THE BEAT GARDEN「六本木クラス」挿入歌とともに、愚直に歩んできた10年のその先へ

日本でも人気の韓国ドラマ「梨泰院クラス」をリメイクし、話題沸騰中のドラマ「六本木クラス」。Gahoが歌う「梨泰院クラス」のメインテーマ「Start」に日本語詞を付けた楽曲「Start Over」が初回の終盤で流れると、その歌声の主は誰なのかとSNSで話題となった。

「Start Over」を歌うのは、3人組ボーカルユニット・THE BEAT GARDEN。「梨泰院クラス」の大ファンだったという3人は、今回のオファーを受け、活動10年にして巡ってきたこの大きなチャンスをどのように捉えたのか。大ヒット曲をカバーすることの難しさや醍醐味についてじっくりと聞いた。

取材・文 / 黒田隆憲撮影 / 須田卓馬

運命ってあるんだ

──まずは今回、ドラマ「六本木クラス」の挿入歌「Start Over」を歌うことになった心境を聞かせてもらえますか?

REI 「梨泰院クラス」も好きで観ていたし、Gahoさんの歌う挿入歌「START」も「いい曲だな」と以前から思っていました。まさか自分たちが公式でカバーさせてもらえることになるとは思ってもみなかったので、お話を伺ったときはもうびっくりして。

U 日本版はドラマの舞台が六本木なのも僕らからするとビビッと来たところで。僕らが所属しているイドエンターテインメントがあるのも六本木ですし、上京してきて最初に出演したライブハウスも六本木morph-tokyoだったんです。運命ってあるんだなあと不思議な気持ちになりました。

REI 今回のオファーはもちろんすごくうれしかったんですけど、同時に責任も感じて。原作やオリジナル曲のファンの方たちが抱いているイメージを壊さず、かつ自分たちのテイストも入れたうえで、納得のいく楽曲に仕上げられたらいいなと思っていました。

MASATO 「梨泰院クラス」で「START」を聴いて感じた高揚感をしっかりと引き継ぎ、「六本木クラス」で僕らに出会ってくださった人たちにしっかり届けられたらいいなと。原曲へのリスペクトを持ってレコーディングに臨みました。

THE BEAT GARDEN

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──皆さんはドラマ「梨泰院クラス」のファンでもあったんですよね。ドラマのどんなところに惹かれましたか?

U 僕は、これまであまりドラマにハマったことがなかったんです。日本のドラマであっても、韓国のドラマであっても、大抵は1話か2話まで観たところで飽きてしまうことが多かったんですが、「梨泰院クラス」は初回からあっという間に好きになってしまった作品でした。ストーリーはもちろんなんですけど、ドラマに出てくるごはんがめちゃくちゃおいしそうで……(笑)。ドラマを観てしばらくは、あのおいしそうな食べ方の真似がしたくて銀色の韓国箸とスプーンを買って、コンビニのキムチチゲばかり食べていました。

──特に好きなシーンや、思い入れのあるキャラクターというと?

U 第1話でパク・セロイがチャン・グンウォンを殴って、セロイのお父さんが学校に呼び出されるじゃないですか。あそこで長家(チャンガ)の社長チャン・デヒに向かって、セロイのお父さんがセロイのことを「カッコいいです」というシーン。あれはシビれますよね。好きなキャラクターはやっぱりセロイかな。叶うかどうかもわからない夢を、ゼロどころかむしろマイナスからあきらめずに追いかけているところは、自分たちと近いものを感じるなと。

REI パク・セロイは義理や人情を重んじる人で、インターネットもうまく使いこなせない、現代にしてはちょっとアナログな人間だと思っていて。僕らもどちらかと言えばアナログ人間の集まりなんですよ。

U 「人との絆を大切にしなさい」と親に言われて育った3人で、今の事務所にも郵送ではなく直接デモを持ち込んだんです。僕ら世代はみんなSNSやストリーミング配信などを活用して音楽活動をしているのに、上京してしばらくは路上ライブでお客さんと交流することにこだわり続けていたし。とにかく直接観たものや触れたもの、聞いたものを大事にしたい3人なんです。逆に言うとそうじゃないと信じられないというか……。

REI そうそう。だからパク・セロイがああやってコツコツ努力をして成功していく姿に胸がすく思いがあるんです。ちなみに僕は、キム・ダミさんが演じるチョ・イソが好きですね。パク・セロイももともとはクォン・ナラさん演じるオ・スアが初恋相手だし、ドラマでも最初は彼女に焦点が当たっていますけど、イソが登場してセロイとイソがどんどん惹かれ合っていく……復讐劇や「信念を曲げない大切さ」みたいなメインテーマとは別に、ちゃんとラブストーリーも描かれているところがいいなと思いました。

──イソもスアも、主人公に「守られるべき存在」として描かれていないところがいいなと個人的には思いました。2人とも「自分の人生」を生きているし、恋愛もグイグイ自分から引っ張っていく強さも持っているところが新鮮に写ったのかもしれないですね。

U 確かにそうですね。実は「梨泰院クラス」は「イソの物語」でもある。僕もREIと同じくイソ派(笑)。彼女はネットを駆使してパク・セロイのお店を盛り上げていくじゃないですか。僕らはネットをうまく使いこなせないので、俺たちにもイソみたいな仲間がいたらいいのにと思っています(笑)。

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初めて“バズる”ということを経験しました

──そんな「梨泰院クラス」の日本版ドラマ「六本木クラス」はどう観ていますか?

U まずは、「梨泰院クラス」という大ヒット作で、あれだけ世界的にイメージが確立されたキャラを演じている竹内涼真さんは本当にすごいなと思いました。パク・セロイの所作を再現しつつ、そこに竹内さんらしさも加えた宮部新という新たなキャラクターを作り上げている。僕が演技について語るなんておこがましいのですが、「梨泰院クラス」で言うところのチャン・グンウォン、長屋龍河役の早乙女太一さんの存在感も圧倒的でした。

REI あとは、六本木が舞台だから普段よく目にしている風景がドラマの中に出てきてうれしいよね。

U そうそう! 舞台を六本木にして、梨泰院の街に当てはめてるところが面白いなと思いました。オリジナルでも印象的な坂道のシーンを東京で再現していて、きっとロケハンが大変だったんだろうなと。

MASATO 世界的に大ヒットしたドラマのリメイク版を作るのは、役者だけじゃなくてスタッフも含めて制作陣全員にものすごくプレッシャーがあったと思うんですよね。竹内さんのSNSを読んでいても、そのプレッシャーと対峙する覚悟のようなものが感じられて。本当にすごい作品に携わらせてもらっているんだなと、ドラマを観ていて身が引き締まる思いです。

REI もちろんオリジナルを知らなくても楽しめる「六本木クラス」ならではのよさもあって、毎週放送が楽しみです。でも何より自分たちの楽曲がこの映像の中で流れたときのうれしさは格別でした。

REI

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U 僕らの楽曲に関しては、カバーだったこともあって賛否両論あったのですが、僕らも原作のファンなので「そりゃあるよな」とも思っていました。

──賛否両論あるのは、それだけ注目されているということですしね。

REI 本当にそう思います。自分たちがこれまでリリースしてきた楽曲の中で、これほどに「多くの人に届いているんだ」と実感したのは今回が初めてなんですよ。さっきも言ったように、ずっとアナログな活動をしてきたので、初めて“バズる”ということを経験しました。いろいろと驚くことの連続でしたね。