THE BEAT GARDEN|Beemerの思いを受け止め、4人で放つ最後の光

THE BEAT GARDENがニューアルバム「余光」をリリースした。

8月10日をもってDJのSATORUがグループを脱退。「余光」は4人で制作する最後のアルバムとなり、現在のTHE BEAT GARDENの集大成を表す作品となった。

音楽ナタリーでは「Afterglow」ツアーを開催中のメンバー4人にインタビューし、ひさびさのライブの手応えや、Beemer(THE BEAT GARDENファンの呼称)への感謝、「余光」に込めた思いをじっくり聞いた。

取材・文 / 天野史彬撮影 / NORBERTO RUBEN

取り戻せない悔しさがある

──この取材日は7月の中旬ですが、現在、THE BEAT GARDENは「Afterglow」ツアーの佳境を迎えていますね。ひさしぶりのツアーの手応えはいかがですか?

THE BEAT GARDEN

U 正直、ツアーが始まる前は不安もあったんです。SNSを通して「行きたい」という声をもらいつつも、「本当に待っていてくれるのかな?」という気持ちもあったし、僕らのライブはお客さんの声に助けられてきた部分が多かったので、今回のツアーではお客さんが声が出せないのも不安要素として大きくて。ただ、いざツアーが始まったら、やっぱりみんなの熱量がすごくて。声が出せなくても拍手で一緒にライブを作ろうとしてくれる。SNSで届いていた以上に「会いたい」とみんな思ってくれていたんだなって、改めて感じますね。

REI この「Afterglow」ツアーは本来、去年やる予定だったんです。なので、ライブが実施できない期間はもどかしくて。ライブをやらないとBeemerのみんなが離れていくんじゃないかっていう不安は、僕の中にもやっぱりありました。だけど、実際に会うと「おかえり」っていう気持ちで迎えてくれているのをすごく感じます。あと、今回は静岡など初めて回る地方も多くて、それもうれしいです。

MASATO 言ってしまえば、コロナ禍で自分のことを心配しないといけない状況じゃないですか。それなのに、僕たちの活動を心配してくれるファンの人たちは本当に温かくて。SNS上では言葉を交わすだけだったけど、ライブでは“見えないつながり”みたいなものを、しっかりと形として認識できている気がします。あとは現場が本当にひさしぶりで、照明さんや音響などスタッフの皆さんがいなかったらライブは完成しないことを、めちゃくちゃ身に染みて実感しています。

SATORU コロナの前は1、2週間に1回はライブとかで必ずBeemerのみんなに会えていた状況で、そういうBeemerとの時間がずっと自分たちにとってはかけがえのないものだったんだと改めて気付きました。あと、会えない期間もSNSでライブ配信をして、みんなに少しでもパワーをあげられたらと思って活動してきたんですけど、実際のところ、僕たちのほうがみんなからパワーをもらうことが多かったなと思っていて。このツアーでは、「もらったものをしっかりと返したい」という気持ちも強くありました。どの会場に行っても、僕らがパワーをあげるというより、みんなのパワーに乗っかって僕らもがんばれている、そんな状況です。楽しいです、とにかく。

──DJのSATORUさんにとっては今回のツアーがTHE BEAT GARDENとして最後のツアーになるわけですよね。それについて今思うことはありますか?

SATORU

SATORU うーん……THE BEAT GARDENとして活動することが、自分にとってはあまりにも当たり前になっていて。正直、今それに関して何かを感じることができているのかと言われたら、ちょっとまだわからないんです。ただ、今回のツアーはそれぞれの会場で「この日で会うのが最後」という方もいるので、1回1回のライブを「この日が最後だ」という気持ちでやっています。とにかくみんなに「ありがとう」という気持ちを持って、今、この最後のツアーを回らせてもらっています。

──お客さんが声を出せないという制限がある中でのラストツアーは、万全の態勢とは言えなかったと思うんです。

SATORU Beemerの声を直に聞けないっていうのは……そうですね、悔しい気持ちもあります。ステージの上って本当に特別な場所なんですよね。今は声を出せない状況ですけど、出せていたときはちゃんとお客さんの声が聞こえてきたし、その熱量はたしかにステージまで届いていた。今は正直それが難しいですけど、声を出してくれているときと同じくらいの熱量でみんながライブを楽しんでくれているし、ファンのみんなから伝わる思いは、ステージからでも感じることができるので。……でも、やっぱり悔しいのかな。

U みんな、すごく苦しそうではありますね。SATORUの最後に、お客さんが声を出せないっていうのは。「本当は名前呼びたいんだろうな」とか。リアルに「今日がSATORUに会える最後の日だ」という人が全国各地にいて。なんか……申し訳ないじゃないけど、声が出せるときに帰ってきてあげられたらよかったなって、もう取り戻せないんですけど、その悔しさはありますね。

Beemerが鎧を剥がしてくれた

──改めてですが、THE BEAT GARDENにとって、Beemerと作り上げるライブ空間とは、そこでどんなものを共有していると思いますか?

U そうだなあ……正直、最初は自分たちがどう観られるかって、僕らもよくわかっていなかったんですよね(笑)。

MASATO そうだね(笑)。

U

U 僕ら自身、握手会とかもやりながら、自分たちで曲も歌詞も書いているっていう活動で、たまにアイドルグループとして見られることもあって。最初は「俺たちって、どういう存在なんだろう?」と悩むこともありました。でも、今はTHE BEAT GARDENがどうカテゴライズされているかとか、気にならなくなりました。そういう中で少しずつ増えてきたBeemerという存在は、僕たちが何もない状態で大阪から上京して、そこに集まってきてくれた仲間なんだっていう感覚があるんです。だから、言ってしまえば、同じ夢を見ているというか。

──なるほど。

U 僕らのライブは、大好きなものを共有できる場というか……言葉にするのはすごく難しいんですけど、Beemerと一緒に作っている感覚が今はすごくあるんです。ショーみたいに完成したものを見せるのではなくて、一緒にその空間を作っていく。それがすごく幸せなんですよね。

REI 活動を始めた当初から比べると、Beemerと僕らの関係値も変わってきていますね。より仲間感は強くなっているし、本当に大切にしたいなと思う関係になっている。それによって、僕ら自身がどんどんと等身大の自分たちになれているような気がします。

U そうだね。別に昔、嘘ついていたわけじゃないけど、同じ曲をやるにしても、今は「伝えたい」という気持ちが前と全然違う。曲にしてもMCにしても、今は昔よりももっとさらけ出していると思います。きっとデビュー当時は、僕らの歌っている姿を自分たちですごく気にしていたんですよ。ちゃんとTHE BEAT GARDENとしてショーを見せたいと思っていた。でも今はそうじゃなくて、どんどん素直になっている。

MASATO 何事もバックボーンって大事だと思うんですけど、年月を経て、Beemerたちに鎧を剥がしてもらったというか。自分たちの本当の人間性を今、やっと音楽にできていて、それが素直に届いている実感がありますね。

──SATORUさんは、自分たちの変化をどう見ていますか?

SATORU ……僕らって、始めた当初は、自分たちのことをロックバンドだと思っていたんですよね、きっと(笑)。

UMASATOREI (笑)。

SATORU 俺らの音楽を好きなやつだけ聴いてくれたらいいし、みたいな、ちょっとロックな感じだったと思うんです。でも、「もしかして俺ら、違うか?」という感じになっていって(笑)。もっと自分たちらしく、届けたい曲はしっかり気持ちを込めて届けるとか、楽しい曲はみんなと一緒に楽しむっていうことを、REIちゃんが言うように等身大で、自分たちらしくできるようになっていったんだと思います。