思ってうれしかったですね。
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歌謡曲もラップも突き詰めたい